接近禁止命令とは何?申し立ての条件や方法、期間、注意点を徹底解説

全国20拠点以上!安心の全国対応
60分3,300円(税込)
離婚とあわせて不貞慰謝料でも
お悩みの場合は無料相談となります
※
※
記事目次
接近禁止命令制度をご存じでしょうか。
配偶者や同棲相手から暴力を受けたり、暴言を吐かれたりして悩んでいる方が、安心・安全な生活を確保するために取り得る、効果的な手続きの一つです。
このコラムでは、複雑な接近禁止命令制度について、分かりやすく解説しています。
接近禁止命令とは何?
接近禁止命令は、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(配偶者暴力防止法)に定められている保護命令の種類の一つです。
保護命令とは、配偶者や生活の本拠を共にする交際相手(配偶者等)からの身体に対する暴力等を防ぐため、被害者の申立てにより、裁判所が、加害者に対し、被害者へのつきまとい等を禁止する命令です。
保護命令には、以下の6つの種類があります。
被害者への接近禁止命令
被害者への電話等禁止命令
被害者の子への接近禁止命令
被害者の子への電話禁止命令
被害者の親族等への接近禁止命令
退去命令
このうち①から⑤までを通常「接近禁止命令等」といいます。
①被害者への接近禁止命令が本制度の中心であり、②から⑤までの命令は、①の命令の実効性を確保するための付随的な制度となります。
そのため、ここでは、①被害者への接近禁止命令(接近禁止命令)を中心に解説していきます。
接近禁止命令の目的・効果
接近禁止命令の目的は、配偶者等からの暴力を防止し、被害者が安心して安全に生活できる環境を確保することにあります。
接近禁止命令が発令されると、加害者は、被害者の身辺につきまとったり、被害者の住所、勤務先等の付近を徘徊したりすることを禁止されます。
有効期間は1年間となります。
万が一、加害者が接近禁止命令に違反した場合、2年以下の拘禁刑または200万円の罰金が課せられます。
そのため、加害者に対して一定の抑止効果が期待できます。
離婚時における接近禁止命令の役割
接近禁止命令は、家庭内暴力(DV)がある場合に、被害者の生命や身体の安全を確保するための有効な手段です。
特に、家庭内暴力(DV)は、「別れ際」すなわち「離婚」の過程で危険性が高まると指摘されています。そのため、家庭内暴力(DV)を原因として離婚に至るケースにおいては、被害者の安全を確保するために、離婚協議と並行して接近禁止命令を申し立てることが有効です。
接近禁止命令の申立てをすることができる被害者
接近禁止命令を申し立てることができるのは、
①法律上の配偶者
②事実上の配偶者
③生活の本拠を共にしている交際相手から
暴力等を受けた方、または、離婚等後も引き続き暴力等を受けるおそれのある方です。
これらの方々は、暴力を振るう相手方と共同生活を営んでおり、外部からの発見や介入が困難であるため、暴力が継続的・反復的になりやすいという傾向があります。
そのため、接近禁止命令の申立てが認められています。
なお、異性間のみならず、同性の場合についても保護命令も申し立てが認められたケースもあります。
接近禁止命令の申し立てが可能なケース(要件)
接近禁止命令の要件は以下の3つとなります。
加害者と法律上・事実上婚姻関係にあること又は生活の本拠を共にしている交際相手であること
加害者から、①の関係継続中に、a)身体に対する暴力、b) 生命・身体に対する脅迫、 c)自由・名誉・財産に対する脅迫を受けたこと(暴力等と言います)
③さらなる暴力等により、生命・心身に対する重大な危害を受けるおそれが大きいこと
「暴力・脅迫」の具体的な例
・身体に対する暴力としては、殴る、蹴るなど
・生命・身体に対する脅迫としては、殺すなどと告げる、部屋に閉じ込めて外出しようとすると怒鳴る、土下座を強制する、言うことを聞かなければ仕事を辞めさせる、性的自由に対して害を加えると告げるなど
・名誉に対する脅迫としては、性的な画像をばら撒くと告げる、悪評をネットに流すと告げるなど
・財産に対する脅迫としては、キャッシュカードや通帳を取り上げるなど
「生命又は心身に対する重大な危害」とは、少なくとも通院加療を要する程度の危害をいいます。
令和6(2024)年改正により、「心」すなわち重篤な精神的被害を受けた場合も接近禁止命令の対象となり、暴力等により被害を被った方がより保護されるようになりました。
接近禁止命令申立の条件や期間
接近禁止命令を申し立てるには、法律で定められた一定の要件を満たす必要があります。申立てが認められる関係性、暴力や脅迫の有無、危害の可能性などが検討され、命令が発令された場合は原則1年間の効力を持ちます。
被害者、加害者の関係性
接近禁止命令を申し立てるには、加害者が法律上の配偶者や、事実婚・同居関係にある交際相手であることが必要です。離婚後でも継続的に暴力や脅迫がある場合は対象となることがあります。同性間でも申立てが認められた例があります。
身体的暴力や精神的暴力の証明
暴力等の証拠として、診断書、写真(怪我の部位、状態、加害者が壊した物や殴って壁に空いた穴、加害者が部屋にまき散らした物など)、脅迫の録音データ、LINEやメール、被害者が日々つけている手書きの日記や記録などがあります。
写真は被害者が特定できるよう顔が写っているものが望ましいです。また、写真やLINEのスクショなどは日付が入るようにして保存しましょう。
被害者自身の証言(陳述書)、目撃者や関係者の証言(陳述書)も証拠の一つとなります。
保護命令の範囲、期間
接近禁止命令の有効期間は1年となります。
退去命令の有効期間は2か月間ですが、事案によっては6ヶ月が最長となります。
被害者への接近禁止命令の内容、期間、罰則
接近禁止命令が発令されると、加害者は、被害者の住居、その他の場所において、被害者の身辺につきまとったり、被害者の住居、勤務先、その他その通常所在する場所の付近を徘徊したりすることを禁じられます。
接近禁止命令の期間は、1年間となります。
その他の接近禁止命令の内容、期間
(1)内容
①被害者への接近禁止命令が発令された場合、併せて、②被害者への電話等禁止命令、③被害者の子への接近禁止命令、④被害者の子への電話禁止命令、⑤被害者の親族等への接近禁止命令も認められることがあります。
これらの接近禁止命令が発令された場合に禁じられる行為は以下のようになります。
②被害者への電話等禁止命令
・面会の要求
・行動を監視していると思われる事項を告げ、又は、知り得る状態に置くこと
・著しく粗野又は乱暴な言動をすること
・無言電話、連続して電話、FAX、メールを送信すること(緊急の場合を除く)
・午後10時~午前6時までの間に、電話、FAX、メールを送信すること(緊急の場合を除く)
・汚物や動物の死体等などを送付、又は、知り得る状態に置くこと
・名誉を棄損する事項を告げること、又は、知り得る状態におくこと
・性的羞恥心を害する事項を告げ、又は、知り得る状態に置くこと。性的羞恥心を害する文書、区画などを送付、又は、知り得る状態に置くこと
・承諾なく、GPSなどを取り付けたり、位置情報を記録したり、取得したりすること
③被害者の子への接近禁止命令
加害者は、被害者と成年に達していない子が同居する住居、子の学校、その他の場所において、子の身辺につきまとったり、子の住居、学校、その他その通常所在する場所の付近を徘徊したりすることを禁じられます。
④被害者の子への電話禁止命令
子に対し、②と同様の行為が禁止されます。
⑤被害者の親族等への接近禁止命令
被害者の親族に対しても、加害者は、親族等の身辺につきまとったり、親族等の住所、勤務先等の付近を徘徊したりすることを禁止されます。
(2) 期間
②~⑤の期間は、①被害者への接近禁止命令の有効期間(1年間)満了までとなります。
これらの制度は、①被害者への接近禁止命令の実効性を高めるための制度であり、①の発令が前提となるためです。
接近禁止命令申し立ての流れ
(1) DVセンターや警察に相談
申立ての事前準備として、警察や配偶者暴力相談支援センターにご相談ください。
(2) 接近禁止命令の申し立て
管轄の地方裁判所に申立書を提出します。
・提出できる裁判所は、①相手方住所地の地方裁判所、②被害者の住所又は居所の地方裁判所、③暴力等が行われた場所の地方裁判所のいずれかとなります。
・申立書には、身体に対する暴力等を受けた状況、当該暴力等により、被害者の生命又は心身に重大な危害を受ける恐れが大きい事情を記載します。
・①被害者への接近禁止命令と合わせて、②被害者への電話等禁止命令、③被害者の子への接近禁止命令、④被害者の子への電話禁止命令、⑤被害者の親族等への接近禁止命令を申し立てることができます。
(3) 相手側の口頭弁論・審問
申立書が裁判所に受理されると、当日又は近日のうちに、裁判官が被害者と面接をし、申立ての実情について聴き取りをします。
(4) 接近禁止命令発令
被害者との面接のおおよそ1週間後に、原則として、口頭弁論又は相手方が立ち会うことができる審尋の期日が設けられます。
裁判所は速やかに裁判をすることとなっています。
接近禁止命令の要件を満たしている場合、基本的に、口頭弁論手続又は相手方の審尋期日に、直接、相手方に言渡され、効力が生じます。
接近禁止命令の有効期間を延ばす方法とは?
接近禁止命令の有効期間を短縮したり、延長したりすることはできません。
1年では状況が十分に改善されないとして期間を延ばしたい場合、再度、新たに接近禁止命令を申し立てることとなります。
接近禁止命令の再度の申立てに、回数制限はありません。
再度の申立てが必要なケース
接近禁止命令に反してその有効期間内に接触を図ってきたり、「保護命令期間が過ぎたら、痛い目に合わせる」などと言って暴力を示唆したりした場合などは、再度、接近禁止命令を申し立てることが必要と考えられます。
再度の申立て手続きについて
最初の接近禁止命令の延長ではなく、再度、新しい手続を申し立てますので、最初の接近禁止命令の要件・手続とほぼ変わりません。必要書類も同様です。
ただし、既に接近禁止命令が発令されていることから、命令期間における加害者の態度なども考慮されることとなります。
再度の申立てに必要な書類
接近禁止命令の延長を申し立てる際には、初回申立てと同様に、暴力等の継続的リスクを示す証拠書類が必要です。診断書、被害状況を記録した日記や写真、脅迫の録音・メッセージ、関係者の陳述書などが有効とされます。
接近禁止命令に関する注意点
接近禁止命令を申し立てるには、DVなどの被害を具体的に示す証拠が必要です。命令が出された後に違反があった場合は、刑事罰の対象となるため、記録を残すことも重要です。また、命令の期間は限られており、更新や追加の申立てが必要な場合もあります。
接近禁止命令を取り消す方法はある?
被害者は、これ以上の保護は不要と判断した場合は、接近禁止命令の取消しを申し立てることができます。
ただし、状況が改善していないにもかかわらず、加害者が反省しているように見えたから、加害者が謝っているからなどの理由で取り消した場合、再度、暴力等が再発するリスクがあります。そのため、慎重に検討してください。
接近禁止命令に関するよくある質問
離婚した元配偶者から暴力を振るわれています。この場合も接近禁止命令の対象となりますか。
離婚前から暴力を振るわれており、離婚後も引き続き暴力を振るわれている場合は接近禁止命令の対象となります。
ただし、離婚前に暴力を振るわれておらず、離婚後に始めて暴力を振るわれた場合は対象とはなりません。
配偶者から暴力を振るわれたのが3か月前です。まだ、接近禁止命令の対象となりますか。
接近禁止命令の対象となる暴力に期間の制限はありません。ただし、最後の暴力を振るわれてから時間が経ちすぎると、「さらなる暴力等をうけるおそれがない」と判断される可能性があります。
接近禁止命令に反して、加害者が近づいてきます。どのようにしたらいいでしょうか。
速やかに警察に連絡をしてください。
接近禁止命令に違反した場合は?
万が一、加害者が接近禁止命令に違反した場合、2年以下の拘禁刑または200万円の罰金が課せられます。
まとめ
接近禁止命令は、被害者の生命・身体、そして心を守るために重要で有効な制度です。
暴力等の危険に晒された状況では、日常生活にも支障をきたしたり、相手方から早く逃れたいがために十分な協議をしないまま、不本意な離婚条件を受け入れたりしてしまうケースもあります。
あなたの安心・安全な生活を確保するために、東京スタートアップ法律事務所にお気軽にご相談ください。
- 得意分野
- 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
- プロフィール
- 京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設