公開日
更新日
不倫・浮気の慰謝料請求の時効とは?いつまで請求可能?除斥期間について解説
監修弁護士
中川 浩秀 東京スタートアップ法律事務所
東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士。男女問題・不倫慰謝料に関する相談を多数解決。
配偶者に浮気・不倫をされた時、配偶者や浮気相手に対して慰謝料を請求したいと考える方は多いでしょう。
しかし、慰謝料を請求しても、法的に貰うことができない場合があります。それは、慰謝料請求の時効が過ぎてしまい、それを相手から主張された場合です。
「配偶者の不倫を知ったけれど、慰謝料を請求するのはかわいそうだし止めておこう」
「結婚生活を再建したいから、今は一旦慰謝料を請求しなくてもいいや」
「配偶者が不倫しているのを知っているけれども、何年後か離婚するときに慰謝料請求すれば良いだろう」
上記のような考え方を持っていると、慰謝料請求権の時効期間が経ってしまい、そのことを相手から主張された場合、慰謝料請求ができなくなってしまいます。
不倫の被害者であるのに、慰謝料請求ができなくなってしまうことで、さらに悲しい目に遭ってしまわないように、今回の記事では浮気・不倫に関する慰謝料請求について詳しく解説します。
時効とは

時効とは、長い間続いた事実の状態を尊重する意味を持ちます。
権利を行使しないことによって、現状を追認したとみなされてしまい、請求を受けた側が時効の成立を主張することによって権利が消滅することを指します。
「権利」という概念の中には、「長期間権利の上に眠る者を保護しない(何もせずに権利にあぐらをかいている者の権利を法は守らない)」という考え方があります。
「時効」という制度は、「長期間権利の上に眠る者」に対して、権利を行使できなくしてしまう制度です。
つまり、「権利があるのに行使しない人に権利を与えておく必要はない」といった考え方が由来になっているのです。
浮気・不倫問題における時効とは
浮気や不倫問題においても、時効の意味は同じです。
慰謝料を請求する立場にあるのにも関わらず慰謝料を請求しない人は、「長期間権利の上に眠る者」と判断され、時効によって、慰謝料請求の権利を剥奪されるのです。
浮気・不倫問題における慰謝料請求権の時効期間は
浮気・不倫の事実を知ってから3年
浮気・不倫による慰謝料請求には、民法724条に定められた消滅時効が適用されます。
民法724条1号では、不法行為による損害賠償請求権について、被害者またはその法定代理人が「損害及び加害者を知った時から3年間」と定められています。
そのため、単に配偶者の浮気を疑い始めた日ではなく、不貞行為による損害が発生したことや、損害賠償を請求する相手を認識した時期が重要です。
たとえば、配偶者が不貞行為をしていたことを知り、その相手も特定できた場合には、その時点から3年間の消滅時効が進行する可能性があります。
ただし、不貞行為の証拠写真や動画を取得した日が、必ずしも時効の起算点になるわけではありません。
また、配偶者と不倫相手では、それぞれについて損害と加害者を認識した時期が異なる場合があるため、消滅時効の起算点も異なる可能性があります。
慰謝料請求を検討している場合には、不貞行為の事実や不倫相手について、いつ、どのように知ったのかを整理しておきましょう。
浮気・不倫の行為があってから20年
民法724条2号では、不法行為の時から20年間が経過した場合にも、損害賠償請求権が消滅時効にかかると定められています。
2020年4月1日に施行された改正民法により、従来「除斥期間」と解されていた20年間の期間は、消滅時効として定められました。
そのため、現行法では3年間だけでなく、20年間についても消滅時効として扱われます。
ただし、20年間の期間があるからといって、不貞行為の発覚後、いつでも20年間請求できるわけではありません。
損害および加害者を知った時から3年間が経過した場合にも、消滅時効が問題となります。
また、不貞行為が複数回行われていた場合には、20年間の起算点を、不貞関係が最初に始まった日と一律に判断することはできません。
それぞれの不貞行為が行われた時期や損害の発生状況など、個別の事情を確認する必要があります。
なお、2020年4月1日より前に生じた不法行為については、改正民法の経過措置が問題となる場合があります。
浮気・不倫の慰謝料請求の時効を延ばす方法はある?
浮気・不倫による慰謝料請求の消滅時効が近づいている場合には、法律で定められた手続きによって、時効の完成を猶予したり、時効期間を新たに進行させたりできる場合があります。
2020年4月1日に施行された改正民法では、従来の「時効の中断」や「時効の停止」という用語が整理され、「時効の完成猶予」と「時効の更新」に変更されました。
それぞれの違いは以下のとおりです。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 時効の完成猶予 | 一定の期間や手続きの間、時効が完成しないこと |
| 時効の更新 | それまでの経過期間がリセットされ、時効期間が新たに進行すること |
たとえば、内容証明郵便によって慰謝料の支払いを催告した場合には、原則として6か月間、時効の完成が猶予されます。
一方、相手が慰謝料の支払義務を承認した場合には、民法152条に基づいて時効が更新されます。
ただし、どのような行為でも時効の完成を猶予・更新できるわけではありません。
慰謝料請求の時効については、以下の方法が考えられます。
- 内容証明郵便などによる催告
- 相手方による債務の承認
- 訴訟の提起
- 強制執行や仮差押えなどの法的手続き
なお、それぞれの方法によって法的な効果が異なるため、時効が近づいている場合には、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
民法147条〜152条では、催告・訴訟・承認などについて、完成猶予と更新の効果がそれぞれ定められています。
浮気・不倫の時効の完成猶予・更新の方法

内容証明郵便による催告
浮気・不倫による慰謝料請求の時効が近づいている場合には、内容証明郵便を利用して、慰謝料の支払いを催告する方法があります。
民法150条では、催告をした時から6か月間は、消滅時効が完成しないと定められています。
ただし、内容証明郵便を送付すれば、時効期間が新たに6か月延長されるというわけではありません。
催告による効果は、あくまでも6か月間の時効の完成猶予であり、それまでに経過した時効期間がリセットされるものではないからです。
また、催告によって時効の完成が猶予されている間に、催告を繰り返しても、新たな完成猶予の効力は生じません。
そのため、時効の完成が迫っている場合には、催告後の6か月以内に訴訟を提起するなど、必要な法的手続きを検討することが重要です。
なお、内容証明郵便は、いつ、どのような内容の文書を差し出したかを証明する制度です。
相手方に文書が届いたことを確認したい場合には、配達証明を併用する方法があります。
債務の承認
慰謝料の支払いについて合意した場合には、示談書などの書面を作成しておくことが重要です。
特に、慰謝料を分割払いにする場合や、相手が約束どおりに支払うか不安がある場合には、公正証書の作成を検討するとよいでしょう。
ただし、公正証書を作成すれば、必ず強制執行ができるわけではありません。
一定の金銭の支払いを内容とし、債務者が直ちに強制執行に服することを認める「強制執行認諾文言」が記載された公正証書であれば、債務名義として利用できる場合があります。
このような公正証書を作成しておくことで、慰謝料の支払いが滞った際に、改めて訴訟で判決を得ることなく、強制執行を申し立てられる可能性があります。
ただし、実際に給与や預金などを差し押さえるには、執行文の付与や送達証明書の取得など、必要な手続きを行う必要があります。
また、仮差押えは将来の強制執行に備えるための保全手続きであり、公正証書に基づく強制執行とは別の制度です。
そのため、公正証書の作成を検討する場合には、必要な条項や手続きについて、弁護士や公証人に確認することをおすすめします。
参考:日本公証人連合会「お金の支払いの公正証書を作成した場合の強制執行」
裁判上の請求
慰謝料請求訴訟を提起した場合には、民法147条に基づき、原則として訴訟手続きが終了するまで時効の完成が猶予されます。
ただし、訴訟を提起しただけで、それまでの時効期間が直ちにリセットされるわけではありません。
訴訟の結果、確定判決などによって権利が確定した場合には、手続きが終了した時から時効が新たに進行します。
一方、訴えの取下げなどによって、確定判決などで権利が確定しないまま手続きが終了した場合には、原則として終了時から6か月間、時効の完成が猶予されます。
また、訴訟を提起したことによる完成猶予や更新の効果は、すべての権利に一律に及ぶわけではありません。
原則として、請求の対象となった権利や当事者との関係で効果が生じます。
そのため、配偶者と不倫相手の両方に慰謝料を請求する場合には、それぞれについて時効の完成が問題とならないか確認する必要があります。
仮差押え・仮処分・強制執行
仮差押えや仮処分、強制執行などの手続きによっても、時効の完成が猶予される場合があります。
ただし、これらの手続きは、すべて同じ効果が生じるわけではありません。
民法148条では、強制執行などについて、原則として手続きが終了するまで時効の完成を猶予し、一定の場合には手続きの終了時から時効が更新されると定めています。
一方、民法149条では、仮差押えや仮処分について、手続きの終了時から6か月間、時効の完成を猶予すると定めています。
つまり、仮差押えや仮処分を行っただけで、時効期間が新たに進行するわけではありません。
また、仮差押えや仮処分は、将来の権利実現などに備えるための保全手続きであり、強制執行とは目的や効果が異なります。
これらの手続きには、法律上の要件や裁判所への申立てが必要となるため、弁護士に相談したうえで検討しましょう。
時効完成後でも慰謝料請求は可能?
慰謝料請求の消滅時効が完成した場合でも、必ずしも慰謝料を受け取れなくなるわけではありません。
民法145条では、当事者が時効を援用しなければ、裁判所は時効を理由として判断することができないと定められています。
つまり、時効期間が経過していても、相手方が時効を援用していない場合には、慰謝料の支払いについて交渉することが可能です。
また、時効が完成した後に、相手方が慰謝料の支払義務を認めた場合には、その後の時効援用が認められなくなる可能性があります。
最高裁判所昭和41年4月20日大法廷判決では、債務者が時効完成後に債務を承認した場合、時効が完成していることを知らなかったとしても、その後に時効を援用することは信義則上許されないと判断されています。
ただし、単に不倫の事実を認めただけで、当然に時効の援用ができなくなるわけではありません。
慰謝料の支払義務を認めたと評価できるかどうかや、合意に至った経緯などが問題となります。
また、相手がすでに時効を援用している場合には、慰謝料を請求できるかどうかについて、さらに慎重な判断が必要です。
そのため、時効期間が経過している場合でも、直ちに請求を諦めるのではなく、相手方とのやり取りや支払いに関する合意の有無を確認することが重要です。
参考:有斐閣「時効完成後の債務承認|最大判昭和41年4月20日」
夫婦間では離婚後6か月間は時効が完成しない
配偶者に対して不貞行為の慰謝料を請求する場合には、民法159条に定められた夫婦間の時効の特則にも注意が必要です。
民法159条では、夫婦の一方が他方に対して有する権利について、婚姻の解消の時から6か月を経過するまでの間は、消滅時効が完成しないと定められています。
そのため、婚姻中に不貞行為の事実を知り、通常であれば3年間の時効が完成する場合でも、婚姻関係が継続している間は時効が完成しません。
また、離婚が成立した場合には、その離婚成立時から6か月を経過するまでは、原則として時効の完成が猶予されます。
たとえば、婚姻中に配偶者の不貞行為を知ってから3年以上が経過していた場合でも、離婚後6か月以内であれば、慰謝料を請求できる可能性があります。
ただし、この特則が適用されるのは、夫婦の一方が他方に対して有する権利です。
そのため、不倫相手に対する慰謝料請求には、原則として民法159条の特則は適用されません。
また、夫婦間の時効の完成が猶予されるからといって、不貞行為の証拠をいつまでも確保できるわけではありません。
時間が経過すると、メッセージの履歴や宿泊記録などが失われる可能性もあります。
そのため、配偶者に対する慰謝料請求を検討している場合には、民法159条の特則を踏まえつつ、早めに証拠を整理して弁護士へ相談することが重要です。
不倫の慰謝料請求時の注意点
事前に証拠を集めておく
不倫の慰謝料を請求するためには、肉体関係があることが客観的に見ても分かるような証拠が必要になります。
LINEの「会いたい」などのやり取りや、二人で食事をしている事実だけでは、肉体関係があるとは言い切れません。
証拠がないままで相手と交渉をしても、関係を認めず支払ってもらえなかったり、さらに分からないように不倫をされてしまう可能性もあります。
確実に慰謝料を請求したいとお考えであれば、事前にできるだけ証拠を集めておきましょう。
なるべく早い段階で請求を行う
不貞行為による慰謝料を請求する場合には、なるべく早い段階で証拠を整理し、必要な手続きを検討することが重要です。
時間が経過すると、メッセージの履歴や宿泊記録などが削除され、不貞行為を証明するための資料を確保しにくくなる場合があります。
また、不貞行為による慰謝料請求には消滅時効があり、損害および加害者を知った時から3年間、不法行為の時から20年間が原則となります。
ただし、配偶者への請求では夫婦間の時効の特則が適用される場合があるほか、催告や訴訟などによって時効の完成が猶予されることもあります。
そのため、時効期間が経過しているように見える場合でも、直ちに請求できないと判断せず、個別の事情を確認することが大切です。
時効が近い不倫の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット

時効が回避できる可能性が高まる
裁判上の請求などの手続は、必ずしも弁護士へ依頼する必要はなく、ご自身で行うことも可能ですが、専門知識がないと予想外に手間取ったり不備が生じたりと、結局時効に間に合わなくなってしまう恐れがあります。
弁護士に依頼すれば、専門的知識を持ってスムーズに時効回避の手続を取ることが可能です。
後日トラブルを回避できる
当事者のみで示談交渉した場合、慰謝料の支払い後に新たなトラブルが発生しないとも言い切れません。
弁護士に示談交渉から示談書作成まで任せておけば、以下のような新たなトラブルを回避できます。
- 「やっぱり納得できない」と慰謝料支払いを拒否してくる
- 分割にしていた慰謝料の支払いが滞る
- 浮気相手が求償権を使って費用を請求してくる
- 元配偶者や浮気相手が根に持って危害を与えてくる
自分で示談書を作成する場合には、作成した項目が本当に法的に有効な文章なのかを判断することはできません。
将来的な不安を解消しておく意味合いでも、弁護士に依頼して法的に有効となる示談書を作成しておくのがおすすめです。
弁護士から請求を受けることの心理的効果
当事者が法律の専門家であるケースであれば当てはまりませんが、法律の素人である本人から請求されると、不倫相手としては、「適切な金額なのか?」等の疑問が生じることもあり得ます。
法律の専門家である弁護士は、証拠と事実関係に基づき、法に基づく請求を論理的に行います。
そのため、相手方に与える「支払いをしなければならない」という心理的プレッシャーは、本人が行う場合と比較して大きいものと考えられます。
お気持ちに沿った合意の実現
慰謝料の請求とは、つまるところ金銭の支払いを求めるものです。
しかしながら、婚姻関係を維持される場合は、「パートナーとの交際を禁止し、接触を禁止してほしい」、「支払後にパートナーに求償請求してほしくない」等の金銭面以外のご希望を持たれる方も少なくありません。
依頼を受けた弁護士は、後日に禍根を残さないためにも、慰謝料以外で不倫相手に合意してほしいと希望する条項についても、相手方との間で交渉対象として合意を実現できるように尽力いたします。
精神的苦痛を緩和できる
弁護士への慰謝料請求の相談は、「相手から確実にお金を取れる」という点だけがメリットだと思われてしまうかもしれませんが、それだけではなく、弁護士は、あなたの辛い気持ちに寄り添ってくれる存在でもあります。
浮気や不倫をされてしまい、「これからどうしたらいいのだろう?」という漠然とした不安にひとりで押し潰されそうになってしまう人は数多くいます。
あなたが抱えている精神的苦痛を少しでも緩和してくれるのが、経験豊富な弁護士です。
「なんで私だけがこんな思いをしているの」とひとりで思い悩んでしまうと、慰謝料トラブル解決に時間がかかるだけでなく、あなたの精神的苦痛も増えていってしまいます。
その精神的苦痛をより早く緩和して、慰謝料トラブルを解決するためにも、寄り添って並走してくれる弁護士への相談を検討してみましょう。
まとめ

浮気・不倫による慰謝料請求には消滅時効があり、原則として損害および加害者を知った時から3年間、不法行為の時から20年間と定められています。
ただし、時効の起算点は、配偶者と不倫相手で異なる場合があります。
また、2020年の改正民法では、従来の「時効の中断」などの用語が整理され、「時効の完成猶予」と「時効の更新」が定められました。
内容証明郵便による催告は、原則として6か月間の完成猶予となる一方、債務の承認や確定判決などによって、時効が更新される場合があります。
さらに、配偶者に対する慰謝料請求では、婚姻関係が解消されてから6か月間、時効が完成しないという特則もあります。
なお、時効期間が経過した場合でも、相手方が時効を援用していなければ、慰謝料請求について交渉する余地があります。
ただし、実際に慰謝料を請求できるかどうかは、不貞行為の時期や請求相手、これまでの交渉状況などによって異なります。
慰謝料請求の時効が近づいている場合や、すでに時効期間が経過している可能性がある場合には、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
東京スタートアップ法律事務所は 初回相談 0円※ です。
まずはお気軽にご相談ください。
※初回から有料相談(1時間1.1万円)でのご案内となる場合もございます