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更新日: 代表弁護士 中川 浩秀

一方的な別居は有責配偶者になってしまう?悪意の遺棄になる条件や注意点を解説

一方的な別居は有責配偶者になってしまう?悪意の遺棄になる条件や注意点を解説
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夫婦生活では、相手のことがどうしても許せないと感じるときもあるでしょう。

家を出ていきたいと思うときもあるでしょう。

ただ、一方的に出て行ったら、相手に迷惑をかけてしまい、離婚に不利になってしまうのではと考えてしまって出るに出られないという方もいらっしゃるかもしれません。

実際、一方的な別居は離婚で不利になってしまうのでしょうか。

今回は、一方的な別居が法律上どう扱われているのかについて詳しく解説します。

一方的な別居は有責になる?

有責配偶者とは、離婚の原因を作った配偶者のことです。

一方的な別居は、離婚の原因を作ったとして有責といわれてしまうのでしょうか。

有責配偶者の定義をご紹介した上で、どのような場合に有責となり、どのような場合に有責とならないかについて説明します。

有責配偶者の定義とは

まず、有責配偶者が裁判例や法律でどのように定義されているのかみていきましょう。

最高裁は、「離婚請求がその事由につき専ら責任のある一方の当事者」(最大判昭和62年9月2日(民集第41巻6号1423頁)としています。
この「離婚請求の事由」は離婚原因(法定離婚事由)とも呼ばれていますが、民法770条1項で以下のように定められています。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

このような原因を作った人が「有責配偶者」となります。
この離婚原因(法定離婚事由)について、詳しくみていきます。

有責配偶者になる行為と法定離婚事由

法定離婚事由を1つずつ、具体例と共に解説します。全体的に、離婚が認められやすくなっている傾向にあります。

・不貞行為
配偶者以外の人と肉体関係を持った場合です。
離婚せざるを得ない場合ですので、1回限りでは離婚が認められないこともあり、ある程度継続的で複数回の場合の方が該当しやすいです。

・悪意の遺棄
正当な理由なく別居する、生活費を渡さないなどの場合です。ただ、実務上「悪意の遺棄」に当たる場合は多くありません。後ほど詳しく説明します。

・3年以上の生死不明
生死も含め分からない場合です。どこかにいることが分かっている場合は悪意の遺棄に当たるかを考えます。

・強度の精神病
回復の見込みがない状態を指し、統合失調症や認知症が主張されることが多いです。

・婚姻を継続し難い重大な事由
DVやモラハラ、性交渉の拒否(セックスレス)などです。多くの事案で主張される事情です。

一方的な別居が有責になるケース

一方的な別居は、法定離婚事由の中の「悪意の遺棄」に当たる場合があります。
ただ、転勤や入院など、正当な理由がある別居は、有責にはなりません(後述します)。
有責になるのは、一方的な別居に正当な理由がない場合です。
正当な理由があるかどうかは、別居までの夫婦関係、別居の理由、別居の仕方、別居後の生活状況などを総合的にみて判断します。

別居までの夫婦関係というのは、例えば不貞などの問題行動を起こしてきたか、家事をやってこなかったかなどがみられます。
別居の理由とは、別居までの夫婦関係を踏まえ、問題を起こしてきた方が別居するのか、耐えきれなくなった方が別居するのかという視点で考えます。
別居の仕方は、話し合いをせずに出て行ったか、話し合いの末に別居したかなどがみられます。
別居後の生活状況とは、例えば相手の生活費(婚姻費用)を支払っているかなどが重視されます。

有責に当たるケースとは、例えば、不貞や暴力を繰り返してきた側が、愛人の下に住むようになり、配偶者には婚姻費用を払わないような事案です。先に述べたとおり、実務上「悪意の遺棄」といえるほどの事情になることはあまりありません。

一方的な別居でも有責にならないケース

逆に、一方的な別居であっても、有責にならないケースの方が多いです。
基本的に、相手の言動に耐えかねて別居する場合は、有責にならない場合の方が多いでしょう。
話し合いをせずに別居した場合(例えば置き手紙を残して出て行った場合)であっても、相手の言動に問題がある場合には、有責になりにくいといえます。
また、一般に、出て行った側の方が経済的に苦しい場合が多いことから、婚姻費用を負担しているかどうかも重視されません。

一般に、「愛想を尽かせて出て行った」場合であれば、有責に当たらないと考えられるでしょう。

一方的な別居による悪意の遺棄を避けるための別居時の注意点

まず、別居の仕方として、相手の生活必需品も含めて一切合切持って出ていくのは避けるのが良いでしょう。
相手に必要以上の負担をかけてしまう場合があります。
また、出て行った側に十分な収入があるのであれば、婚姻費用を支払うことも検討しましょう。時に慰謝料も検討します。
金銭面での注意点について、以下詳しく説明します。

①婚姻費用の支払い

民法760条は、以下のように定めています。

夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

このように、基本的には収入が多い方は、収入が少ない方に対して、婚姻から生ずる費用(婚姻費用)を支払う義務があります。
したがって、先に述べたとおり、出て行った側に十分な収入があれば、相手に対して婚姻費用を払うことを検討します。時には、離婚の協議を話し合いながら婚姻費用を払うことも多いです。

②慰謝料の支払い

悪意の遺棄に当たりそうなときは、慰謝料の支払いも検討します。
前述のとおり、悪意の遺棄に当たる場合は、不貞や暴力など、別居以外にも慰謝料の支払義務が生じる事由が存在していることが多いです。
離婚に当たっては、慰謝料を支払うこともあり得ると念頭に置きながら交渉することになります。

注意しなければならないのは、婚姻費用を支払っているからといって慰謝料が減額されるわけではないという点です。
婚姻費用は相手の生活のために支払うもので、慰謝料は相手の傷を癒すために支払うものなので、性質が異なるからです。
婚姻費用を支払っていることも含め慰謝料の金額を交渉はするのですが、トータルの支払いを防ぐためには、婚姻費用の支払期間を短くする、すなわち早めに交渉に入ることが重要ということになります。

自身が有責配偶者だった場合、離婚請求は可能なのか

以上のように、有責についてみてきました。一方的な別居の場合は、悪意の遺棄に当たることはそれほど多くないといえます。

それでは、実際に有責配偶者となった場合、離婚請求は認められるのでしょうか。

有責配偶者からの離婚請求について、詳しく説明します。

・原則有責配偶者からの離婚請求は認められない

双方が合意すれば、どんな原因があっても離婚が成立します。問題は、一方が離婚を求め、一方が離婚したくない場合です。

裁判所は、原則として有責配偶者からの離婚請求は認めていません。
有名な判決があります(最判昭和27年2月19日民集6巻2号119頁)。浮気をした男が離婚を求めた裁判で、最高裁は、「もし(離婚)請求が」認められるなら、「(妻)は全く俗にいう踏んだり蹴ったりである」と述べ、離婚請求を認めませんでした。
いわゆる踏んだり蹴ったり判決と呼ばれています。
夫に浮気をされた上、離婚も許されてしまうのであれば、妻にとって酷すぎるといえます。

このように、主に相手方を保護する観点から、有責配偶者からの離婚請求を認めませんでした。

・例外的に有責配偶者からの離婚請求が認められるケース

ただ、一度有責になってしまうと一生離婚が認められないというのも、それはそれで酷な場合があります。
そこで、最高裁は、有責配偶者からの離婚請求であっても、例外的に認められるケースがあることを認めました。
その判例が、有責配偶者の定義を説明する際に引用した昭和62年判決です。

最高裁は、以下のように判示しました。
つまり、「夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、その間に未成熟の子が存在しない場合には」、「(離婚を求められた側)が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り」、離婚請求は認められ得るとしました。

この判例は、以下の3つの条件に分解できます。
①夫婦の年齢や同居期間と比べて、別居期間が相当長期になっていること
②未成熟の子がいないこと
③離婚を認めることが著しく社会正義に反するような事情がないこと

どの程度の別居期間があれば離婚請求が認められるかは気になるところですが、明確な基準はないのが現状です。
最高裁は
①有責配偶者の責任の態様・程度
②相手の心情
③相手の精神的・社会的・経済的状態
④(特に未成熟の)子の状況
⑤別居後に形成された生活関係
⑥時の経過
がこれらの諸事情に与える影響を考慮するとしています。

別居期間が7~10年で離婚が認められたケース、認められないケースの両方があります。

一方的な別居や有責配偶者に関するよくある質問

一方的な別居が有責配偶者に当たるか、有責配偶者に当たったとして離婚請求が認められるかについて説明してきました。

最後に、別居に関するよくある質問にお答えしていきます。

①勝手に別居したら不利になるのでしょうか?

一番聞かれる質問は、「勝手に別居したら不利になってしまうのでしょうか?離婚できなくなってしまうのでしょうか?」というものです。

結論からいいますと、別居に至るまでの理由による、ということになります。

例えば暴力から逃げるために別居するのであれば、咎められはしないはずです。

他方、自分が悪いことをしてしまって、相手を捨てるように別居したら、咎められるはずです。

この「咎められるかどうか」が、いわゆる有責かどうかということになります。

つまり、一方的な別居が有責になるかどうかがカギになります。詳しくは、「一方的な別居は有責になる?」の項目をご覧ください。

②相手の行動が酷いので別居したいです。でも生活費が心配で別居に踏み切れません。

別居したいけれど、生活費が心配で別居に踏み切れない方も多いと思います。
夫婦生活においては、相手の生活を扶助・保持する義務(収入が多い方が収入の少ない方を助ける義務)があります。
この義務に基づき、相手方には婚姻費用を請求することができます。詳しくは「①婚姻費用の支払い」をご確認ください。

婚姻費用は、原則として双方の収入や監護しているお子さんの状況などを基に決めます。
請求してから(場合によっては調停などを申し立ててから)払ってもらえることになりますので、別居をお考えの場合には、早めに(場合により事前に)弁護士に相談いただくのがよいでしょう。

なお、非常に例外的ではありますが、婚姻費用の請求が認められないこともありますので注意が必要です。

③浮気して出て行った相手から離婚を請求されました。応じなければなりませんか?

浮気は、民法770条1項1号に法定離婚事由として定められています。
法定離婚事由とは、それがあれば、相手が否定しても離婚が認められる事由のことです。
浮気して出て行った場合、法定離婚事由を生じさせた者、つまりその配偶者はいわゆる有責配偶者になります。
有責配偶者からの離婚請求が簡単に認められてしまえば、相手は浮気された上に離婚もさせられることになり、「踏んだり蹴ったり」になります。
そこで、裁判所は、原則として有責配偶者からの離婚請求は認めないと判断しています。

したがって、出て行った相手から離婚請求をされても、応じる必要がないのが原則ということになります。
詳しくは「原則有責配偶者からの離婚請求は認められない」の項目をご確認ください。

④確かに自分が悪いのは認めますが、何年も別居しています。離婚は絶対認められないのでしょうか?

質問③のように、有責配偶者からの離婚請求は認められないのが原則です。
ただ、何年も別居しているような場合であれば、そろそろ離婚を認めてもよい場合もあり得ます。
裁判所は、別居期間の長さと子どもの有無や年齢などを考え、有責配偶者からの離婚請求であっても例外的に認められる場合があるとしています。
もっとも、やはり有責である以上、簡単に離婚できるわけではなく、ある程度の期間は別居していて、相手にも酷ではないことが前提になります。
詳しくは、「例外的に有責配偶者からの離婚請求が認められるケース」をご覧ください。

有責配偶者からの離婚請求は、往々にして調停になり、訴訟になることも多いですから、弁護士に相談しておく方がよいと思います。

まとめ

今回は一方的な別居と有責配偶者との関係、有責配偶者からの離婚請求について解説しました。まとめると、以下のようになります。

・一方的な別居が「悪意の遺棄」に当たる場合、有責配偶者になる。別居の原因や仕方、別居後の生活状況などをみて判断される。
・一方的な別居が「悪意の遺棄」に当たる場合はそれほど多くない。「悪意の遺棄」に当たらないようにするには、婚姻費用や慰謝料の支払いを検討する。
・有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められない。長期の別居や未成熟の子がいないなどの条件が揃うと、例外的に認められることもある。

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執筆者 代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会 登録番号45484
東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士として、男女問題などの一般民事事件や刑事事件を解決してきました。「ForClient」の理念を基に、個人の依頼者に対して、親身かつ迅速な法的サポートを提供しています。
得意分野
不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
プロフィール
京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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