横領罪で逮捕されるケースとは?弁護士に相談するメリットや逮捕後の手続きを解説
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記事目次
ニュースなどで、「会社の役員が横領をして逮捕された」といった内容を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
それでは、横領とはいったいどういった犯罪なのでしょうか。
横領をしてしまうと必ず逮捕されてしまうのでしょうか。
逮捕されてしまったらどうしたらよいのでしょうか。
本記事では、横領で逮捕されてしまうケースや、逮捕されてしまった後の流れ、逮捕されないためにできることについて解説していきます。
横領で逮捕される3種類の犯罪類型とは?
私たちがニュースや新聞でよく目にする横領という言葉ですが、横領にも3つの犯罪の種類(犯罪類型)があります。
そして、3つの犯罪類型いずれも、被害者からの告発や告訴、税務調査等によって捜査機関が犯罪を認知することで、捜査等が進められます。
横領罪は金額等も高額になることが多いため、逮捕等の刑事手続きを進める可能性が高い犯罪類型といえます。
横領罪には、「単純横領罪」、「業務上横領罪」、「占有離脱物横領罪」という3つの犯罪類型があります。
例えば、会社の財務や会計を担当している従業員が、会社のお金を着服したという行為は、横領の罪の中でも業務上横領罪になります。
以下にて、3つの犯罪類型について知り、法定刑などについても確認いたしましょう。
1.単純横領罪
単純横領罪とは、「自分が占有している他人の物を横領した」場合に成立する犯罪です。
例えば、知人から借りていたカメラを返さずに自分の物として使ったり、自分のもののように質屋などで売却をしたりして、お金を得たときに単純横領罪が成立します。
なお、横領罪には、以下の業務上横領罪及び占有離脱物横領罪でも共通して、「不法領得の意思」と呼ばれる要件が必要で、これは、他人の物を自分のものとして、その経済的用法に従って利用・処分する意思のことをいいます。
【条文】 刑法第252条第1項 自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。 |
単純横領罪が成立するポイント①他人の物
ここでいう「他人の物」とは、他人の所有物を指します。
これは、民法上の所有権を基礎としつつ、法律的・経済的な見地に立ってその保護の必要性を考慮して決定されます。
横領事件では、他人の所有権を侵害したか否かが違法行為として処罰されるかの中核的な根拠になります。
また、「物=財物」であることもポイントのひとつになります。
刑法上の財物は、「固体・液体・気体といった、空間の一部を占める有体物」を意味します。
そのため、財産権などの財産上の利益を横領しても、横領罪に問われることはありません。
単純横領罪が成立するポイント②占有
「占有」とは、濫用のおそれのある支配力を指し、事実的な支配のみならず、法律的な支配も含むとされています(大判大4.4.9)
「占有」については、自分が占有する他人の物であっても、占有が委託に基づかない場合は、後述する占有離脱物横領罪(刑法254条)が成立します。
この関係から、横領罪(刑法252条)における「占有」は、委託信任関係に基づく占有であることが必要と考えられています。
単純横領罪が成立するポイント③委託信任関係
契約を基礎としたり、法令、条理、慣習、取引における信義誠実の原則に基づく場合があります。
委託信任関係をわかりやすくいうと、信頼関係に基づいて財物を委託され占有していたという状態です。
単純横領罪が成立するには、「他人の物の占有が委託に基づくこと」が必要とされます。
単純横領罪について定める刑法典の条文には「占有の委託関係」には直接的に記載されていませんが、占有離脱物横領罪との区別の必要から、必要とされています。
単純横領罪が成立するポイント④横領行為
横領行為とは、裁判例では、不法領得の意思を実現する一切の行為をいうとされています(最判昭27.20.17)。
ここでいう「不法領得の意思」とは、「他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思」のことを指します。
例えば、売買、贈与、質入れ、抵当権の設定、費消、着服などが含まれます。
実務では、毀棄や隠匿の意思や一時使用の意思、第三者に領得させる意思などに基づいて横領行為に及んだケースでも、幅広く単純横領罪の成立を認める傾向にあります。
単純横領罪を犯した場合の法定刑としては、5年以下の懲役となります。
法定刑に罰金刑が挙げられていないため、執行猶予付き判決を獲得できないかぎり、実刑判決による刑務所への収監を避けられません。
なお、後述する占有離脱物横領罪と単純横領罪の違いとしては、相手からの信頼を得ているか否かという点が異なります。
相手からの信頼を得て自身が占有する財物を、着服したり、処分した場合に単純横領罪が成立します。
2.業務上横領罪
【条文】 刑法第253条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。 |
業務上横領罪が成立するポイント:業務に基づくものかどうか
業務上横領罪には、先ほどの「単純横領罪」との違いとして、他人の物を占有している根拠が、「業務に基づくものかどうか」という点があります。
「業務」とは、金銭その他の財物について、委託を受けて保管することを内容とする職業や職務のことを指し、法規又は慣習によるか契約によるかを問わず、同種の行為を頒布すべき地位に基づく事務をいいます(大判昭9.10.29)。
たとえば、会社のお金を保管する経理社員、公金を保管する公務員、預り金を保管する弁護士等のほか、運送業者や倉庫業者なども業務者にあたります。
業務性以外の構成要件は、単純横領罪と同様となります。
「単純横領罪」の法定刑である懲役5年以下と異なり、「業務上横領罪」の法定刑は懲役10年以下と重たい内容となっていますが、これは、委託に基づく他人の物の占有が「業務」として行われている点を重視して、単純横領罪に比べてその責任の重さを考慮して、法定刑が加重されています。
業務上横領罪の例としては、会社の財務や会計を担当している従業員が会社のお金を着服したという行為が挙げられます。
業務上横領罪の法定刑は、10年以下の懲役です。
委託に基づく他人の物の占有が「業務」として行われている点に特徴があるため、単純横領罪に比べて責任が加重されており、金額の大きさなどによれば、初犯であっても実刑を免れることはできない傾向にあります。
3.占有離脱物横領罪
【条文】 第254条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。 |
占有離脱物横領罪が成立するポイント:占有離脱物
占有離脱物横領罪の対象は、「占有を離れた他人の物」(占有離脱物)であり、「遺失物」や「漂流物」はその例示となります。
本人の所有権侵害という点だけが違法性の根拠となるので、単純横領罪・業務上横領罪の基本類型に位置付けられます。
「占有」とは、財物に対して事実的支配を有している状態、又は、財物を管理している状態をいいます。
現にその人が財物を手にしている「所持」の状態だけではなく、カフェで席を離れて商品の注文に行く際に視線の届く席に置いている、駅前のベンチに置いたままごく短時間だけそのベンチを離れたといった場合にも「占有」が認められることがあります。
「占有を離れ」ていても自己の所有物ではないので、これを自分の物のように自由に使用・処分すると横領罪が成立するということです。
占有離脱物横領罪の例としては、公園のベンチに落ちていた財布を自分のものとして、持ち去る行為や誰のものかわからない放置されている自転車を自分のもののように乗って乗り捨てる行為などが挙げられます。
占有離脱物横領罪の法定刑は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料となります。(なお、罰金は金額が原則1万円以上であり、科料とは、金額が千円以上1万円未満の刑罰のことをいいます。)
単純横領罪や業務上横領罪と比較すると、かなり軽い刑罰内容となっています。
そのため、遺失物等の横領事件で逮捕された場合には、執行猶予付き判決や罰金刑などによって実刑判決回避を目指すだけではなく、微罪処分や不起訴処分などを目指す余地も残されていると考えられるでしょう。
横領罪と類似の多罪に注意
横領罪と似ている犯罪の中には、「背任罪」や「窃盗罪」があります。
横領罪との違いはどこにあるのでしょうか。
1.背任罪
横領罪に類似する犯罪として、「背任罪」(刑法247条)があります。
背任罪とは、他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を与える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときに成立します。
背任罪の例としては、銀行員の融資担当業務を行う者が、負債が多く債権の回収の見込みがないお客様に対して、そのことを知りながら、何らの担保も取らずに融資を実行したりする行為が代表的です。
横領罪と背任罪の違いは、横領罪は、犯罪が成立する対象が財物に限定されていますが、背任罪については、対象が財物に限定されていないため、財産上の利益を両得する場合にも成立します。
背任罪は、本人の事務を処理する中で本人の全体財産に損害を与えたということができれば成立します。
また、財物が対象となり、横領罪と背任罪のどちらも成立しそうな場合にはどうなるのかという点については、横領罪が成立するときは、背任罪は成立しないという適用関係になっています。
なお、背任罪の法定刑は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。
2.窃盗罪
横領罪に類似する犯罪として、「窃盗罪」(刑法第235条)があります。
窃盗罪とは、他人の財物を故意(わざと)に盗み、自分の財物にする犯罪です。
横領罪と窃盗罪の違いは、犯罪を行ったときに、他人の物を自分が占有していたか否かです。
他人の財物を自分の所有物のように取り扱うという点では、窃盗罪は横領罪と類似しています。
しかしながら、横領罪は他人の財物が自己の占有の下にあるときに、その物を自己の所有物のように利用ないしは処分をすることに対する刑罰であるのに対し、窃盗罪は他人が占有している財物を自己の所有物のように利用・処分することに対する刑罰となります。
たとえば、会社で経理の担当をしている従業員Aが、A自身が管理している会社の経費を横領するのは業務上横領罪になります。
しかし、同じ会社で営業の担当をしている従業員BがAの管理する経費を盗んだ場合には窃盗罪となります。
横領罪で逮捕されるまでの流れ
横領罪で逮捕されてしまうと次のような流れで、刑事手続きを受けることになります。
弁護士が逮捕後にできることは、身柄の拘束を解放してもらうために勾留請求に対する意見書や勾留に対する準抗告、勾留延長に対する準抗告等の書面を作成・提出し、釈放を求めることです。
また、起訴後であれば、保釈の請求等をすることが可能です。
1.逮捕
横領について、被害者や被害会社からの告発や告訴、場合によっては、警察の税務捜査等から横領の事実が明らかになり、警察の捜査が始まります。
捜査の中で、捜査の必要性や逃亡の防止、証拠隠滅の防止のために、逮捕されることも多いです。
逮捕を避けるためには、弁護士を介して、早期に被害者と示談交渉を行ったり、在宅事件(自宅で日常生活を送りつつ、取り調べ等の捜査の必要なときのみ出頭して刑事手続きを進める方法です。)として取り扱ってもらえるように弁護士から捜査機関へ申し入れること等があります。
逮捕されると、一般的に警察の留置場にて身柄を拘束され、警察や検察官といった捜査機関による取り調べや家宅捜索等の捜査を受ける等の生活を送ることになります。
逮捕後は釈放される以外に自宅に帰ることは原則として認められず、警察署内にある留置場(又は拘置所)に入れられ、ここから出ることを禁止され、外部との連絡も自由にできなくなります。
2.検察官送致
逮捕から48時間以内に、横領事件の容疑で逮捕された後、釈放されたり、微罪処分(軽微な犯罪等で、刑事事件の捜査を警察段階で終える手続きのことをいいます。)を獲得できたりしなければ、警察から検察に身柄が送致されます。
単に「送致」や「送検」といわれることもありますが、全て同じ意味です。
事件は、微罪処分の対象となったもの等ごく一部を除き、全て検察官に送致されます。
検察官送致される日の朝、被疑者は、同じ警察署に留置されている他の被疑者と一緒に警察車両に乗せられて、検察庁へ行きます。
検察官との面接は、1人ずつ、15分〜20分くらいかけて行われます。
検察官は、事件の資料と被疑者との面会を踏まえて、勾留をする必要があるか無いかを判断します。
勾留の必要があると判断した場合は、検察官は、被疑者を受け取った(送致を受けた)時から24時間以内に、裁判官に対して勾留の請求を行います。
反対に、勾留の必要はないと判断した場合は、被疑者はすぐに釈放されます。釈放後は日常生活を送ることができますが、警察から取り調べなどに呼び出された場合はそれに応じなければなりません。
令和4年版犯罪白書によれば、93.9%の事件が勾留請求されています。逮捕されてから何もしなければほとんどの事件が勾留請求され、逮捕から最長で23日間の身柄拘束を受けることが決定してしまいます。
3.勾留請求
検察段階で実施される取調べには時間制限があり、原則24時間以内となっています。
横領事件について、証拠が大量になったり、横領の期間が長い場合には、証拠の精査等時間がかかることも多く、警察段階での48時間の捜査と検察段階での24時間も捜査だけでは時間が足りないため、検察官による勾留請求がなされることが一般的です。
勾留請求をされた場合、被疑者は警察署から裁判所へ警察車両で連れて行かれ、裁判官から勾留質問を受けます。
裁判官から被疑者に対して、どのような事件のために勾留されるのか、弁護人を選任できることなどの説明がされます。
裁判官は、勾留の理由があると判断した場合は速やかに勾留状を発し、勾留の理由がないと判断した場合は直ちに被疑者の釈放を命じます。
4.勾留決定
検察官による勾留請求に対して、裁判官による勾留決定がなされると、捜査の必要のために原則10日間勾留されることになります。
警察や検察は、この10日間を使って取り調べや実況見分などの捜査を行います。
検察官は、勾留の期限が切れるまでに被疑者を起訴するか否か(裁判にかけるか否か)を決定します。
勾留場所は、基本的には逮捕されて身柄を拘束されている検察の留置場に引き続きいることになります。
被疑者段階における勾留とは、被疑者が証拠を隠したり逃亡することを回避するために、刑事施設(警察署内の留置場又は拘置所)で身柄を拘束することをいいます。
勾留は、罪を犯したと疑うに足りる相当の理由がある場合で、①定まった住居がないこと、②証拠隠滅のおそれがあること、③逃亡のおそれがあることのうち少なくとも一つに該当した場合に認められます。
5.勾留延長請求及び勾留延長決定
原則、勾留は10日間ですが、横領事件は証拠や関係者、犯行期間の長さ等から捜査に時間を要することもあり、10日間で捜査が終えられない場合には、検察官は勾留延長の請求を行います。
それに対して、裁判官が勾留延長決定をすると、追加で最大10日間の勾留の延長が認められます。
6.終局処分(起訴、不起訴)
警察及び検察官等の捜査が終わると、証拠書類や供述等を総合的に考慮して、検察官により、起訴とするか不起訴とするかといった終局処分が下されます。
起訴というのは、刑事裁判にかけられるということです。
7.刑事裁判及び判決
起訴されれば、刑事裁判にかけられるため、刑事裁判の中で横領罪についてどのような処罰を負うべきか裁判所によって判断されることになります。
刑事裁判のスケジュールとしては、起訴から1か月から2か月程度で公判期日(刑事裁判の日)を指定されることが多いです。
公判期日を終えると、判決言い渡し日を迎え、裁判所から横領罪についての処分(判決)が言い渡されます。
横領罪で逮捕された人の末路は?逮捕によるリスクとは?
横領罪に当たる行為をして、逮捕された人はどうなるのでしょうか。
適切な対応をしなければ、以下のようなリスクが生じます。
- 逮捕により、職場や学校に行けなくなり、事件が発覚して、解雇されたり、退学処分になる
- 横領の事実が明るみになり、実名報道されることで、自分のみならず、勤務先の会社や家族に与える悪影響が考えられる
- 刑事処分により、前科がつくことで今後の生活に支障が生じる
- 被害者などから損害賠償請求(民事責任)を問われる可能性が考えられる
1.解雇や退学になる
逮捕され勾留されると自宅には帰れず、警察の留置場にて最大23日間は生活をすることになります。
それだけの間、勤務先の会社や通学先の学校を休むことになれば、逮捕されていることが発覚し、横領の事実が発覚する可能性が非常に高いです。従業員に対する処分は会社にもよりますが、懲戒処分として懲戒解雇される例も少なくありません。学校においては、退学処分になることも多いです。
逮捕された際に、弁護士が就いていれば、勾留請求に対する意見書や交流に対する準抗告などの書面を作成し、身柄解放に向けた動きを求めることも可能です。
また、最善の方法を尽くすとすれば、逮捕される前に弁護士にご相談をいただき、捜査機関に横領の事実が発覚する前に被害者や被害会社と示談交渉をして、解決を図り、逮捕や刑事的処分を受けずに済むようにするのが理想的です。
そのため、横領の際は、勇気を出して、迅速に弁護士にご相談いただくのが良いです。
2.実名報道によって家族へも悪影響を与える
横領の事実が社会に明るみになれば、ニュースや新聞などにて実名報道がなされたり、それにより、勤務先の会社名が報道されたり、住所地などが明らかになり、家族が報道機関や世間の人からの注目が集まり、そこに居続けられなくなるなどの社会的な制裁を受けることが考えられます。
現在は、SNSの普及や情報社会であるため、一度社会に出た情報等の流通速度は凄まじいものがあり、場合によっては、住所や家族構成などの特定がなされ、家族全員で転居を余儀なくされる方もいらっしゃいます。
これらを防ぐためには、捜査機関等に発覚し、刑事事件化する前に弁護士によって、被害者や被害会社などと示談交渉を行い、解決することが報道などを防ぐためにも、重要となってきます。
3.前科がつく
逮捕され、刑事裁判にかけられて有罪判決が下されると前科がつきます。
前科がつくと勤務先の会社を懲戒解雇されることや通学先の学校が退学処分になる可能性が高いことは先に触れたとおりですが、その後の生活にも影響を与えます。
例えば、就職がなかなか決まらないといった就職活動に影響が出たり、公務員や公認会計士・税理士・司法書士・行政書士などの士業に就けないといった職業への制限が生じる可能性があります。
前科がつかないようにするためには、捜査機関に横領の事実が発覚する前に示談交渉などを弁護士が行ったり、発覚後には、不起訴処分の獲得ができないかなどの弁護活動を行っていくことが必須となります。
4.民事責任を問われる
横領をすれば、刑事的な処分のみならず、被害者から民事上の責任を求められる可能性もあります。
民事上の責任とは、被害者から横領した被害額の支払いや横領によってその他の損害が発生すれば、そういった損害の回復に必要な金銭の支払いを求められる可能性が発生することをいいます。
刑事的責任と民事的責任は異なりますが、被害の回復という点で行くと、弁護士による刑事の示談交渉の中で被害者の被害の回復が図られれば、被害者から民事上の責任を求められない可能性もございます。
逮捕されないためにできること
それでは、逮捕されないためにはどうしたらよいのでしょう。
ここからは、逮捕を回避するための方法について解説していきます。
1.弁護士への相談
横領により、逮捕を避けるためには、横領をした際になるべく早期に弁護士に相談をすることが何よりも重要となります。
横領事件においての刑事弁護活動は、どの時期の弁護士へのご相談・ご依頼かによってできることが変わってきます。
弁護士に相談することで、被害を弁償して示談を成立させるなどして、逮捕を回避できる可能性が高まりますし、被害者との示談交渉を進めることを警察・検察に説明し、必ず任意の出頭に応じることを伝えるなど、逮捕の必要性がないことを弁護士から主張してもらうことも可能になります。
相談するタイミングによっては、逮捕を回避するために弁護士ができることがほとんどないといった事態になる恐れもあるため、早期に相談することが重要です。
2.被害者との示談
捜査機関への発覚前であれば、被害者との示談交渉をすることが可能ですので、示談交渉の結果によっては、捜査機関に発覚する前に事件を終わらせられる可能性もあります。
具体的には、横領事件について被害の申告等をされる前に示談がまとまれば、被害届や告訴状の提出を回避できるので、横領事件の刑事事件化自体を防ぐことができます。
捜査機関に発覚後であれば、被害者との示談交渉に加えつつ、捜査機関に対して、不起訴処分の獲得のために情状弁護などの弁護活動を行い、起訴されれば、刑事裁判の対応を行い、刑事処分の軽減に努めます。
被害者との示談交渉は、必ずしも弁護士が対応しなくてはならないものではありませんが、被害者と加害者本人、または本人に近い関係性の人物が直接話し合う場を設けても、冷静に対応できない可能性が高いです。
また、着服金額が高額なケースでは、示談金の支払い方法についても、現実的に支払い可能な範囲と、被害者が納得できる範囲をすり合わせる慎重な交渉が必要になるため、示談交渉の経験が豊富な弁護士へ依頼することをおすすめします。
3.警察等捜査機関への対応
自首をすると、起訴されて裁判を受けることになったとしても、減刑されるというメリットがあります(刑法42条1項)。
ご相談やご状況に応じて、ご希望があり適している場合には、弁護士が自首に同行して、自宅での捜査を求め、逮捕されないように対応をすることもあります。
警察に発覚するまでに被害者との示談が成立すれば、被害届の提出や告訴がなされる可能性は低いですが、そうでないケースでは、自首をすることも選択肢の一つになり得るでしょう。
また、弁護士によっては、警察への取り調べの同行などのサポートや対応についても行っていますので、まずは相談してみましょう。
横領罪で逮捕された際に弁護士に相談するメリットとは?
1.示談交渉等により早期の解決が見込まれる
横領事件において、逮捕を防ぎ、報道や前科がつかないようにするためには、被害者との早期の示談交渉が必要です。
弁護士にご相談いただくタイミングは早ければ早いほど弁護士においてできる刑事弁護活動の幅が増えますので、解決できる速度や解決の内容が変わります。
たとえば、被害者が捜査機関に告発等をする前に示談交渉を開始し、示談がまとまれば、被害者から捜査機関による被害届や告訴状の提出を回避できるので、横領事件の刑事事件化自体を防ぐことができます。
また、すでに捜査機関に横領の事実が発覚し、刑事事件化してしまった場合においても、弁護士において被害者と示談交渉をし、示談交渉がまとまることで、不起訴処分を獲得できる可能性がありますし、不起訴処分の意見書は弁護士にしか作成することができない書類です。
仮に、検察官により、起訴され、刑事裁判になったとしても、示談が成立しているか否かは、刑事処分において、量刑を左右する重大な要素となりますので、罰金刑や執行猶予付き判決によって実刑を回避しやすい傾向があります。
2.身体拘束の解放等に注力してもらえる
弁護士にご相談をいただければ、逮捕されないように示談交渉をしたり、場合によっては、自首に同行し、自宅での捜査の重要性を伝えることで逮捕を防いだりするよう努めることができます。
また、逮捕された場合には、勾留請求に対する意見書や交流に対する準抗告などの書面を作成し、身柄解放に向けた動きを求めることも可能です。
これらの書面や活動はいずれも弁護士でなければ行うことのできないもので、適切な時期や期限があるものになります。
そのため、早期に弁護士に相談し、1つでもできることを増やすことが重要となります。
3.今後の人生の転換期となる
横領事件においては、金額や内容により初犯であっても実刑が免れない場合や早期の対応によって刑事事件化を防いだり、前科がつかないように対応することができたりすることは、弁護士に相談することでできることの内容の1つとなります。
今までの人生や横領など自身がしてしまった事実と向き合い、今後の人生をどのように過ごすかは誰もが到底一人で考えられるようなものではございません。
弁護士に相談することで、今までの人生や自身がしてしまったことを共に振り返り、一緒に向き合って今度どうするのが良いのか、どうしていく必要があるのかを一緒に弁護士が考えることができます。
横領事件は人生の転換期となるものです。そのタイミングで今までのそして、今後の人生のためにも弁護士に相談することをお勧めいたします。
まとめ
本記事では、横領罪で逮捕されてしまう場合について解説してきました。
横領には、①単純横領罪、②業務上横領罪、③占有離脱物横領罪の3種類があります。
占有離脱物横領罪であれば、罰金刑の可能性もあり得ますが、業務上横領罪の場合には、10年以下の懲役刑で、罰金刑がありませんので、執行猶予が付かない限りは刑務所に入らなければなりません。
また、逮捕・勾留されてしまえば、最大で通算23日間身柄を拘束されます。
横領罪で逮捕されてしまうと、自分の生活や未来、家族へも悪い影響が及んでしまいます。
逮捕されずにできるだけ穏便な解決を目指したいと考えているのであれば、被害者との示談が重要になります。
早期に示談が成立すれば、逮捕を回避できる可能性が高まりますし、早期釈放・不起訴処分・執行猶予を得られる可能性も高まります。
示談交渉は、当人同士で行うと話がまとまらない可能性が高く、余計に話がこじれてしまうケースもありますので、横領事件の早期解決を目指すなら、示談交渉の経験が豊富な弁護士へ相談することをおすすめします。
- 得意分野
- 契約法務 、 人事・労務問題 、 紛争解決 、 債権回収 、 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件 、 交通事故
- プロフィール
- 鹿児島県出身 中央大学法学部法律学科 卒業 関西学院大学大学院司法研究科 修了