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投稿日: 更新日: 弁護士 内山 悠太郎

離婚に必要な別居期間の目安|2年以下で認められる可能性は?

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「離婚を見据えて別居を考えているが、どれくらいの期間別居すれば、離婚できるのか知りたい」

「できるだけ早期に離婚したいが、別居期間が短くても離婚は成立するのだろうか」

このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、裁判離婚で必要な別居期間の目安、別居する際に注意すべきこと、別居期間中の生活費、離婚時の財産分与と別居開始日に関する注意事項などについて解説します。

裁判離婚で必要な別居期間は3~5年

裁判離婚で、離婚を認められるために必要な別居期間の目安は3~5年です。

2年以下の短い期間で認められることもありますが、その場合は配偶者に有責行為があるなどの条件を満たす必要があります。

1.協議離婚と裁判離婚

離婚が成立する方法には、協議離婚と裁判離婚があります。

協議離婚とは、双方の話し合いで離婚をするものです。

離婚する人の約9割が協議離婚を選択しているようです。

この場合、別居してから1年以内に離婚に至ることが多いようです。

夫婦間での話し合いで離婚が成立しない場合、一般的には調停離婚を行います。

調停離婚とは家庭裁判所の調停により離婚をするものです。

そして、家庭裁判所の調停でも当事者の合意が成立しなければ調停は成立しないため、その場合には、裁判離婚となるのが一般的です。

裁判離婚とは、家庭裁判所の判決により離婚をするものです。

一般的には裁判離婚を行う前には、調停を行う必要があり、調停手続を経て、不調(不成立)という結果に至った場合に裁判手続に移ることになります。

2.裁判離婚が認められるためには

裁判を起こして、離婚が認められるためには、裁判所に夫婦関係の破綻を認めてもらうことが重要です。

離婚については、民法第770条1項で以下の通り規定されています。

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき
三 配偶者の生死が三年以上定かでないとき
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

一から四に該当する事由がある場合は、比較的容易に裁判で認められますが、実際は、そのようなケースはまれです。

通常は五の「婚姻を継続し難い重大な事由がある」ことを主張していくことが多いといえます。

つまり、婚姻関係が既に破綻していて、回復の見込みがないということを示していく必要があるのです。

別居は夫婦関係が既に破綻していることを有効に示す要因になります。

夫婦は法律上同居する義務があり、これは民法第752条で「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています。

この義務に違反するということは、婚姻関係が既に破綻していることを推認させ、裁判離婚が認められるために有効な要素と考えられています。

3.離婚に必要な別居期間は3~5年が目安

一般的に、離婚に必要な別居期間は3~5年程度が目安とされています。

ただし、個々の事例にもよって異なり、別居期間の長さだけでなく、別居に至った原因も考慮されます。

相手の不貞行為やDVなど有責行為があった場合は、より短い期間でも離婚が認められることもあるでしょう。

しかし、単に性格の不一致などが原因の場合は、少なくとも2~3年の別居期間は必要です。

①有責行為とは

有責行為とは、別居や離婚の原因となった配偶者の行為のことです。

不貞行為、DV、虐待などがこれに該当します。

また、有責行為を行った配偶者のことを「有責配偶者」といいます。

4.自分が有責配偶者の場合は長くかかることも

自分が有責配偶者となり、離婚を希望している場合、より長い別居期間がなければ、離婚は認められにくいでしょう。この場合の別居期間は10年が目安となります。

また、離婚裁判において、有責配偶者からの離婚請求は原則として認められにくいといえます

有責配偶者からの離婚請求が認められるためには、相当長期の別居期間が要求されます。

相当長期だと認められる期間は、婚姻期間等の個々の場合によりますが、最短でも6年は必要でしょう。

5.2年以内の短い別居期間で離婚が認められるケース

別居期間が2年以内という短い期間でも離婚が認められることもあります。

前述した通り、不貞行為やDVなど、配偶者による有責行為があった場合は、2年以内でも離婚が認められる可能性が高いでしょう。

また、婚姻日から別居開始日までの期間が短く、同居期間が短い場合も、認められることがあります。

6.単身赴任は別居期間と認められる?

単身赴任は別居期間としては認められません

単身赴任の場合は、離婚協議が始まった時点や、もう戻るつもりはないことを配偶者に告げた時点から、別居期間として認められることになります。

別居する際に注意すべきこと

別居する際には夫婦間で話し合いをすることが大切です。

億劫だからと、相手との話し合いを避けて、自分勝手な行動を起こすと、後になって不利益を被ることがあります。

別居する際は、できる限り誠実な姿勢で配偶者と向き合うことが大切です。

別居する際に、特に注意が必要な点について説明します。

1.一方的に出ていかないこと

別居することを決意しても、一方的に、黙って出て行ってはいけません。

そのような行為は悪意の遺棄とみなされる場合があるからです。

悪意の遺棄とは、正当な理由なく夫婦間における同居・協力・扶助義務に違反することをいいます。

悪意の遺棄は、民法で定められた法定離婚事由の一つで、悪意の遺棄に該当する行為をした場合、離婚裁判で不利な立場となる可能性があります。

そのため、別居する際は、必ず事前に相手の同意を得た上で家を出ることが大切です。

相手と話をして同意を得ることが難しい場合は、手紙やメールなどで別居する旨を伝えてもよいでしょう。

2.子どもがいる場合はよく話し合うこと

子どもがいる場合は、夫婦間でよく話し合いましょう。

特に、どちらも子どもの親権を取得することを望み、後々親権について争うことが予想される場合は、慎重に行動する必要があります。

勝手に子供を連れて出て行ってしまうと、親権についての訴訟や調停の際に、不利になってしまう可能性があるので、注意しましょう。

子どもを連れて出ていく場合は、必ず事前に相手の同意を得ることが大切です。

3.浮気をして別居したい場合も話し合いが大切

自分が浮気をして、別居を望んでいる場合も、相手とよく話し合うことが大切です。

自分が有責配偶者になると、原則として、自分から離婚請求をすることは難しくなります

だからといって、衝動的に家を出て行ってしまうと、不貞行為によって離婚原因を作っただけでなく、悪意の遺棄にも該当すると判断され、裁判では非常に不利になります。

さらに、不貞行為についての慰謝料を配偶者から請求されれば、通常よりも高額な慰謝料の支払いを命じられる可能性もあります。

真剣に離婚を望むなら、誠実に配偶者と話し合いましょう。

以下の3つの基準を満たせば、自分が有責配偶者でも離婚請求が認められる可能性があります。

  1. 夫婦の間に未成熟の子どもがいないこと
  2. 相手方配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情がないこと
  3. 夫婦がその年齢及び同居期間と対比して、相当の長期間の別居をしていること

(最高裁判所昭和62年9月2日判決)
有責配偶者からの離婚請求が認められるためには、相当の長期間とみなされる期間、別居していることが条件であり、その期間の目安はおよそ10年とされています。

4.相手の浮気により自分が出ていく場合は事前準備を

相手の浮気によって自分が家を出ようとしている場合は、事前準備をしておく必要があります。

出ていく前に、浮気の証拠収集と相手の財産状況の把握を必ずしておきましょう。

これらは、裁判を有利に進めるために、大変重要な証拠となります。

①浮気の証拠収集

不貞行為による慰謝料請求を考えている場合は、特に浮気の証拠を集めておくことが大切です。

別居してしまうと、相手の行動がわからなくなりますし、証拠になるものを準備するのも難しくなります。

浮気の証拠になるものは、別居前に集めておきましょう。

②相手の財産状況の把握

相手の財産状況を把握しておくことも大切です。

別居期間中でも、法律上はまだ夫婦であるため、収入の少ない側が、収入が多い側に婚姻費用を請求することができます。

また、離婚の際には、夫婦が共同で築いた財産については夫婦で分け合う財産分与を行います。

相手の財産状況を把握しておくと、これらの手続がスムーズに進むでしょう。

5.別居先の住所を相手に教える必要はない

配偶者に別居先の住所を教える必要はありません。

特に配偶者から暴力を振るわれていた場合は、絶対に教えないようにしましょう。

配偶者が、「二度と暴力を振るわないから住所を教えてほしい」などと言ったとしても、配偶者の言葉を信じて、教えてはいけません。

一度暴力を振るったことがある人は、同じことを繰り返す可能性が高いといわれているからです。

別居期間中の生活費は婚姻費用分担請求を

離婚に向けて別居をしたいけれど、経済的な面で不安があるという方もいらっしゃるかと思います。

生活費など経済的な面での不安を解消するために知っておくべき婚姻費用分担請求権、婚姻費用の決め方や注意点などについて説明します。

1.別居中でも生活費を請求できる

別居中でも、配偶者に生活費を請求することは可能です。

法律上の夫婦であるかぎり、婚姻費用を請求する権利があるからです。民法第760条では、以下のように定められています。
“夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。”

「婚姻から生ずる費用」とは、夫婦と未成年の子が社会生活を維持するために必要な生活費のことです。

具体的には、衣食住の費用や医療費、子どもの養育費、教育費などが該当します。

そのため、収入のない、または収入が低い方が、収入のある方に対して、自分と子どもの生活費を請求することは、婚姻費用分担請求権として法律で認められているのです。

2.婚姻費用の決め方と注意点

婚姻費用は、夫婦の資産、収入、支出など、総合的な事情を元に決められます。

当事者間の協議で決めることもできますが、話がまとまらない場合は、家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立て、調停委員の仲介の元に話し合うことになります。

さらに、調停でも決まらず不調になった場合は、家庭裁判所に審判事件として申し立て、裁判官による審理の元で、婚姻費用が決定されることになります。

具体的な婚姻費用の金額については、裁判所が公開している「養育費・婚姻費用算定表」を参考に決められます。

婚姻費用がもらえるのは、請求時から離婚が成立するまでの期間なので、できる限り早い時期に請求することをおすすめします。

離婚時の財産分与と別居開始日に関する注意事項

最後に、離婚時の財産分与と別居開始日に関する注意事項について説明します。

1.財産分与とは

財産分与とは、離婚の際に、夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産を分けることです。

財産分与については、民法第768条1項で以下のように定められています。
“協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる”

つまり、結婚中に取得した財産は、たとえ一方の名義であったとしても、夫婦の共有資産とみなされ、分配することになるのです。

なお、財産分与は別居の有無にかかわらず請求することができます。

2.別居開始日以降の財産は分与の対象外となる

離婚時に財産分与を行う際、別居開始日は重要な基準になります。

財産の取得日が別居開始日以前か、以降かによって財産分与の対象になるかどうかが変わるためです。

財産分与の対象となるのは、夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産です。

その財産が分与の対象になるか否かは、別居開始日を基準に判断されます。

つまり、財産分与の対象となるのは、別居する以前に築いた財産であり、別居開始日以降に取得した財産は分与の対象とはなりません。

たとえば、相手方が別居後に受け取った給料などは対象外となります。

また、その時々で価値が変動する財産の評価も、原則として別居開始日を基準に行うことになります。

まとめ

今回は、裁判離婚で必要な別居期間の目安、別居する際に注意すべきこと、別居期間中の生活費、離婚時の財産分与と別居開始日に関する注意事項などについて解説しました。

特に離婚裁判で、離婚が認められるためには、法律の定める要件を満たすことが大切で、裁判所が特に重視するのが別居期間です。

離婚が認められるのに必要な別居期間の目安は5年とされていますが、より早期の離婚を望む場合は一度弁護士に相談してみると短期間の別居でも離婚が成立するかもしれません。

弁護士に相談すれば、置かれている状況などに応じて、離婚成立に向けた最善の方法を示してもらえます。

離婚を望んでいる場合は、別居期間の長短にかかわらず、離婚問題に精通した弁護士に相談してみることをおすすめします。

私達、東京スタートアップ法律事務所は、自分らしい人生を歩むために真剣に離婚を検討されている方を全力でサポートしております。

秘密厳守はもちろんのこと、分割払い等にも対応しておりますので、お気軽にご相談いただければと思います。

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執筆者 弁護士内山 悠太郎 第一東京弁護士会 登録番号59271
各種取引の契約書作成、各種業規制への調査・対応等の業務、株主総会等のガバナンス業務、労務管理等のコンプライアンス業務、紛争対応、M&Aにおけるデューデリジェンス、第三者調査委員会における調査補助者、民事再生等の企業のさまざまな場面における業務を経験。その経験を活かして、ベンチャー企業の新しい事業を行うために乗り越えなければならない法的問題への対応や企業のフェーズにマッチした柔軟な社内整備の手助けを目指している。
得意分野
ガバナンス関連、各種業法対応、社内セミナーなど企業法務
プロフィール
埼玉県出身 明治大学法学部 卒業 早稲田大学大学院法務研究科 修了 弁護士登録 都内法律事務所 入所 東京スタートアップ法律事務所 入所
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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