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投稿日: 更新日: 代表弁護士 中川 浩秀

窃盗罪の初犯で逮捕されたら?処分や前科について弁護士が解説

窃盗罪の初犯で逮捕されたら?処分や前科について弁護士が解説
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窃盗罪で逮捕されてしまった場合、その後の手続きはどう進んでいくのでしょうか。
他人の物を盗んでしまった場合でも、今までに前科がなければ、身柄を拘束されず、処分も軽いものになると考えている方も多いでしょう。

しかし、たとえ初犯であっても、犯罪を犯したことに変わりはないので、ケースによっては身柄を拘束されたり、実刑判決を受ける可能性があります。

この記事では、窃盗罪の初犯でも、身柄を拘束されたり、実刑判決を受ける可能性があることについて解説したうえで、執行猶予をつけるためのポイントや、処罰を軽くするための対策について、わかりやすく解説していきます。

窃盗罪の初犯でも身柄を拘束される可能性がある

今まで犯罪を犯した事がなかったとしても、窃盗事件の重大性によっては、身柄を拘束される可能性があります。

詐欺や窃盗などの刑事事件には、「身柄拘束事件」と「在宅事件」の2種類があります。

身柄拘束事件とは、警察や検察官が、犯罪の疑いをかけられている者の身柄を拘束したうえで、事件の捜査を進めていく手続きです。

また、在宅事件とは、警察が容疑者の身柄を拘束する事なく、事件の捜査を進める手続きのことを指します。

窃盗の罪を犯したからといって、必ずしも警察に逮捕され、身柄を拘束されるとは限りません。在宅事件で捜査を進める事になれば、今まで通り学校や会社に行きながら、警察や裁判所からの呼び出しにその都度応じることになります。

在宅事件であれば日常生活に影響は少ない

在宅事件になれば、日常生活への影響を極力少なくすることができます。

在宅事件になるかどうかは、事件の重大性や証拠隠滅・逃亡のおそれがないなど、さまざまな事情を総合的に考慮したうえで決定されます。

在宅事件になる可能性がある事情は、次の通りです。

在宅事件になる可能性がある事情
  • 初犯であること
  • 比較的軽微な事件であること
  • 逃亡や証拠隠滅のおそれがないこと
  • 身体拘束による影響が大きい場合

初犯の場合、繰り返し犯罪を犯しているケースに比べて、在宅事件になる可能性が高いです。

また、被害額が数百円から数千円の万引きや、自転車泥棒などの比較的軽微な事件であったり、住所がわかっていて、本人も深く反省しているなど、逃亡や証拠隠滅のおそれがない場合には、身柄を拘束する必要性や相当性が認められず、在宅事件になる可能性が高いです。

一方、同じ窃盗事件であっても、老夫婦の家に空き巣に入り、現金1,000万円を盗み出した場合など、手口が悪質で被害額も高額である場合には、逃亡されたり証拠隠滅を防ぐためにも、容疑者の身柄を拘束したうえで、事件の捜査を進めていく可能性が高いです。

ほかにも、犯行態様や犯罪結果、前科や居住地、職業などの、さまざまな事情を考慮したうえで、在宅事件になるかどうかが決まります。

なお、身体拘束による影響が大きい場合とは、たとえば被疑者が重篤な病気にかかっている場合などが挙げられます。身体拘束をすることで、被疑者の心身に悪影響を及ぼす場合には、逮捕・勾留の必要性や相当性が認められず、在宅事件になる可能性があります。

在宅事件は捜査期間に制限がない

身柄拘束事件は、厳格な時間制限の下で手続きが進んでいきますが、在宅事件の場合、捜査期間には決まりがなく、場合によっては捜査が長引いてしまう可能性があります。

窃盗の初犯であれば、長くても、警察で1〜2ヶ月、検察で1〜2ヶ月くらいの捜査で起訴が不起訴かの判断が下されます。

しかし、捜査状況の進展次第では、起訴か不起訴の判断まで1年以上かかることもあり、逆に、1ヶ月程度で処分の内容まで決まるケースもあります。

窃盗罪の初犯でも起訴される可能性がある

窃盗の初犯で、かつ在宅事件で捜査が進められたとしても、起訴されてしまう可能性は否定できません。

起訴とは、検察官が裁判所に訴えを起こすことを指します。窃盗初犯で、かつ被害額も少なく、被害者とすでに和解をしているような場合であれば、起訴されず、捜査のみで事件が終了する可能性が高いです。

一方、窃盗の初犯であったとしても、被害額が大きく、犯罪の態様が悪質で、かつ事件の証拠も揃っているのであれば、起訴処分になる可能性が十分にあるといえます。

日本では、犯罪の証拠が揃っており、確実に有罪の場合にしか起訴しないのが現状です。そのため、検察に起訴されてしまうと、99%以上の確率で有罪が確定し、前科がついてしまうことになります。今後の生活への影響を考えるのであれば、不起訴処分を目指して、できるだけ早い段階から対策をおこなうことが重要です。

略式起訴になる可能性も

窃盗罪の初犯で、かつ被害額も軽微であれば、略式起訴になる可能性があります。

略式起訴とは、通常の起訴よりも簡略化された、刑事処分を決める手続きのことです。略式起訴は、軽微な事件を迅速に処理することを目的とした制度なので、書面のやりとりのみで手続きが進み、いわゆる公開裁判はおこなわれません。

また、本来おこなわれるべき公開裁判をおこなわないことから、100万円以下の罰金または科料が刑罰の軽微な事件でのみ利用できる制度で、被疑者が書面で、略式起訴について同意をする必要があります。

略式起訴であれば、通常の裁判よりも早く手続きが進むため、日常生活への影響が少ない点がメリットとして挙げられます。

しかし、略式起訴であっても、有罪になってしまえば、通常の裁判と同じように前科がつくことに、注意が必要です。

不起訴であれば前科はつかない

逮捕されただけでは前科はつかないのはもちろん、通常の起訴もしくは略式起訴のどちらであったとしても、有罪判決を受けなければ前科はつきません。

ただし、起訴されてしまった場合には99%以上の確率で有罪判決が出ることを考えると、前科をつけないためには不起訴処分を目指す事が重要になるでしょう。

なお、執行猶予判決だったとしても、有罪の判決を受けている以上、前科はついてしまうことに注意が必要です。

窃盗罪の初犯でも実刑になる可能性がある

たとえ、窃盗罪の初犯であったとしても、事件の内容次第では、執行猶予がつかず、実刑判決を受ける可能性があります。

窃盗罪の刑罰は、刑法で次のように規定されています。

第235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法上、他人の物を盗んだ場合には、10年以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金が科されることになります。

具体的なケースでどれくらいの刑罰を与えられるかは、初犯かどうかだけではなく、被害額や犯罪の悪質性などを考慮して決定することになります。

そのため、犯罪の態様が悪質で、被害額も高額、本人に反省の姿勢が見られないようであれば、たとえ初犯であったとしても、実刑になる可能性は十分にあるといえるでしょう。

窃盗罪の未遂であれば処罰される可能性は低い

窃盗の未遂であっても処罰の対象となりますが、起訴されるかどうかは犯罪行為全体を判断したうえで決定されます。

たとえば、スーパーで数千円の万引きをしようとしたが、レジを通過する前に店員に見つかってしまった場合を想定します。このケースであれば、本人が心から反省し、盗もうとした物も返却したうえで、お店側もこれ以上の処罰を望んでいないのであれば、不起訴になる可能性が高いといえるでしょう。

一方、共犯者とともに数ヶ月前から空き巣に入ることを計画し、1,000万以上の箪笥預金をしている老夫婦の家に当たりをつけて、深夜に空き巣に入った場合には、犯罪の態様も悪質で、想定される被害額も高額であることから、起訴されて処罰を受ける可能性が高いといえるでしょう。

窃盗罪の初犯で不起訴処分や執行猶予を獲得するためのポイント

窃盗罪を犯してしまった場合、日常生活に影響を及ぼさないようにするためには、不起訴処分になるか、もしくは起訴されたとしても、執行猶予判決を得ることが重要です。

窃盗罪の初犯で不起訴処分や執行猶予判決を得るためのポイントは次の5つです。

窃盗罪の初犯で不起訴処分や執行猶予判決を得るための5つのポイント
  • 自首する
  • 盗んだものはすぐに返却する
  • 被害者との示談交渉を素早くおこなう
  • 再犯防止の対策をおこなう
  • 弁護士に対応を依頼する

それぞれの具体的な内容を確認していきましょう。

自首する

自首をすることで、刑を軽くしてもらえる可能性があります。

自首した場合については、刑法で次のように規定されています。

第42条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。

自首をしたとしても、必ずしも減刑されるとは限りません。

しかし、自首することで反省の念を示し、今後犯罪を犯さないことを誓うことで、不起訴処分もしくは執行猶予判決になる可能性があります。

まだ警察の捜査が及ぶ前の段階で、自分がしてしまった犯罪を悔いているのであれば、今すぐ警察に自首することをおすすめします。

盗んだものはすぐに返却する

盗んでしまった物がまだ手元にあるのであれば、消費する前に持ち主に返却してください。

盗んだ物をすぐに返すことで、反省している姿勢を示すことができ、被害者との示談交渉もスムーズに進むでしょう。

ただし、盗んだ物がすでに手元にない場合には、持ち主にそのことを真摯に伝え、その損害の賠償をおこなうことで、被害者との示談交渉を有意義に進める事ができるでしょう。

被害者との示談交渉を素早くおこなう

不起訴処分や執行猶予判決を得たいのであれば、警察の捜査が進む前に、被害者となるべく早い段階で示談することを心がけてください。

窃盗の初犯で、被害額も大きくない比較的軽微な事件であれば、被害者と示談をすることで、不起訴処分になる可能性が高くなります。

示談に応じてくれるかどうかは被害者次第ですが、盗んでしまった物をすぐに返却し、犯罪行為について真摯に反省したうえで、被害額を全額賠償することで、示談交渉をスムーズに進める事ができます。

できれば、示談をしたうえで、被害届を取り下げてもらうのがベストです。

再犯防止の対策をおこなう

今後、2度と窃盗の罪を犯さないように、再犯防止の対策を早めにおこなっておくことで、警察や検察官、裁判官への印象が良くなり、不起訴処分や執行猶予判決を得やすくなります。

窃盗罪は再犯率が高い犯罪です。たとえ初犯だったとしても、再犯防止に向けた取り組みを早い段階からおこなう事は、周囲の印象をよくするためには非常に重要です。

再犯防止の対策には、おもに次のようなものがあります。

  • 弁護士から再犯防止のためのアドバイスをもらう
  • 家族や友人にサポートをしてもらう
  • 窃盗症治療に特化したプログラムを実施する

この他にも、再犯防止のためにしている事があれば、積極的に捜査機関に示していくと良いでしょう。

弁護士に対応を依頼する

窃盗の初犯で前科をつけず、日常生活に影響を及ぼさないためには、弁護士に対応を依頼する事が重要です。

比較的軽微な窃盗事件であっても、捜査状況や示談交渉の進展具合では、起訴されて実刑判決を受けてしまう可能性があります。

たとえ、罰金や科料などの軽微な処罰だったとしても、有罪判決を受けている以上、前科がついてしまい、今後の生活に悪影響を及ぼしてしまうでしょう。今まで通りの日常生活を早く取り戻すためには、いち早く被害者と示談することで、不起訴処分を獲得する事が重要です。

弁護士は法律と交渉の専門家です。刑事事件で不起訴処分を獲得するノウハウを熟知しているため、個人で交渉するよりも、被害者にとってメリットの大きい結果をもたらしてくれる可能性が高いです。

被害者との示談交渉を進める場合、窃盗をされた怒りから、当事者同士では交渉がスムーズにいかないおそれがあります。その点、弁護士であれば、被害者に真摯に謝罪することで、穏便に交渉をまとめることが可能です。

まとめ

窃盗罪の初犯の場合でも、事件の重大性や捜査の進展具合では、身柄を拘束され、実刑判決を受けるおそれがあります。

起訴され有罪判決を受けてしまうと、たとえ執行猶予がついたとしても、前科がついてしまい、日常生活に影響を及ぼしてしまうでしょう。

前科をつけないためには、不起訴処分を獲得する事が重要です。

そのためには、迅速かつ的確な対応を、事件当初からおこなう必要があります。

対応が遅れて前科がついてしまわないようにするためにも、窃盗の罪を犯したらすぐに弁護士に対応を依頼することをおすすめします。

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執筆者 代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会 登録番号45484
東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士。
「ForClient」を理念として自らも多くの顧客の信頼を得ると共に、2018年の事務所開設以降、2023年までに全国12支店へと展開中。
得意分野
ベンチャー・スタートアップ法務、一般民事・刑事事件
プロフィール
京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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