親権争いで母親が負ける場合はある?経済力は影響する?判断基準を徹底解説

全国20拠点以上!安心の全国対応
60分3,300円(税込)
離婚とあわせて不貞慰謝料でも
お悩みの場合は無料相談となります
※
※
記事目次
離婚の際に必ず決めなければならない重要な事項のひとつが「親権」です。
これまでは、日本では母親が親権を得るケースが多い傾向にありましたが、近年はライフスタイルの多様化や父親の育児参加の増加に伴い、父親に親権が認められる事例も確実に増えてきています。
では、どのような事情や証拠があると母親が親権争いで不利になり、父親に親権が渡るのでしょうか。また、経済力や離婚原因といった要素は、実際の親権判断にどの程度影響するのでしょうか。
本記事では、親権の基本的な仕組みから、母親が親権を得られない典型的なケース、裁判所が重視する判断基準、最後に争う際の注意点までを徹底的に解説します。
そもそも親権とは?
親権とは、未成年の子どもを養育し、その生活や教育に関する重要な決定を行う権利であり、同時に義務でもあります。
親権には「身上監護権」と「財産管理権」があり、日常生活の世話や教育方針の決定、財産の管理などが含まれます。これらは単なる法律上の地位ではなく、裁判所は、常に子どもの利益と福祉を最優先にして親権者を決定します。
民法の改正以前は離婚後の親の一方に親権を認めていましたが、法改正で共同親権が認められるようになり、2026年5月までに改正民法が施行されます。
親権を決める方法
離婚時の親権は、まず父母間の話し合い(協議)によって決定します。
協議がまとまらない場合、家庭裁判所に調停を申し立て話し合いを行います。
それでも合意に至らなければ、最終的に審判で裁判所が判断します。
裁判所は、子どもの年齢や性別、これまでの養育環境、親の心身の健康状態、経済的基盤など、多角的な要素を総合的に考慮し、子どもの福祉と将来の安定に最も適うと判断される親を、親権者として指定します。
親権争いで母親が負ける場合
母親が親権争いで敗れるのは珍しくありません。
裁判所は「子どもの利益」を最優先に判断します。
特に、子どもの利益を害する行動や、安定した養育環境を提供できない場合には父親が選ばれることがあります。
Case 1:母親が長期間にわたり子どもと別居していた場合
母親が長期間にわたり子どもと別居していた場合、父親が一貫して養育してきた事実が重視されます。
子どもが現状に安定を感じている場合、環境を変えることは子の福祉に反すると判断されやすく、また、学校や友人関係、日常生活のリズムを維持することも重要視され、突然の生活環境の変更は避けるべきと裁判所は考えます。
Case 2:母親が心身の健康を著しく損なっており、十分な育児が困難とされる場合
うつ病やアルコール依存症、慢性的な疲労や精神的不安定など、日常的な養育に支障をきたす状態は、父親に親権が渡る要因になります。
裁判所は子どもの安全と安定した成長環境を最優先するため、健康上の問題が育児に影響すると判断されれば不利になります。
Case 3:母親が再婚し、新しい家庭環境が子どもに悪影響を与えると判断される場合
義父との関係や生活の変化が大きく、子どもの安定した成長を妨げると見なされると、父親に親権が認められやすくなります。
また、再婚後生活リズムやしつけ方の違い、経済状況も総合的に考慮され、裁判所は子どもにとって最適な環境を選びます。
Case 4:母親が頻繁に転居を繰り返し、子どもの生活基盤が不安定な場合
母親が頻繁に転居を繰り返し子どもの生活基盤が不安定な場合、学校や友人関係への影響も含め、環境の継続性が重要視されます。
そのため、安定した住環境を持ち、生活環境が一定の父親が有利になります。
また、転居先での通学距離や地域の安全性、子どもが安心して過ごせるかも裁判所が判断材料として重視します。
Case 5:母親が子どもへの虐待や過度な放任を行っていた場合
母親が子どもへの虐待や過度な放任を行っていた場合、身体的暴力やネグレクトが確認されれば、
父親への親権移行が優先されます。
加えて、虐待の頻度や程度、子どもが受けた心理的影響も考慮されます。
裁判所は子どもの生命や健康を最優先に判断するため、明らかに危険がある場合は母親の親権は認められません。
親権決定における7つのポイント
裁判所が親権を決定する際には、子どもの福祉を最優先に、多角的な要素を総合的に考慮します。
単に親の希望だけではなく、さまざまな観点から判断されます。
以下では特に重要な7つの判断ポイントを解説します。
Point 1) 継続性の原則
子どもが現在置かれている養育環境をできる限り維持するべきという考え方です。
たとえば、父親と長期間暮らしている子を母親が引き取る場合、環境が大きく変わることが心理的負担となる可能性があります。
裁判所は現状の安定を重視し、生活リズムや学校、友人関係も含めて判断します。そのため、親権争いを始める前にどちらが実際に日常的な養育を行っているかが重要です。
さらに、地域のコミュニティや習い事など、子どもの社会的なつながりも維持されるかが考慮されます。
Point 2) 監護の実績
過去から現在まで、”どちらが主に子どもを監護してきたか”を重視します。
食事・入浴・学校送迎など日常生活の世話や健康管理を誰が行ってきたか、育児日記や写真、学校への連絡先指定も判断材料です。
単なる一時的な同居よりも、継続的・安定的な監護実績がある方が有利です。
また、子どもの生活リズムや情緒的安定を保てるかも考慮され、習い事や学習支援などの取り組みも評価対象となります。
Point 3) 子どもの意思
一定の年齢(おおむね10歳以上)になると、子どもの意思も尊重されます。
裁判所調査官が面接を行い、「どちらと暮らしたいか」を確認する場合があります。
ただし、親が子どもに偏った影響を与えている場合は、その意思がそのまま反映されないこともあります。
子どもの希望は重要ですが、心理的圧力や環境の安定も同時に考慮されます。
加えて、兄弟姉妹との関係や学校での適応状況も判断材料の一つになります。
Point 4) 心身の健康状態
養育者が心身ともに健康であることは、安定した子育てのために不可欠です。
慢性的な疾患や精神的不調がある場合、その程度や治療の見込みが評価されます。
症状が軽度で日常生活や育児に支障がなければ問題になりませんが、重度であれば親権判断に影響します。
また、子どもへの接し方や育児に必要な体力・精神的余裕も総合的に判断され、ストレス耐性や日常生活の管理能力も考慮されます。
Point 5) 生活環境の安定性
住居や学校、友人関係など、子どもが安心して成長できる環境が整っているかが重視されます。
度重なる転居や生活の変化は不利に働くことがあります。
親の職業や勤務形態、育児に割ける時間や柔軟性という観点で評価されます。
さらに、通学距離や地域の安全性、近隣環境の充実度、医療機関や教育施設へのアクセスなども考慮され、子どもが安定した生活を送れるかが総合的に判断されます。
Point 6) 経済的基盤
経済力は親権判断の主要因ではありませんが、生活の安定には一定の収入が必要です。
養育費や公的支援で補えるため、収入が少ないだけで即不利になるわけではありません。
ただし、極端に生活が不安定で、子どもが十分な食事や教育を受けられない場合には考慮されます。
また、将来の収入見込みや家計管理能力、貯蓄や住宅環境の安定性も評価の対象となり、
子どもの成長に必要な生活基盤が整っているかが重視されます。
Point 7) 親としての適格性
子どもの利益を第一に考え、他方の親との面会交流を妨げない姿勢も重要です。
一方的な拒絶や誹謗中傷が確認されれば不利に働きます。
裁判所は、子どもの健全な成長を妨げず、情緒面・教育面でも安定した養育ができる親を選びます。
また、親同士の協力姿勢や問題解決能力、規則正しい生活習慣や子どもの教育・生活への関与度も考慮され、総合的に親としての適格性が評価されます。
親権決定に経済力や離婚原因は影響する?
経済力や離婚原因は、親権の直接的な決定要因にはなりません。
親権争いでは、経済面や離婚理由だけに偏らず、実際の養育能力や子どもへの影響が最も重要視されます。
経済力は重視されない
裁判所は、親の経済力よりも、子どもを日常的に監護してきた実績や、安定した養育環境の提供が可能かどうかを重視します。
たとえ収入が少ない場合でも、養育費や児童扶養手当、各種公的支援制度を活用すれば、十分に子どもを養育できると判断されることが多いです。
そのため、経済力が不足しているからといって自動的に親権が認められないわけではなく、実際の育児能力や生活の安定性が総合的に評価されます。
母親の不倫も影響しない
離婚原因が母親の不倫であっても、それが直接親権判断に影響することはほとんどありません。
裁判所は、親同士の関係ではなく、子どもの利益を最優先に考えます。母親が不倫をしていても、子どもへの愛情や監護の実績が十分であれば、親権は認められるケースが多数です。
ただし、不倫相手と同居している場合に、子どもが精神的に悪影響を受けると判断されるような証拠があれば別です。
親権争いをする前に子どもを連れて別居する際の注意点
子どもを連れて行く場合、法的トラブルにならないよう、事前の準備と適切な対応が不可欠です。
親権や面会交流の問題、子どもの安全確保、離婚協議や調停への影響など、
さまざまなリスクを考慮する必要があります。
合意のない「連れ去り」は違法
離婚協議中に、一方の親が相手の同意なく子どもを連れて別居する行為は、違法と判断される可能性があります。
特に、夫婦が共同生活を続けている状態から突然子どもを連れ出すことは「監護権の侵害」とみなされ、裁判所から不利な評価を受けることがあります。
また、刑事事件として扱われる場合もあります。別居を検討する際には、まず相手方と協議し、できれば書面で同意を得ることが望ましいです。
どうしても緊急避難的に別居が必要な場合でも、その理由や経緯を詳細に記録し、後の裁判や調停で説明できるようにしておくことが重要です。
さらに、別居後の生活費や医療・教育費の確保、子どもの心理的サポート、親族や第三者の協力体制なども整えておくと、裁判所に安定した養育環境を提供できることを示す材料となります。
加えて、子どもに対して突然の生活変化が過度な心理的負担とならないよう、丁寧に説明し安心感を与える配慮も必要です。
事前に子どもの意思を確認
子どもがある程度の年齢に達している場合、どちらの親と暮らしたいかを事前に確認しておくことが大切です。
ただし、子どもに無理やり特定の意向を押し付けたりすると、心理的負担や反発を生む可能性がありますので、普段の会話の中で自然な形で意向を聞き、子どもが安心して話せる環境を整えることが望まれます。
別居後は婚姻費用の請求が可能
別居後も、子どもと同居している親は、相手方に婚姻費用(生活費)の請求ができます。
裁判所に申し立てを行うことで、双方の収入や子どもの人数、年齢などをもとに金額が算定され、支払い義務が発生します。
婚姻費用は離婚成立までの間、受け取ることができ、生活費や教育費など子どもの必要に応じて使用できます。また、支払いが滞った場合には、強制執行による回収も可能で、子どもの生活の安定を守る重要な手段となります。
親権が有効な年齢に関するよくある質問
Q1. 親権は子どもが何歳まで有効ですか?
A. 親権は、子どもが「未成年」である間に及びます。
日本では2022年4月から成年年齢が18歳に引き下げられたため、現在は18歳未満の子どもに親権が認められます。つまり、お子さんが18歳の誕生日を迎えた時点で親権は終了し、その後はお子さんが自分の意思で契約や手続きを行えるようになります。
ただし、親としての扶養義務(生活や教育費の負担)は、成年後も状況によって継続する点にご注意ください。
Q2. 子どもが18歳になったら親権は完全に終わりますか?
A.親権は18歳の誕生日をもって終了します。
これにより、親が子どもの契約行為に同意したり、進学やローン契約に関与する権限はなくなります。
ただし、「親権がなくなる=親の責任がすべてなくなる」という意味ではありません。
お子さんが経済的に自立できていない場合には、法律上の扶養義務が残ることがあります。
進学や就職状況によっては、親が生活費や学費を支援する責任を負うケースも多いのです。
Q3. 親権者は途中で変更できますか?
A. 離婚後でも、事情の変更により親権者を変更することは可能です。
たとえば、現在の親権者が病気や仕事の都合で十分に養育できなくなった場合や、子どもの生活環境が著しく悪化した場合などが該当します。
親権変更を希望する場合には、家庭裁判所への申し立てが必要で、子どもの福祉や現状の養育状況を詳しく示す資料や証拠の提出が求められます。
まとめ
親権争いでは、経済力や離婚原因よりも、子どもの利益や安定した養育環境が最優先で重視されます。
母親が不利になるケースもあり、過去の監護実績や住居・学校などの生活環境が大きな判断材料となります。争いを有利に進めるためには、必要な証拠や資料を整理するなど適切な準備が不可欠です。
さらに、専門家の助言を受けながら、子どもの心身の安定や将来の生活を第一に考え、最善の選択を目指すことが重要です。
- 得意分野
- 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
- プロフィール
- 京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設