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投稿日: 更新日: 代表弁護士 中川 浩秀

傷害事件の示談金の相場は?示談の流れや応じてもらえない場合の対策を解説

傷害事件の示談金の相場は?示談の流れや応じてもらえない場合の対策を解説
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警察庁が発表している犯罪統計によると、平成30年に警察庁が認知した傷害事件は2万2523県で、検挙に至ったのは1万8747件でした。

東京都内を管轄する警視庁の統計によると警視庁が認知した傷害事件は3026件、検挙数は2492件と、全国の認知件数のうち約6分の1が東京に集中しています。

多数の繁華街を抱え多くの人が暮らす東京では、傷害事件は暴行事件と合わせて発生頻度が高い犯罪です。

傷害事件を起こした方にとって重要なのは、被害者との示談の成立です。

そこで今回は傷害事件の示談金の相場や流れ、被害者が示談に応じない場合の対処法を解説します。

そもそも示談金とは

示談金の相場を確認する前に、示談金の意味を確認しておきましょう。

示談金とは、事件の被害者との示談の際に、支払うお金のことをさします。

示談金の内訳は、慰謝料や治療費などその事件によって生じた損害を賠償するためのお金です。

傷害事件の場合は、被害者の怪我の治療費や薬代、慰謝料、仕事を休んだ場合の休業損害や後遺障害が生じた場合の慰謝料、逸失利益が示談金となります。

傷害事件の示談金は慰謝料だけではなく怪我の治療にかかった実費や会社を休んだ際の補償なども含まれますので、高額になる傾向です。

暴力を振るった結果、被害者が怪我をしなかった場合は傷害事件ではなく暴行事件といい、示談金の内訳は慰謝料のみとなることがほとんどです。

傷害事件の示談金の相場

傷害事件の示談金は、相手に負わせた怪我の重症度によって異なります。

すり傷や打撲、ねんざ程度の軽度のものであれば10万円から100万円程度ですが、怪我が重く治療費や休業損害などの慰謝料以外の損害項目が高額になった場合には、数百万円から場合によっては数千万円に及ぶ可能性もあります。

ここで、傷害事件の示談金で含まれる項目には、次のようなものがあります。

  • 治療費:けがの治療でかかった通院費や入院費など
  • 休業損害:けがで仕事を休んでしまい収入が減ってしまったことに対する補償
  • 慰謝料:暴行を受けたことによる精神的苦痛を賠償する目的で支払われるお金
  • 後遺障に対する慰謝料:けがで後遺症が残ってしまったことへの精神的苦痛を賠償するお金
  • 逸失利益:けがや後遺症が残ってしまったことで失ってしまった利益を賠償するお金

示談金と聞くと、いわゆる慰謝料のイメージが強いかもしれませんが、けがの治療費がかかった場合には治療費、けがで仕事を休むことになってしまった場合には、休業損害や逸失利益などを請求することができます。

実際のケースで示談金の内訳を決める際は、けがの程度や後遺症が残っているかどうかなどを個別具体的に判断し、当事者間の話し合いで決めることになります。

しかし、けがや後遺症の程度が重くなればなるほど、治療費や休業損害、逸失利益が大きくなる傾向にあるのは間違いないでしょう。

たとえば、複数人から凶器で暴行を受けた結果、半身不随になってしまったような場合には、いわゆる通常の傷害事件における示談金の額よりも金額が跳ね上がることになるでしょう。

また、傷害事件に計画性があり、何も武器を持っていない被害者に対して凶器を用いたり、複数人で暴行を加えた場合など、犯行の態様が悪質である場合には、被害者の処罰感情が強くなり、示談金の額が高騰する可能性が高いです。

示談金の相場をあらかじめ知っておくことで、自分に不利な金額で示談をまとめてしまうことを避けることができ、また相手に対して適切な主張をすることで、交渉をスムーズに進めることができます。

相手方との示談交渉を始めるに着手する前に、専門家である弁護士に適正な示談金の額を確認しておくとよいでしょう。

示談成立までの流れ

次に示談が成立するまでの流れを解説します。

被害者の連絡先を確認する

示談交渉は、被害者若しくは被害者の代理人である弁護士と行います。

知人に対して暴力を振るった場合以外は、加害者は被害者の連絡先を知らないことがほとんどですので、まずは被害者の連絡先を調べなければなりません。

通常は事件を担当する検察官に、「示談のために被害者の連絡先を知りたい」と申し入れます。

検察官は、被害者の連絡先を勝手に加害者に知らせることはありませんので、被害者にその旨を伝えます。

被害者が、加害者に連絡先を知らせることを了承した場合は、検察官を通じて被害者の連絡先を入手できます。

しかし、傷害事件の被害者の多くは加害者やその関係者に連絡先を知られることを嫌がることが多いです。

その場合は、被害者の連絡先がわからないため、示談交渉に着手できません

被害者の連絡先がわからず示談交渉を進められない場合は、速やかに弁護士に示談交渉を一任してください。

加害者に直接連絡先を知られることを嫌がる被害者も、連絡先を教える相手が弁護士であれば了承するケースが多いです。

被害者と示談内容について話し合う

被害者の連絡先がわかったら、被害者と連絡を取って示談内容を話し合います。

ご自身で交渉する場合は、丁重に謝罪した上で、損害を賠償する意思があることを伝えましょう

あらかじめ示談金として支払える金額を把握した上で、その金額内で交渉を進めます。

示談金の金額は、被害者の怪我の程度や事件の悪質性によっても異なりますので、被害者に提示する前に弁護士にご確認ください。

被害者との示談交渉では、示談金のほかに、接近禁止などの禁止事項についても取り決めることがあります。

また、必ず決めておかなければならないのが、示談が成立したら被害者に、被害届や告訴の取下げを行ってもらうことです。

そうすることで、傷害事件で起訴される可能性が低くなります。

示談書の取り交わし

双方が示談内容に合意したら、合意内容を網羅した示談書を作成します。

示談書の内容に不備があった場合は、「せっかく示談金を支払ったのに、被害届を提出されて起訴された」ということになりかねません。

示談書が完成したら、双方が示談書に署名捺印を行います。

それによって示談が成立します

示談金は示談書に記載している方法で支払いましょう。

示談書の控えは検察官に提出します。

相手が請求する示談金が一括で支払えない場合

示談金の一括払いが難しい場合は、分割払いを申し入れます。

被害者が分割払いに難色を示す場合は、強制執行認諾文言付公正証書を作成することで、被害者が分割払いを受け入れやすくなります。

強制執行認諾文言付公正証書とは、支払いが滞った場合は訴訟を提起することなく強制執行を申し立てることができる公正証書です。

これがあれば、加害者の示談金の支払いが遅延した場合に、直ちに法的手続を講じることができるため、被害者にとっては安心材料となります。

また、家族や親族などを連帯保証人にすることも一つの手段です。

傷害事件で示談するメリットとは?

傷害事件を起こした際にもっとも重要なことは、被害者との示談交渉を早急に進めることです。

警察の捜査が進み、逮捕されてしまう前に被害者と示談をしておくことで、逮捕を免れたり、不起訴処分になり前科がつかないなどの、さまざまなメリットがあります。

示談交渉がまとまれば、被害者から慰謝料の請求を受けなくなるなどの民事上でのメリットもありますが、ここでは、傷害事件において被害者と示談することで得られる刑事上のメリットを3つご紹介します。

傷害事件で示談する刑事上の3つのメリット

  • 逮捕される可能性を下げることができる
  • 早期釈放や不起訴になる可能性が高まる
  • 起訴されても減刑される可能性が高い

逮捕される可能性を下げることができる

警察の捜査が進む前に被害者との示談交渉を進めておけば、警察に逮捕される可能性を限りなく低くすることができます。

示談することで、被害届を取り下げてもらったり、当事者間で話がついているので刑事処分は望まない旨の嘆願書などを被害者の方に書いてもらうことで、警察も刑事事件として立件しない可能性があるでしょう。

ただし、いかに些細な事件であっても、在宅事件のまま手続きが進み、起訴されて罰金刑などが課されてしまうと、前科がついてしまい今後の人生に大きな影響を及ぼしてしまうかもしれません。

悪質な傷害事件でけがの程度も重く、被害者の処罰感情が強い場合には、当事者同士で示談交渉を進めることが難しいケースもあるでしょう。自分1人で交渉するのが難しい場合には、刑事事件の経験が豊富な弁護士に対応を依頼することで、スムーズに交渉を進めることができるでしょう。

早期釈放や不起訴になる可能性が高まる

たとえ、逮捕されてしまったとしても、示談交渉を進めておくことで、早期釈放や不起訴になる可能性を高めることができます。

警察に逮捕されると、最大で23日間、身体拘束を受けることになりますが、示談がまとまっていないと、捜査機関も起訴して刑事処罰を与える方向で話が進んでいくことになるでしょう。被害者の処罰感情は、刑事事件において起訴するか不起訴とするかの重要な要素となるからです。

また、刑事裁判では、起訴されてしまうと、99%以上の確率で有罪判決が出てしまうため、前科がついてしまいます。前科がついてしまうと、今後の人生のさまざまな場面で影響が出てきてしまうおそれや、家族にも影響が出てしまうおそれもあるでしょう。

被害者との示談交渉を穏便にまとめ、起訴される可能性を少しでも減らすことは、刑事事件では非常に重要なことであるといえるのです。

起訴されても減刑される可能性が高い

被害者との示談交渉がまとまっていれば、たとえ起訴されてしまったとしても、執行猶予がついたり減刑されたりする可能性があります。

書面だけの簡易的な裁判手続きである略式裁判で罰金刑になったり、執行猶予付きの判決が出るなど、懲役刑を回避できる可能性が高くなるでしょう。

懲役刑ではなく罰金刑や執行猶予付きの判決であれば、学校や会社など日常生活への影響を最小限にすることができるでしょう。

そのためには、被害者との示談交渉の際に、示談の内容はもちろん、自分がしたおこないを深く反省し、被害者に対して真摯に謝罪することが重要です。

もちろん、被害者と示談をしていれば、必ずしも罰金刑や執行猶予付きの判決が出るわけではありません。
しかし、被害者との示談がまとまっていて、かつ被害者がそこまで刑事処分を望んでいないのであれば、重い刑事処分になる可能性を、限りなく低くすることができるでしょう。

被害者が示談に応じてくれない場合の対処法

被害者が示談に応じない場合はどうしたらよいのでしょうか。

ケース別に解説します。

被害者が示談金の金額に納得しない

被害者が、加害者の提示する示談金に納得しない場合の対処法は、まずは弁護士に相談して適正な示談金の金額を確認することです。

被害者の要求する示談金が相場をはるかに超えている場合は、相場程度まで減額を申し入れることになります。

被害者の要求が適正であれば、加害者側がその要求を飲むのが妥当です。

なぜならば、早急に示談を成立させなければ、起訴されてしまうおそれがあるからです。

示談金が一括で支払えない場合は、先述したように分割払いや連帯保証人をつけることを検討しましょう。

被害者の怒りの度合いが強く冷静に話ができない

傷害事件の被害者の多くは、加害者に憎しみの感情を抱いておりますので、冷静に話し合いが進みにくいものです。

その場合は、無理をして交渉を進めるのではなく弁護士に交渉を一任しましょう。

重要なのは、起訴が決定する前に示談を成立させることです。

被害者が加害者の刑事罰を望んでいる

被害者が、加害者を罰してほしいと強く考えている場合、示談交渉には一切応じないことがあります。

その場合は、被害者に示談金を支払う代わりに、贖罪寄付を行うことで反省の姿勢を表示することができます。

贖罪寄付を行った場合はその証拠資料を検察官に提出します。

適正な贖罪寄付の金額は、事件によって異なりますので弁護士にご相談ください。

まとめ

傷害事件の示談金の相場は10万円以上ですが、事件の悪質性や被害者の怪我によって異なります。

個別の状況によって示談金が異なりますので、被害者との示談交渉に着手する前に弁護士に示談金の目安を確認しておくとよいでしょう。

被害者との示談交渉は加害者が行うことができるものの、場合によっては冷静に話を進めることができず、起訴が決定するまでに示談が成立しないおそれがあります。

起訴を回避するために被害者との示談を急いでいる方は、ご自身で対応するより弁護士に依頼しましょう。

その場合は、傷害事件の弁護実績が豊富な弁護士を選ぶことを強くお勧めします。

また、示談交渉には高度なコミュニケーション能力が求められますので、しっかりとコミュニケーションがとれる弁護士を選ぶことも大切です。

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執筆者 代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会 登録番号45484
東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士。
「ForClient」を理念として自らも多くの顧客の信頼を得ると共に、2018年の事務所開設以降、2023年までに全国12支店へと展開中。
得意分野
ベンチャー・スタートアップ法務、一般民事・刑事事件
プロフィール
京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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