起訴猶予とは?不起訴との違いを知るための3つの重要ポイント!

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記事目次
起訴猶予とは、検察官が「起訴できるけれどあえて起訴しない」と判断した場合に選ばれる処分です。
被害の軽微さや示談の成立などが考慮され、処罰を避ける道が開かれる一方、再犯時には影響する可能性も。
この記事では、仕組みや流れ、適用条件などをわかりやすく解説します。
起訴猶予とは?基本的な仕組みを解説
被疑者が犯罪を犯したことが証拠上明白であっても,被疑者の性格,年齢,境遇,犯罪の軽重と情状,犯罪後の情況により訴追を必要としないと判断される場合は,検察官の判断により起訴を猶予して不起訴とすることがあります。
(検察庁HPより)
簡単にいえば「起訴できるけれども起訴しない」ということです。
刑法では248条に定められています。
検事は、被疑者による犯罪事実が認められるとしても、その幅広い裁量により「起訴しない」という判断ができるということですね。
例えば、被害がごく軽微であったり、被害者が許しているという場合に、不起訴の理由として用いられます。
起訴猶予は、嫌疑なし、嫌疑不十分などといった不起訴の理由の一つです。
参考:昭和35年版 犯罪白書(法務省) https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/1/nfm/n_1_2_2_1_2_4.html |
起訴猶予が選ばれる理由
起訴猶予は、「起訴できるけれどもしない」という選択をするものですから、「刑法には抵触するものの、処罰するまでのことはしていない」「示談が済むなどして被害者が許している」などの理由が必要です。
なお、被害がごく軽微であっても行為態様が非常に悪質であったり、被害者が許していても社会的に影響の大きい事件では起訴の判断をすることもあるなど、全ての事情を考慮してなされるものですので、「被害者が許しているから不起訴」などと一概にいえるものではない点は付言しておきます。
参考:昭和52年版 犯罪白書(法務省) hakusyo1.moj.go.jp/jp/18/nfm/n_18_2_2_1_3_1.html |
起訴猶予処分までの流れと期間
起訴猶予処分が下されるまでには、いくつかのステップを経る必要があります。
以下に、一般的な流れを時系列に沿って説明します。
①事件発覚・捜査の開始
まず、事件が警察などにより認知されると、捜査が開始されます。
被疑者の取調べや証拠収集が行われ、必要に応じて逮捕・勾留される場合もあります。
②検察庁送致
警察の捜査が一段落すると、事件は検察庁に送致されます。これを「検察庁送致」といいます。送致後は検察官が事件を引き継ぎます。
③検察官による取調べと判断
検察官は、収集された証拠に基づいて被疑者を取り調べ、起訴すべきか否かを判断します。
ここで、犯行態様、被害結果、動機、その他事情(示談の有無、前科の有無、年齢・境遇、被疑者の反省の態度等)が総合的に考慮されます。
④起訴猶予の決定
検察官が起訴を猶予することが相当と判断すれば、起訴猶予の処分が決定され、不起訴処分通知書が交付されます。
この全体の流れは、事件の内容や被疑者の協力状況によって異なりますが、概ね数週間から数か月程度で処分が決定されるのが一般的です。
起訴猶予と不起訴の違いは?
不起訴処分とは、公訴提起しない処分一般を指します。
起訴猶予、嫌疑不十分、嫌疑なし、はそれぞれ「不起訴処分」のうちの1つです。
不起訴処分の種類
1. 訴訟条件を欠く場合
被疑者が死亡したとき,親告罪について告訴が取り消されたときなどは,訴訟条件(起訴するための法律上の条件)を欠くことになり不起訴となります。
2. 被疑事件が罪とならない場合
被疑者が犯罪時14歳に満たないとき,犯罪時に心神喪失であったときなどは,被疑事件が罪とはならず不起訴となります。
3. 犯罪の嫌疑がない場合
被疑者が人違いであることが明白になったときなど,犯罪の嫌疑がない場合は,もちろん不起訴となります。
4. 犯罪の嫌疑が不十分の場合
捜査を尽くした結果,犯罪の成立を認定すべき証拠が不十分なときは,不起訴となります。
5. 起訴猶予の場合
被疑者が犯罪を犯したことが証拠上明白であっても,被疑者の性格,年齢,境遇,犯罪の軽重と情状,犯罪後の情況により訴追を必要としないと判断される場合は,検察官の判断により起訴を猶予して不起訴とすることがあります。
(検察庁HPより)
起訴猶予が選ばれやすい事例
被害がごく軽微
例えば、マンションが管理しているゴミ置き場からゴミを持ち出すことは、マンション管理者の占有権侵害として、窃盗にあたります。
例えば「通りがかりにマンションゴミ置き場があり、そこにコピー用紙の束が捨ててありました。被疑者は、メモ用紙を欲していたため、そのコピー用紙のうち破れている1枚を拾い、自分のメモ用紙にするために持ち帰りました。」という事案では、確かに被疑者の行為は窃盗です。
しかし、これが窃盗にあたるからといって処罰すべきかというと、疑問があるのではないでしょうか。
このような事例は「被害がごく軽微」として起訴猶予とすることも考えられます。
被害者が許している
上記の事案で「盗んだものはコピー用紙1束でした。しかし、マンション管理権者は、窃盗で被害届を出すつもりもなく、被疑者を処罰してほしい気持ちはない旨述べました。」という事案はどうでしょうか。
被害者であるマンション管理権者が、とくに犯人の処罰を望んでいませんし、被害結果もそこまで大きいものではありません。
このような事例の場合は、「被害者が処罰を望んでいない」として起訴猶予とすることも考えられます。
被害回復がなされている
上記の事案で、「盗んだものはコピー用紙1束でした。しかし、被疑者はコピー用紙1束を持ち帰った後、犯罪かもしれないと怖くなり、すぐに元あった場所にコピー用紙1束を戻しました。」という場合はどうでしょうか。
持ち出した時点で窃盗罪は成立していますから、犯罪行為がなかったことにはなりません。
しかし、これも処罰すべきかというと、疑問があるのではないでしょうか。
このような事例の場合は、「被害回復がなされている」ともいえ、起訴猶予とすることも考えられます。
起訴猶予のメリット
早期の社会復帰が可能、処罰されない(罰金、懲役等)、前科がつかない、などです。
ただし、起訴猶予となった場合、前科はつかなくとも、捜査機関には「前歴」として事件記録が残ります。
起訴猶予となった場合でも、その後に同種の犯罪を犯した場合、影響を与えることがあります。
また、ごく稀に、一度起訴猶予として処罰しない判断をした事件であっても、「再起」といって再度起訴を決定することもあり得ます。
早期の社会復帰が可能
起訴猶予となれば、裁判を受ける必要がなく、刑罰も科されないため、生活への影響を最小限にとどめたまま、社会復帰を図ることができます。
前科もつかないため、就労や進学への支障も比較的少なく、再スタートがしやすい処分です。
【社会復帰のためのポイント】
- 被害者との示談を成立させておく
- 真摯な反省を態度で示す
- 家族や職場などの支援体制を整える
- 再犯防止のための環境づくりを意識する
これらは最低限意識しておくことが大切です。
起訴猶予が適用される条件と期間は?
起訴猶予は、刑法第248条に基づき、検察官が「訴追を必要としない」と判断した場合に適用されます。
具体的には、犯行態様が悪質でないこと、被害が軽微であること、被害弁償や示談が成立していること、被疑者が初犯であることなどが重要な判断要素となります。
また、社会復帰の見込みがある場合や、処罰よりも更生が適切と判断される場合に選択されることもあります
一般的には事件送致後、数週間から数か月以内に処分が決定されます。
なお、起訴猶予となった場合であっても、再犯時には過去の起訴猶予が不利に働くこともあります。
示談交渉の重要性
示談した場合、被害者が「被疑者の処罰を望まない」と述べてくれる場合があります。
この場合は、被害者が処罰を望んでいないものとして、起訴猶予となる可能性が高まります。
示談は、被害者の意向が全てです。
示談した場合であっても、被害者が「被害回復として示談金を受け取るが、被疑者のことを許すつもりはない」といった場合は、必ずしも起訴猶予となるとは限りません。
また、被害者が「被疑者の処罰を望まない」と言ってくれたとしても、犯行態様が悪質であったり、社会的影響が大きい事案は、起訴猶予とせずに公訴提起する場合も多くあります。
示談したからといって必ず起訴猶予になるわけではないので、注意してください。
起訴猶予後の生活への影響
起訴猶予処分となれば、刑罰は科されず、前科もつきません。
そのため、一般的には就職や進学など社会生活への直接的な法的障害はありません。
ただし、事件が報道された場合や、逮捕歴がある場合は、企業の採用選考で不利になることがあります。
また、一部の資格職では、過去の逮捕歴や事件関与が調査される可能性が考えられます。
しかし、正式な起訴や有罪判決がないため、日常生活や大半の職業では大きな支障は生じにくく、社会復帰は比較的スムーズに進められます。
就職・転職時の対処法
起訴猶予後の就職・転職では、基本的に前科がつかないため、履歴書に記載しなくとも罪に問われることはないと考えられます。
ただし、逮捕歴が知られた場合に備え、過去を問われた際は事実を簡潔に説明し、現在は反省し再発防止に努めていることを強調しましょう。
特に公務員や士業など一部の職種では調査が入る場合があるため、事前に専門家へ相談し対応策を確認すると安心です。
また、誠実な態度と社会復帰への努力を示すことが、信頼回復への鍵となります。
起訴猶予の実例
起訴猶予となる実例としては、軽微な窃盗事件や傷害事件で被害者と示談が成立し、被疑者が初犯で反省している場合等があります。
たとえば、コンビニでの少額万引きや、口論中の軽度な暴行などが該当します。
こうした実例では、行為の悪質性の低さや被害結果の回復の程度がが重視され、社会復帰の道が開かれます。
起訴猶予は、日本の刑事司法における柔軟な処分制度として、一定の役割を果たしています。
窃盗事件での具体例
例えば、コンビニでおにぎり1個(販売価格150円程度)を万引きしたケースが挙げられます。
被疑者は初犯であり、逮捕後すぐに反省の意を示し、被害店舗とも示談が成立し、被害弁償も済ませました。
このように被害が軽微で、示談が成立し、再犯の恐れが低い場合、検察官は社会的影響や情状を考慮し、起訴猶予処分とすることがあります。
これにより、刑事罰を受けずに社会復帰が可能となります。
よくある質問
起訴猶予に関してよくある質問には、「前科がつきますか?」というものがあります。
これについて、前科はつきませんが、捜査機関には「前歴」として記録が残ります。
「起訴猶予後に再犯するとどうなりますか?」という問いも多く、これに対しては過去の起訴猶予が不利に働き、起訴される可能性が高まると説明されます。
「示談すれば必ず起訴猶予になりますか?」という疑問に対しては、示談は有利な要素の一つですが、事件の悪質性や社会的影響も考慮されるため、必ずしも起訴猶予になるわけではありません。
起訴猶予後の具体的な影響
起訴猶予後は刑事罰を受けないため、前科がつかず生活への影響は限定的です。
しかし、逮捕歴や前歴は捜査機関に記録されるため、公務員試験や一部の職種での採用時に影響する可能性があります。
一方、一般企業であれば問われないことが多く、就職や日常生活には大きな支障は生じにくいのが実情です。
ただし、再犯時には過去の起訴猶予が不利に働くため注意が必要です。
まとめ
起訴猶予とはいっても、事例ごとに様々です。
被害が軽微でも起訴されることはありますし、被害者が許していても起訴となることはあります。
事件ごとに起訴猶予の可能性の有無を判断するには、多角的な観点から事件を見る必要があります。
心配な方は、弁護士など専門家に相談して、その可能性を見極めてもらうのがいいでしょう。
- 得意分野
- 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
- プロフィール
- 京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設