殺人・殺人未遂で逮捕されたらどうなる?流れや罰則について解説
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記事目次
人を殺してしまったとき、とても動揺すると思います。人生終わりだと絶望してしまうかもしれません。
しかし、この時点では「自分が人を殺した」ことしか確定しておらず、その他の要件を充足するかしないかによって、刑罰の重さ(長さ)や、実刑になるか執行猶予が付くか、又は罪とならないかが決まってきます。
そのため、「人を殺してしまった」ときは、すぐに弁護士に相談することをお勧めします。
殺人・殺人未遂とはどのような犯罪なのか
殺人罪とは、「殺意」を持って(「殺すことを意図して」「殺そうと思って」という意味です。)人を殺した場合に成立する罪です。
殺人未遂罪は、殺人罪と同様に「殺意」を持って相手を殺すための加害行為をしたが(ナイフで刺す、車で轢く、首を絞める、高い所から突き落とす等)、結果として相手が死亡しなかった場合に成立する罪です。
どちらの罪も、行為者が「殺意」を持っていたことが重要なポイントになります。
逆に、殺意無く、人を殴った結果当たりどころが悪くて相手が死亡した場合は、「殺意」が認められないので殺人罪は成立しません(傷害致死罪になります)。
殺人罪の定義について
刑法199条に「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。」と書かれています。
「人を殺した者は」としか書かれていませんが、実際に殺人罪が成立するかどうかの判断は、もっと厳密に行なわれますので、その内容を説明します。
殺人罪が成立するかどうかの判断
殺人罪が成立するかどうかを判断するときは、条文に書いてある「人を殺した」ということだけではなく、「殺意」を持って、人を死なせる危険性のある行為をしたこと(実行行為)や、その危険な行為の結果死亡したといえるかどうか(因果関係)なども検討して、全ての要件を充足する場合に、殺人罪が成立することになります。
人を死なせる危険性のある行為のことを殺人罪の「実行行為」といいます。
殺人罪の「実行行為」の具体的としては、ナイフで人の身体を刺す、首を絞める、頭部を殴る、高い所から突き落とす、逃げ出せないようにして放火する、といった人が死亡する危険性のある行為があげられます。
「殺意」を持って行為をしたといえるか
殺人罪や殺人未遂罪が成立するかどうかの判断で、重要なのが「殺意」です。
「殺意」とは、言い換えると、「殺そうと思って」「殺すつもりで」、あるいは「こんなことをしたら死んでしまうかもしれないけれども、それでもいいや。やってしまおう」と思う気持ちを指します。
人を殺したという結果が生じた場合に、殺した人が「殺意」を持っていた場合は殺人罪が成立し、他方、殺した人が「殺意」を持っていなかった場合は傷害致死罪になります。
殺人罪の方が傷害致死罪より、法定刑が重いです。
このように、「殺意」があったか無かったかによって、刑罰の重さが変わってきます。
人を殺してしまって警察に逮捕された場合、「殺意」があったことを認めるのか、認めないのかはとても重要な判断を要します。
法律を学んでいない人は「殺意」の厳密な意味を理解できていない場合もありますので、警察官から誘導されて「殺意があった」と認めてしまう場合もあり得ます。
正当防衛
急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。(刑法36条) |
「正当防衛」という言葉を聞いたことがあると思います。
正当防衛とは、自分や周りにいる人に危険が及んだときに、自分や周りにいる人の身体や生命や財産を守るために、やむを得ず行った行為のことを指します。
「やむを得ずにした行為」といえるかどうかは、相手からの攻撃に対する防御として相当であったかによって判断されます。
正当防衛が認められると、その行為については「罰しない」、つまり罪に問われなくなります。
自分自身に不正の侵害が間近に迫っていたため防衛するためにした行為によって相手を殺してしまったとしても、殺人罪に問われないという意味です。
正当防衛の判断は複数の要素を総合して判断することもあるので、正当防衛だといえそうな場合も弁護士に相談するのが良いと思います。
殺人・殺人未遂容疑における罰則について
殺意を持って人を殺した場合(殺人罪)や、殺意を持って人を殺そうとしたが結果として相手が死ななかった場合(殺人未遂罪)に、どのような刑罰が科されるか、又は刑罰を科されない場合があるのかを確認していきましょう。
殺人罪(刑法199条)
裁判で殺人罪が成立するという判決が下された場合、死刑、無期懲役刑、有期懲役刑(5年以上20年以下)のいずれかとなります。
人を殺したことに関して裁判でやむを得ない事情があったと判断された場合、懲役5年の刑が減刑され、更に執行猶予となる場合もあります。
犯罪を犯した時の精神状態が心神喪失であった場合は罰せられず、心神耗弱と判断された場合は減刑されます。
殺人未遂罪(刑法203条、43条本文)
殺意を持って殺人の実行行為に着手したものの、結果として被害者が死亡しなかった場合は、殺人未遂罪となります。
殺人未遂罪は「未遂」なので、裁判官の判断によって刑が減軽される場合があります。
同じく殺意を持って殺人の実行行為に着手したものの、自分の意思で犯罪を中止した場合は、刑が減軽又は免除されます。
同意殺人罪(刑法202条)
相手の同意を得て人を殺した場合や、相手から頼まれて人を殺した場合は、同意殺人罪、嘱託殺人罪に問われます。
このような事情があったとしても殺人であることに違いはありません。
介護をすることができなくなった高齢者夫婦や、病気にかかった親しい人から頼まれる場合もあるかもしれません。
この場合、6ヶ月以上7年以下の懲役刑又は禁固刑になります。
殺人で逮捕された際の対応について
殺人の容疑で逮捕された場合、どのように対応したら良いでしょうか。
逮捕されると、逮捕に続き勾留するための手続きがとられ、最長で23日間身体拘束が続き、この間に取り調べが行われます。
逮捕された当日から警察官による取り調べが行われ、この取り調べで作成された調書は裁判の際の証拠になります。
そのため、真実と異なる調書が作成されてしまうことがないように対応する必要があります。
弁護士に相談
逮捕された場合、人を殺して逮捕されたという事実によってかなり混乱していると思います。
そのような状況で警察の取り調べが行なわれます。
人を殺して逮捕されたのだから、もう事態が好転することは無いと考えてしまいますが、逮捕された後、逮捕された人(容疑者)が警察に何を話すかによって最終的に科される刑罰が大きく変わることがあります。
殺人の疑いで逮捕された後自分がどのように扱われるのか、警察が作る調書がどのような意味を持つのか、警察からの質問に全て答えていいのか、覚えていないことであっても何か答えなければならないのか、等々。わからないことだらけだと思います。
そのため、一刻も早く弁護士に相談していただきたいのです。落ち着いて事件当時のことを思い出します。
思い出せない場合は、弁護士が必要なことを丁寧に聞いていきます。
殺意があったのか、正当防衛や過剰防衛が認められる事情があるか、殺人未遂の場合、途中で犯行を中止したといえるか等、警察や検察で取り調べで何を話したらいいか、何は話さなくていいのかを確認していくのです。
「殺意」がなかったことを証明する
人を殺してしまった場合、最も重要な点は、「殺意」(=その人を殺そうとする気持ち)があったのか、無かったのかです。
殺意とは、殺そうとする意思のことをいいますが、もっとゆるく「こんなことをしたら死んでしまうかもしれないが、それでも構わない」と思う気持ちも「殺意」と認定されます。
「殺意」が認められると、殺人罪が成立します。
他方、「殺意」は無かったと認定されると傷害致死罪(刑法205条。法定刑は、3年以上20年以下の懲役です。)が成立します。
殺人罪と傷害致死罪は、相手を殺してしまったという点において同じですが、刑罰の重さが大きく異なります。
殺意が無かったのであれば、まずはその点を警察や検察に伝える必要があります。
警察や検察が取り調べの時に被疑者にどのように質問するか、質問をされたときにどのように答えたらいいかを、弁護士と話をして綿密に打ち合わせをする必要があります。
正当防衛や過剰防衛であった場合はそれを証明する
相手から攻撃を受けて、自分を守るためにした行動で相手を殺してしまった場合、正当防衛や過剰防衛が成立する可能性があります。
殺人罪で逮捕された直後は、自分が殺して逮捕されたことで頭がいっぱいになり、事件当時の状況を再度思い出して検証するという作業を自分一人で行うことはとても難しいと思います。
正当防衛や過剰防衛が認められるための条件は、条文を読んだだけでは分からない(条文に明記されていない)部分もありますので、このような法律的解釈は弁護士に任せるのがベストです。
相手が自分に対して攻撃をしてきたこと、それによって自分の権利が侵害されそうになったこと、反撃の方法が相当であったことなど(相当で無かったと判断された場合は過剰防衛になります)一つひとつ説明、証明していく必要がありますし、捜査当初から一貫した主張をすることも大切です。
自分が何をしたか、警察の取り調べに落ち着いて対応できる準備を進める必要があります。
心神喪失、心神耗弱であることを主張する
殺人事件を犯してしまった被疑者(裁判をすることが確定した後は「被告人」)は、精神的に重大な問題を抱えていることがあります。
このような場合は、罪が成立しない、又は罪が成立するとしても刑罰が軽くなります。
心神喪失者の行為は、罰しない(刑法39条1項)、心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する(刑法39条2項)と規定されています。
ニュースで「犯人の精神鑑定を行っている」と報道されているのを見たことがあるかもしれませんが、精神鑑定というのが、重い精神疾患を負っているか、犯罪を犯した時、その精神疾患により自分の行為を制御すること(理解すること)ができない状況にあったか、などが調べられています。
精神疾患を負っていることにご本人が気づいていない場合もあります。
また、精神疾患を負っていることを自分で説明できない場合もありますので、このような場合ご家族から法律事務所に連絡をいただき、早期に逮捕された方と面会をすることが重要になります。
刑を軽くするための活動をする
罪を軽くする方法として、謝罪する、示談金を支払う、示談書を作成してもらう、贖罪寄付をする、釈放された後監督する人がいることを証明する、などがあります。
大切なのは、被害者に対して直接罪を償うような行為をすることですが、殺人罪は被害者が亡くなっているので、謝罪、示談金の支払い、示談書の作成はご遺族にお願いすることとなり、これらを行うことは非常に困難です。
仮に、示談金を受領してもらえることになったとしてもその金額は亡くなった方の人生に対する支払いですから、払えない程高額になることもあります。
殺害された方のご遺族は、示談することによって被告人の罪が軽くなることも多いため被告人の罪を軽くするための示談に応ずる気持ちが全くない場合もあります。
そのため、殺人罪の場合は、贖罪寄付を行うことや、釈放された後働く場所や被告人を監督してくれる人を確保し、それによって再度犯罪を犯さないようにする環境があることの証明が効果的です。
殺人罪で逮捕された場合は弁護士に相談
殺人罪や殺人未遂罪は、犯罪の中でも特に重い犯罪です。人の命という取り返しのつかない最も大切な利益を侵害する行為だからです。
反対に、殺してしまった側には、よほどの事情があった、自分の生命を守るためにやった、精神が病んでいたなどの事情がある場合も多いです。
また、ここまで書いてきたように、殺してしまったから厳罰に処されることは確定している、ということはありません。
個々の事案によって状況は異なります。「殺意」がなければ殺人罪は成立しないのです。
そういった細かい規定を知らない方も多くいらっしゃるので、まさにここは弁護士の出番です。
人を殺してしまったという結果に至るまでの多くの事情を法的に解明することがとても大切なのです。
まとめ
検察官が、「この被疑者が犯人ですので、裁判にかけて処罰を決めてください。」と裁判所に犯罪の証拠を提出することになります。
この証拠には、逮捕されてから23日の間(もう少し短い場合もありえますが、殺人事件の場合は多くが23日であると思われます)に被疑者が警察官や検察官の取り調べに応じた際に作成された調書も含まれます。
この調書は逮捕された当日から作成されますので、とにかく早く弁護士と面談をして、どのように取り調べに応じたら良いかの打ち合わせをすることが不可欠です。
お困りの際は、当事務所へのご連絡をお待ちしております。
- 得意分野
- 一般民事、刑事事件
- プロフィール
- 東京理科大学理学部 卒業
野村證券株式会社
成蹊大学法科大学院 修了