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更新日: 代表弁護士 中川 浩秀

養育費とは?仕組み、算定方法、いつまで請求できるのかを徹底解説

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子どもがいる場合、離婚に際して争点になりやすいのが養育費の問題です。

また、しっかりと取り決めを行ったにも関わらず、約束通り支払いが行われないなどのトラブルも少なくありません。

今回の記事では養育費の相場、概算方法について事例別にご紹介した上で、養育費の取り決め方法やトラブルの予防策について具体的に説明します。

養育費とは

「養育費」とは、子どもを育てない片親が、子どもを育てる片親に対して支払う、子育てのための費用です。

離婚後に、子どもの養育を請け負うことになった親に対して、もう一方の親が支払います。

養育費の額は事例によって様々です。

離婚成立時に両者で詳細まで取り決めを行わないと、後にトラブルになりかねないため、初めから具体的な額と支払い方法を指定し、支払う段になって揉めないようにしておくことが大切です。

養育費の平均は

母子家庭でも月額4万円程度

厚生労働省の調査によると、平成23年度では「養育費を現在も受けている又は受けたことがある世帯のうち月額の養育費が決まっている世帯の平均月額」が明らかにされています。

同調査によると、母子世帯の場合は月額43,482円、父子世帯の場合は月額で32,238円を平均で受け取っているということです。

参照:「養育費・婚姻費用算定表」『裁判所』

母子世帯の方が、1万円ほど額が多くなるのは、女性が結婚・出産によってキャリアが途絶えることが多いのに対し、男性はキャリアの中断が起こりにくく、高所得を得やすいからだと推測できます。

また、大半のケースでは夫が支払う側です。これも男女間での収入格差が原因として考えられます。

養育費の算出方法

養育費の額は、子どもの人数、子どもの年齢(0~14歳と15~19歳の2区分)、権利者(養育費を受け取る親)の年収、義務者(養育費を支払う親の年収)の主に4要素から算出されます。

  • 子どもの人数
  • 子どもの年齢
  • 権利者の年収
  • 義務

年収の算出方法は家庭裁判所によって以下のような基準が採用されています。

給与所得者の場合

源泉徴収票の「支払金額」(控除されていない金額)が年収に当たります。

なお、給与明細書による場合には、それが月額にすぎず、歩合給が多い場合などにはその変動が大きく、賞与・一時金が含まれていないことに留意する必要があります。

他に確定申告していない収入がある場合には、その収入額を支払金額に加算して給与所得として計算します。

自営業者の場合

確定申告書の「課税される所得金額」が年収に当たります。

なお「課税される所得金額」は、税法上、種々の観点から控除がされた結果であり、実際に支出されていない費用(例えば、基礎控除、青色申告控除、支払がされていない専従者給与など)を「課税される所得金額」に加算して年収を定めることになります。

また、児童扶養手当や児童手当は子のための社会保障給付ですから、権利者の年収に含める必要はありません。

算定表を見る方法

家庭裁判所で養育費算出のために活用されているのがこちらの養育費・婚姻費用算定表です。

この算定表の具体的な使い方を説明します。

まずは子どもの人数と年齢によって表1~9のどの表を使うかを定めます。

次に、その表の義務者及び権利者の収入欄 を給与所得者(外側)か自営業者(内側)かの区別に従って選び出します。

その後収入欄の数字から、縦軸で義務者の年収額を探し、そこから右方向に線をのばし、横軸で権利者の年収額を探して上に線をのばします。

この2つの線が交差する欄の金額が、義務者の負担すべき養育費の標準的な月額です。

一見複雑に見える算定表ですが、ケース別に説明しているだけであり、見方は非常に単純です。

以下の場合は?

  • 親権が年収205万円、給与所得者の女性にあり、年収510万円、給与所得者の男性から子ども6歳、一人分の養育費を受け取る場合

子どもの人数は一人で、年齢は6歳なので、使う表は「表1」です。

義務者、権利者共に給与所得者なので、収入欄については縦軸、横軸共に「外側」に着目する必要があります。

縦軸については「510」が義務者の年収と合致するのでこの欄から右に線を伸ばします。

横軸については「200」が権利者の年収に最も近い数値なのでこの欄から上に線を伸ばします。

2つの線が交わる欄は、「4~6万円」の枠内にあるので、これが義務者の負担すべき養育費の標準的な月額です。

ポイント

親権が年収205万円、給与所得者の女性にあり、年収510万円、給与所得者の男性から子ども6歳、一人分の養育費を受け取る場合の養育費

養育費金額:1ヶ月4~6万円程度

以下の場合は?

  • 親権が年収240万円、給与所得者の女性にあり、年収708万円、自営業の男性から2人の子ども(それぞれ10歳、17歳)の養育費を受け取る場合

第一子が17歳、第二子が10歳、子どもの人数は2人であるため、使う表は「表4」です。

義務者は自営業者なので、縦軸に関しては内側を参照します。

権利者は給与所得者なので、横軸に関しては外側を参照します。

義務者の年収は708万円なので、縦軸については最も近い数字である「710」から右に線を伸ばします。権利者の年収は240万円なので、横軸については最も近い数字である「250」から上に線を伸ばします。

2つの線が交わる欄は「12~14万円」の枠内にあるので、これが義務者の負担すべき養育費の標準的な月額です。

ポイント

親権が年収240万円、給与所得者の女性にあり、年収708万円、自営業の男性から二人の子ども(それぞれ10歳、17歳)の養育費を受け取る場合

養育費金額:1ヶ月12~14万円程度

このように、表に当てはめるだけで、具体的にどの程度の金額を支払うのが適切かを考えることができます。

養育費はいつまで受け取ることが可能?

養育費を分割で受け取る場合、支払いの終期についても決める必要があります。

ここでは、養育費の終期について具体的な事例と共にご説明します。

子どもが成人(20歳)前に就職する場合

養育費は、義務者が、未成年の子どもが成人になるまでの生活を保障するために支払うものです。

このため、多くの場合は子どもが20歳になるまで支払われます。

また、子どもが20歳を超えても、大学や大学院、専門学校などに在籍している場合には、経済的な自立が困難として、協議によって養育費の支払い終期を延長できるケースもあります。

一方で、子どもが20歳になる前に就職し、経済的に自立している場合には、養育費の支払いが不要であると判断されることもあります。

目安として、子どもが経済的に自立しているか否かが一つの指標になります。

子どもが障害者である場合

子どもに障害がある場合は、経済的な自立が困難として、父母の話し合いによって養育費支払期間を20歳よりも延ばすことができます

従って、子どもが障害により経済的自立が遅れる可能性が高いと判断される場合には、養育費の終期について離婚協議の際にしっかりと話し合っておくことが大切です。

離婚後の再婚は養育費の受け取りに関係する?

養育費の支払い義務者が再婚した場合

支払い義務者が再婚した場合も、義務者は引き続き養育費を支払う必要があります

しかし、再婚した場合、義務者は新しい配偶者を扶養しなければならないので、支払うべき養育費は事前の取り決めよりも減額される可能性があります。

また、義務者と再婚相手の間に子どもができた場合、義務者はその子どもに対しても扶養義務が生じるため、養育費の支払金額はさらに減る可能性があります。

このため、再婚自体は養育費の金額に関係しませんが、支払い義務者の扶養義務が関係することを覚えておきましょう。

養育費受け取り者が再婚した場合

養育費の受け取り手が再婚した場合、再婚相手が養育に足る経済力を持っていて、なおかつ養子縁組を行った場合、支払われるべき養育費が減免される可能性があります

ただし、再婚相手が十分な経済力を持っていないと判断される場合には、養子縁組が行われたとしても、養育費の支払いが継続される可能性があります。

【養育費の取り決め方】

養育費は子どもの未来を支える大切な費用です。

話し合い(協議)で決めるのが基本ですが、合意できない場合は調停・審判で決めることになります。後悔しないために、取り決め方と注意点を解説します。

話し合いによる合意150字

父母間で養育費の金額や支払い方法を話し合い、合意に至る方法です。

柔軟に決められる反面、後のトラブルを防ぐためには、合意内容を「公正証書」などの文書にしておくことが重要です。

公正証書を作成することで、不払い時の強制執行が可能となり、支払いを確実にできます。

家庭裁判所での調停150字

夫婦間で話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に調停を申し立てます。

調停委員を交えて合意を目指して話し合いを進めます。合意が成立すれば調停調書が作成され、強制力を持つ債務名義となります。不払いがあれば強制執行することができます。

家庭裁判所での審判150字

調停でも合意に至らない場合、裁判官による審判に移行します。

裁判官が双方の事情を踏まえて、提出された資料・証拠に基づいて養育費の金額を決定することになります。

当事者の合意は不要です。裁判官の作成する審判書も法的拘束力があり、強制執行が可能です。

離婚訴訟での決定

離婚自体が争われている場合は、訴訟の中で養育費も併せて判断されます。

裁判所が証拠をもとに金額を決定し、判決に養育費の内容が明記されます。審判と同様に強制力がありますが、手続きに時間と費用がかかる傾向があります。

【養育費算定表を使用するには?】

養育費算定表は、離婚や別居時の養育費を算定する際に、子どもの人数・年齢と父母それぞれの年収から、標準的な目安額を簡単に把握できる便利なツールです。

この記事では、適切な表の選び方から具体的な金額の確認方法までわかりやすく解説します。

子どもの人数と年齢に合った表を選択する

養育費算定表は、子どもの人数や年齢の組み合わせによって種類が異なります。

まずは、離婚(または別居)する夫婦の子どもの人数と年齢を確認し、該当する算定表(例:子1人表、子2人表など)を選びます。

子どもの年齢が「0~14歳」と「15歳以上」で生活費の目安が異なるため、該当する表を選択します。

義務者と権利者の年収を確認する

次に、養育費を支払う側(義務者)と受け取る側(権利者)の年収を把握します。

年収は、原則として源泉徴収票の「支払金額」(額面)を用います。表の縦軸が義務者の年収、横軸が権利者の年収に対応しています。

また、会社員などの給与所得者か、個人事業主などの自営業者かによって、表の読み取る列が異なるため注意が必要です。

双方の年収の交わる点で養育費の目安額を確認する

選択した算定表で、義務者の年収と権利者の年収が交差する箇所を探します。

この交わる点に示されている金額(例:月額4~6万円など)が、標準的な養育費の目安です。

算定表に示される金額は、幅をもって表示されており、この範囲内で具体的な金額を話し合って決定することになります。

具体的な金額や特別費用について協議・決定する

算定表で得られた目安額をベースに、夫婦間で養育費の具体的な金額を協議し決定します。

この目安額には、特別な教育費(私立学校の学費、習い事など)や医療費などは含まれていません。

そのため、これらの特別費用をどのように負担するかについても、算定表の金額とは別途話し合い、取り決めておくことが重要です。

養育費をしっかりと受け取るには

協議離婚する必要性

協議離婚の場合、養育費の支払いは両者間の話し合いによって、額や支払い方法、支払い期間を取り決めるのが基本です。

支払い方法については、分割で毎月支払われるのが一般的ですが、途中から支払われなくなる事例も多いため、双方の合意があれば一括での支払いも可能です。

この場合、義務者には一度で支払うかわりに、全体での負担額を減らすことができるというメリットもあるので、双方の考え方次第で、合意の可能性は十分にあります。

また、毎月の定期的な支払いにする場合には、その終期についてもしっかりと協議する必要があります。

子どもが進学する場合や、就職が遅れる場合など、様々なケースを想定した上で、具体的な終期を定めることをおすすめします。

公正証書を作成するのがおすすめ

離婚協議に際して、両者間での取り決めは「公正証書」にしておく必要があります

公正証書を作成した場合、そこに記された通りに支払いが行われなかった時にすぐに支払い義務者の預貯金や生命保険、給料等を差し押さえることができるからです。

逆に公正証書が作成されない場合、不払いなどのトラブルが起こる度に、養育費調停を起こさなければならず、余分な負担が生じる可能性があります

また、離婚後に取り決めについての修正を行う場合も、公正証書を作り直すことでトラブルを未然に防ぐことができます。

養育費が支払われない場合の対処法

養育費の未払いは、子どもの生活に深刻な影響を及ぼします。

泣き寝入りせずに、支払いが滞った場合の具体的な対処法や法的手続きについて解説します。

夫婦間の合意によって決まっている場合

夫婦間の合意があっても養育費が支払われない場合は、まずは内容証明郵便等で督促することになります。

養育費について合意内容を公正証書にしている場合は、強制執行によって給与や預金の差押えが可能です。

公正証書がない場合は、家庭裁判所に養育費の調停を申し立てる必要があります。

養育費の取り決めを調停や審判で行っている場合150字

家庭裁判所に対して履行勧告や履行命令を発してもらい、相手方にプレッシャーを与えることができます。

ただし、直接的な強制力はないため、養育費を直接回収することはできません。

強制執行による場合

養育費の支払いを命じた調停調書、審判書、または執行認諾文言付きの公正証書などの「債務名義」がある場合に行うことができます。

裁判所に申立てを行い、義務者の給与や預貯金などの財産を強制的に差押えて、そこから強制的に養育費を回収します。

よくある質問

養育費の相場は?自分が支払うことになる養育費はいくらくらい?相手が再婚したら免除される?など、養育費に関してよくある質問を解説いたします。

子どもの生活を守るために知っておくべき情報を紹介いたします。

子ども一人当たりの養育費はいくらですか?

厚生労働省作成の「全国ひとり親世帯等調査」(令和3年度)によると、実際に養育費を受け取っている世帯の月額平均の金額は次のようになります。

子どもの人数 1名の場合

母子世帯 40,468円 父子世帯 22,857円

実際に養育費を決める際には、義務者(支払う側)と権利者(受け取る側)の年収、子どもの人数や年齢等を考慮した算定表が用いられます。

手取り25万円の場合、養育費はいくらですか?

養育費は、手取りではなく額面年収を基準に算定されます。

手取り25万円の場合、ボーナスの有無や金額によって額面年収が大きく異なるため、養育費の目安額にも幅が出ます。

手取り25万円の場合、社会保険や税金を差し引く前の額面月収は約31~32万円程度になりますので、額面年収としては約380万円ほどになります。

義務者(支払う側)の年収を380万円、ボーナスなしと仮定し、子ども1人(0歳~14歳)、権利者(受け取る側)の年収が0円のケースで目安となる養育費の金額は、月額4万円~6万円となります。

養育費を払わなくて良いケースはありますか?

養育費の支払いは、親の子に対する扶養義務に基づくものですので、原則として免れることはできません。

ただし、子どもが、元配偶者の再婚相手と養子縁組した場合は、再婚相手が第1次的には子どもの生活保持義務を負うこととなり、元の親の扶養義務は第2次的に負担すべきことになります(東京高裁令和2年3月4日決定参照)。

再婚相手の資力が子どもの養育に十分な程度と認められる場合は、養育費の支払い責任が消滅することになります。

養育費8万円は多い方ですか?

厚生労働省作成の「全国ひとり親世帯等調査」(令和3年度)のデータからすると、養育費8万円という金額は、実際に養育費を受け取っている平均の額よりも高いといえます。

ただし、養育費の算定は、義務者(支払う側)と権利者(受け取る側)の年収、子どもの人数等によっても変わります。

金額に不安がある場合は、弁護士など専門家にご相談されることをおすすめします。

まとめ

養育費について協議する際、まずは算定表に従っておおむねの額を決めた上で、両者間で具体的な金額や支払い方法について話し合いを行うのが基本です。

この際、子どもの将来の進路を複数想定し、それぞれの場合の支払い終期をしっかりと決めておくことが重要です。

そしてトラブルを未然に防ぐためにも、取り決めは公正証書としてまとめ、法的拘束力の確かなものにしておくことが大切です。

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執筆者 代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会 登録番号45484
東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士として、男女問題などの一般民事事件や刑事事件を解決してきました。「ForClient」の理念を基に、個人の依頼者に対して、親身かつ迅速な法的サポートを提供しています。
得意分野
不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
プロフィール
京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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