補導とは?対象の行為や時間、逮捕との違いを紹介

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記事目次
「夜遅く出歩いていたら補導された」
「コンビニ前でたむろしていたら警察に声をかけられた」
――補導という言葉を耳にしたことはあっても、具体的にどのような行為が対象となり、どんな意味があるのかは意外と知られていません。
補導は逮捕とは違い、あくまで未成年の保護を目的とした対応です。この記事では、補導される行為や時間帯、逮捕との違い、補導された後の流れなどを、弁護士の視点からわかりやすく解説します。
※なお、少年法上男女を問わず「少年」と呼ばれるため、以下では「少年」と記載があれば男女を問わない趣旨だとご理解ください。
補導とは何か
補導とは、主に警察などの関係機関が、非行や問題行動を起こした、またはその恐れがある少年に対して行う指導や保護のことを指します。対象となるのは主に20歳未満の少年で、深夜の外出、喫煙、飲酒、万引きなどが理由で補導されることがあります。補導は刑罰ではなく、更生や健全な成長を促すための支援的措置であり、家庭や学校との連携を通じて再発防止を目指すという性質のものです。
補導には大きく分けて「街頭補導」と「継続補導」の2種類がありますが、一般的にイメージされる補導は、「街頭補導」を指します。
・街頭補導:繁華街などの非行が行われやすい場所で、少年の非行を未然に防ぐために行われる指導
・継続補導:非行や問題行動を繰り返す少年に対し、家庭や学校と連携しながら継続的に行われる支援・指導
逮捕との違い
補導と逮捕は、どちらも警察が関与する行為ですが、目的や対象、法的な意味合いが大きく異なります。
まず補導は、20歳未満の少年を対象とし、犯罪や非行に関わる可能性がある行動をした際に、指導や保護を目的として行われる措置です。例えば、深夜に徘徊している少年や、喫煙・飲酒などの軽微な非行が見られる場合に、警察が声をかけて注意したり、一時的に保護して保護者に引き渡すなどの対応がとられます。補導はあくまで教育的・予防的な対応であり、法的な処罰ではありません。
一方で逮捕は、犯罪の疑いがある人物に対して行われる強制力を伴う手続きです。逮捕された場合、その人物は一定期間拘束され、取り調べを受けることになります。必要があれば勾留されて身体拘束が継続され、その後証拠がそろえば起訴されて裁判にかけられる可能性もあります。逮捕には現行犯逮捕・緊急逮捕・通常逮捕の3種類がありますが、法律に基づいて厳格に行われています。
このように、補導は少年の更生を目的とした非強制的措置であり、逮捕は犯罪捜査の一環として行われる強制的な手段であるという点で、大きく異なります。
補導の対象年齢
補導の対象年齢は、少年警察活動規則第2条1号及び少年法第2条1項に基づき「二十歳に満たない者」とされています。2022年の民法改正により成人年齢は18歳に引き下げられましたが、少年法では引き続き20歳未満が「少年」とされるため、警察などの補導対象にも20歳未満が含まれます。
しかし、各自治体の青少年健全育成条例では、18歳未満の者が「青少年」と定められていることがほとんどのため、現実的に18歳以上20歳未満の少年が補導される例はあまり多くありません。
補導の対象となる行為とは
少年が不良行為を行う場合、そのまま放置すれば非行その他健全育成上の支障が生じる恐れがあると考えられているため、不良行為は補導の対象とされています。
そして、不良行為の種別及び態様については、警察庁の通達である「不良行為少年の補導について」(令和6年3月4日付け警察庁丙人少発第14号)において、以下のように定められています。
・飲酒
・喫煙
・薬物乱用
・粗暴行為
・刃物等所持
・金品不正要求
・金品持ち出し
・性的いたずら
・暴走行為
・家出
・無断外泊
・深夜はいかい
・怠学
・不健全性的行為
・不良交友
・不健全娯楽
・その他
補導の対象となる時間とは
深夜はいかいで補導されるケースが多いため、補導には時間的な条件があると思われることもありますが、上述のとおり、不良行為が発見されればいつでも補導される可能性があるため、補導には時間的制限はありません。
しかし、補導の対象行為である「深夜はいかい」については、各自治体が定める青少年保護育成条例において、「深夜」に該当する時間帯を何時から何時までと定義しているかが参考になります。
例えば、東京都の青少年健全育成条例第15条の4では、「保護者は、通勤又は通学その他正当な理由がある場合を除き、深夜に青少年を外出させないように努めなければならない。」と定めており、深夜に該当する時間帯については、「午後11時から午前4時までの時間をいう」と定義されています。
多くの自治体で、東京都と同様に午後11時から午前4時までの間が「深夜」として定められていますが、大阪府では16歳未満の者については「午後8時から午前4時」、16歳以上18歳未満の者については「午後11時から午前4時」に外出させないようにすべき努力義務を保護者に課しており、自治体によって違いがあるようです。
補導歴とは何か
補導歴とは、警察などが作成する少年補導票に記録された、補導された事実の経歴を指します。これは犯罪歴とは異なり、刑罰には直結しませんが、問題行動等があったことを示す内部記録として保管されています。補導歴は通常、本人が20歳になると破棄され、一般に就職や進学に影響を及ぼすことはありません。記録の目的は、再発防止や指導のための情報管理であり、更生を重視する少年法の理念に基づいて運用されています。
非行歴とは何か
非行歴とは、非行少年として補導または検挙された履歴のことをいいます。そして非行少年とは、以下のいずれかに該当する少年のことを指します。
・犯罪少年:罪を犯した少年
・触法少年:14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年
・虞犯少年:将来罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年
ちなみに、14歳未満の者は「刑事未成年」と呼ばれ、刑事手続きで罰されないという決まりになっています(刑法41条)。そのため、「犯罪少年」には14歳未満の少年は含まれません。そこで、犯罪に該当する行為をした14歳未満の少年については「触法少年」と分類され、少年法上の措置が取られるという運用になっています。
補導歴と非行歴の違いとは何か
補導歴があくまでも補導された経歴の記録である一方、非行歴は非行少年として補導または検挙された経歴の記録なので、非行歴はいわば「前歴」としての性質を持っているといえます。もっとも、「前科」とは明確に異なるため、職業や海外渡航の制限等といった法律上の不利益を受けることはありません。しかし、補導歴が20歳になると破棄される一方で非行歴は破棄されないため、成人になってから刑事事件を起こした際には、起訴・不起訴の判断や量刑判断において、厳しい方向に傾く可能性は否定できません。
その他に深夜に外出する制限はある?
深夜はいかいをした場合に補導される可能性があることについてはすでに説明しましたが、これと関連して、青少年健全育成条例等において制限されている深夜の外出についても、ご説明いたします。
保護者同伴による深夜外出の制限
神奈川県の青少年保護育成条例第25条においては、保護者が深夜に青少年を同伴して外出しないように努めなければならないとの深夜外出の制限がなされています。もっとも、「日常生活上必要である場合、青少年の健全な育成に資すると認められる場合その他の特別の事情がある場合」には、青少年を同伴して深夜外出することも咎められるわけではありません。
なお、このような保護者同伴による深夜外出の制限は、全ての自治体で定められているわけではありませんので、各自治体のホームページなどでご確認ください。
深夜における興行場等への立入りの制限
東京都の青少年健全育成条例第16条では、18歳未満の青少年がカラオケやボウリング場、インターネットカフェなどの施設に深夜立ち入ることを制限しています。この規制は、施設の運営側に課されたものであり、違反した場合には罰則も設けられています。そのため、このような施設では、年齢確認などが行われることがほとんどでしょう。
なお、青少年健全育成条例に上記の立ち入りの制限がなされておらず、業界団体の自主規制に任せているという自治体も、少数ではありますが存在しています。そのため、各自治体のホームページなどでご確認ください。
子供が補導されたときに親ができる5つのこと
子供が補導されると、動揺してしまうご家族がほとんどかと思います。補導されるということは、非行の傾向が進み始めている証でもありますので、早い段階で適切に対応することが大切だといえます。
子供の話をよく聞く
補導された場合には、ご家族だけでなく子供本人も大きく動揺しているはずです。心配をかけられたという気持ちや、周りに迷惑をかけたという気持ちから、一方的に子供を責めてしまうことにもなりがちですが、一旦子供の話をじっくり聞くことが何よりも重要です。話を聞いてもらえないと、自分の居場所が家族の中にはないと感じてしまい、より一層非行に走ってしまうという事態にも繋がりかねません。
子供の状況を理解する
子供が非行に走る理由は一つではありません。一つの事情のみを捉え、それが非行の原因になっているのだと短絡的に結論付けてしまうと、原因を根本的に解決することができず、もっと悪い状況に至ってしまうこともあります。状況が分かれば対処法を見つけることもできるため、注意深く子供の様子を観察し、子供が置かれている状況を認識することが重要です。
被害者に謝罪する
他人に被害を与えてしまったことがきっかけとなって補導された場合には、被害者に謝罪することが重要です。自分のした事の重大さが分かっていないという子供に対して、これはいけないことだと伝えることもできる上、間違えたことをしたら謝るという大事なことを教える教育的効果もあります。
また、被害者が子供のことを許せないという強い感情を抱いていた場合には、法的な紛争に発展してしまうことも少なからずあります。そのような最悪なケースに発展させないためにも、親が子供を引き連れて謝罪の意思を示すことは重要だといえます。
教師に相談する
子供の生活の基盤は家庭と学校なので、学校での子供の様子を知っている教師に相談するのは非常に有効な手段です。子供が非行に走るのを防ぐためには、この家庭と学校という二つの基盤を安定させることが必要不可欠なので、教師と連携した上で子供をサポートしていく必要があります。
しかし、教師という立場である以上一人の生徒を特別扱いすることは難しいので、手厚いサポートまでは期待できないかもしれません。そうだとしても、事前に相談しておけば気にかけてもらえる可能性が高いので、情報共有だけでもお願いしてみる価値はあると思われます。
弁護士に相談する
補導されただけで弁護士に頼むのは大げさなようにも思えますが、実は少年事件に精通した弁護士であれば、非行の原因となっている環境を取り除く手法を提案したり、被害者と示談して「厳しい処分は求めません」という旨を記載した書面を作成してもらったりと、実効的な解決を図ることができるのです。
また、弁護士は依頼人の「味方」となって行動するため、自分の味方になってくれる第三者に対し、子供のことを相談できるというメリットもあります。
まとめ
補導は、子供たちが間違った道に進まないようにするための「気づきの機会」です。罰ではなくあくまでも教育的措置として位置づけられており、子供自身が自分の行動を見つめ直し、未来に向かってよりよい選択をしていくためのきっかけともなっています。その一方で、何度も補導され、最終的には罪を犯すという少年が後を絶たないのも事実です。
そのため、保護者など周りの大人たちが、補導をきっかけに、正しい方向に導いていくことが必要不可欠です。
自分の子供が補導されて動揺する中、適切な判断をするのは簡単ではありません。周りの人や弁護士などの助言や協力を得ながら、複数人体制で子供を支えていくことが重要です。
- 得意分野
- ベンチャー・スタートアップ法務、一般民事・刑事事件
- プロフィール
- 京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設