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更新日: 代表弁護士 中川 浩秀

痴漢で解雇されることはある?会社にバレずに不起訴にするには

痴漢で解雇されることはある?会社にバレずに不起訴にするには
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痴漢行為は犯罪であり、決して許されることではありません。

しかし、「警察沙汰=人生の終わり」と絶望する必要はありません。

私たち弁護士のもとには、「魔が差してしまった」「軽い気持ちでやってしまった」という切実な相談が数多く寄せられますが、逮捕されたからといって直ちに懲戒解雇が確定するわけではありません。

適切な初動対応をとることで、職場への発覚を防いだり、不起訴処分を獲得して日常生活を取り戻したりできる可能性は十分にあります。

この記事では、痴漢事件における解雇のリスクや、会社にバレずに解決するための具体的な対処法について、弁護士監修のもと解説します。

痴漢が発覚した場合に「懲戒解雇」となる可能性はある 

痴漢行為が会社に知られた場合、どのような処分が下されるのでしょうか。

「懲戒解雇」を恐れる方は多いですが、必ずしもすべてのケースで解雇となるわけではありません。

処分の内容は、会社の就業規則や事件の性質によって異なります。

まずは、痴漢事件と解雇処分の関係について、基本的な考え方を見ていきましょう。

  1. 就業規則の確認: どのような行為が懲戒事由になるかを確認します。
  2. 解雇の有効性: 私生活上の非行で解雇できるかには法的なハードルがあります。
  3. 処分の傾向: 民間企業と公務員では処分の基準が異なります。

痴漢は就業規則の「懲戒解雇事由」に該当する

一般的に、企業の就業規則には「懲戒」に関する規定があり、その中で「懲戒事由」が定められています。

多くの会社では「刑罰法規の適用を受け、又は刑罰法規の適用を受けることが明らかとなり、会社の信用を害したとき」という懲戒事由を定めていることが多いため、痴漢行為は当該懲戒事由に該当する可能性があります。

しかし、痴漢は私生活上の非行です。

法的には、職場外・業務時間外の行為には私生活(プライバシー)の村長の要請もはたらくことから、私生活上の非行が懲戒事由に該当するか否か、懲戒解雇が相当か否かは厳格に判断されます。

そのため、法的には痴漢で逮捕されたとしても必ずしも解雇されるわけではありません。

弁護士の視点:実務での落とし穴

「法的に解雇が認められにくいなら安心だ」と思うのは危険です。

実務上、多くの企業は「逮捕=会社の対面を著しく汚した」と捉え、に退職勧奨を行ってくるケースがあります。

こうした会社側の圧力に対して、弁護士が「それは不当解雇のリスクがある」と法的に反論することで、処分が軽減され、解雇の回避に成功した事例があります。

痴漢により解雇となる場合・ならない場合

痴漢行為が会社に発覚した後、解雇となるかどうかの分かれ目はどこにあるのでしょうか。

過去の判例や実務上の傾向として、以下の要素が考慮されます。

【解雇が認められやすいケース】

  • 重大な犯罪行為: 法定刑が重く執行猶予が付かない(実刑)などの悪質性が高い犯罪。
  • マスコミによる報道: 会社名とともに大々的に報道され、会社の社会的評価に重大な悪影響を与えた場合。
  • 職務との関連性: 鉄道会社の職員など、電車内における乗客の迷惑や被害を防止すべきであり、職務に伴う倫理規範が求められる場合。
  • 過去の処分歴: 過去にも同様の行為で処分を受けており、改善が見られない場合。

【解雇が無効・不当となりやすいケース】

  • 軽微な事案: 初犯であり、被害者との示談が成立している、または不起訴となっている場合。
  • 会社への影響が限定的: 報道されておらず、会社の社会的評価への影響がない場合。
  • 手続の不備: 本人に弁明の機会を与えず、一方的に解雇通知を行った場合。

「逮捕=解雇」と諦めるのではなく、早期に対処することで、最も重い処分である懲戒解雇を回避できる余地は十分にあります。

民間・公務員別 痴漢を起こした際の処分

痴漢事件の処分相場は、民間企業の社員か公務員かによって大きく異なります。

  • 民間企業の場合

民間企業では、各社の就業規則や過去の事例に基づいて処分が決定されます。

痴漢(迷惑防止条例違反)であれば、初犯で反省しており、会社の社会的評価への影響がが少なければ、「停職・降格・減給」等の処分にとどまるケースも少なくありません。

ただし、近年はコンプライアンス意識の高まりにより、性犯罪に対しては厳格な姿勢をとる企業が増えており、普段の勤務態度の悪さ、報告義務の懈怠、過去の逮捕歴等が考慮され、解雇がされてしまう場合があります。

  • 公務員の場合

公務員は国家公務員法や地方公務員法の規定により、懲戒処分が定められております。

また、「懲戒処分の指針について」においては、「痴漢行為:公共の場所又は乗物において痴漢行為をした職員は、停職又は減給とする。」と定められています。

公務員の方は特に、不起訴処分や罰金刑(略式起訴)にとどめられるかどうかが、職を失うかどうかにつき非常に重要なポイントなります。

出典:人事院「懲戒処分の指針について」

会社に痴漢がバレないためにすること 

「家族を養っているため、会社にバレてクビになることだけは避けたい」

そう願う方が多いかと思います。痴漢行為により会社を解雇となることを避ける場合に、最も重要なのは「逮捕・勾留による長期の身体拘束を避けること」「不起訴処分を獲得すること」の2点です。

会社にバレる最大の原因は、長期間の無断欠勤です。

警察からの連絡でバレることは稀(身柄引受人が必要な場合などを除く)であり、多くの場合は「連絡が取れずに会社に行けない」状態が続くことで怪しまれ、発覚に至ります。

被害者と示談することで不起訴を目指す

会社にバレずに事件を解決するための最善策は、被害者と「示談(じだん)」を成立させることです。

痴漢事件のような被害者がいる刑事事件においては被害者の処罰感情も重要な考慮要素となるため、示談の成立は検察官の処分決定に大きな影響を与えます。

  • 示談成立のメリット: 被害者が「処罰を望まない」という意向(宥恕文言)を含む示談が成立すれば、不起訴処分となる可能性が極めて高くなります。
  • 早期釈放: 示談が進んでいる、または成立したとなれば、「逃亡や証拠隠滅の恐れがない」と判断されやすくなり、勾留されずに釈放される(在宅事件に切り替わる)可能性が高まります。

早期に釈放されれば、翌日から普段通りに出社することも可能となり、会社に怪しまれるリスクを最小限に抑えられます。

弁護士のワンポイントアドバイス:示談交渉のリアル

痴漢事件の被害者の方は、加害者に対して強い恐怖心や嫌悪感を抱いています。

そのため、単にお金を提示すれば解決するものではありません。

弁護士が交渉を行う際は、まずは被害者の方に寄り添い、誠心誠意の謝罪を尽くすことから始めます。

また、被害者の中には、なぜ自分がこのような被害に遭ってしまったのかを知りたいと思う方もいらっしゃいます。

そのような場合には、犯行の動機や犯行に及んでしまった背景事情を説明することや加害者本人に謝罪文を作成してもらい被害者の方に読んでもらうなど、丁寧に対話を重ね、被害者の方の心が氷解して初めて、「示談してもよい」という言葉をいただけるのです。

対応は弁護士に任せる

「自分で被害者に謝罪して示談したい」と考える方もいますが、これは現実的ではありません。

痴漢事件においては被害者と加害者という関係になってしまうため、捜査機関が加害者に対し、被害者の連絡先等を教えることはほぼないのが実情です。

しかし、捜査機関は弁護人に対しては被害者の連絡先を教えてくれます。

被害者との示談を行うためには、まずは弁護士に依頼し、弁護士を通して被害者の連絡先を聞き、示談の申入れを行うことが重要です。

弁護士に依頼するメリットは以下の通りです。

  1. 迅速な接見と対応: 逮捕直後から弁護士が動き、家族や会社への連絡・対応のアドバイスを行います。
  2. 示談交渉: 第三者である弁護士が間に入ることで、被害者の感情に配慮しながらスムーズに交渉を進められます。
  3. 早期釈放・不起訴の働きかけ: 検察官や裁判官に対し、勾留の回避や不起訴処分を求める意見書を提出します。

特に「会社にバレたくない」という要望がある場合、弁護士は警察に対し「会社への連絡は避けてほしい」と事情を説明するなど、状況に応じた柔軟な対応を行います。

痴漢で有罪・解雇となった場合のリスク 

痴漢事件が不起訴にならずに起訴され、有罪判決や懲戒解雇となってしまった場合、どのようなリスクが待ち受けているのでしょうか。

会社からの処分、今後のキャリア、家族や周囲への影響など今後の生活への影響は甚大です。

以下では、痴漢事件で有罪・解雇となった場合に現実的にどのようなリスクが生じるのかを、弁護士の観点や経験を踏まえて解説します。

金銭的負担

まず一番最初に思いつくのが収入がなくなることによる経済的な不安ではないでしょうか。

懲戒解雇となれば給料が途絶えるのはもちろんですが、失業保険(雇用保険の基本手当)の給付にも制限がかかります。

通常、会社都合退職であれば待機期間(7日間)の後に受給できますが、自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇(重責解雇)とみなされた場合、給付制限期間(通常2〜3ヶ月)が設けられ、その間は手当を受け取れません。

また、刑事事件としての罰金(痴漢の場合、数十万円程度となることが多い)の支払いや、弁護士費用などの出費も重なり、家計を一気に圧迫することになります。

ただ、これらのリスクは懲戒解雇となった場合に想定されるものであるため、会社を解雇退職しないことが一番だと思いますが、万が一の時には、自主退職をすることでこれらのリスクを回避することといった対応も考えられます。

自主退職をするか否かは、実際の個別具体的な事情を考慮し判断する必要があり、非常に難しい判断となるため、弁護士に相談の上、決めることをおすすめします。

再就職の困難化

懲戒解雇の事実は、再就職活動において大きな足枷となります。

履歴書に「懲戒解雇」と記載する義務はありませんが、面接で退職理由を聞かれた際に嘘をつくと、入社後に経歴詐称として再び解雇されるリスクがあります。

かといって、正直に「痴漢で解雇された」と伝えれば、採用されるハードルは極めて高くなるでしょう。

実際、離職票の記載区分などから発覚するケースもあります。一度「懲戒解雇」という既成事実が作られてしまうと、その後のリカバリーは非常に困難です。

再就職という観点からも、解雇される前の段階で弁護士に相談し、自主退職や合意退職などの再就職への影響が少ない形で会社との関係を解決することも重要になります。

退職金は受け取れる?

「長年勤めたのだから、せめて退職金だけでも受け取りたい」と思うのは当然ですが、懲戒解雇の場合、退職金の全部または一部が不支給となるケースが一般的です。

多くの企業の退職金規程には、「懲戒解雇により退職する者には、退職金を支給しない」あるいは「減額する」といった条項が含まれています。

ただし、過去の判例では、退職金は「賃金の後払い」としての性質も持つため、長年の功労をすべて抹消するほどの背信行為がない限り、全額不支給は認められないとする判断も存在します。

痴漢行為が会社に対する直接の背信行為とはいえない職務外の行為である場合交渉や裁判によって退職金の一部を取り戻せる可能性はゼロではありません。

痴漢での解雇が無効・不当解雇となる事例 

会社から「明日から来なくていい」と言われても、諦めてはいけません。

痴漢事件を理由とした解雇が「解雇権の濫用」として無効と判断された事例は存在します。

不当解雇となった事例:鉄道会社社員の痴漢行為

事案の概要

私鉄会社の従業員が、電車内で痴漢行為(迷惑防止条例違反)を行い逮捕・起訴され、罰金刑を受けた。

会社はこの従業員を懲戒解雇とした。

裁判所の判断

裁判所は、痴漢行為自体は会社の企業秩序に直接の関連を有するもの及び企業の社会的評価の毀損をもたらすと客観的に認められるものについては、企業秩序維持のための懲戒の対象となり得るものものであると判示しつつも、以下の点を考慮して諭旨解雇は処分が重く不相当であると判断し当該解雇を無効としました(東京メトロ事件)。

  • 悪質性の比較的低い行為であること。
  • 罰金20万円の刑罰にとどまっている。
  • マスコミ報道がされていないこと。
  • 勤務態度に問題がなく以前の懲戒処分歴もないこと。
  • 弁明の機会も与えられていなかったこと。

この事例のように、たとえ鉄道会社という痴漢に対して厳しい目が向けられる業種であっても、諸事情を考慮すれば解雇が無効となるケースがあります。

まとめ 

痴漢事件を起こしてしまっても、適切な対応を行えば「解雇」や「会社バレ」を回避できる可能性は残されています。

  • 痴漢=即解雇ではない: 私生活上の行為での解雇には高いハードルがある。
  • 会社バレを防ぐ鍵: 早期に弁護士に依頼し、勾留を阻止して示談を成立させること。
  • 示談の重要性: 示談ができれば不起訴の可能性が高まり、前科もつかない。
  • 解雇通知への対応: 不当解雇の可能性があるため、安易に合意せず専門家に相談する。

不安な時間を一人で過ごしていても、事態は好転しません。

警察沙汰になってしまった場合、一刻も早く刑事事件に強い弁護士へ相談し、職場や家族を守るための行動を開始してください。

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執筆者 代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会 登録番号45484
東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士として、男女問題などの一般民事事件や刑事事件を解決してきました。「ForClient」の理念を基に、個人の依頼者に対して、親身かつ迅速な法的サポートを提供しています。
得意分野
不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
プロフィール
京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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