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投稿日: 更新日: 弁護士 表 剛志

フリーランス新法【2024年施行】内容や注意点を徹底解説!

フリーランス新法【2024年施行】内容や注意点を徹底解説!
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フリーランス新法(フリーランス保護新法)とは

フリーランス新法(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)は、組織に所属せずに個人で働くフリーランス事業者が、発注者との間で対等な立場で安心して働ける環境を整備する、という目的で制定されました。

近年の働き方の多様化の中で、組織に属しない、いわゆるフリーランスとしての働き方が増加傾向にあります。

しかし、個人で働くフリーランスは、主に企業から仕事を受注する形で収入を得ることになりますが、企業と対等な立場で交渉をすることが困難なケースも少なくありません。

フリーランス新法には、そうした状況からフリーランスを保護すべく制定された背景があります。

関連リンク:中小企業政策審議会総会(第40回)|経済産業省中小企業庁

フリーランス新法の対象者とは?

フリーランス新法でいう「特定受託事業者」とは、発注者から業務を委託される事業者のうち、①個人で、従業員(週の所定労働時間が20時間以上、かつ勤務開始時から31日以上の雇用が見込まれる者)を使用しない者、又は、②法人で、代表者以外にほかの役員がおらず、かつ従業員を使用しない者を指します。

ポイントは、法人であっても、フリーランス新法の保護対象になる可能性があるという点です。

具体例としては、個人で配達やイラスト作成といった業務を請け負う「ギグワーカー」が挙げられます。

繁忙期に限って数日間に限りアルバイトを雇用している場合も、「特定受託事業者」に該当します。

なお、本記事では便宜上、「特定受託事業者」をフリーランスと表記して説明します。

フリーランス新法と下請法の違いとは?

フリーランス新法と役割が類似する法律として、下請法(「下請代金支払遅延等防止法」)があります。

両者は、規制の大枠は類似していますが、以下の点で大きく異なります。

まず、規制や保護の対象となる事業者の範囲が異なります。

下請法では、規制対象となる発注者と保護対象となる受注者は、資本金の額で区分されます。

しかし、フリーランス新法は、資本金の額で規制対象・保護対象を区分しません。

さらに、対象となる取引も、フリーランス新法では非常に広くなっています。

また、フリーランス新法では、後述するように報酬の支払期日についても、特に再委託の場合について例外が設けられています。

これは、フリーランス新法が問題になる場面では、発注者側も小規模事業者であることが多いという背景によるものといわれます。

フリーランス新法が生まれた背景

これまでの日本における働き方の主流は、会社と雇用関係を結ぶというものでした。

法整備についても、そうした雇用関係を前提に、労働や社会保障に関する政策が発展してきました。

他方、フリーランスについては、専門的な知識や技能を持つ一方、委託元の事業者との間での力関係や交渉力の差があるために、劣悪な就業環境に置かれることも少なくありません。

しかし、法規制は未熟な状況が続いていました。

そこで、こうしたフリーランスの事業者の就業環境を整備するとともに、取引の適正化を図る目的で制定されたのが、フリーランス新法です。

フリーランスガイドラインとは

フリーランスが事業者と行う取引には、全般的に独占禁止法が適用されます。

また、事業者の資本金が一定金額を超えている場合には、下請法も適用されます。

業務の実態から「労働者」と認められる場合には、労働関係法令の適用も考えられます。

これらの複数の法令の適用関係を整理するとともに、フリーランスと事業者の取引に当たって注意すべき点を整理したものとして、厚生労働省や公正取引委員会等の関係省庁が策定した、「フリーランスガイドライン(「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」)」があります。

フリーランス新法の内容(発注事業者の義務)

フリーランス新法では、フリーランスに業務を委託する発注者に対し、以下の内容を義務づけています。

なお、発注者が「特定業務委託事業者」に当たるか否か等によって、課される義務の範囲が若干異なります。

契約条件の書面提供義務

発注者は、業務内容や報酬金額・支払期日等の決められた項目を、直ちに書面又は電磁的方法で明示しなければなりません。

これは、フリーランス新法の第3条で定められていることから、「3条通知」と呼ばれることもあります。

求められる記載事項は、主に以下のとおりです。

  • 発注者の名称等
  • フリーランスの名称等
  • 給付内容(成果物や役務の内容等)
  • 報酬額
  • 報酬の支払期日

これらの事項について、委託時に決まっていないものがある場合は、その理由及び内容を定める予定期日を明記し、決まり次第明示しなければなりません。

3条通知は、必要事項が記載されていれば、通知方法の書式は問いません。

紙以外にも、メールやSNSといった電磁的方法(受信者を特定して送信できるものに限定)によることも可能です。

なお、こうした情報は、発注者が広告やホームページ等で業務委託の募集をかける際にも、正確に表示することが義務づけられます。

報酬の支払期限

フリーランスが経験したことのあるトラブルの中で極めて多いのが、報酬の支払遅延や不払のトラブルです。

キャッシュフローにも大きな影響を及ぼす支払遅延・不払を回避すべく、フリーランス新法では、報酬の支払期日についても、以下のとおり規定されています。

  1. 特定業務委託事業者が、フリーランスに業務委託をする場合(原則)
    … 給付の受領日から起算して60日以内、かつできる限り短い期間内
  2. 支払期日が定められなかった場合
    … 給付の受領日(即日払)
  3. 受領日から起算して60日を超える等の規定違反の場合
    … 給付の受領日から起算して60日目

なお、フリーランスAが、発注者として別のフリーランスBに再委託をする場合については、例外として、AからBへの支払期日については、元の委託者からAへの支払期日を起算日として30日以内、かつできる限り短い期間内とすることができると定められています。

7つの遵守事項

フリーランス新法上、発注者がフリーランスに、1か月以上の期間行う業務を委託する場合、発注者は、以下の7つの禁止事項を遵守する必要があります。

  1. 成果物の受領を拒否する
    … たとえば、予想より在庫が余ってしまったために受取りを拒否する、といったことは禁止されます。また、発注者の都合で納期を延期したり、一部のみ受け取ったりするという行為も、この禁止規定に抵触します。
  2. 報酬を減額する
    … 発注時に決めた報酬金額は、たとえ事前の合意があったとしても、減額することはできません。消費税の支払を拒否したり、合意なく振込手数料を報酬から差し引いたりすることも認められません。
  3. 成果物の受領後に返品する
    … フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに、成果物を受け取った後に引き取らせる行為も禁止されています。
  4. 相場より著しく低い報酬額で買いたたく
    … 継続的な業務委託は、フリーランスにとっては安定した収入源となる一方、発注者への経済的依存度も高くなりがちです。そのため、通常支払われる対価と比べて著しく低い報酬額を不当に定める、いわゆる「買いたたき」も禁止されます。
  5. 指定商品の購入やサービスの利用を強制する
    … 正当な理由なく、商品・サービスを指定して、その購入・利用を強制することは禁止されます。これを認めてしまうと、フリーランスが、発注者に対して経済的依存度を高める危険性があるため、と考えられます。
  6. 金銭や労務・サービスを不当に提供させる
    … 発注者が、金銭やサービス等の提供を要請し、フリーランスの利益を不当に害することは禁止されます。なお、発注者の要請に応じることで商品が良く売れ、経済上の利益を提供することで実際に生じる利益が不利益を上回るなどといった場合は、この限りではありません。
  7. 不当に発注内容の変更・やり直しをさせる
    … フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに、委託内容を変更する、契約を途中で解除する、給付をやり直させることは禁止されます。

ここで「1か月以上」というのは、単一の業務委託又は基本契約で業務期間を定めている場合だけでなく、業務の終了日を定めていない場合も含まれます。

また、契約更新によって1か月以上の業務となる場合も、業務内容と発注者・受託者が同一と評価でき、更新前の契約と更新後の契約との間の空白期間が1か月未満の場合には、「1か月以上の期間行う業務」と評価されます。

就業環境の整備

フリーランスは、労働法令による保護を受けられないため、福利厚生面での課題がありました。

また、ハラスメントを受けた場合も、法律上の保護を受けることが困難でした。

こうした背景を踏まえ、フリーランス新法では、発注者に対して、フリーランスからの申出に応じて、育児や介護等と両立しながら業務を遂行できるように配慮することが求められています。

6か月以上の継続的業務委託(契約更新により6か月以上となる場合を含む)については、こうした配慮をする法的義務が生じ、6か月未満の業務委託については、努力義務として定められています。

ハラスメント対策についても、フリーランス新法では、発注者に対し、以下の5つの防止・対応措置を講じることを義務づけています。

同時に、その旨をフリーランスに周知・啓発することも要求されています。

  1. ハラスメントに対する方針の明確化と、社内への周知・啓発
  2. ハラスメントを受けたフリーランスの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  3. ハラスメントへの迅速かつ適切な対応
  4. 相談者(フリーランス)・行為者等のプライバシー保護とその周知
  5. 相談等をしたことを理由にした不利益な取り扱いをしないこと

契約解除等の事前予告

フリーランス新法では、契約解除の場面においても、労働契約における解雇予告といった制度に準じた規律が用意されています。

具体的には、6か月以上の継続的な業務を委託しているフリーランスに対して、発注者の一方的な都合により中途解約する場合や、契約不更新とする場合には、原則として、解除日又は契約満了日の30日前までに事前予告をしなければなりません。

また、フリーランスが、事前予告のあった日から契約満了日までの間に、契約解除の理由の開示を求めた場合は、発注者は遅滞なくその理由を開示する義務も定められています。

フリーランス新法における罰則

フリーランス新法に違反する行為があった場合、フリーランスの申出に基づき、公正取引委員会等の関係当局は、調査を行い、適切な措置をとることができるとされています。

具体的には、発注者に対して助言や指導、勧告が行えるほか、正当な理由なく勧告に従わない場合には、命令をすることも可能です。

こうした命令に従わなかったり、検査を拒否したりした場合、50万円以下の罰金に処せられることがあります。

これは、違反行為を行った本人だけでなく、法人にも科されます。

フリーランス新法による受託側の利点

フリーランスに対する保護は、これまで労働者と比較して薄くなりがちでした。

しかし、フリーランス新法が制定されたことで、フリーランスは、主に以下のようなメリットを得られます。

取引による不利益を回避できるようになる

フリーランス新法では、取引条件の明示義務や報酬の支払義務について定められており、取引内容を明確にすることによる取引の適正化が図られています。

また、発注者による一方的な報酬減額も禁止されています。

報酬の支払時期についても、成果物の検査の有無にかかわらず、原則として給付受領日から60日以内と定められています。

このように、これまで特に問題となっていた、報酬支払におけるトラブル・不払といった点が法律的に手当てされたことによって、取引上の不利益やリスクを防ぐことが可能となります。

事業を安定して継続できる

フリーランス新法では、一定期間以上の継続的業務委託を中止したり更新しなかったりする場合には、原則として30日以上前に予告することが、発注者に対して義務づけられています。

フリーランスが理由の開示を求めれば、取引を中止された理由を知ることもできます。

これにより、急に理由も分からず取引を中断させられるリスクは回避できます。

また、ある程度事前に知らされていれば、新たな取引先や案件を探すといった対策もできます。

先に述べた報酬支払に関する規制とも相まって、事業の安定的な継続にもより資するといえるでしょう。

トラブルに見舞われても泣き寝入りせず済む可能性がある

フリーランス新法によって、発注者は、フリーランスにとっての就業環境を整備することが義務づけられるほか、いわゆる買いたたきの禁止といった遵守事項も守る必要があります。

取引の中でハラスメント被害を受けた場合にも、発注者に配慮を求めたり、関係省庁に申し出たりすることもできるようになりました。

フリーランス新法が最も注目されるのは、資本金などの要件によって法令による保護からこぼれ落ちていたフリーランス事業者をも保護対象にした点です。

発注者についても、実態として大企業よりも中小企業や個人事業者からの発注も多いことを踏まえ、下請法よりも広範囲に適用される形となっています。

これにより、いままでは法的保護を求めることが難しかったフリーランスについても、自分の権利を十分に主張しやすくなることが期待できます。

フリーランス新法による受託側の注意点

フリーランスを保護することを要旨とするフリーランス新法ですが、フリーランスとしても、正しくその内容を理解することが重要です。

また、自身がフリーランスの場合も、他のフリーランスに業務委託をするケースもあり、それについてもフリーランス新法が適用される可能性があるため、法律の内容や適用場面をしっかり理解する必要があります。

フリーランス新法の規制内容を知る必要がある

フリーランス新法は、発注者に対して、フリーランスとの間の取引について義務づけをする規制が中心です。

しかし、フリーランス側も、その規制内容を知らないと、そもそも取引相手となる発注者が法令違反をしているか否か判断できません。

フリーランス新法の規制内容の中心は、契約内容の明示、透明化にあるといえます。

したがって、フリーランス側としては、以下の各点を中心に、取引相手の発注者が規制を遵守しているかをチェックし、もし問題がある場合には、発注者に確認し、対応を求める必要があります。

  • 委託された業務の内容や報酬額が、契約書上明示されているか?
  • 報酬金額が、不当に廉価となっていないか?
  • 報酬支払期限が、成果物の納品日から60日以内になっているか?

フリーランス側が規制対象となるケースもある

フリーランス新法の中心的機能は、フリーランスの保護にあります。

しかし、フリーランスが他のフリーランスに業務委託を行う場合等、フリーランスがこの規制に従わなければならない場面もあります。

フリーランスが保護されない場合があることにも注意

フリーランス新法があるからといって、常にフリーランス側が保護されるとは限りません。

たとえば、報酬の減額や買いたたきといった禁止行為規制や、中途解除・不更新の事前予告義務は、短期間の業務委託の場合には適用されません。

また、災害などのやむを得ない事由がある場合や、そもそもフリーランスに債務不履行があるような場合にも、これらの規制は及びません。

【フリーランス向け】トラブルの際の相談先

発注者とのトラブルが発生した場合、一番重要なのは、いち早く弁護士を含む専門家に相談することです。

フリーランスが取引上のトラブルに見舞われた際には、弁護士のほかにも、以下のような相談窓口があることをチェックしておくと良いでしょう。

フリーランス・トラブル110番

「フリーランス・トラブル110番」とは、第二東京弁護士会が、厚生労働省から委託を受けて運営している相談窓口です。

相談から解決まで、弁護士がワンストップでサポートしてくれるもので、相談料は無料、匿名での相談も可能です。

個人での解決が困難な場合は、和解あっせん手続を利用することもできます。

下請かけこみ寺

「下請かけこみ寺」とは、下請取引の適正化を推進することを目的として、中小企業庁の委託を受け、全国中小企業振興機関協会が運営している相談窓口です。

専門の相談員や弁護士が相談を受け付けており、相談料は無料、匿名相談も可能です。全国48か所に設置されていて、全国的にアクセスしやすい点も特徴です。

まとめ

フリーランス新法については、これまでフリーランス業界で問題となっていた、報酬の不払いや支払遅延、ハラスメントといったトラブルを防止すべく、様々な規制が置かれています。

具体的な運用は、施行後の動向や実例を待つ必要がありますが、こうしたトラブルが回避、抑止されることで、今後さらに働き方の多様化は促進されるでしょう。

保護対象とされるフリーランスについても、フリーランス新法を十分に活用できるように、こうした法律の内容を押さえ、トラブルの未然回避や対応をできるよう、きちんと備えていく必要があります。

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執筆者 弁護士表 剛志 大阪弁護士会 登録番号61061
いかなる内容の法律相談であっても、まずは依頼者さまのお話を真摯にお聞きし、弁護士以前に人として、「共感」することを信条としています。 まずは人として「共感」し、その次に、法律家として問題点を「整理」して、法的解決を志向することに尽力いたします。
得意分野
一般民事、家事事件(離婚等)、企業法務
プロフィール
大阪府出身
京都大学法学部 卒業
同大学法科大学院 修了

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