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投稿日: 更新日: 弁護士 宮地 政和

痴漢で逮捕されたときの流れは?解決方法や痴漢冤罪の対策を解説

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東京都内で、平成30年中に迷惑防止条例違反の卑わいな行為で検挙された人数は、1754人。

1日に約4.8人が検挙されている計算になります。

平成26年と少し古いデータになりますが、全国の迷惑防止条例違反のうち、卑わいな行為で検挙された件数は3439件でした。

東京都の痴漢行為がいかに多いかが分かります。

痴漢で逮捕されると、どのぐらいの期間家に帰ることはできないのでしょうか。
その後、どのような処分を受けるのでしょうか。

今回は、痴漢で逮捕された場合の流れや刑罰、釈放されるまでの流れについて解説します。

痴漢で逮捕されて有罪になった場合の刑罰とは

痴漢で検挙されて有罪判決を受けた場合の刑罰を解説します。

痴漢は、各都道府県の迷惑防止条例違反若しくは、刑法の強制わいせつ罪のいずれかに該当する犯罪です。

衣服の上から下半身や胸を触るなどの痴漢行為の多くは、迷惑防止条例違反です。

衣服の中に手などを入れて、胸や下半身などを直接触ると強制わいせつ罪に問われるおそれがあります。

それぞれの刑罰を確認してみましょう。

迷惑防止条例違反で有罪になった場合の刑罰

迷惑防止条例違反で有罪になった場合は、以下の刑罰に処せられるおそれがあります。

衣服の上から相手の体を触るなどの行為を禁じる迷惑防止条例は、都道府県ごとに定められております。

東京都内を走る電車で痴漢をした場合は、東京都の迷惑防止条例違反になりますし、埼玉県内を走る路線内で痴漢をした場合は埼玉県迷惑防止条例違反です。

  • 東京都迷惑防止条例違反で有罪になった場合:6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金
  • 埼玉県迷惑防止条例違反で有罪になった場合:6か月以上の懲役又は50万円以下の罰金
  • 千葉県迷惑防止条例違反で有罪になった場合:6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金
  • 神奈川県迷惑防止条例違反で有罪になった場合:1年以上の懲役又は100万円以下の罰金

痴漢行為が常習的と判断された場合は、東京都、埼玉県、千葉県では1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処される可能性があります。

神奈川県で、常習的な痴漢行為で有罪となった場合は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。

強制わいせつ罪で有罪になった場合の刑罰

衣服の下に手を入れて、胸や陰部を直接触る、自身の陰部を取り出して相手に押し付けるなどの行為があった場合は、「強制わいせつ罪」に問われる可能性があります。

強制わいせつ罪で有罪になると、6か月以上10年以下の懲役に処せられます。

迷惑防止条例違反のように、罰金刑がありませんので、執行猶予付き判決が下されなければ刑務所に服役しなければなりません。

痴漢で逮捕されてから釈放されるまでの流れ

痴漢の逮捕の種類と、逮捕された後の手続きの流れを解説します。

痴漢の逮捕は現行犯逮捕と後日逮捕の2種類

痴漢での逮捕は、以下の2種類が想定できます。

  • 現行犯逮捕
  • 後日逮捕

「現行犯逮捕」とは、まさに痴漢を行っている最中に逮捕される逮捕を言います。

現行犯逮捕は、警察官、鉄道員や痴漢の被害者だけでなく、居合わせた乗客などの第三者も行うことができます。

警察官以外に現行犯逮捕された場合は、通報によって駆けつけた警察官によって警察署に連行されて、そのまま身柄が拘束されます。

後日逮捕は、捜査機関が所定の捜査を行い、裁判所に逮捕状の発布を請求し、逮捕状が発布されると行われる逮捕です。

現行犯逮捕とは異なり、犯行から逮捕までに時間を要します。

ただし、痴漢での逮捕のほとんどは現行犯逮捕で、後日逮捕が行われることは少ない傾向にあります。

その理由は後ほど説明いたします。

微罪処分で済むケース

微罪処分とは、警察が検察に送致せずに事件を終わりにする処分です。

この微罪処分の対象となる事件は、一般的には窃盗や詐欺、横領、暴行等のうち比較的軽微なものに限定されており、痴漢などの性犯罪は微罪処分の対象ではありません。

そのため、痴漢の事案では微罪処分とはなりません。

駅員室に連れていかれるケース

電車や駅での痴漢を疑われた場合、駅員を呼ばれ、駅員室に連れて行かれ、警察に引き渡されるという流れになることが一般的です。

警察に引き渡されると、警察署で事情聴取されることになりますが、警察としては、まずは被害者の言い分を信用して捜査を進める傾向にあるため、本当は痴漢していなくても冤罪で逮捕されてしまうリスクもあります。

もし逮捕されてしまった場合は、仕事に支障が生じる等の不利益が想定されるため、すぐに弁護士に依頼して、早期の釈放に向けて動く必要があります。

線路を逃走するケース

痴漢を疑われた際、逮捕を免れようとして線路に降りて脱走を図るケースがあります。

これは、危険な行為であることはもちろん、法律的にも鉄道営業法違反や威力業務妨害罪等に該当する可能性がある行為です。

また、線路に降りて脱走を図った結果、鉄道会社が列車を止める等して混乱が生じれば、民事上、これによって生じた多額の損害の賠償請求をされる可能性もあります。

よって、線路を逃走するという方法は絶対にとってはならない方法であるといえます。

痴漢で逮捕されてから身柄が釈放されるまで

次に、逮捕されてからの流れと、身柄を釈放するための方法について解説します。

痴漢で逮捕された場合の流れ

痴漢で逮捕されると、警察署にて身柄が拘束されます。

逮捕から最大48時間は警察によって拘束され、その後の最大24時間は検察官によって身柄が拘束されます。

逮捕されて、最大72時間も身柄の拘束が続くのです。

検察官は、警察から事件を引継ぐと、勾留の要否を判断するために取調べを行います。

勾留とは、最大20日間、被疑者の身柄を拘束する措置です。

逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合に、勾留が必要と判断されます。

検察官が勾留すべきと判断すると、裁判所に勾留請求を行い、裁判官も同様の判断をした場合に勾留が決定されます。

さらに起訴されて、保釈請求(身柄の釈放を求める手続)が認められなかった場合は、裁判が終了するまで身柄拘束が継続します。

逮捕から合計すると数か月から半年もの間、帰宅することができません

身柄を釈放してもらうためにできること

弁護士に弁護活動を依頼することで、逮捕や勾留を阻止できる可能性があります。

そもそも逮捕や勾留といった措置は、再度罪を犯すこと、逃亡、証拠隠滅を防止するために行われるものです。

ですので、逮捕や勾留すべき理由がない場合は、弁護士が逮捕や勾留を阻止すべく活動することで、身柄の拘束を避けられる可能性が大いにあるのです。

特に、迷惑防止条例違反のような強制わいせつや強制性交に比べると比較的軽微な性犯罪では、逮捕されたとしても勾留阻止できるケースが少なくありません。

逮捕されたら早急に弁護士に連絡とり、勾留阻止の弁護活動に着手してもらいましょう。

また、迷惑防止条例違反や強制わいせつ罪などで有罪判決を受けないためには、不起訴処分を目指した弁護活動も必要になります。

日本の刑事裁判の有罪率は99%以上と非常に高く、刑事裁判が開かれたら無罪判決を勝ち取ることは非常に困難です

しかし、検察官が起訴・不起訴を判断するまでに、被疑者が被害者と示談を成立させれば、起訴を回避できる可能性が高まります。

不起訴処分になれば、前科はつかず身柄は釈放されます。

早期に身柄を釈放するためだけでなく、前科をつけないためにも早急に弁護士に依頼して、被害者との示談を進めてもらいましょう。

痴漢で後日逮捕が少ない理由

痴漢で逮捕される場合、圧倒的に多いのが現行犯逮捕です。

痴漢は、証拠が残りにくいため逃亡すれば後日逮捕される可能性は低いと言われています。

痴漢行為の証拠とは、被疑者の手についた被害者の衣服等の微物や、目撃証言、防犯カメラの映像などです。

被疑者の手についた微物は、手を洗えば流れてしまいます。

目撃者がいたとしても、目撃者の証言によって個人を特定することは非常に困難です。

防犯カメラも、電車内への設置が進んでいるとはいえ、混雑している車内で痴漢行為の証拠を捉えることは、難しいといえるでしょう。

後日逮捕される可能性はある

上記の理由から、痴漢で後日逮捕されるケースは現行犯逮捕と比較すると少ない傾向です。

ただし、近年ではスマートフォンの普及により、被害者や目撃者に痴漢行為を撮影されるおそれがあります。

痴漢行為を撮影されて、警察に被害届を出された場合は後日逮捕される可能性はあると考えます。

痴漢行為を常習的に行っていた場合は、後日逮捕されるケースもあります。

痴漢行為から4か月後に逮捕された事例、半年後に逮捕された事例などもありました。

このように、後日逮捕される可能性も十分ありますので、痴漢をしたけど逮捕されていない方も、弁護士に相談しておくとよいでしょう。

シヤチハタの「迷惑行為防止スタンプ」で逮捕される可能性はある?

「痴漢に安全ピン論争」(痴漢をされたら証拠を確保するために犯人と思われる人の手に安全ピンを刺してもいいのではないかという論争)をきっかけに、シヤチハタ株式会社が「迷惑行為防止スタンプ」を試験発売しました。

痴漢などの迷惑な行為の被害を受けた際に、犯人の手に押すことで証拠を残す、という商品です。

このスタンプは、太陽光や蛍光灯などの下では無色ですが、ブラックライトを照射すると手のマークが浮き上がる仕組みになっています。

スタンプが押されていることが、後日逮捕につながるとは言えませんが、犯行直後に「やった」、「やってない」の水掛け論に発展した場合、スタンプが押されていることがある程度の証拠になる可能性はあります。

痴漢冤罪について

痴漢を疑われた場合、被害者としては痴漢されたと思っている状況ですし、犯罪の性質上、目撃者がいないことも多いため、もし実際には痴漢をしていなくてもその疑いを晴らすことは極めて難しいことも多いところです。

その結果、痴漢冤罪が生まれるおそれがあり、たとえ冤罪であっても逮捕や勾留をされる可能性もあります。

そして、逮捕や勾留をされると、場合によって10~20日前後は身柄を拘束されることになり、その間の日常生活や仕事等に大きな悪影響が生じます。

そのため、痴漢冤罪はとても恐ろしいものといえます。

痴漢冤罪に巻き込まれないための対策

痴漢冤罪に巻き込まれないようにするためには、まずは疑われるような行動をとらないことが必要です。

例えば、満員電車で女性の背後や接触するような場所に立たないこと、もしそうした位置に立ってしまった場合でも、両手を上にあげてつり革を持つ等して、怪しまれるような動きをしないことが有効です。

痴漢冤罪の疑いをかけられた時の対処法

痴漢を疑われた場合、たとえ後に冤罪だと分かってもらえる日が来るとしても、それまでにある程度の時間がかかる可能性も高く、その間身柄を拘束されて外部との連絡がとれなくなるリスクがあります。

そこで、なるべく早期に冤罪であることを証明するための証拠を集め、保全しておくことが有効です。

例えば、痴漢を疑われた場合、被害者の供述を録音すること、目撃者を探して供述を録音すること等、後に身を守るための証拠となりそうな資料を収集することができれば、有効な防衛手段となります。

また、ただ逃げると余計怪しまれる等のリスクもあるため、毅然とした態度で誤解であること等説明することも必要です。

さらに、難しい所ですが、なるべく速やかにその場を離れることができれば、そのまま駅員室に連れて行かれて警察に逮捕されるリスクを下げることもできます。

痴漢の被害に遭わないための対策

痴漢の被害に遭わないようにするためには、可能な限り人混みや明かりの少ない夜道を一人で歩くことを避けるといった対策が考えられます。

また、イヤホンをしてスマートフォンの画面に集中していたりすると隙ができてしまい、痴漢に狙われてしまうリスクが高まります。

自らの身を守るため、痴漢の被害に遭う可能性が高い満員電車や人通りの少ない夜道等では、周囲の状況にも気を配り、危うい人や場所の近くに無防備な状態で留まることがないよう注意が必要です。

また、いざというときのために防犯ブザーを携帯しておくことも効果的です。

痴漢に関するトラブルを弁護士に相談するメリット

痴漢と疑われて逮捕されたり、捜査が進んだりしている場合、なるべく早く弁護士に相談をしてその後の対応を検討することをおすすめします。

弁護士に相談することで、具体的な状況に応じて何をする必要があるかを明確にすることができます。

また、逮捕されている場合には、弁護士がすぐに本人に会いに行ってアドバイスをすることや、早期の釈放に向けて動くことができます。

さらに、場合によっては、弁護士が被害者との示談を成立させて不起訴処分を獲得し、前科がつかない形での解決を図ることもできます。

特に、本人の身柄が拘束されている場合や被害者との示談が必要な場合、できる限り早く弁護士に相談して対策を講じることが早期の身柄解放や前科を付けないために極めて重要となります。

まとめ

痴漢で逮捕された場合、現行犯逮捕・後日逮捕を問わず、数か月間身柄を拘束されるおそれがあります。

身柄拘束が続くと、社会生活に大きな影響を与えますので、痴漢で逮捕された場合、逮捕される可能性がある場合は早急に弁護士に相談しましょう。

痴漢の場合、早期に弁護士が弁護活動を行えば、勾留を阻止できる可能性が高まります。

また、被害者との示談を成立させることで、不起訴処分も見込めますので、迅速に弁護士に弁護を依頼することを強くお勧めします。

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執筆者 弁護士宮地 政和 第二東京弁護士会 登録番号48945
人生で弁護士に相談するような機会は少なく、精神的にも相当な負担を抱えておられる状況だと思います。そういった方々が少しでも早期に負担を軽くできるよう、ご相談者様の立場に立って丁寧にサポートさせていただきます。
得意分野
企業法務・コンプライアンス関連、クレジットやリース取引、特定商取引に関するトラブルなど
プロフィール
岡山大学法学部 卒業 明治大学法科大学院 修了 弁護士登録 都内の法律事務所に所属 大手信販会社にて社内弁護士として執務 大手金融機関にて社内弁護士として執務
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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