刑事事件CATEGORY
刑事事件
更新日: 弁護士 笠水上 一郎

リベンジポルノに関する法律「リベンジポルノ防止法」とは?罪状や刑罰、リスクを解説

リベンジポルノに関する法律「リベンジポルノ防止法」とは?罪状や刑罰、リスクを解説
東京スタートアップ法律事務所は
全国20拠点以上!安心の全国対応
東京スタートアップ法律事務所は
初回相談0

みなさんは、「リベンジポルノ」や「リベンジポルノ防止法」といったことを耳にしたことはありますか。

近年、交際中にスマートフォン等で撮影された性的画像が、破局したことの腹いせや嫌がらせ、または復縁を迫るために、元交際相手によってSNSやインターネット上の動画投稿サイトなどに公表される、いわゆる「リベンジポルノ」行為により被害を被る事案が多く見られます。

これを受けて、平成26年(2014年)に制定されたのが、「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」通称「リベンジポルノ防止法」になります。

以下では、リベンジポルノ防止法について、解説していきたいと思います。

リベンジポルノに関する法律「リベンジポルノ防止法」とは?

前述のようなリベンジポルノ行為による被害が増加していることから、平成26年(2014年)に、リベンジポルノへの対策としてこれらのリベンジポルノ行為を規制するための法律が施行されました。

この法律こそが、リベンジポルノ防止法、正式な法律名は「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」になります。

リベンジポルノとは

カメラ付き携帯電話やスマートフォンが急速に普及したことに伴い、元交際相手や元配偶者と関係が良好であった時に撮影された性的な画像等を、関係が破綻してしまった後に、腹いせや逆恨みなどの復讐として、撮影された者に了承なく無断でインターネットの掲示板等に公表する行為をリベンジポルノといいます。

また、関係継続や復縁を迫るために、性的な画像等を公表するといった脅しがなされることも多いです。

ただし、復縁を迫る意図や復讐の意図を明確に有さずに性的な画像等を同意なく拡散した場合であっても、リベンジポルノ防止法のリベンジポルノに該当するので、注意してください。

リベンジポルノ防止法とは

リベンジポルノによる被害の増加を受けて、平成26年に、私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(いわゆるリベンジポルノ防止法)が施行されました。

リベンジポルノ防止法は、リベンジポルノをした者を処罰すること及びリベンジポルノの被害者の支援体制の整備等を定めることを目的としています(リベンジポルノ防止法第1条)。

私事性的画像記録とは、以下のような人の姿が撮影された画像にかかる電磁的記録その他の記録であると定められています(リベンジポルノ防止法第2条1項各号)。

  1. 性交または性交類似行為に係る人の姿態(同項1号)
  2. 他人が人の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態で、性的に興奮させ又は刺激するもの(同項2号)
  3. 衣服の全部または一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの(同項3号)

リベンジポルノ防止法違反による刑罰

リベンジポルノ防止法は、私事性的画像記録を公表する行為と公表させる目的で提供する行為を対象にして、それぞれに異なる罰則を定めています(リベンジポルノ防止法第3条)。

  1. 第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した場合
    3年以下の懲役又は50万円以下の罰金(リベンジポルノ防止法第3条1項)
  2. 公表目的で電気通信回線を通じて私事性的画像記録を提供し、又は私事性的画像記録物を提供した場合
    1年以下の懲役又は30万円以下の罰金(リベンジポルノ防止法第3条2項)

もっとも、撮影された人が、撮影をした人、撮影された人及び第三者が見ることを認識した上で、任意に撮影を承諾し撮影をしたものは罰則の対象とはなりません。

例を挙げると、アダルトビデオ、グラビア写真のように商業目的で作成された画像や第三者に見られることを認識して撮影を許可した画像、自ら撮影した画像等は、リベンジポルノ防止法の罰則対象とはなりません。

リベンジポルノ防止法における成立要件

第三者が撮影対象者を特定できること

映っている人の容貌や身体的特徴、背景として映っている部屋の状況など、公表された画像自体から映っている人を特定できる場合だけでなく、画像公表の際に映っている人を特定する文言を添える方法も対象となります。

また、一般的に誰でも映っている人が特定できる程度ではなく、映っている人の身近な関係者だけが特定できるという場合でも、リベンジポルノ防止法の「特定できる」という要件を満たすとされています。

電気回線通信を使用していること

インターネット等の通信回線を使って画像や動画が送られていることが必要です。

たとえば以下のような行為がこれに該当します。

  • TwitterやInstagram、TikTokなどのSNSに投稿した
  • メールやLINEで他人に送信した
  • YouTubeなどの動画サイトにアップロードした

私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供したこと

「提供」とは、「私事性的画像記録を相手方において利用できる状態にする法律上・事実上の一切の行為をいう」と解されています。

そのため、インターネット上などで閲覧できる状態にすれば、「提供」したといえます。

また、インターネット上で一般的に公開すると、「不特定」の者に提供したことになりますし、仮に、登録等をした者だけしか閲覧できないように公開したとしても、閲覧できる者が「多数」であれば、「多数の者」に提供したことになります。

たとえ、1対1でのやりとりで送信されたとしても、多数人に拡散される可能性があるならば、この要件に該当する可能性があります。

リベンジポルノ防止法以外で問われる可能性のある犯罪

リベンジポルノ行為は、リベンジポルノ防止法だけで処罰されるだけではありません。

リベンジポルノ行為は、リベンジポルノ防止法違反となるだけでなく、その他の犯罪も成立することも少なくありません。

以下では、リベンジポルノ行為に対して成立し得る主な犯罪について、1つずつ見ていきたいと思います。

名誉毀損罪

元交際相手の性的な画像や動画を、本人の同意なく第三者に提供・公開すると、名誉毀損罪(刑法230条)に該当する可能性があります。

名誉毀損罪(刑法230条)とは、公然と事実を摘示し、他人の社会的評価を下げる行為に成立する犯罪です。

「公然」については、リベンジポルノ防止法の「不特定又は多数の者」と同様であるとされています。

「事実の摘示」とは、具体的な内容を示すことを指し、たとえそれが真実であっても、公益性がなければ違法となる可能性があります。

リベンジポルノ行為は、公開される画像や動画が性的なものであるところ、性的な内容は極めてプライベートなものであり、それを本人の意思に反して公然と広めることはその人の名誉を傷つけることになるため、名誉毀損罪に該当する可能性があります。

また、法律上は、たとえ真実であっても、映っている人の社会的評価が低下してしまうと罪になるとされています。

特に、性的な情報は非常にプライベートで、広く知られてよい情報ではありません。

名誉毀損罪が成立した場合の刑罰は、「3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金」と定められています。
科される可能性があります。

わいせつ物頒布罪

刑法175条では、以下のように定められています。

「わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、または公然と陳列した者は、2年以下の懲役または250万円以下の罰金に処する。」

すなわち、「わいせつな文書、図画その他の物」を頒布・販売・公然と陳列した者は、わいせつ物頒布罪という犯罪が成立することになります。

ここでいう「わいせつ物」とは、単に性的な内容というだけでなく、性欲を刺激し、一般社会通念上不健全とされる露骨な描写を含むものが該当します。

リベンジポルノ行為により公表された画像や動画の中には、性行為の様子や性器が明確に映されたものなど、わいせつ性の強いものなどが含まれることが予想されます。

そして、それらの性的な画像や動画をインターネット上に公開したり、他人に送信した場合、「わいせつ物を頒布・陳列した」と判断され、わいせつ物頒布罪が成立し、その罪に問われる可能性があるのです。

脅迫罪

リベンジポルノについては、単に公開するだけでなく、性的な画像や動画を脅しのネタに交際の継続や復縁を迫るといったケースも多いです。

刑法222条によれば、「生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加える旨を告知」した者は、脅迫罪として処罰される規定されております。

つまり、「復縁しないなら画像や動画をネットに公開する」、「交際関係を継続しないならば画像や動画を家族に送る」、「別れるならば慰謝料を払え。さもないと画像や動画をばらす」のように、相手の名誉やプライバシーを害することをちらつかせて脅す行為は、脅迫罪に該当する可能性があります。

この点、「実際に画像を拡散したかどうか」ではなく、拡散すると告げるだけで罪になるため、実際に拡散する気はなかったとしても、脅迫罪が成立してしまうという点は注意してください。

脅迫罪が成立すると、2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。

強要罪

強要罪(刑法223条)は、暴行や脅迫によって、相手に義務のないことを強制させたりする行為に対して成立する犯罪です。

リベンジポルノの場合、「この画像をネットに公開されたくなかったら、復縁しろ。」、「動画を友人に送られたくなければ、交際関係を継続しろ」といった言動で相手に無理やり行動を取らせる(会う・連絡を取る・性的関係を持たせる等)といったケースが予想されます。

これらは、脅迫罪と同様に、実際に画像を拡散したかどうかや拡散しようと思っていたかは問題とはならず、「脅し」や「強制」の言動をするだけで成立してしまう犯罪となります。

強要罪が成立した場合、3年以下の懲役が科されることになります。

リベンジポルノで有罪となるリスク

では、リベンジポルノによって有罪となってしまった場合、具体的などのようなリスクがあるのでしょうか。

ご紹介していきます。

前科・前歴がつく

まず、有罪となった場合、前述のとおり、リベンジポルノ防止法に定められている「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」という処罰を受けなくてはならないことは、先ほど説明したとおりです。

その他、有罪となってしまった場合、前科として記録されることになります。前科は、裁判所や警察、検察などの機関に長期間保管され、経歴として残ります。

前科は刑罰の種類に関係なく、裁判が行われずに罰金刑で済んだとしても前科として記録が残ります。

前科がついてしまうと、将来の就職や転職、資格取得、海外渡航などの際に、不利に働くことになります。

損害賠償請求される

リベンジポルノ防止法に定められている罰金とは別に、被害者に対して、慰謝料を支払わなければいけない場合もあります。

被害者(映っている人)からの慰謝料などの損害賠償請求がなされる可能性があります。リベンジポルノに対する損害賠償請求の項目としては、以下の損害が挙げられます。

  • 慰謝料:精神的苦痛に対する損害
  • 弁護士費用:被害者が依頼した弁護士の費用
  • 拡散防止に関する費用:画像削除などの手続に要する費用

この点、リベンジポルノ行為の内容や拡散の程度、被害者の精神的苦痛に応じて慰謝料の金額は算定されますが、賠償額が数十万円から数百万円以上にのぼることも考えられます。

社会的信用を失う

場合によっては、リベンジポルノ行為がマスコミなどのメディアにより報道され、実名や顔写真が拡散されてしまい、これにより、社会的信用失ってしまうことになります。

社会的信用を失ってしまうと、以下のようなリスクが考えられます。

  • 会社に発覚した場合、減給、降格、解雇の対象になる
  • 就職活動中に事件歴が発覚すれば、内定取り消しや採用拒否になることも
  • 教育、福祉、金融など「信用」が重視される職種においては、特にリスクが大きい
  • 公務員や教員、医師、弁護士などの国家資格・公的資格の有資格者は、資格停止になることも

実名報道・インターネット上での誹謗中傷

前述のとおり、リベンジポルノ行為がマスコミやメディアによって報道され、実名や顔写真が公開されてしまうことに加えて、インターネット上においても、拡散されてしまうおそれがあります。

ニュース記事であれば、削除されることはなく、半永久的に残り、リベンジポルノ行為に及んだこと対する厳しい誹謗中傷もされてしまうおそれがあります。

また、匿名掲示板でのいわゆる「特定班」などにより、勤務先や住所、経歴等が特定され、周りの人たちにも被害が出ることもあります。

このように、リベンジポルノ行為の加害者が、今度はインターネット上での誹謗中傷の被害者の立場になるということも十分に考えられます。

リベンジポルノで逮捕された場合に弁護士に相談するメリットとは?

身体拘束から解放のために早期に動ける

逮捕されてしまったという事件では、通常、弁護士は、勾留がなされないように防ぐ活動や勾留された場合に釈放、保釈に向けた活動を行うことになります。

逮捕されてしまった場合、最長で23日間、身体拘束されてしまうおそれがあり、仕事・学業への影響を最小限に抑えるためにも、早期に動き出すことは非常に重要だといえます。

また、弁護士は、被害者との示談交渉を行います。被害者との示談が成立すれば、身体拘束の解放を早めることができるだけなく、不起訴処分となる可能性が高くなり、前科を付けずに解決することができるかもしれません。

今後のアドバイスや精神的なサポートを受けられる

逮捕されてしまうと、たとえ家族であっても面会することができません。

しかし、弁護士だけは逮捕後すぐに接見をすることができます。

そのため、弁護士が現在の状況や今後の流れを説明し、適切な助言を行うことで、孤独な状況下で不安な思いをしているところを精神的にサポートできます。

また、弁護士を通じて、家族との情報共有を行うことができます。

通常、逮捕される時は、突然、警察が現れ逮捕されてしまうことがほとんどであり、何も持たずにそのまま警察署に留置されてしまいます。

その際、弁護士を通じて、家族の方に物品の差入れを求めることなどができます。

このように、弁護士が付いていると、家族間の橋渡しにもなります。

まとめ

破局してしまったことへのショックから、一時的に感情的になってしまい、リベンジポルノ行為に及んでしまう人が多いですが、被害者に対して取り返しのつかない被害を与えてしまうだけでなく、加害者に対しても取り返しのつかない事態に陥ってしまう結果となってしまいます。

現代では、スマートフォンやSNSが身近な存在となっていることから、軽い気持ちで性的な画像等を拡散してしまっているかもしれませんが、これまで見てきたとおり、リベンジポルノ行為は悪質で重い犯罪です。

あなたの行動一つで、重大な犯罪になってしまう危険性があることを忘れないでください。

画像準備中
執筆者 弁護士笠水上 一郎 埼玉弁護士会 登録番号63614
ただ事務的に法的問題を解決するだけでなく、ご依頼者様の精神的なご負担を少しでも軽減できるよう、一人一人のお言葉やお悩みに真摯に向き合い、親身に寄り添った対応することを心がけております。 様々なお悩みを抱え、ご不安な思いをされている方がいらっしゃるかと思いますが、そのようなお悩みやご不安を一日でも早く解消し、安心した日々を送れるよう誠心誠意サポートさせていただきますので、どうぞお気軽にご相談ください。
得意分野
不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件 、 遺産相続 、 交通事故
プロフィール
中央大学法学部法律学科 卒業 中央大学法科大学院 修了

\ 初回相談0円!お気軽にお問い合わせください /