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投稿日: 弁護士 日野 卓郎

窃盗罪の重さはどのくらい?懲役・罰金の相場や軽くする方法を解説

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窃盗罪の刑罰の種類

窃盗罪の刑罰は、刑法235条に規定されており、「10年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」と定められています。

1. 懲役

懲役刑とは、犯罪者に対して法的な制裁として科される刑罰の一種です。

罪を犯した者が刑事裁判で罪を問われ、裁判官から有罪判決を受けて懲役刑を科されると、被告人は、刑事施設(主には刑務所)に身柄を拘束されて所定の作業に従事することになります(刑法12条参照)。

また、懲役刑には、期限を定めず刑事施設に身柄を拘束される「無期懲役」と期限を定めて刑事施設に身柄を拘束される「有期懲役」の二種類があり、窃盗罪の場合は刑法235条に「10年以下の懲役」と定められていることから、有期懲役の刑が科されることになります。

なお、具体的に何年間の懲役刑に服するかは、窃盗罪に問われた事案の重大性によって異なります。

2. 罰金

罰金刑とは、懲役刑と同様、犯罪者に対して法的な制裁として科される刑罰の一種です。

罪を犯した者が、金銭的な支払いをもって制裁を受ける処分です。

罰金刑が科される場合、原則として、その金額は1万円以上とされており(刑法15条本文)、1万円未満の金銭的支払いにより制裁を科す科料処分(刑法17条)とは明確に区別されています。

窃盗罪の場合、刑法235条に「50万円以下の罰金」を科す旨が定められています。

その為、窃盗罪を犯した者は、1万円から50万円の範囲内で、罰金刑を科される可能性があります。

なお、刑法235条が「10年以下の懲役『又は』50万円以下の罰金に処する。」と定めていることからも、窃盗罪だけが成立する事案において、懲役刑と罰金刑が一緒に科される(併科といいます。)ことはありません。

3. 禁錮は定められていない

懲役刑と似た刑罰に「禁錮」という刑罰があります(刑法13条参照)。

禁錮刑が科せられると、懲役刑と同様、無期または一定の期間、刑事施設に身柄が拘束されてしまいます。

しかし、懲役刑と違って、受刑者は刑事施設で所定の作業に服する義務を負いません。その為、原則として、禁錮刑は懲役刑よりも軽い刑罰であるとされています(刑法10条参照)。

既に述べた通り、窃盗罪を定める刑法235条には、禁錮刑に処すると定められていません。

また、日本の刑法では、罪刑法定主義(=法律の規定なくして犯罪が成立せず、刑罰も科せられない原則)が採用されていることから、裁判官の任意の判断で禁錮刑が科せられることもありません。

その為、窃盗罪を犯した者(禁錮刑が定められている犯罪も犯した場合を除く)に対しては、禁錮刑が科されることはありません。

そもそも窃盗罪の定義とは

窃盗罪とは、他人の財物を盗む(=刑法上、窃取するといいます)犯罪です。

その検討にあたっては、①他人の財物であること、及び、②窃取行為があることの2点が重要です。

1. 「他人の財物」とは

「他人の財物」とは、「他人の占有する財物」であると考えるのが、判例及び多数説の考え方です。

その結果、例えば、他人から預かった物を盗んだ場合にも、窃盗罪は成立することになります。

なお、ここに言う「他人」には、個人はもちろん法人など会社も含まれます。

また、刑法235条では「財物」と規定されていますが、電気やガスなど具体的に形がない物についても他人の財物として扱われる可能性があります。

特に、電気については「財物」とみなす旨の規定が刑法に定められており(刑法245条)、他人の家の電気を無断で利用する行為をすると、窃盗罪が成立する可能性があります。

2. 「窃取」とは

「他人の財物」を「他人の占有する財物」と定義することを前提とすると、「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物(財物)を自己または第三者の占有に移すことを指します。

その為、占有者が自分の意思で任意に、財物の占有を自己または第三者に移した場合には、窃盗罪は成立しません。

他方、窃取行為の方法・手段に制限はなく、占有者を騙すような手段であったとしても、占有者の意思に反して財物の占有を取得すれば窃盗罪が成立し得ることになります。

3. 万引きも窃盗罪に該当する?

「万引き」とは、お店や商業施設等において、買い物客を装って代金を支払わずに無断で商品を持ち去る行為を指します。

既にご紹介した通り、窃盗罪とは、他人の財物の占有を、他人の意思に反して自己または第三者に移す犯罪です。

そして、「他人」には個人はもちろん、お店や商業施設等の法人(会社)も含まれます。

また、お店や商業施設等で販売されている商品は、代金の対価として提供されるものですから、代金を支払わずに商品を店舗外へ持ち出す(=占有を移転する)行為を、お店側が許すことは通常あり得ません。

そうなりますと、万引きに該当する行為は、窃盗罪における窃取行為に該当するといえます。

したがって、万引きも窃盗罪に該当します。

4. 窃盗罪は未遂でも刑罰がある?

そもそも未遂犯とは、犯罪の実行に着手したけれども、犯罪行為を完遂しなかった(=結果が発生しなかった)犯罪類型を指します(刑法43条本文参照)。

日本の刑法では、全ての犯罪について未遂犯が成立する訳ではなく、未遂犯を処罰する旨の規定がある場合にのみ、当該犯罪の未遂罪が成立し、刑罰が科される定めになっています(刑法44条参照)。

そして、窃盗罪においては、刑法243条において「刑法235条~の罪の未遂は、罰する。」と定められており、窃盗罪の未遂犯を処罰する旨の規定が存在します。

したがって、窃盗罪は未遂でも刑罰が科される可能性があります。

具体的には、未遂犯が成立すると「その刑を減軽することができる。」(刑法43条本文)と定められており、裁判官の任意の判断で、法定刑の上限と下限が半減されます。

5. 窃盗罪の時効は?

窃盗罪の時効を考えるに当たり、刑事事件・民事事件という2つの事件の観点から考える必要があります。

そして、刑事事件としての時効とは、公訴時効(=犯人を起訴して処罰することが出来る期間)を指し、窃盗罪の公訴時効は、窃取行為が終わった時から7年と規定されています(刑事訴訟法250条2項4号参照)。

また、民事事件としての時効とは、消滅時効(=一定期間権利が行使されない場合に権利を消滅させる制度)が重要であり、窃盗を働く行為は民法上、不法行為(民法709条)に該当するところ、「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年」または「不法行為の時から20年」で消滅時効が成立します。

窃盗剤の量刑はどのようにして決まるのか

窃盗罪の刑罰には懲役刑と罰金刑が定められており、その量刑は「10年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」の範囲で決まります。

窃盗罪の量刑は、刑事裁判(公判)の場において、立証責任を負う検察官が、様々な視点から事件の重大性を訴えて被告人の責任を追及する一方(=検察官は、裁判手続きの最終段階で、「被告人を懲役5年に処すべきです」旨の求刑意見も述べます)、弁護人も様々な視点から被告人の責任が軽減されるべきである旨を訴え(=具体的には、「被告人には執行猶予付判決が妥当です」などといった主張を行います)、裁判官が検察官・弁護人双方の言い分を聞き、証拠を吟味した上で確定します。

このような主張は、法的知識に乏しい被告人からすると困難であるため、一見、量刑とは何ら関係のなさそうな事情であったとしても、被告人は、自身の弁護人に対して記憶の限りなるべく正確に事実関係を説明すべきです。

そして、窃盗罪の量刑において考慮される事情は様々ですが、以下にその一例をご紹介したいと思います。

考慮される事情の例

窃盗罪の量刑を決めるに当たり、主に以下の事情が考慮されます。

  1. 被害弁償の有無
  2. 被害金額の程度
  3. 犯行の動機・計画性
  4. 反省の態度(認否)
  5. 前科前歴の有無

上記事情のうち、特に重要なのが①被害弁償の有無です。

窃盗罪は財産犯(=他人の財産を害する犯罪のこと)であることから、被害者に対する被害弁償が済み、示談を成立させることが出来れば、被告人の刑罰を軽減する情状事情になり得ます。

 

窃盗罪で科される刑罰の相場【ケース別】

次に、窃盗罪で科される刑罰の相場をケース別にご紹介します。

1. 被害弁償が済んでいる場合

被害者への被害弁償が済み、被害者との間で示談が締結されている場合、不起訴処分となる可能性が高まります。

窃盗罪は財産犯であり、被害者のいる犯罪でもあるところ、その被害を回復したとなれば、検察官としてもこれ以上、被疑者に刑罰を科して責任を追及する必要がなくなるからです。

もっとも、被害弁償をすれば全ての事案において不起訴となるわけではありません。

後程も述べますように、被疑者が過去に何度も窃盗を繰り返しているような事案や、他人の住居に侵入して盗みを働くといった、他の犯罪も成立するような重大事案の場合、余罪がある場合などは起訴(略式起訴を含む)されてしまう場合があるので注意が必要です。

2. 初犯である場合

窃盗罪は、繰り返し行われることの多い性質の犯罪です(=常習性のある犯罪と言ったりします)。

そして、当然のことですが、窃盗罪を繰り返し行えば行うほど、被疑者(被告人)に科される刑罰も重くなる傾向にあります。

具体的には、略式起訴による罰金刑を科されたり、起訴されて執行猶予が付かない可能性も生じてしまいます。

他方、初めて窃盗を働いたというような場合には、刑罰が軽く済む可能性が高まります。

もっとも、被疑者(被告人)に科される刑罰の相場は、初犯か否かだけで決められるわけではありません。

特に、既に述べた被害弁償の有無が重要であり、初犯で被害弁償も済んでいるような場合には、不起訴の可能性が大きく高まります。

3. 重大・悪質な事案である場合

そもそも、窃盗罪における「重大」または「悪質」な事案の典型例としては、窃盗の被害が高額である場合です。

この場合、被害者への被害弁償が困難となる可能性が高まることも相まって、(略式)起訴の可能性が高まることになります。

また、窃盗行為の内容が巧妙かつ組織的・計画的犯行と評価されてしまったような場合にも、悪質な窃盗事案として扱われて、被害者に対する被害弁償が済んだとしても、不起訴とならない可能性が高まる傾向にあります。

事案の重大性や悪質性だけで、窃盗罪の刑罰の内容(不起訴も含めて)が決まるわけではありませんが、重要な考慮要素の1つに位置付けられるということが出来ます。

4. 余罪がある場合

窃盗罪以外の罪を犯している場合、その犯罪の性質を見極めた上で、その罪の被害弁償まで済んでいなければ(略式)起訴の可能性が高まるといえます。

窃盗事案においてよく認められる余罪の1つに、住居侵入罪が挙げられます(刑法130条)。

住居侵入罪は、住居を管理する者の意思に反した不当な立ち入りを罰する犯罪であり、他人の住居に侵入して窃盗を働いたような場合に、余罪として住居侵入罪についても責任を追及される可能性があります。

この場合においても、被害者への被害弁償と示談の締結が最重要事項となりますが、窃盗の被害だけでなく、住居侵入の被害についても被害弁償・示談をするべきであることに注意が必要です。

窃盗罪の刑罰減軽に弁護士が必要な理由

次に、窃盗罪の刑罰減刑に弁護士が必要な理由を、以下の2つの視点からご説明します。

1. 被害者との示談交渉

窃盗罪の刑罰を減刑するには、被害者への被害弁償と示談の締結が最も重要です。

しかし、被害者は、被疑者(被告人)と接触したくない・被疑者(被告人)を厳しく処罰して欲しいと考える方もいるため、被疑者(被告人)独自での示談交渉は困難を極めます。

また、被害者の身元が分からない場合などは、弁護士がいなければそもそも捜査機関から被害者の連絡先を教えてもらうことすら出来ません。

弁護士が、被疑者(被告人)の代理人となれば、被害者への被害弁償と示談の交渉がスムーズに進められます。

また、示談成立の際に作成する示談書は、被害者との間で示談が成立したことを証明する重要な証拠にもなるところ、法律の専門家である弁護士が作成をすべきものといえます。

以上のような事情から、被害者との示談交渉には、弁護士による対応が必須と言ってよい程に重要です。

2. 起訴後の弁護活動

仮に窃盗罪で起訴されてしまったとしても、弁護士による弁護活動によって刑罰の減刑が出来る可能性はあります。

そもそも、刑事裁判は、弁護士が被告人の弁護をすることが必須とされています。

そして、弁護士が、起訴された窃盗事件について、被告人にとって有利な事情を法的に整理した上で主張をしたり、被告人を重く処罰すべきでない事情を証明する証拠を収集・提出することで、検察官が求める刑罰よりも減軽された処分が認められる可能性があります。

また、刑事裁判では、被告人が裁判官の面前で事件の概要や言い分を述べる機会があります(被告人質問といいます)。

その内容も、裁判官が最終的な処分を決める要素の1つになります。

その為、被告人が、事前に、弁護士から被告人質問に臨むにあたってのアドバイスを受けておくことで、被告人は減刑につながる事情や言い分を漏れなく述べることが出来るようになります。

 

窃盗事件は弁護士に相談するのがおすすめ

以上の通り、窃盗罪といってもその内容は多種多様であり、刑罰の内容も決して軽微とはいえません。

また、被害金額が大きい場合や、常習的な犯行であると認められてしまうと、被疑者の段階から長期の身柄拘束を強いられてしまい、被疑者(被告人)は大変な心身の苦痛を強いられる可能性が高まります。

被疑者(被告人)の刑事裁判の弁護だけでなく、被疑者段階からの早期の身柄解放という観点からも、ご自身やご家族、ご友人が刑事事件に巻き込まれた場合は、一刻も早く弁護士に相談されることをお勧めします。

刑事事件は、被疑者(被告人)に重大な影響を及ぼす可能性があるため、自分自身だけで解決することはお勧め出来ません。

弁護士に相談し、法的助言を受けることは、被疑者(被告人)の権利保護につながることを理解することが非常に重要です。

まとめ

窃盗罪は決して軽微な犯罪とはいえません。

また、弁護士の協力を得て出来る活動が多々あることから、窃盗罪の嫌疑をかけられた場合は、速やかに弁護士に相談することを強くお勧めします。

この点、我々、東京スタートアップ法律事務所は、刑事事件に精通しており、高い専門性と豊富な経験を生かして、ご依頼者様の権利保護のために全力を尽くしてサポート致しますので、まずはお気軽にご相談頂けますと幸いです。

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執筆者 弁護士日野 卓郎 静岡弁護士会 登録番号61873
相手の話をよく聞き何を求められているのか正確に理解すること、迅速に対応すること、平易な言葉で分かりやすい説明を心掛けることを大切にしています。 「日野に相談してよかった」と思って頂けるよう、全力で取り組ませて頂きます。
得意分野
一般民事(特に慰謝料請求・被請求)、刑事事件、企業法務 等
プロフィール
神奈川県出身
慶應義塾大学法学部 卒業
大手自動車部品メーカー勤務
弁護士登録
東京スタートアップ法律事務所 入所

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