示談金を払ったのに起訴される?示談の意味や起訴される恐れがあるケースを解説

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昨今、芸能人が被害者と示談をして不起訴になった、などというニュースが流れているとおり、「示談」は刑事事件において一つの重要なポイントとされています。
また、たとえ有罪とされても、示談が成立していることから執行猶予判決がなされることもあります。
しかし、示談が成立していたとしても起訴されることや有罪になるリスクもあります。
以下において、示談の効果などについて解説します。
刑事事件における示談とは?
示談とは、加害者と被害者との間で締結する「民事的な解決」という意味合いを有しています。
一方で、民事的な解決であっても、示談の成立していることは刑事事件に対しても大きな影響があります。
そもそも示談とは
そもそも示談とは、上記のとおり、「民事的な」解決を図るものです。
加害者と被害者が本件について条件を出し合い、お互いにその条件で合意できるのであれば示談成立となり、本件の解決を図るというものです。
例えば、被害者が加害者によってケガを負ってしまった場合、治療費と慰謝料を合わせて50万円で解決することで加害者と被害者が合意するというパターンなどがあります。
刑事事件における示談の効果
示談は民事的な解決ということを説明しましたが、刑事事件に対して大きな影響があります。
通常、示談となると、被害届の取り下げや「許す」という文言も入れて示談することとなります。
すなわち、被害者が本件について加害者を許しているということが明らかとなりますので、警察や検察にとっても、処分を下す際に考慮せざるを得ない状況になります。
示談の効果として、捜査の終結、逮捕勾留からの釈放、不起訴処分、刑罰の軽減というものが考えられます。
示談交渉に失敗するリスク
示談はお互いの合意によって成立するものですので、被害者の被害感情が高いことなどで被害者の納得を得られず、示談が不成立となるケースは珍しくありません。
示談が失敗となると以下のような展開が考えられます。
①被害届が取り下げられない
示談が成立となる際、被害届の取下げも盛り込むことが一般的となります。
通常、被害届が取り下げられることで、被害者による処罰感情がないものとして扱われ、不起訴処分となる可能性は高くなります。
しかし、示談が不成立となれば被害届の取下げも実現できず、被害者の処罰感情は高いものであるとして、検察官としても起訴する方向で事件を処理することが考えられます。
②検察官が起訴に踏み切る可能性が高くなる
示談が成立している場合、それにもかかわらず検察官が起訴することとなれば、示談が成立して事件を終結することを望んだ被害者を法廷に呼び出すという可能性が発生します。
その可能性を避けるため、示談が成立した場合、検察官としては基本的に不起訴にする方向に傾くこととなります。
一方で、示談が成立していないということは被害者の処罰感情は維持されていると考えられるため、検察官としては事案が極めて軽微であってり、証拠が全くないなどの事情がなければ、起訴に踏み切る可能性が高いものと思われます。
③裁判官が厳しい量刑を言い渡す可能性が高くなる
示談が成立した場合、被害者が処罰を望んでいないということだけでなく、犯罪によって生み出された結果が民事的な賠償によって回復しているとも考えられます。
その二つの観点からすれば、示談をしたということは刑事処罰を軽くする方向に働きます。
一方で示談をしていないということは、基本的に犯罪結果の回復はされておらず、上記のとおり被害者の被害感情もあるということにもつながり、厳しい刑事処罰を受ける可能性は高まるものと考えられます。
示談が成立したのに起訴されるケース
上記のとおり、刑事事件においては示談が重要ですが、示談ができたからといって必ず不起訴処分になるわけではありません。
以下の理由により検察官が起訴に踏み切る可能性は残ります。
1.犯罪が重大な場合
犯罪が重大の場合、たとえ当事者間で示談が成立していようとも、社会的に許されるものではないということで起訴になるケースはあります。
また、当事者間で示談が成立していたとしても、法律によって守ろうとしている利益が個人的な法益(人の体や命)ではなく、社会的法益(世の中の風俗や安全に暮らせる社会)の場合は、示談が成立しているということが検察官としての基礎の判断に影響を及ぼさないというケースもあるので注意が必要です。
例えば、不同意わいせつ(刑法176条)の保護法益は性的自由という個人的法益ですが、迷惑防止条例違反などは社会的法益も含んでいるとも解されるため、たとえ当事者間で示談ができても起訴されるというケースがあります。
2.前科・前歴がある場合
前科前歴がある場合、たとえ今回において示談が成立して、被害者が許していたとしても、何らかの処罰を与えなければ再犯のおそれがある等とも考えられるため、起訴となる場合があります。
前科前歴がある場合には、示談が成立していることだけでなく、前回より時間が経過しており本件において考慮すべきでないことや、同種の前科ではないことなども主張するなどして不起訴を目指す必要があります。
3.社会的な影響が大きいケース
示談が成立していたとしても、「今回のケースを処罰しなければ国民の理解を得られない」などと考えられるケースなどでは、起訴をするという場合もあります。
量刑上も社会的な影響を及ぼしたことが考慮されることもあるので、決して可能性として低いものではありません。
例えば、著名人が罪を犯した場合や、処罰しなければ他の人も同じようなことをやってしまうようになるかもという場合などが考えられます。
不起訴につなげる示談交渉のポイント
検察官において、示談の成立の有無は起訴不起訴の判断に大きな影響があるといえるので、以下において示談交渉の際のポイントを挙げていきます。
被害の回復がなされているか
基本的に被害者は、受けた被害を回復してほしいと願います。
精神的苦痛があれば慰謝料によって賠償してほしいと考えるでしょう。
そして、それらの慰謝料等を支払うことで被害の回復が行われたと考えられます。
したがって、被害の回復ができるのか、できるとしてどの程度の慰謝料等で回復ができるのかはよく検討したほうがよいでしょう。
被害者が宥恕の意思を示しているか
慰謝料等を支払って「被害弁償」がなされたとしても、依然として処罰感情があり、起訴されたときに検察側に協力するという意思があれば、起訴される可能性は残ります。
そのため、示談の際は、「宥恕する=許す」という意思を示したものとして、示談書において被害者が加害者を宥恕する旨の文言を入れるべきであるといえます。
被害届の取り下げが約束されているか
上記のとおり、被害届が取り下げられていれば、被害者の処罰感情がないものとして考慮される可能性が高いため、示談の際は被害届の取り下げも同時にお願いすることが望ましいといえます。
そのため、示談書においても、「示談の締結がなされたら被害届を取り下げる」ということも明記しておくべきといえます。
合意内容が書面化されているか
厳密にいうと、示談は口頭でも有効です。
しかし、どのような内容で示談をしたのか等、口頭でははっきりしない部分も多いです。
また、検察官や裁判官に示談が成立していることを証明する際、示談書でないと信用することができないと思われる可能性が高いと考えられます。
そのため、示談をする際は、合意内容を書面化し、双方の記名・押印を施すべきであるといえます。
まとめ
刑事事件において示談が非常に大切なポイントであることはご理解いただけたと思います。
一方で、当事者間で示談をすることは罪証隠滅の危険などから困難なケースがほとんどです。
そのため、しっかりと被害者との間で示談をしたいと考えるのであれば、弁護人として弁護士を就けることが必要であり、示談の経験が豊富な弁護士を依頼すべきでしょう。
東京スタートアップ法律事務所では、多くの刑事事件を解決実績がありますので、示談をご検討の際はお気軽にご連絡ください。
- 得意分野
- 契約法務 、 人事・労務問題 、 紛争解決 、 債権回収 、 不貞慰謝料 、 離婚 、 刑事事件 、 遺産相続 、 交通事故
- プロフィール
- 東京都出身 青山学院大学法学部 卒業 都立大学法科大学院 修了