詐欺事件で家族が逮捕された場合の今後の流れ・示談成立によるメリットも解説
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詐欺事件で家族が逮捕された際、この先どうなるのか非常に不安だという方は多いかと思います。詐欺事件で家族が逮捕された場合、早期釈放、または不起訴処分を得て前科を回避するためにも、示談を成立させることは重要です。
今回は、詐欺罪の構成要件、法定刑や他の犯罪との関係、詐欺事件で家族が逮捕された場合の今後の流れ、早期釈放や前科回避のために示談を成立させることの重要性などについて解説します。
詐欺罪とは
刑法第37章が定める「詐欺及び恐喝の罪」の中で、詐欺罪に該当する罪は、通常の詐欺罪(刑法第246条1項2項)の他、電子計算機使用詐欺罪(刑法第246条の2)と準詐欺罪(刑法第248条)があります。
このうち、電子計算機使用詐欺罪はコンピュータに虚偽の情報を加えて不正に財産上の利益を得る行為です。準詐欺罪は未成年者または心神耗弱状態の人を騙して財物や財産上の利益を得る行為に対して成立します。
刑法第246条1項2項の詐欺罪の法定刑は、10年以下の懲役です。有罪判決が下される場合の刑の重さは被害金額の他、被害者の人数、欺く行為の回数や同一事件で他の犯罪が成立するかどうか等によって異なります。
詐欺罪の構成要件
1.詐欺行為
「詐欺」という言葉は、一般的には人から金銭を騙し取るという意味で使われていますが、刑法上の詐欺行為は人を欺いて財物を交付させ、その占有を取得し、または財産上の利益を得る行為です。したがって、ある行為が刑法上の詐欺行為にあたるといえるためには、以下の一連の事実と、それぞれの間に因果関係があることが必要になります。
- 人を欺く行為(欺罔行為)
- 相手方の錯誤
- 財産的処分行為
- 財物または利益の移転・これに基づく財産的損害の発生
1.人を欺く行為(欺罔行為)とは、相手方がその点に錯誤がなければ財産的処分をしなかったであろうという重要な事実を偽る行為です。
この点、振り込め詐欺のように「人に怪我をさせて賠償金や慰謝料を請求されている」と口頭で伝えるような行為が該当することはわかりやすいですが、単なる挙動や不作為による場合も、行為者にそのような重要な事実を偽るという認識があれば欺罔行為に該当します。例えば、いわゆる無銭飲食の場合、代金を支払う意思がないのに注文する行為が挙動による欺罔行為に該当します。
また、第三者に旅客機に搭乗させる意図を隠して自己に対する搭乗券の交付を受ける行為等は「搭乗券の交付を請求する者自身が航空機に搭乗するかどうかという、交付当事者からみて交付の判断の基礎となる重要な事項」にあたるので、欺罔行為に該当するとされています(平成22年7月29日最高裁判所決定)。
この欺罔行為によって錯誤に陥る人(被欺罔者)と、金銭を交付する等の処分行為を行う人(処分行為者)は原則として同一である必要がありますが、被欺罔者と被害者は同一である必要はありません。例えば無銭飲食の場合、被欺罔者は飲食店の店員で被害者は当該飲食店ということになります。
2.1項詐欺罪の客体「他人の財物」
刑法第246条1項の詐欺罪の客体「他人の財物」は、原則として他人の所持する他人の財物です。ただし、自己の財物でも他人の占有に属し、または公務所の命により他人が看守するものであるときは他人の財物とみなされます(刑法第251条,242条)。不動産も含まれるほか(大判大正12年11月12日など)、電気も財物とみなされます(刑法第251条,245条)。
3.2項詐欺罪の客体「財産上不法の利益」
刑法第246条2項の詐欺罪の客体「財産上不法の利益」とは、財物以外の財産的利益をいいます。「財産的利益」は具体的には、被害者に債務を負担させたり、代金の支払いを免れたりすることや、サービスを提供させること等です。
4.「交付させた」「利益を得た」の意味
刑法第246条1項の「交付させた」、2項の「利益を得た」は欺罔行為によって被欺罔者が財物または財産上の利益を移転させた(処分行為を行った)という意味です。処分行為が存在することが、意思に反して財物を奪取する窃盗罪(刑法第235条)との明確な違いです。
この処分行為があったと認められるためには、被欺罔者の処分意思(財物の占有または利益の移転と、その結果とを認識すること)が必要です。たとえば、幼児を騙して金銭を奪う行為は1項詐欺罪ではなく窃盗罪にあたります。
また、処分行為は処分権限を持つ者だけが行いうるものです。例えば、ホテルでボーイに対して他人の荷物を自分の荷物と偽って持ってこさせる行為は、ボーイにその荷物に対する処分権限がないので1項詐欺罪は成立せず、ボーイを利用した窃盗罪が成立します。
詐欺罪の法定刑・他の犯罪との関係
1.同一の被害者に対する振り込め詐欺の場合
同一の被害者に対して数回行われた振り込め詐欺の場合、単一の犯意で遂行されたと認められる限り、複数の詐欺罪の併合罪(刑法第45条)ではなく1個の詐欺罪が成立します(判例)。ただし、数回に渡り被害者を欺罔して金銭を交付させている点で犯情が重くなります。
2.不特定多数の通行人に対する街頭募金詐欺の場合
不特定多数の通行人に対して一定期間行った街頭募金詐欺の場合、被害者が多数存在することや被害者が金銭を募金箱に入れる行為が多数回に渡っていることから、詐欺罪の個数(罪数)評価が問題となります。
判例は、不特定多数の通行人一般に対して一括して同一内容の定型的な働きかけを行って寄付を募るという街頭募金行為の特性に鑑みて、「一個の意思・企図に基づき継続して行われた活動」であるとして、一括して1個の詐欺罪が成立するとしました(平成22年3月17日最高裁判所決定)。
なお、本件では事情を知らない募金活動員多数を配置し、「難病の子供たちの支援」を装いその趣旨を立て看板に掲示させ、約2か月間募金活動を行わせて合計2,480万円を騙し取ったという行為に対し、最高裁判所は罪数の評価を併合罪ではなく包括一罪としつつ、下級審が下した懲役5年・罰金200万円の判決を支持しました。
3.盗んだ預金通帳で預金払い戻しを受ける行為
盗んだ預金通帳で預金払い戻しを受ける行為の場合は、預金通帳を盗む行為に対して窃盗罪(刑法第235条)、預金通帳で預金の払い戻しを受ける行為に対して1項詐欺罪が成立し、両者は併合罪(同法第45条)となります(判例)。窃盗罪と詐欺罪の併合罪の場合、罰金刑のない詐欺罪の方を重い罪として、詐欺罪の刑の長期の1.5倍の長さの刑を長期として処断します(同法第47条)。
詐欺事件で家族が逮捕された場合の今後の流れ
詐欺罪により被疑者が逮捕される場合には、現行犯逮捕(刑事訴訟法第213条)と通常逮捕(逮捕状による逮捕・同法第199条)があります。
詐欺事件では被害者が騙されたことに気づいてから被害届を出して警察が捜査を開始するというケースが多いです。しかし、近年問題になっている振り込め詐欺の場合のように、詐欺行為が行われようとしていることに周囲の人が気付いて現行犯逮捕する場合もあります。
1.現行犯逮捕の場合
現行犯で逮捕された場合(刑事訴訟法第213条)の手続の流れは以下のようになります。
①捜査機関(警察)への引き渡し
私人が現行犯人を逮捕した場合は、直ちに捜査機関(検察官もしくは司法警察職員、通常は後者)に引き渡す必要があります(同法第214条)。
②被疑者取調べ・送検・勾留の決定
逮捕された被疑者に対しては警察官(司法警察員、刑事訴訟法第202条)が取り調べを行い、逮捕理由とともに弁護人をつける権利(憲法第37条3項、刑事訴訟法第30条以下)を告知します。
警察は被疑者を拘束してから、留置の必要がないと判断した場合は直ちに被疑者を釈放し、必要があると認める場合は48時間以内に検察官に送致します(刑事訴訟法第203条1項)。
送検された場合、検察官は留置の必要があると認める場合は被疑者を受け取った時から24時間以内に裁判官に対して勾留請求し、必要がないと判断した場合は直ちに被疑者を釈放します(同法第205条1項)。
被疑者拘束から検察官の勾留請求までの72時間の間は、被疑者は弁護人以外と会うこと(接見)ができません。なお、この段階で被疑者と接見することができる弁護人は被疑者またはその家族等の依頼を受けた私選弁護士または当番弁護士(当番弁護士としての無料の接見は1回のみ可能)に限られます。
裁判官が勾留を認めた場合、勾留期間は勾留請求した日から10日間です(同法第208条1項)。また、検察官が勾留延長を請求したときは、裁判官はやむをえない事情があると認める場合、さらに10日間までの延長を認めます(同法第208条2項)。したがって、勾留期間は最大で20日間です。
被疑者が勾留されずに釈放された場合は在宅で捜査が続きます。
また、被疑者を勾留するかしないかにかかわらず、被害者や目撃者に対しても取調べが行われるとともに、裁判所が検察官の請求により捜索差押令状を発行した場合は被疑者の家宅捜索・差押が行われます。(憲法第35条2項、刑事訴訟法第218条1項)
③勾留
勾留中は検察官による取調べが行われます。被疑者が経済的事情その他の理由によって弁護人を選任することができない場合は、裁判官によって国選弁護人が選任されます(刑事訴訟法第37条の2)。
④起訴・不起訴
勾留期間中または在宅での捜査中に検察官は被疑者の起訴・不起訴の処分を決定します。
不起訴処分(刑事訴訟法第248条)が決定された場合、捜査手続は終了し、被疑者は釈放されます。
起訴する場合(同法第247条)、検察官は地方裁判所に対して正式公判請求を行います。
⑤正式裁判の公判手続
被疑者が起訴された場合、地方裁判所の公開の法廷(公判廷、刑事訴訟法第282条第1項)で公判手続が行われます。
なお、起訴された被告人は刑事訴訟法第60条の要件を満たす場合に、公訴提起から2か月の間、裁判所により勾留されます(決定により延長可能)。
しかし、被告人は逮捕以来長期にわたり勾留されているため、健康状態が悪化するおそれや経済・社会生活上の不利益を被る程度が大きいので、本人や弁護士、家族など、一定の保釈請求権者による保釈請求が認められています(刑事訴訟法第88条)。保釈は、同法第89条または第90条で定める要件を満たす場合に、保釈請求者または裁判所が認めるそれ以外の者による保証金納付が行われることを条件に認められます。
なお、詐欺罪の場合(電子計算機詐欺罪、準詐欺罪も含む)、法定刑が懲役刑のみであるため、罰金刑以下の刑を適用する場合に行われる略式手続は行われません。
2.通常逮捕の場合
現行犯以外の場合は、警察が裁判所に逮捕状を請求し、逮捕の理由と必要性が認められれば裁判所の発行する逮捕状(刑事訴訟法第199条1項)による逮捕が行われます。
逮捕の必要性は、前述した通り、被疑者が逃亡するおそれや罪証を隠滅するおそれがある場合に認められます。このため、被疑者の住所が明らかで証拠隠滅のおそれもない場合には逮捕の必要性がなく、在宅のまま取調べ等の手続が行われます。
逮捕状が発行されて被疑者が逮捕された場合のその後の手続は現行犯逮捕の場合と同じです。
早期釈放や前科回避のための示談の重要性
詐欺罪容疑で逮捕された被疑者が被疑事実を認める場合、被疑者側の家族は弁護士に相談すれば被害者側に対して早急に示談交渉を申し入れることができます。示談交渉を円滑に進め、早期に成立させることは被疑者(加害者)にとってだけでなく、被害者側にとっても大きなメリットがあります。
1.被疑者側のメリット
被疑者にとっては、示談成立により、勾留や勾留延長を免れる可能性や、不起訴処分や執行猶予付き判決を得られる可能性が高くなるという大きなメリットがあります。また、民事上の債権債務関係が清算されることから、損害賠償請求訴訟を起こされるリスクがなくなります。
2.被害者側のメリット
被害者側にとっても、示談成立により早期に被害金額を取り戻すことができることや、公判への出席や民事の損害賠償請求訴訟を提起する手間や弁護士費用等がかからずに済むというメリットがあります。
3.詐欺事件の示談金の相場
詐欺罪の示談金は、実際に生じた金銭的損害に対する賠償金(民法第709条)、被害者が受けた精神的苦痛に対する慰謝料(同法第710条)等を合計して算定します。ただし、詐欺事件の場合、通常、財産以外の可視的な損害は生じないため、慰謝料の数値化は難しく、示談金の中に慰謝料を明確に算定しない場合もあります。また、同一の被害者に対して繰り返し金銭を騙し取る等の行為の悪質性や、加害者の社会的地位が高い等の要因によって示談金が増額請求される場合があります。
詐欺事件の弁護士費用の相場
詐欺事件で逮捕されてから弁護士を依頼した場合、費用については被疑事実の内容(被害金額等)や、被疑者が事実を認めるか否認するか等によって異なります。
1.弁護士費用の相場
法律事務所によって報酬体系が異なりますが、相場の目安は以下の通りです。
- 正式依頼前の接見費用:5~10万円程度
- 着手金:30万円程度
- 成功報酬:30万円程度
一般的に、被疑者が無実を主張する場合(否認事件)は報酬額が加算されます。
また、正式依頼前の接見費用を初回は何万円、その後1回ごとに何万円という形で追加請求するケース、接見費用を高めに設定する代わりに回数ごとの追加請求をしないケースもあります。
分割払いについても法律事務所により対応が異なりますが、柔軟に対応している法律事務所も多いかと思います。費用・支払いに関する相談は、初回の相談で行うことができます。
2.弁護士費用を抑える方法
料金設定は必ずしも詐欺事件の実績に比例して高くなるわけではなく、その事務所が豊富な実績を持つ事件についてはノウハウが確立していてかえって安く設定されている場合もあります。また、やはり詐欺事件での早期釈放・執行猶予判決の実績が大きい事務所ほど、費用が発生する弁護活動が短期で終了して被疑者に有利な処分を得られる可能性が高くなるので、報酬体系と詐欺事件に対する実績とを総合的に判断することが費用を抑える上でも重要です。
3.弁護士費用の支払いが厳しい場合
分割払いでも弁護士費用を支払うことが難しい場合、日本弁護士連合会の刑事被疑者弁護援助制度の利用を申請するという方法があります。刑事被疑者弁護援助制度は、逮捕された被疑者が勾留される前の段階に限って、経済的事情により私選弁護士を依頼できない場合に、弁護士会が費用を立て替え払いして私選弁護士を選任する制度です。
この制度を利用した場合は後で費用を支払う必要がありますが、資力がない場合は免除されることもあります。
まとめ
今回は、詐欺罪の構成要件、法定刑や他の犯罪との関係、詐欺事件で家族が逮捕された場合の今後の流れ、早期釈放や前科回避のために示談を成立させることの重要性などについて解説しました。
詐欺事件で逮捕された被疑者の早期釈放、あるいは不起訴処分を得て前科回避する上で示談を成立させることが重要です。被害者にとっても、示談成立により早期に被害金額を取り戻せることや、公判出席・民事訴訟の負担を回避できるメリットがあります。
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