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求償権の放棄とは?メリットやデメリット、手続を解説

求償権の放棄とは?メリットやデメリット、手続を解説
中川 浩秀 東京スタートアップ法律事務所

監修弁護士

中川 浩秀 東京スタートアップ法律事務所

東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士。男女問題・不倫慰謝料に関する相談を多数解決。

    浮気相手が慰謝料の請求に応じた場合、浮気相手は求償権を取得することをご存じでしょうか。

    浮気相手が求償権を行使すると、配偶者に慰謝料の一部が請求されることになり、家計としては受け取った慰謝料の一部を返還するということになってしまいます。

    それを回避するためにできるのが「求償権の放棄」です。

    今回は、浮気相手に求償権を放棄させたいと考えている方に向けて、求償権の概要や放棄のメリットやデメリット、求償権を放棄させる方法を解説します。

    求償権の放棄とは?

    求償権の放棄とは?

    求償権の放棄とは、不倫慰謝料を支払った当事者が、もう一方の不倫当事者に対して負担分の支払いを求める権利を手放すことです。

    示談書に放棄する旨を明記することで、支払い後の追加請求や当事者間のトラブルを防ぎやすくなります。

    求償権とは?どの時点で生じる権利?

    不貞行為による慰謝料の求償権とは、慰謝料を支払った共同不法行為者が、もう一方の共同不法行為者に対して、内部的な責任割合に応じた金銭の支払いを求める権利です。

    不貞行為は、配偶者と不倫相手による共同不法行為に該当する場合があります。

    そのため、不貞行為をされた側は、配偶者と不倫相手の双方、またはいずれか一方に対して慰謝料を請求することができます。

    一方、慰謝料を支払った配偶者や不倫相手が、もう一方に対して求償できるかどうかは、支払った金額や双方の責任割合などによって判断されます。

    最高裁判所昭和63年7月1日判決では、共同不法行為者の一人が、内部的な責任割合に従って定められる自己の負担部分を超えて損害を賠償した場合に、他の共同不法行為者に対して求償できると判断されています。

    ただし、現行民法442条では、連帯債務者間の求償について、共同の免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対する求償権を認めています。

    共同不法行為に基づく損害賠償債務と、通常の連帯債務では法的な性質や適用関係に違いがあるため、求償権の発生条件を一律に説明することはできません。

    そのため、慰謝料を支払えば必ず一定額を求償できるわけではなく、支払額や責任割合、示談内容などを踏まえて判断する必要があります。

    たとえば、不倫相手が被害者に慰謝料200万円を支払った場合でも、当然に配偶者へ100万円を請求できるわけではありません。

    求償できるかどうかや具体的な金額は、当事者間の責任割合などによって異なります。

    また、求償権を放棄する合意が成立している場合には、その合意内容によって求償が制限されることになります。

    そのため、慰謝料を支払う際には、求償権の有無や金額だけでなく、示談書に求償権の放棄に関する条項が含まれているかも確認することが重要です。

    参考:最高裁判所「共同不法行為者間の求償に関する判例」

    参考:e-Gov法令検索「民法第442条・第719条」

    求償権は慰謝料を支払った加害者に生じる権利

    求償権は、共同不法行為者の一人が被害者に慰謝料を支払うなどして、共同の損害賠償債務を減少させた場合に問題となる権利です。

    ただし、慰謝料を支払ったという事実だけで、必ず他の共同不法行為者に対して求償できるわけではありません。

    実際に求償できるかどうかや、その金額は、当事者の責任割合や支払額、合意内容などによって異なります。

    そのため、慰謝料を支払う前に、求償権の扱いについて確認しておくことが重要です。

    不倫慰謝料の「求償権の放棄」とは

    不倫慰謝料の「求償権の放棄」とは

    求償権の放棄とは、求償権を行使する権利を放棄することです。

    求償権を放棄すれば、支払った慰謝料の一部を他の共同不法行為者に請求することができなくなります。

    慰謝料を受け取った側の求償権を放棄することのメリットとしては、家計から求償された慰謝料を支払う必要がないという点です。

    浮気相手が慰謝料を全額支払って、浮気相手が求償権を行使した場合、夫婦が離婚しなければ「家計に入った慰謝料の一部から支払うこと」になります。

    せっかく受け取った慰謝料を事実上、浮気相手に返すことになり合理的とはいえません。

    そのため、夫婦が離婚しない場合は「浮気相手にだけ慰謝料を請求して求償権の放棄」を求めることがあります。

    しかし、求償権を放棄することは、浮気相手にとっては金銭的メリットが少ない行為ですので、求償権の放棄を求める場合は「慰謝料の減額」とセットで交渉することが多いです。

    慰謝料を請求する側にとっての求償権を放棄させるメリットとデメリットをまとめておきます。

    求償権を放棄させるメリットとは

    不倫相手同士の金銭請求を防ぎ、示談後のトラブルを避けやすくなります。

    【慰謝料を請求する側】求償権を放棄させるメリット

    • 合理的に慰謝料の精算ができる
    • 後から求償される煩わしさがない

    【浮気相手側】求償権を放棄するメリット

    慰謝料の減額とセットで求償権放棄すればメリットが生じます。

    • 求償権を放棄することで慰謝料の減額が見込める
    • 慰謝料を満額支払って求償するよりも、減額してもらったほうが確実
    • 浮気問題を早期に解決できる
    • 求償に関する手間を省くことができる

    求償権を放棄させるデメリットとは

    求償権を放棄させると、示談交渉が難航したり、慰謝料の減額を求められたりする可能性があります。

    慰謝料を請求する側】求償権を放棄させるデメリット

    • 慰謝料を減額しなければならない可能性が高い

    【浮気相手側】求償権を放棄するデメリット

    • 慰謝料の減額とセットで応じなければ大きく損をする

    浮気相手としては、無条件で求償権を放棄することによるメリットはほぼありません。

    しかし、慰謝料の減額とセットであれば、求償権を放棄するメリットが大きいといえます。

    慰謝料を満額支払った後で求償すると、求償に応じてもらえず回収できないリスクがあります。

    しかし、求償権を放棄することを前提に慰謝料の減額交渉に成功すれば、減額された金額を支払うことができます。

    また、求償するためには請求文書を送付したり、交渉したりする手間もかかりますが、求償を放棄して慰謝料を減額してもらえば、求償する手間もかかりません。

    したがって、浮気相手に求償権を放棄させたい場合は、慰謝料の減額とセットで申し入れるとよいでしょう。

    不倫慰謝料の求償権放棄の手続

    不倫慰謝料の求償権放棄の手続

    以上のように、求償権放棄を上手く活用すれば、慰謝料を減額してもらう等のメリットもあります。

    求償権を放棄して慰謝料を減額してもらうためには、具体的に、以下の行程を経ていくことが必要となります。

    1.夫婦と不倫相手の三者間で和解交渉

    不倫慰謝料について求償権の放棄を合意する場合には、慰謝料を請求する被害者と、その配偶者、不倫相手の三者間で話し合うことが考えられます。

    三者間で合意することで、慰謝料の支払いや求償権の扱いをまとめて取り決められるため、示談後のトラブルを防ぎやすくなります。

    話し合いでは、主に以下の2点を整理することが重要です。

    1. 不貞行為による慰謝料の金額

    慰謝料の金額は、不貞行為の期間や回数、婚姻期間、夫婦関係への影響などを踏まえて判断されます。

    夫婦が離婚しない場合には、離婚に至った場合と比較して慰謝料が低額になる傾向がありますが、具体的な金額は事案によって異なります。

    2. 配偶者と不倫相手の責任割合

    配偶者と不倫相手が共同して不貞行為を行った場合、両者の間で最終的にどの程度の損害賠償責任を負担するかが問題となります。

    責任割合を検討する際には、以下のような事情が考慮されます。

    • 不倫相手が既婚者であることを知っていたか、または知ることができたか
    • 配偶者と不倫相手のどちらが積極的に不貞関係を始めたか
    • 不貞行為の期間や回数、関係を継続した経緯
    • 配偶者と不倫相手の関係性や立場

    ただし、責任割合は必ずしも半分ずつになるわけではありません。

    個別の事情を踏まえて判断されるため、求償権を放棄する場合には、双方の負担割合や慰謝料の金額について十分に話し合うことが重要です。

    2.和解合意書の作成・求償権放棄の明記

    不倫慰謝料について和解内容が合意できれば、その内容をすべて記載した合意書を作成します。

    合意書の作成も、浮気相手、被害者及び配偶者の三者間で行い、和解契約を締結します。

    この合意書には、求償権放棄についても明記することが必要です。

    たとえば、以下のような文言とされることが多いです。

    例)「乙(浮気相手)は、当該慰謝料に係る丙(配偶者)に対する求償権を放棄する。」

    合意書には、このほかに、浮気相手が被害者に対して不貞行為について謝罪する旨の条項や、浮気相手が配偶者に連絡や接触をすることを禁じる条項(接触禁止条項)が定められることもあります。

    さらに、浮気相手からより確実に慰謝料を回収できるよう、不履行時には強制執行を受けることを認める文言(強制執行認諾文言)を付したうえで、合意書を公正証書で作成する場合もあります。

    こうすることで、万が一慰謝料が支払われなかったとしても、強制執行によりスムーズに回収することが可能になります。

    3.和解合意書に基づき不倫慰謝料を精算

    浮気相手、被害者及び配偶者の三者が合意して合意書が作成されると、その内容は、この三者に対して拘束力を有します。

    したがって、浮気相手は、被害者に対して、合意書の中で定められた金額の不倫慰謝料を支払わなければなりません。

    他方、求償権放棄についても合意すれば、浮気相手は配偶者に対して、求償権を行使することはできなくなります。

    また、合意書の中には、合意した当事者間に、合意書に記載された以外の権利義務が一切存在しないことを確認する条項(清算条項)が置かれることがほとんどです。

    清算条項があると、あとから当事者間で追加での請求を行うことはできなくなります。

    このようにして、不倫慰謝料についての精算を一回で完了することで、短期間・一回的な解決が可能になります。

    求償権の行使は拒否できる?

    正当な求償権が成立している場合、請求を一方的に拒否することは原則として困難です。

    ただし、相手の支払額が責任割合を超えていない場合や、請求額が過大な場合は、支払いを争える可能性があります。

    求償権の有無や負担割合は、不倫を主導した側や交際の経緯などによって異なるため、請求を受けた際は弁護士へ相談しましょう。

    求償権放棄における注意点

    求償権放棄における注意点

    浮気相手に求償権を放棄させるためには、示談交渉中に求償権の放棄と慰謝料の減額を申し入れることが大切です。

    示談を締結して慰謝料を満額支払った後で、求償権の放棄に応じる人はほぼいません。

    示談交渉中に求償権の放棄と慰謝料の減額を求める場合は、浮気相手に求償権について正しく理解してもらうことが必要です。

    浮気相手が被害者に、「求償権を放棄するかわりに慰謝料の減額を認めてもらえないか」と説明すると、「慰謝料の減額」という部分だけがクローズアップされてしまい、話がまとまりにくくなります。

    被害者が、「だまされているのではないか」と疑心暗鬼になることもあります。

    さらに、求償権を放棄することを逆手にとって、相場以上に慰謝料の減額を求められるリスクもあります。

    このように、当事者同士の話し合いでは話がまとまりにくいだけでなく、トラブルが発生するおそれもあります。

    求償権を確実に放棄させたいという場合は、当事者同士で話し合うのではなく、弁護士に交渉を一任するのが得策です。

    求償権に関するご相談は東京スタートアップ法律事務所へ

    東京スタートアップ法律事務所

    不倫慰謝料における求償権を行使するか、放棄して慰謝料の減額を目指すかは、当事者間の責任割合や支払金額などによって判断が異なります。

    当事務所では、不倫慰謝料を請求された方からのご相談にも対応しています。

    請求金額の妥当性や求償権の扱いを確認したうえで、ご依頼者様のご希望に沿った解決を目指して相手方との交渉を進めます。

    また、弁護士が相手方との連絡窓口となることで、直接交渉する精神的な負担を軽減できます。

    ご家族や勤務先への影響にも配慮しながら対応いたしますので、求償権の放棄や慰謝料の減額についてお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

    東京スタートアップ法律事務所による不倫・慰謝料請求に関するトラブルの解決事例

    当事務所では、不倫慰謝料の請求や減額交渉に加え、求償権の放棄を含む示談条件の調整にも対応しています。

    ここでは、当事務所が実際に対応した3つの解決事例をご紹介します。

    事例1:300万円の慰謝料請求を50万円に減額したケース

    マッチングアプリで知り合った既婚男性との不倫が発覚し、男性の妻から300万円の慰謝料を請求された20代女性の事例です。

    ご相談者様は、交際当初、男性が既婚者であることを知りませんでしたが、既婚者と判明した後も関係を続けていました。

    当事務所の弁護士が交際の経緯や請求金額の妥当性を踏まえて交渉した結果、約1か月半で慰謝料を50万円まで減額することに成功しました。

    また、不倫相手の男性に対する求償権を放棄することを条件として、示談が成立しました。

    事例2:500万円の慰謝料請求を70万円に減額したケース

    既婚男性との不倫が発覚し、男性の妻の代理人弁護士から500万円の慰謝料を請求された40代女性の事例です。

    ご相談者様は、男性から「妻とはうまくいっておらず、離婚する予定」と説明されていました。

    当事務所の弁護士が交際に至った経緯や請求金額の妥当性を踏まえて交渉した結果、約3か月で慰謝料を70万円まで減額することに成功しました。

    求償権を放棄することを条件として合意書を作成し、解決に至りました。

    事例3:400万円の慰謝料請求を100万円に減額したケース

    同じ職場の既婚女性との不倫が発覚し、女性の夫から400万円の慰謝料を請求された20代男性の事例です。

    ご相談者様自身にも配偶者がいたため、ご家族や勤務先に知られずに解決したいというご希望がありました。

    当事務所の弁護士が請求金額や個別の事情を確認して交渉した結果、約2か月で慰謝料を100万円まで減額することに成功しました。

    また、ご相談者様の配偶者や勤務先に知られることなく、示談が成立しました。

    ※これらは個別の解決事例であり、同様の結果を保証するものではありません。

    まとめ

    まとめ

    夫婦が離婚せずに浮気相手に慰謝料を請求する場合、求償権を放棄させなければ、一度受け取った慰謝料から浮気相手に求償分を支払わなければならないという事態になりかねません。

    この事態を回避するためには、浮気相手に求償権を放棄させる必要があります。

    求償権を放棄させるためには、慰謝料の減額とセットで申し入れた上で、求償権について正しく説明する必要があります。

    求償権について正しく理解してもらえなければ示談交渉が難航して解決までに時間がかかってしまいます。

    相手に求償権を放棄させたいという方は、ご自身で対応しようとせず、男女問題の解決実績が豊富な弁護士にご相談ください。

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