実刑とは何?執行猶予、懲役との違いや実刑になりうるケースをわかりやすく解説
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記事目次
実刑とは?
実刑とは、実際に刑務所に収監されたり、罰金を支払わされたりすることをいいます。
他方で、これらを免れることができる場合もあります。
本記事では、刑務所に収監されるか否かを前提として、具体的にご説明します。
実刑の種類
実刑の種類としては、懲役刑や禁固刑があります。
懲役刑と禁固刑の違い は、刑務所に収監されている間に労働を強いられるか否かにあります。
懲役刑では労働を強いられ、禁固刑では労働を強いられません。
懲役刑や禁錮刑の場合でもすぐに刑務所に収監されないケース
実際に刑務所に収監されないケースとしては、執行猶予が付されるケースがあげられます。
執行猶予とは、文字通り、刑の執行が猶予されることをいいます。執行猶予期間が経過すると、刑の執行を免れるというメリットがあります。
例えば、懲役2年、執行猶予3年といった判決が言い渡されたとしましょう。
この場合、3年間罪を犯さずに生活していれば、懲役2年という刑の執行を免れることができます。
このように、執行猶予が付されると、今までと変わらない日々を過ごすことができます。
ただし、執行猶予期間中に罪を犯してしまうと、猶予されていた刑が執行されることになってしまう結果、刑務所に収監されることになりますので、注意が必要です。
参照:平成25年版ないし令和5年版犯罪白書
実刑判決はどこで受けるのか
実刑判決とは、刑罰の種類が懲役刑や禁固刑であり、かつ、執行猶予が付されない結果、実際に刑務所に収監される内容の判決をいいます。
実刑判決となるか否かは、裁判所が刑事裁判の内容をふまえて判断します。
具体的には、①犯罪の結果の重大性、②犯行の態様、③犯行に至った動機や経緯が検討されたうえで、④被告人の態度や状況を考慮して判断されます。
事案によりますが、逮捕されてから判決が言い渡されるまでの期間は、2か月前後となります。
実刑判決を避けるためには、早い段階から弁護士に依頼して、活動していくことが重要です。
実刑判決と執行猶予付判決・求刑の違い
実刑判決以外にも執行猶予付判決や無罪判決が言い渡されることがあります。
求刑という言葉を耳にしたことがある方も多いかと思います。
本記事では、実刑判決と執行猶予付判決・求刑の違いについてご説明します。
執行猶予付判決との違い
例えば、実刑判決では「被告人を懲役2年に処する。」とだけ言い渡されます。
他方で、執行猶予付判決は、「被告人を懲役2年に処する。
この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。」と言い渡されます。
懲役刑との違い
懲役刑は、刑務所に収監されて労働を強いられる刑罰の種類を意味します。
他方で、実刑判決は、刑罰の種類が懲役刑や禁固刑であり、かつ、執行猶予が付されず、実際に刑務所に収監される内容の判決を意味します。
求刑との違い
実刑判決と求刑は、これを行う主体が異なります。
求刑は、検察官が裁判所に求める刑罰の種類や程度を意味します。
実刑判決は、裁判官が証拠、検察官による求刑、被告人や弁護人の意見をふまえて言い渡すものです。
実刑判決になりうるケース
代表例として、①重罪の場合、②懲役刑や禁固刑を受けたことがある場合、③本人が反省していない場合、④再び罪を犯すおそれが高い場合、⑤犯行が悪質である場合の5つがあげられます。
これらについてご説明します。
①重罪の場合
重罪には、殺人罪、現住建造物等放火罪、強盗罪、強制性交等罪等があります。
これらの重罪は、最低でも5年以上の懲役刑等と規定されており、執行猶予が3年以下の場合に付される制度なので、実刑判決となりえます。
②懲役刑や禁固刑を受けたことがある場合
感覚的にお分かりになるかと思いますが、懲役刑や禁固刑を受けたことがある人は、初めて罪を犯した人と比較すると、実刑判決となる可能性が高くなります。
懲役刑や禁固刑を受け、更生する機会があったにもかかわらず、再び罪を犯してしまっているため、「また罪を犯してしまうのではないか」という裁判所の判断につながりやすいからです。
このような再犯の場合、服役する期間が通常より長くなりやすい点にも注意が必要です。
③本人が反省していない場合
初めて罪を犯した場合であっても、罪を犯した本人が反省していなければ、実刑判決になりえます。
執行猶予付判決ではなく実刑判決を言い渡し、刑務所内での更生を促した方がよいと判断されうるからです。
本人が反省しているか否かは、取調べの対応、法廷での態度、被害者との示談の有無といった事情を総合的に考慮して判断されます。
罪を認めない場合であっても、取調べの対応などについて、弁護人と検討することが望ましいです。
④再び罪を犯すおそれが高い場合
刑罰を科す目的の一つとして、その人が再び罪を犯すことのないように教育するという考え方があります。
再び罪を犯すおそれが高いと、罪を犯した人を更生させるために実刑判決となりえます。
再び罪を犯すおそれがあるか否かを判断するにあたっては、懲役刑や禁固刑を受けたことがあるか、なぜ罪を犯したのか、今後どのように生活するのかといった事情が考慮されます。
なお、薬物犯罪や窃盗罪等は再犯率が比較的高いとされています。
⑤犯行が悪質である場合
重罪でないとしても、犯行が悪質な場合には実刑判決になりえます。
犯行が悪質か否かは、主に被害の程度、犯行態様(組織的犯罪であるか、計画的な犯行か等)、犯行に至る動機や経緯が考慮されます。
例えば、単にお金が欲しいという短絡的な理由で犯行を決意し、犯行が事前に計画され、計画に基づいて犯行が組織的に行われた結果、甚大な被害が生じてしまった場合、各要素が相まって悪質だと判断される可能性が高くなります。
実刑になるまでの流れとは?
大まかには、事件化され、検察によって起訴され、刑事裁判がなされ、そして実刑が言い渡されるという流れがあります。
具体的には、逮捕・勾留される身柄事件と逮捕・勾留されない在宅事件によって異なります。
身柄事件から実刑になるまでの流れ
被害の申告や110番通報等によって犯罪が発覚すると、警察による捜査が始まります。
捜査の結果、被疑者として逮捕されます。
警察は、捜査を行ったうえで、逮捕後48時間以内に被疑者の身柄を検察に移します。
検察は、被疑者の身柄が移された時から24時間以内に捜査を行い、必要であれば裁判所に勾留を請求します。
裁判所は、勾留するか否かを判断するために、被疑者に質問する機会を設けます。
勾留決定がなされた場合、最大で20日間勾留されることになります。
検察は、勾留期間が経過するまでに、必要な捜査を行い、被疑者を起訴するか否かを判断します。
起訴された場合、事案によりますが、約1か月後に刑事裁判が始まり、判決を受けることになります。
この判決の内容が実刑判決であれば、そのまま刑務所に収監されることになります。
在宅事件から実刑になるまでの流れ
被害の申告等によって犯罪が発覚すると捜査が始まります。
捜査の結果、容疑者になると警察から連絡があり、取調べを受けることになります。
警察が自宅等に訪れ、任意同行を求められることもあります。
その後、逮捕や勾留はされずに、引き続き捜査が行われます。
警察や検察から呼出しを受けた場合には、これに応じることになります。
在宅事件は、身柄事件と比べて軽微な事件が取り扱われる傾向にありますが、正式な裁判として起訴されることがあります。
刑事裁判において実刑判決が言い渡されると、後日検察から連絡があり、刑務所に収監されます。
正当な理由なく刑事裁判に欠席する場合や住所不定となる場合には、身柄事件となることがあります。
実刑の判決を受けるリスク
実刑の判決を受けると、刑務所で刑務作業を行うことになる、一定期間服役しなければ仮釈放が認められにくい、社会復帰が難しいといったリスクがあります。
本記事では、これら3つのリスクについてご説明します。
刑務所で刑務作業を行うことになる
実刑には懲役刑と禁固刑があります。
これらの違いは、刑務所に収監されている間に刑務作業を強いられるか否かにあります。
刑務作業には4つの種類があります。
生産作業(物品を製作する作業や労務を提供する作業)、自営作業(炊事、洗濯、経理、建物の補修などの作業)、社会貢献作業(道路の雪かきや公園の除草作業などの作業)、職業訓練(更生後に職を手にするために必要な知識や技能を習得するための訓練)です。
懲役刑の場合には、これらの作業を強いられるリスクがあります。
他方で、禁固刑の場合には、これらの作業を強いられませんが、社会復帰が難しくなるというリスクもありますので、自ら希望して刑務作業を行うことがあるようです。
一定期間服役しなければ仮釈放が認められにくい
仮釈放とは、矯正施設に収容されている者を収容期間満了以前に仮に釈放して社会復帰の機会を与える措置の総称をいいます。
実刑判決に基づき刑務所に収監された場合であっても、一定の条件を満たすと収容期間満了以前に仮釈放されることがあります。
一定の条件として、有期刑の場合には刑期の3分の1、無期刑の場合には10年が経過することがあげられます。
また、一定の条件が満たされると必ず仮釈放されるわけでもないため、仮釈放が認められるケースは限られているといえます。
以上から、実刑判決を受けてしまうと、一定期間は刑務所に収監されることになり、社会から切り離された生活をしなければならないというリスクがあります。
社会復帰が難しい
仮釈放が認められない場合、収容期間を満了するまで刑務所内で生活することになります。
刑務所は、更生を促すための施設ですが、刑務所から出所した全ての者がすぐに社会復帰できているわけではありません。
一般的には、前科があるためになかなか就職先が決まらない、刑務所から出所したとしても住む場所がない、生活に困って再び罪を犯してしまう、といった問題があります。
これらの問題について、国は、刑務所を出所した者の就労支援、出所した者が一定期間住むことができる更生保護施設の整備といった対策を行っていますが、十分ではないというのが現状です。
そのため、社会復帰が難しいというリスクは、存在していると考えられます。
実刑を取り消す方法
実刑を取り消す方法としては、上訴をする方法と再審をする方法があります。
上訴をする場合と再審をする場合とでは、状況が全く異なります。
本記事では、それぞれの方法について解説します。
上訴をする
日本では、一つの事件について原則3回まで審理することができます。
例えば、地方裁判所で行われた裁判の結果として、実刑判決が言い渡された場合、高等裁判所に控訴することができ、高等裁判所でも実刑判決が言い渡された場合、最高裁判所に上告することができます。
控訴や上告を総称して上訴といいます。
控訴や上告を行うには、直前に受けた判決の翌日から起算して14日以内に行う必要があります。
控訴した場合、原則として第一審判決よりも重い判決が言い渡されることはありません。
上告を行うには、控訴審の判決に憲法違反や判例違反といった事由がある場合に限られます。
このように、実刑判決を取り消すためには、上訴を検討しましょう。
再審をする
再審とは、判決が確定した場合に再び刑事裁判上での審理を求める手続きをいいます。
判決が確定した後の手続きであるため、再審が認められるケース、認められたとしても無罪や減刑になるケースは極めて限定的です。
再審と上訴の違いは、判決が確定する前の手続きか後の手続きかという点にあります。
判決の翌日から起算して14日以内に上訴しない場合に判決が確定するため、この期間がどの手続きに選択するかの目安となります。
まとめ
いかがでしょうか。実刑判決が言い渡されると、刑務所に収監され、社会から隔離されてしまうだけでなく、社会復帰が困難となるといった様々なリスクを負うことになります。
このような状況を回避するためには、早い段階で弁護士に相談することが重要です。
刑事事件は「時間との勝負」という要素が強いため、可能であれば、警察からの接触を受けた時点で相談することを推奨します。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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