審判離婚とは?他の離婚との違い、流れを紹介

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記事目次
皆さんは、「審判離婚」という離婚を聞いたことがありますでしょうか。
おそらくほとんどの方が聞いたことがない離婚方法だと思います。
かくいう執筆者の私も法律家になるまでその存在を知りませんでした。
実際に、実務上も割合が少なく珍しいといわれている離婚であり、件数も多くありません。
今回は、この「審判離婚」について、審判離婚とは何か、他の離婚との違い、そのメリット・デメリットなどをご紹介します。
審判離婚とは何か
審判離婚とは、離婚調停の段階で、調停が成立しないものの、家庭裁判所が離婚を成立させるのが相当だと判断した場合に、裁判所の職権で離婚を成立させる審判を行い(これを「調停に代わる審判」といいます。)、これによって成立した離婚のことをいいます。
離婚の方法・手続きの流れとしては、①協議→②調停→③訴訟、という流れが一般的です。
審判離婚は、②調停の部分で、調停自体は成立しないが、細かな部分で折り合いがついていないだけ等の事情がある場合に、③訴訟に行かずとも成立させることができるものになります。
審判離婚を利用するケースとは
では、具体的にどういった場合に審判離婚が利用されるのでしょうか。
審判離婚が利用されるケースとしては、以下のケースが挙げられます。
・夫婦間で離婚することに争いはないが、細かい条件面でわずかに食い違っており、調停が不成立になる場合
・子どもの親権などの関係で、早急に離婚を成立させるべきであるのに調停が成立しない場合
・当事者が病気等で調停に参加できない事情がある場合
・夫婦の一方が外国籍であり、当該国では協議による離婚の制度がなく、裁判による離婚の制度しか用意されていない場合で、日本で行った離婚を当該国でも承認されるように裁判所の判断が必要な場合
他の離婚方法との違い
複数ある他の離婚方法と審判離婚の違いはどういった点にあるのでしょうか。
審判離婚と他の離婚方法との違いを表で整理しましょう。
離婚方法 | 内容 | 当事者の合意 |
---|---|---|
協議離婚 | 夫婦間の裁判外での協議で離婚に合意し、離婚届を提出して離婚するもの。 全体の9割弱がこの方法で離婚している。 |
必要 |
調停離婚 | 家庭裁判所に離婚調停を申し立て、調停手続きのなかで互いに合意して離婚するもの。 全体の1割弱がこの方法で離婚している。 |
必要 |
審判離婚 | 離婚調停が成立しない場合に、家庭裁判所が職権で審判をして離婚するもの。 全体の1%程度。 |
不要 |
和解離婚 | 離婚訴訟を提起したうえで、訴訟手続きのなかで、夫婦間で合意して離婚するもの。 全体の1%程度。 |
必要 |
認諾離婚 | 離婚訴訟のなかで、被告が原告の言い分を全面的に認めることで訴訟が終わり、離婚するもの。 全体の0.1%程度。 |
事実上必要 |
判決離婚 | 離婚訴訟を提起して、裁判所の判決をもらい、離婚するもの。 全体の1%程度。 |
不要 |
参考:令和4年度 離婚に関する統計の概況(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/rikon22/index.html |
審判離婚と裁判離婚の3つの違い
審判離婚と裁判離婚の違いを3つ紹介します。
なお、審判離婚も家庭裁判所が関与する離婚ではありますが、ここでは一般的な用例に従い、離婚訴訟を提起して離婚するものを「裁判離婚」といいます。
手続きの段階
まず、手続きの段階が違います。
審判離婚は、上記の①協議→②調停→③訴訟、の3つの段階のうち、②の調停の段階で行われるもので、③訴訟の提起前の段階で離婚するものです。
一方、裁判離婚は、③訴訟の段階のもので、調停が不成立となり(かつ審判離婚もできず)、離婚訴訟を提起して離婚するものになります。
裁判所の関与の場面・程度
次に、裁判所の関与の場面・程度が違います。
審判離婚は、上記のとおり、離婚すること自体は合意しており、細かな点を除いて争いがないような場合に裁判官が判断して離婚するものになります。
他方で、裁判離婚は、離婚すること自体に争いがある場合や、離婚の条件面で大きく争いがある場合でも裁判官の判断で離婚ができるものになります。
結果に対する不服申し立ての手段
そして、審判・裁判(判決)の結果に対する不服申し立ての手段が違います。
審判離婚は、調停に代わる審判が下されることになりますが、この審判に対しては、審判の告知を受けた日から2週間以内に、異議を申し立てることができます(家事事件手続法286条1項、2項、同法279条2項、3項)。
この異議を申し立てると、当該調停に代わる審判はその効力を失うことになります(同法286条5項)。
他方で、裁判離婚は、判決に不服がある場合は、通常の民事訴訟のように、控訴・上告といった不服申し立てをすることになります。
審判離婚が持つ効力
審判離婚で、確定した調停に代わる審判は、訴訟を行って得た判決と同一の効力を有することになります。
したがって、審判で定められた財産分与や養育費、慰謝料等の条件にかかる義務が履行されない場合には、強制執行を申し立てることができます。
どちらかの異議申し立てにより無効になる
この調停に代わる審判について、納得がいかない場合、当事者はいずれも異議を申し立てることができます。
そして、異議が申し立てられた場合には、当該調停に代わる審判はその効力を失うことになります(家事事件手続法286条1項、5項)。
この異議に関しては、特に理由や要件は必要ありません。
つまり、当事者のいずれかが審判に納得できずに異議を申し立てた場合、簡単に審判は無効となって審判離婚は成立しなくなることになります。
この場合は、基本的に上記③訴訟を提起して、訴訟手続きに移行することになります。
なお、この異議については、審判の告知を受けた日から2週間以内に申し立てる必要があります(同法286条2項、279条2項、3項)。
審判離婚のメリット
ここでは、審判離婚のメリットをいくつか挙げます。
・調停において出された主張・証拠・各々の事情がすべて考慮されるので、夫婦の実情を踏まえた柔軟かつ客観的な判断が得られる
・離婚訴訟を提起せずに離婚を成立させることができる
・離婚訴訟における確定判決と同一の効力がある
・審判は非公開で行われるので夫婦のプライバシーが守られる
審判離婚のデメリット
他方で、審判離婚のデメリットとしては以下のものが挙げられます。
・上記のとおり、当事者のいずれかが異議を申し立てるとそれだけで審判は無効になってしまう
・あくまでも裁判所が職権で行うものなので、離婚調停のなかで裁判所が調停は成立しないけれども離婚した方がいいと判断しないと利用されない
審判離婚を行う流れ
審判離婚の流れは以下のとおりです。
①当事者のいずれかが離婚調停を申し立て、調停が行われる
②裁判所による審判
③異議申し立てがなければ審判が確定
④離婚届等の書類を役所に届け出る
離婚調停の申し立て
上述のとおり審判離婚はあくまで調停が成立しない場合に裁判所が調停に代わる審判を行うものになるので、まずは当事者のいずれかが離婚調停を申し立てる必要があります。
調停期日では、当事者双方が交代で調停委員と面談して、離婚するかどうかや離婚条件に関して主張を出しあいます。
このような調停期日が通常複数回開かれます。
このように何度か調停期日を繰り返していきますが、細かな点で意見の対立があり離婚が成立しないような場合に裁判所が審判離婚を検討することになります。
裁判所による審判
調停が成立しないとなった場合は、家庭裁判所が離婚を成立させるのが相当だと判断すれば、家庭裁判所の職権で調停に代わる審判を行うことになります。
なお、この調停に代わる審判は、あくまでも裁判所の職権で行われるものなので、当事者が自ら審判を申し立てることはできません(意見を述べること自体は自由です)。
異議申し立てがなければ審判が確定
家庭裁判所により調停に代わる審判がされると、審判の内容が書かれた審判書が裁判所から送付されます。
そして、当事者がかかる審判の告知を受けた日から2週間以内に異議を申し立てることができますが、当事者双方がこの異議を申し立てずに2週間が経過した場合、審判が確定し、審判離婚が成立することになります。
離婚届等の書類を役所に届け出る
審判が確定して審判離婚が成立した場合、審判確定日を含めて10日以内に、市町村役場へ離婚届を提出する必要があります。
このとき提出する書類は、離婚届・審判書の謄本・審判確定証明書・戸籍謄本(本籍地以外の市町村役場に届け出る場合のみ必要)、となります。
なお、この際の離婚届に関しては、相手方の署名・押印や証人の記載は不要です。
審判離婚が成立する可能性があるケース
ここでは、審判離婚が成立する可能性があるケースについて具体的に説明します。
ケース1
まず、夫婦間で離婚することに争いはないものの、細かい条件面でわずかに食い違っており、調停が不成立になるケースが挙げられます。
このような場合には、夫婦で離婚することに争いがないだけでなく、離婚条件についても大部分で争いがないことになるので、裁判所が細かい点を判断することで離婚を成立させることが相当であると考えられます。
そのため、このような場合には、家庭裁判所は調停に代わる審判をすることを判断する可能性があります。
ケース2
次に、子どもの親権などの関係で、早急に離婚を成立させるべきであるのに調停が成立しないケースが挙げられます。
離婚手続きが長引き、親権が確定せず、養育費が払われない状況で子どもに不利益が及ぶなどの弊害が生じるおそれがある場合には、家庭裁判所が調停に代わる審判を判断することがあります。
ケース3
また、当事者が病気等で調停に参加できない事情があるケースもありえます。
この場合、話し合いによる合意を得ることができないため、家庭裁判所が調停に代わる審判をしたうえで、当事者に異議を申し立ててその効力を無効にするか否かを委ねるということがあります。
ケース4
そして、夫婦の一方が外国籍であり、当該国では協議による離婚の制度がなく裁判による離婚の制度しか用意されていない場合で、日本で行った離婚を当該国でも承認されるように裁判所の判断が必要なケースが考えられます。
これについて、配偶者の一方が外国籍の場合、日本で行った離婚が当該国で承認されるのかが問題になる場合があります。
つまり、日本では裁判外の協議で離婚することができますが、国によっては協議離婚を認めておらず、裁判離婚しかできない国もあり、そういった国において日本での協議離婚の効果が認められないということがあります。
そこで、日本国内で裁判所が判断して離婚する方法として離婚訴訟を起こすという方法が考えられます。
しかし、日本では離婚訴訟の前提として調停を行う必要があり、また、訴訟には別途お金も時間もかかるため、調停のなかで調停に代わる審判をもらって審判離婚をするということが考えられます。
審判離婚に必要な費用
審判離婚にかかる費用については、審判離婚の前提として離婚調停を申し立てる必要があるので、離婚調停の申立費用がかかることになります。
離婚調停の申立費用は、収入印紙1,200円と、郵便切手1,000円前後(家庭裁判所ごとに総額・内訳が異なります)、戸籍謄本の取得費用450円程度になります。
また、弁護士に依頼する場合には、弁護士費用がかかります。
よくある質問
以下では、審判離婚についてのよくある質問についてお答えします。
審判離婚と裁判離婚の違いは何ですか?
審判離婚も裁判離婚もいずれも裁判所で行われる手続きになります。ここでは、離婚訴訟を提起して判決が出て離婚する場合(判決離婚)を裁判離婚といいます。
審判離婚と裁判離婚の違いとして一番大きなものは、上述のとおり手続きの段階になります。
審判離婚は、離婚調停の段階で調停が成立しない場合にとられうる離婚方法である一方で、裁判離婚は調停が不成立となった後、離婚訴訟を提起して判決が出ることで離婚に至ったものをいいます。
また、上述のとおり、審判は、判決と同じ効力を有するものにはなりますが、当事者のいずれかが異議を申し立てると理由を問わず無効になってしまう点で、違いがあります。
審判離婚の場合の離婚日はいつになりますか?
審判離婚における離婚日は審判が確定した日になります。
この審判が確定した日とは、審判が下りてから2週間以内に、当事者のどちらからも異議申し立てがなければ審判が確定するので、2週間後のその日が離婚日となります。
まとめ
以上、いかがでしたでしょうか。審判離婚はレアケースにはなりますが、日本では多数の離婚方法が存在することがお分かりいただけたかと思います。
例えば、審判離婚ですと、審判の内容を確認して、審判離婚をすべきか、異議申し立てをすべきかなど、お悩みになられる方も多いかと思います。
審判離婚に限らず、離婚についてお困りの方や何か相談したいことがある方は、是非離婚案件に精通した弁護士にご相談ください。
- 得意分野
- 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件 、 遺産相続 、 交通事故
- プロフィール
- 岡山大学法学部 卒業 明治大学法科大学院 修了 弁護士登録 都内の法律事務所に所属 大手信販会社にて社内弁護士として執務 大手金融機関にて社内弁護士として執務