慰謝料を請求した相手に貯金がない場合の対処法を解説

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記事目次
不倫や離婚、暴力など、心に深い傷を負った末に慰謝料を請求しても、相手から「貯金がないから払えない」と言われてしまったら、どうすればよいのでしょうか。
精神的な苦痛を受けた上に、経済的な補償も得られないとなれば、まさに泣き寝入りだと感じるかもしれません。しかし、諦めるのはまだ早いです。
この記事では、相手に貯金がない場合でも、慰謝料を適切に回収するための具体的な対処法を分かりやすく解説します。
慰謝料を請求した相手に貯金がないと言われた場合
相手が「貯金がない」と主張しても、その言葉を鵜呑みにする必要はありません。
本当に資力がないのか、あるいは資産を隠しているだけなのかを確かめるための法的な調査方法が存在します。
弁護士に依頼することで、以下のような手続を通じて相手の資産状況を調査することが可能です。
弁護士会照会(いわゆる23条照会)
弁護士が所属する弁護士会を通じて、金融機関や勤務先、各種団体などに対して、必要な情報の開示を求める手続です。
例えば、相手が利用している可能性のある銀行に預金口座の有無や残高を照会することができます。ただし、照会先には回答義務がないため、必ずしも情報が得られるとは限りません。
財産開示手続
裁判所の判決や公正証書などで慰謝料の支払義務が確定しているにもかかわらず、相手が支払いに応じない場合に利用できる手続です。
相手方を裁判所に呼び出し、自身の財産状況について宣誓の上で陳述させることができます。
虚偽の陳述をしたり、正当な理由なく出頭しなかったりした場合には、刑事罰が科される可能性があります。(出典:e-Gov法令検索「民事執行法」第206条)
第三者からの情報取得手続
これも支払義務が確定している場合に利用できる強力な手続です。
裁判所を通じて、金融機関や登記所、市町村、日本年金機構などに対し、相手の預貯金口座、不動産、給与、勤務先といった情報を開示するよう命じてもらうことができます。
財産開示手続と異なり、相手の協力がなくても情報を得られるため、非常に実効性の高い方法です。
慰謝料を請求した相手にお金がない場合の対処法
相手の資産を調査した結果、本当にめぼしい財産が見つからなかったとしても、諦める必要はありません。
状況に応じた適切な対処法を検討しましょう。
対処法①:分割払いを交渉し、公正証書を作成する
一括での支払いが難しい場合でも、分割払いであれば支払えるというケースは少なくありません。まずは分割払いの交渉を持ちかけてみましょう。
そして、分割払いで合意した場合は、必ず「公正証書」を作成してください。公正証書とは、公証人が作成する公的な文書です。
ここに「支払いを怠った場合は直ちに強制執行に服する」という文言(強制執行認諾文言)を入れておくことで、もし将来支払いが滞った際に、裁判を起こさなくても直ちに給与や預金の差押えといった強制執行の手続に移ることができます。
口約束や当事者間だけで作成した示談書だけでは、この効力は得られません。
公正証書を作成するためには、公証役場に手数料を支払う必要が生じますので、この金額もふまえて示談内容(主に示談金)を決めるようにしましょう。
対処法②:強制執行(差押え)を申し立てる
公正証書や裁判の判決があるにもかかわらず支払いが履行されない場合は、裁判所に強制執行の申立てを行います。
差押えの対象となる財産は主に以下の通りです。
- 給与債権:相手の勤務先が分かっていれば、給与を差し押さえることができます。原則として手取り額の4分の1までが対象となりますが、養育費などの場合には手取り額の2分の1までが対象となることもあります。相手が会社員や公務員であれば、非常に効果的な回収方法です。
- 預貯金:銀行名と支店名が特定できれば、その口座の預貯金を差し押さえることが可能です。
- 不動産や自動車など:相手が家や土地、自動車などの資産を所有している場合は、それらを差し押さえて競売にかけ、その売却代金から慰謝料を回収することもできます。
対処法③:相手の親族に協力をお願いする
慰謝料の支払義務は、法律や合意に基づく場合を除き、慰謝料の発生原因を作り出した本人にしかありません。
ですので、本人の親や兄弟姉妹に支払いを強制することはできませんのが原則です。
しかし、相手にどうしても支払能力がなく、かつ相手の親族が円満な解決を望んでいる場合には、任意で支払いに協力(肩代わり)してくれる可能性も考えられます。
ただし、これはあくまで相手の親族などが任意に協力してくれる場合に限られ、相手の親族に支払いを求める側から支払いへの協力(肩代わり)を強制することはできません。
本来慰謝料を支払う義務を負わない者に対して支払いに協力してもらう交渉となりますし、交渉の仕方によっては恐喝罪や脅迫罪に問われてしまうリスクもあるため、弁護士を介して冷静に話し合いの場を設け、協力を打診するという方法も選択肢の一つとして検討すべきです。
親などが「保証人」になる形で合意書を交わすことも有効ですが、合意書の作成についても弁護士にチェックしてもらった方が安心です。
相手が無職の場合
請求相手が無職である場合、慰謝料の回収は一層困難に思えるかもしれません。しかし、この場合でも回収の道が完全に閉ざされるわけではありません。
慰謝料を回収できるか
無職で収入がない状態では、給与の差押えができないため、即時の回収は難しいかもしれません。
しかし、慰謝料を支払う義務そのものが消滅するわけではありません。
慰謝料請求権には時効(不法行為に基づく損害賠償請求の場合には、不法行為の時から20年または損害及び加害者を知った時から3年または5年)がありますが、その期間内であれば、相手が将来的に就職し、収入を得た時点で改めて請求したり、差押えを行ったりすることが可能です。
したがって、現時点で無職であっても、公正証書を作成するなど、請求権を法的に確定させておくことが極めて重要になります。
ただし、慰謝料を請求される側としては、現時点でお金がないのに高額な支払いを約束することをためらうことが少なくないという実情がありますので、難しい交渉になることが予想されます。
対処法
相手が無職の場合の対処法は、基本的には資力がある場合と同様です。
- 財産調査の徹底:職がなくても、預貯金や不動産、生命保険、有価証券などの資産を所有している可能性があります。まずは弁護士会照会や財産開示手続などを通じて、徹底的に資産状況を調査します。
- 公正証書の作成:将来の支払いに備え、支払義務を認める内容の公正証書を作成しておくことが最優先です。相手が再就職した際に、スムーズに給与の差押え等が行えるようになります。
- 親族への協力依頼:本人に資力がない以上、親族からの任意での協力を得るための交渉も、より重要性を増してきます。
やってはいけないこと
慰謝料が支払われず、感情的になってしまう気持ちは理解できますが、以下のような行動は法的に問題があり、ご自身の立場を悪くするだけなので絶対に避けてください。
脅迫や過度な取り立て
「支払わないと家族に危害を加える」「職場に言いふらす」といった脅迫的な言動で支払いを迫ることは、脅迫罪や恐喝罪に問われる可能性があります。
また、早朝や深夜に何度も電話をかけたり、自宅に押しかけたりする行為も、度を越えれば違法な取り立てと見なされるおそれがあります。回収は必ず法的な手続に則って行いましょう。
職場や実家への嫌がらせ
相手が再就職した場合に、その職場に事情を暴露する電話をかけたり、実家に押しかけて言いふらしたりする行為は、名誉毀損罪やプライバシーの侵害にあたる可能性があります。
このような行為は慰謝料回収の正当な手段とは認められず、逆に相手から損害賠償を請求されるリスクさえ生じさせます。
請求相手がお金があるのに隠していた場合の対処法
相手が「お金がない」と嘘をつき、資産を隠している疑いが強い場合には、泣き寝入りせず、法的手続を用いて隠し財産を突き止めることが重要です。
対処法①:弁護士会照会(23条照会)の活用
まずは弁護士に依頼し、弁護士会照会制度を利用して、相手の資産調査を行います。
銀行口座や保険、勤務先など、思い当たる情報から照会をかけることで、資産の存在が明らかになることがあります。
これは、訴訟や強制執行の前段階で行える、比較的簡易な調査方法です。
対処法②:財産開示手続の申立て
既に判決や公正証書がある場合は、財産開示手続を申し立てましょう。
この手続では、相手は裁判所で自身の財産について宣誓した上で陳述する義務を負います。
もし嘘の陳述をすれば刑事罰の対象となるため、資産隠しに対して強いプレッシャーを与えることができます。
これにより、相手が自ら隠していた財産を明らかにすることも期待できます。
対処法③:第三者からの情報取得手続の利用
最も強力なのが、第三者からの情報取得手続です。裁判所が金融機関や市町村などに直接命令を出し、預貯金口座の情報や給与情報などを強制的に開示させることができます。
相手が口座の存在を隠していても、この手続によって銀行側から情報が開示されるため、資産隠しは通用しません。
この手続で判明した財産は、そのまま差押えの対象とすることができます。
離婚問題に関して弁護士がサポートできること
慰謝料請求は、離婚問題の一部として発生することが少なくありません。相手との交渉や法的手続は、精神的にも時間的にも大きな負担となります。
弁護士にご依頼いただくことで、様々なサポートが可能です。
適切な慰謝料の請求と回収の実現
過去の判例や個別の事情を分析し、法的に妥当な慰謝料の金額を算定します。
その上で、相手との交渉を代理人として行い、合意形成を目指します。
交渉でまとまらない場合は、調停や訴訟といった法的手続に移行します。
支払いが滞った場合には、財産調査から差押えといった強制執行の手続まで、慰謝料を実際に手にするまで一貫してサポートいたします。
相手との交渉や法的手続の代理
離婚や慰謝料請求の当事者同士が直接話し合うと、感情的になり、話がまとまらないケースが非常に多いです。
弁護士が間に入ることで、冷静かつ論理的に交渉を進めることができます。
また、調停や裁判の申立てに必要な複雑な書類の作成や、裁判所への出廷も全て弁護士が代理で行うため、お客様の精神的・時間的な負担を大幅に軽減することが可能です。
まとめ
慰謝料を請求した相手に「貯金がない」と言われても、決して泣き寝入りする必要はありません。
相手の資産を法的に調査する方法や、分割払いの交渉、強制執行といった様々な回収手段が存在します。
たとえ相手が無職であっても、支払義務が消えるわけではなく、将来的な回収の道も残されています。
しかし、これらの手続をご自身で行うには専門的な知識が必要であり、多大な労力がかかります。
慰謝料の未払いでお困りの方は、諦めてしまう前に、まずは一度、法律の専門家である弁護士にご相談ください。
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- 得意分野
- 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
- プロフィール
- 京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設