脱税で逮捕されるまでの流れとは?逮捕されるタイミング、逮捕基準について解説

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記事目次
「脱税」と聞くと、自分には関係ないと思う方も多いかもしれません。
本記事では、どんな行為が脱税にあたるのか、逮捕されるのはどんな場合か、実際の事例を交えながら、調査の流れや注意すべきポイントをわかりやすく解説します。
脱税で逮捕されるタイミング
税務署による税務調査から始まり逮捕に至るまでの流れは下記のとおりです。
警察及び検察による捜査の状況と必要に応じて逮捕・勾留されます。
1 | 税務署による税務調査 |
2 | 国税局による査察調査(おおよそ60%前後) |
3 | 検察による捜査(おおよそ70%前後)) →ここで身体拘束される可能性 |
4 | 刑事裁判(おおよそ99%が有罪となる) |
5 | 刑罰(行政罰もありうる) |
査察の段階
査察とは、国税局査察部が国税反則取締法に基づく強制の調査として、臨検、捜索、差し押さえ等の権限があり、悪質な脱税を摘発することが目的の調査です。
査察の段階で逮捕されることはありません。
検察の段階
査察が行われたのち、査察部門と検察との間の協議・審査を経て、検察が告発容認とした場合には、査察部門が検察に告発し、検察による捜査が始まります。
その際、必要に応じて逮捕・勾留がなされることがあります。
逮捕勾留されるか、在宅のまま取り調べが進むかは、①逃亡のおそれがある場合、②罪証隠滅のおそれがある場合のいずれかに該当するかによります。
逮捕は48時間、勾留は10日間ですが、勾留延長されると最大20日間身体拘束されます。
在宅の場合は、検察官から呼び出しを受けて、指定された日に取り調べを受けて調書等を作成します。
通告処分の場合も
間接脱税犯の場合には、情状が悪質ではないことや資力があることを加味されて、検察官への告発が行われず、税務局長または税務署長が罰金額・追徴金の相当する金額等を通告し、期限内に納付することで刑事手続には進まないという通告処分があります。
間接脱税犯とは、租税収入の確保を目的として、外国貨物の密輸入や酒の密造などの一定行為が禁止されているにもかかわらず、許可を受けずにその行為をすることで成立する犯罪をいいます。
実際に逮捕されたケース
手数料売上を計上しなかったとして逮捕
不動産会社の社長が、取引をサポートした際の手数料収入を売上計上しない方法で、2億7500万円の所得を隠し、法人税・消費税約8600万円を脱税したとして、令和5年7月に逮捕されています。
架空外注費を計上したとして、協力者とともに逮捕
工事会社の社長が、3事業年度にわたり架空外注費を計上して、1億2900万円の所得を隠し、法人税等約3400万円を脱税したとして、令和3年7月に逮捕されています。
架空外注費を計上したとして逮捕、有罪判決
運搬会社の社長が、3事業年度にわたり架空外注費を計上して、法人税等約1億円を脱税したとして、令和3年7月に逮捕され、懲役1年6カ月、執行猶予3年、法人には2500万円の罰金の有罪判決が言い渡されています。
脱税で逮捕されるかどうかの基準
逮捕されるか否かは、①逃亡のおそれがある場合、②罪証隠滅のおそれがある場合のいずれかに該当するかによります。
逃亡の恐れがある場合とは、海外への渡航など行方をくらませる恐れがある場合です。
罪証隠滅の恐れがある場合とは、口裏合わせをする、証拠を改竄する恐れがある場合です。
また、否認していると罪証隠滅の恐れがあると判断されやすくなります。
逮捕を避けるためのポイント
まずは、任意の取調べには可能な限り応じましょう。
ただし、安易な自白をしないよう注意が必要です。専門家に相談しつつ進めるのが得策です。
次に、証拠となる物件の提出にも可能な限り協力しましょう。
捜査機関は証拠に基づいて判断するため、証拠の提出がなされているか否かによって、身体拘束の要否の判断に大きな影響を与えます。
次に、脱税していないのであれば、そのことを検察官に理解してもらう必要があります。
脱税していないことの証拠となる資料も含め十分な準備が必要です。
脱税が見つかるきっかけとは?
税務調査
国税局や税務署の通常の税務調査の過程で多額の所得の申告漏れが見つかった場合に、査察部門に資料が引き継がれます。
査察部門の調査
査察部門が独自に調査・開拓する場合があり、この場合は水面下で調査が進みます。
その他
最近は、SNS上で高額な外車や腕時計、ハイブランドの物品自慢など、ネット取引の巡回で大々的に商売をしているところから開拓する場合もあります。
また、脱税がよく行われている業種(建築・不動産・飲食・人材派遣業など)に当たりをつけて開拓する場合、垂れ込みによる発覚もあります。
査察部門による調査はどのように行われる?
内偵調査
査察部門の調査は、水面下でできるだけの資料を収集します。
例えば、法人・個人のお金の流れ、代表者の行動調査、取引先の確認や取引先の申告内容の確認をします。
強制調査
内偵調査が終わると、法人の本店、代表者の住所、特殊関係人(例えば、愛人や別居している家族等)の住所など一斉に創作して、必要な書類、データ、メール等の通信記録を押収します。
また、押収直後に、事情聴取を受けて質問応答録取書・供述録取書への署名押印を求められます。
事情聴取・供述録取書作成
査察部門は、押収した書類を精査し、複数回にわたり、法人代表者や関係者等を呼び出して事情聴取をし、供述録取書を作成していきます。
そして、犯罪行為の態様・故意について、裁判での立証する資料として供述録取書を作成していきます。
供述調書作成の際、調書を確認の上、再度に署名押印を求められます。
供述録取書への署名押印は、被疑者の権利であって義務ではないので、少しでも疑問点があれば訂正を申立てる必要があります。
また、査察部門での取り調べ段階から、検察官に事件が送致されないよう、弁護士・税理士と相談しながら、起訴を防ぎ、また起訴された場合であっても刑事裁判に向けて防御活動を行う必要があります。
脱税額の多寡、「偽りその他不正の手段」等犯行の態様がさほど悪質でないこと、故意・害意がないといった点を査察部門の手持ち証拠を予測しながら、主張、証拠提出していくことになります。
検察へ送致するかの検討
査察部門と検察との協議会での審査を経て、検察が告発容認とした場合には、査察部門が検察へ告発します。
事件は、検察に送致されます。
検察への送致
検察へ送致された後は、検察官が捜査を主導し、起訴するか否かの判断を行います。
検察による捜査はどのように行われる?
検察による在宅での取り調べ
検察官からの呼び出しを受けて、検察庁に赴いて、取り調べを受け、供述録取書に署名押印します。
なお、記載事項に誤りがあった場合や表現がおかしいと思った場合には、訂正を申し立てる必要があります。
逮捕された場合
検察官が逮捕した場合、48時間以内に取り調べの上で裁判官に10日間の勾留請求をします。
検察官は10日間の間に取り調べを行いますが、さらなる取り調べが必要と考えれば、最大10日間での勾留延長の請求をします。
なお、脱税事件の場合、捜査資料が多く、健闘が多岐にわたることや口裏合わせによる罪証隠滅の恐れが高いと判断されることから勾留延長が認められることが多いです。
起訴か不起訴の決定をする
検察官が起訴するか否かの判断を行います。
起訴の確立は、統計的には70から80%と言われております。
刑事裁判が行われる
起訴されると、刑事訴訟法では、被告人となります。
被疑者段階で勾留されている場合には、起訴後速やかに保釈請求をして、身柄拘束からの解放を目指します。
保釈されると、裁判所には、自宅(住居が指定されている場合にはその住居)から出頭することになります。
判決が出る
初犯・犯行の態様等が著しく悪質でない場合は、執行猶予のケースが多いです。
再犯の場合は高い確立で実刑です。
そもそも脱税で適用される法律・罰則とは
脱税に関する各税法
どの租税が対象になっているのかによって適用される法律が異なります。
所得税は所得税法違反、法人税の場合は法人税法違反、相続税・贈与税の場合は相続税法違反となります。
脱税による懲役や罰金
脱税の刑事罰は、適用される法律ごとに定められています。
基本的には、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその両方が科せられることが多いです。
行政処分
脱税は、行政処分を科せられることがあります。
この行政処分は、本税の納付に加えて付帯される税金を指します。
脱税によくある主な事例
売り上げを過小申告する
実際の税額よりも少ない税で申告した場合、10−15%が加算されます。
経費の水増し
不正・架空の経費を計上して実際よりも多くの経費がかかったように偽造することです。
申告しない
無申告も、10−15%が加算されます。
消費税還付の悪用
企業は、仕入れにおいては消費税を支払い、販売においては消費税を受け取る立場です。
つまり、受け取り消費税から支払い消費税を差し引いた金額を納税することになります。
この仕組みを悪用して、次のような行為が横行しています。
- 自社の社員をダミー会社から派遣された非正規社員と偽装して、ダミー会社に外注費とともに消費税を支払っていることにする。
- 架空の仕入れで支払い消費税を計上し、消費税が課税されない海外・免税店での販売を装って受け取り消費税を0にすることで納税額の圧縮や還付を受ける。
脱税を疑われた場合、弁護士相談するべき理由
自身が置かれている状況を知ることができる
弁護士に相談すれば、現状を正確に把握できるでしょう。
実際にいくらの脱税になるのか、追徴税や行政処分はどのくらいになるのか、逮捕勾留の可能性はあるのか、身体拘束された後にどうすれば良いかなど、専門的な知識と経験をもとにアドバイスを受けることができます。
身柄拘束を免れる・身柄解放される・刑の減刑が期待できる
脱税が発覚しても、必ずしも身体拘束を受けるわけではありません。
素直に不正な申告があったことを認める、またはわざと申告しなかったわけではないという状況があり、追徴税を納付することで、刑事処罰の回避を成し得ます。
脱税は故意、つまり「わざと」不正な申告・不申告をすることで成立し、事務手続き上のミスや錯誤によって未納となった場合は「申告漏れ」にあたります。
申告漏れにあたる場合は、刑事処罰を受けることはありません。
弁護士に依頼すれば、税務調査・査察調査や取り調べにおける立ち合いが可能なので、告発・逮捕・起訴を回避するために有効な弁明が可能です。
また、脱税容疑で告発され起訴されてしまった場合でも、故意に悪質な脱税をしたのではないことを具体的に証明する証拠をそろえて抗弁し、減軽を目指した弁護が可能となります。
社会的な信用失墜を防ぐことができる
脱税が引き起こすもっともおそろしいリスクは「社会的な信用の失墜」です。
特に、会社代表者の逮捕・起訴に至ってしまえば、取引先等からの会社の信用に大打撃を被ってしまい、最悪会社は倒産してしまします。
金融機関からの信用も失い、融資が受けられなくなるおそれがあるほか、代表者に前科がついてしまえば、事業種別によっては会社の各種の許認可が取り消されてしまうリスクもあります。
弁護士に依頼すれば、告発・逮捕といった社会の耳目を集めてしまう事態に発展する前にトラブルを解決を成しうるため、社会的な信用失墜を回避できることが期待できます。
まとめ
脱税は、意図的であれミスであれ、対応を誤ると大きなトラブルに発展しかねません。
突然の調査や呼び出しにも落ち着いて対応し、早めに信頼できる専門家へ相談することが大切です。
適切な対処ができれば、逮捕や裁判といった深刻な事態を回避できる可能性もあります。
もし不安を感じたら、一人で抱え込まず、早めの行動を心がけましょう。
- 得意分野
- 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件 、 遺産相続 、 交通事故
- プロフィール
- 岡山大学法学部 卒業 明治大学法科大学院 修了 弁護士登録 都内の法律事務所に所属 大手信販会社にて社内弁護士として執務 大手金融機関にて社内弁護士として執務