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更新日: 弁護士 宮地 政和

熟年離婚の原因とは?メリットやデメリット、手続きの流れを徹底解説

熟年離婚の原因とは?メリットやデメリット、手続きの流れを徹底解説
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「子どもも独立したし、これからは自分の人生を大切にしたい」
そんな思いから、長年連れ添ったパートナーとの離婚を考える人が増えています。
いわゆる「熟年離婚」は、感情だけでなく、年金や財産分与など現実的な問題とも向き合う必要があります。
後悔のない選択をするために、まずは冷静に状況を整理してみましょう。

熟年離婚とは何?

近年、「熟年離婚」が増加傾向にあり、耳にする機会も増えました。定義があるわけではありませんが、一般に、結婚生活が20年以上続いた夫婦、または50代以降での離婚を指すことが多く、長年連れ添った相手との離婚には、若年層とは異なる事情や課題が存在します。年金分割や財産分与、老後の生活設計など、慎重な準備が必要です。この記事では、熟年離婚に特有の法的・実務的なポイントを整理し、後悔のない決断のための視点を提供します。

妻・夫、どちらから切り出すケースが多い?

一般的な傾向として、熟年離婚は、妻から切り出されるケースが多いとされています。長年にわたって積み重ねられた夫婦間の不満やすれ違い、家事・介護の負担への不公平感が背景にあることが少なくありません。特に、子育てが終わったタイミングや夫の定年を機に、これからの人生を見直す女性が増えています。一方、夫側が退職金や生活費の負担を理由に離婚を求めるケースも増えてきているようで、その動機は夫婦により多様です。

熟年離婚の原因とは?

熟年離婚に限った話ではありませんが、結婚生活が長年に及ぶと、少しずつ夫婦の価値観や生活スタイルのずれへの不満が溜まっていくこともあります。特に子育てや仕事が落ち着いた後、共通の目標がなくなり、会話が減ることで距離が広がります。夫婦関係を見直すタイミングを失い、不満を抱えたまま年月が経過するケースも多く、結果として熟年離婚に至ることがあります。こうしたすれ違いは、特に妻の側が我慢を重ねていることが多く、離婚を切り出すきっかけになる傾向があります。

子育ての終了と人生の見直し

子どもが独立し、家庭内での役割が一段落したとき、これまでの人生を振り返り、「自分の残りの人生をどう生きるか」を真剣に考えるようになります。その過程で、長年抱えていた配偶者への不満や孤独感が明確になり、「このまま結婚生活を続けながら老後を過ごすことに意味があるのか」と疑問を持つことも少なくありません。「子供のために」と我慢する必要がなくなり、家庭中心の生活から自分自身の幸せを重視する意識の高まりが、熟年離婚を決断する大きな動機となります。

経済的問題・老後の不安

夫としては、退職金や年金収入などにより、離婚後も一定の生活水準を維持できるケースが多く、経済的な理由で離婚を躊躇することは少ない傾向にあります。一方で、年金分割や財産分与によって資産が減ることへの不満が生じやすく、離婚協議の際に争点となることがあります。むしろこの点について、妻側としては、離婚後一人で経済的にやっていけるのか不安を抱きつつも、これらの制度によって一定の経済的自立が見込めると考える場合も少なくなく、熟年離婚の決断の後押になるケースもあります。

夫が定年退職して家にいる時間が増えた

定年退職後、夫が自宅で過ごす時間が大幅に増えることで、これまでは一緒に過ごす時間が少ないからこそ我慢できた夫の生活習慣や言動が妻のストレスの種になり得ます。家事への協力不足や、趣味や生活リズムの違いを長時間感じ続けることになり、妻の不満が募ることが多いです。一方で、夫側も急に自由な時間が減り、妻との摩擦が増えることがあります。こうした日常生活の変化は、熟年離婚が増加している背景の一つであり、夫婦関係の見直しを迫る大きな要因となっています。

健康問題や介護負担の増大

年齢を重ねると、どうしても配偶者の体調が悪くなり、介護が必要になる場面も増えてきます。介護は長期間にわたり、身体的にも精神的にも大きな負担となるため、夫婦の間にストレスやすれ違いが生まれやすくなります。また、介護される側も「人に頼るのはつらい」と感じることがあり、お互いの気持ちがすれ違ってしまうことも。こうした健康や介護の問題は、熟年離婚の原因のひとつとなります。

熟年離婚のメリットとは?

熟年離婚のメリットのひとつは、精神的・生活的な自由を手に入れられることです。長年の夫婦関係で我慢してきたことから解放され、自分のペースで趣味や交友関係を楽しめます。また、配偶者の親族との関係に気を使う必要がなくなり、介護の負担やストレスからも自由になれる場合があります。さらに、年金分割や財産分与によって経済的基盤をしっかり確保できる場合もあり、そうであれば経済面の不安なく、安心して第二の人生をスタートできるのも大きなメリットです。

熟年離婚のデメリットとは?

熟年離婚は新たな人生のスタートとも言えますが、その一方で思わぬ落とし穴もあります。ここでは、離婚を選ぶ前に知っておきたい主なデメリットについて見ていきましょう。

経済的不安

熟年離婚では、特に妻が経済的不安を抱えることが多いです。長年専業主婦やパート勤務で収入が限られている場合、離婚後は生活費や医療費を自分で賄わなければならず、生活レベルが大きく下がるリスクがあります。年金分割や財産分与について上述しましたが、夫婦間に特に財産もないような場合には、これらを考慮しても生活維持のためには十分ではなく、老後の資金が足りなくなるケースも少なくありません。そのため、離婚後の経済的安定を確保することは大きな課題となり、計画的な資金管理や公的支援の利用が重要です。

親族や友人との関係の変化

熟年離婚では、長い間一緒に過ごした配偶者と別れることで、心にぽっかり穴があいたような寂しさを感じることがあります。定年退職で仕事仲間とのつながりが減り、毎日の交流が減ると、社会からも少し遠くなった気分になるかもしれません。さらに、周りの友人たちは家族がいたり生活スタイルが違ったりして、気軽に会ったり話したりする機会が減ってしまいがちです。そんな時、新しい趣味や交流の場を見つけることが、孤独感を和らげる大切なポイントになります。

配偶者親族との関係の変化

熟年離婚をすると、配偶者の親族との関係は自然に変わります。これまでの付き合いがなくなることで気を遣わずに済む自由を得る反面、家族や親戚との交流が減って寂しさを感じることもあります。長年続いた関係が途切れることで、支えが減ると感じる場合もありますが、その分、新しい生活に集中できる側面もあります。このように親族関係に変化が生じるという点は、一長一短の面があると言えるでしょう。

熟年離婚における必要な準備

熟年離婚を円滑に進め、後悔のない新生活を始めるためには、事前の準備が欠かせません。感情だけで動くのではなく、経済面や生活設計を含めた現実的な対応が重要になります。以下では、離婚に向けて備えておきたい具体的な準備について解説します。

財産の把握と整理

熟年離婚を進めるにあたって、まず重要なのが財産分与を見据えた財産の把握と整理です。結婚生活が長くなると、夫婦で築いた財産が多岐にわたることが一般的です。預貯金や不動産、生命保険の解約返戻金、株式、車等が、財産分与の対象になります。これらを正確に洗い出しておかないと、公平な分与ができず、後々トラブルに発展する可能性があります。

特に注意したいのは、相手が財産を隠そうとする場合です。離婚の話し合いが始まる前に、通帳や保険証券、不動産の登記簿謄本などの資料をコピーしておくことも重要です。また、退職金や企業年金など将来的に受け取る予定の資産も分与の対象となるケースがありますので、勤務先から情報を取り寄せて確認しておきましょう。

財産の全体像をしっかり把握しておくことが、公平で納得のいく離婚を実現する第一歩となります。

年金分割の確認

熟年離婚においては、年金分割の制度を正しく理解しておくことがとても大切です。専業主婦やパート勤務で年金保険料を納める機会が少なかった場合、離婚後の老後資金に不安を感じる方も少なくありません。そのような場合に役立つのが「年金分割」という制度です。

年金分割とは、婚姻期間中に夫婦の一方が納めた厚生年金保険料の納付記録を、離婚時にもう一方と分け合うことができる制度です。ただし、対象となるのは厚生年金に限られ、国民年金部分は分割の対象外です。合意があれば「合意分割」として保険料納付済額を最大で2分の1まで分けることが可能ですし、2008年4月1日以降に納めた厚生年金保険料については、「3号分割」として、厚生年金の第3号被保険者(被扶養者)であった期間の保険料納付済額を自動的に2分の1の割合で分割することができます。

合意分割ができれば、合意書を年金事務所に提出すること等により手続きが行えますが、合意分割できないとなると、事前に年金事務所で「年金分割のための情報通知書」を取得しておく必要があります。50歳以上の人には、希望すれば「年金分割を行った場合の年金見込額のお知らせ」を交付してもらうことができ、これを見れば、年金分割を行った場合に受け取れる年金の金額を把握することができます。

離婚後の生活設計

熟年離婚を決断する際に、最も現実的で大切なのが「離婚後の生活設計」です。長年の結婚生活を経て独立した生活を始めるには、精神的な準備だけでなく、収入や住まい、健康、日々の生活をどう安定させるかを具体的に考える必要があります。

たとえば、収入については年金の受給額や財産分与の内容をもとに、生活費がまかなえるかを試算してみましょう。働くことを検討する場合は、年齢や体力に応じた働き方や就業先の情報を早めに集めておくことが大切です。

住まいについても、自宅を所有している場合には、財産分与の結果を踏まえ、自分が住み続けることができるのか、別に住まいを確保するのかを検討し、引っ越しの費用や賃料の見込みなども含めた準備が必要です。高齢になると賃貸住宅を借りることは難しい場合もあるため慎重に検討する必要があります。

また、友人関係や地域とのつながりが孤立を防ぐ手助けとなるため、社会との接点を持ち続ける工夫も大切です。

離婚後に「こんなはずではなかった」とならないよう、現実的なシミュレーションをしておくことが、安心した新生活への第一歩となります。

話し合いと記録の準備

熟年離婚では、財産分与や年金分割、住まいの問題など、取り決めるべきことが多くあります。これらについて円滑に決めるには、冷静な話し合いとその内容をしっかり記録しておくことが大切です。

「言った」「言わない」のトラブルを防ぐためにも、離婚条件は「離婚協議書」として書面に残しましょう。さらに、執行承諾文言付きの公正証書にしておけば、約束が守られなかった場合に強制力を持たせることができます。

とはいえ、自分たちだけで協議書を作るのは簡単ではありません。書式や内容、将来を見越した条項の検討には専門知識が必要です。不安な点があれば、早めに弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。プロのサポートを受けることで、安心して次のステップへ進むことができます。

法律・専門家への相談

熟年離婚では、財産分与、年金分割、離婚協議書の作成など、複雑で専門的な問題が数多く絡みます。そのため、専門家への相談なしに自分で手続きを進めてしまうと、後から「知らなかった」「損をした」と後悔するケースなりやすい類型です。そうしたリスクを避けるためにも、早い段階で弁護士に相談することが大切です。

また、感情的な対立がある場合でも、弁護士を介してやりとりをすることで冷静に話を進めることができます。

最近では、離婚問題に特化した弁護士も増えており、初回相談が無料というところもあります。小さな疑問でも気軽に相談してみることで、自分にとって本当に納得のいく選択肢が見えてくるはずです。

熟年離婚における手続きの流れ

熟年離婚を進めるにあたっては、法律に則った適切な手続きが求められます。離婚にはいくつかの方法があり、それぞれに特徴や注意点があります。ここでは、熟年離婚における基本的な手続きの流れについてご紹介します。

離婚協議

熟年離婚でも一般の離婚でも、その手続きの流れは変わりません。

離婚の9割以上が協議離婚で行われるといわれています。夫婦が話し合い離婚することに合意し、財産分与や年金分割などの離婚に当たっての条件についても合意できれば、あとは離婚届を提出すれば離婚が成立します。最も簡易で費用もかからない方法ですが、感情的な対立や条件の不一致があると合意に至らないこともあります。特に熟年離婚の場合は、多くの財産が形成されていたり、慰謝料の原因が発生していたりする可能性もあり、条件の合意に至るのが難しい場合も多いです。口約束だけで済ませると後でトラブルになりやすいため、離婚協議書を作成し、公正証書にすることが望ましいです。

離婚調停

離婚協議で合意に至らなかった場合、家庭裁判所に調停を申し立て、離婚調停に移行します。調停では、第三者である調停委員を交えて話し合いを行い、合意を目指します。夫婦間の対話が難しいケースや、どちらかが離婚に応じない場合などでも、調停委員が進行役となって冷静な話し合いが可能になります。また、夫と妻のそれぞれが調停委員と個別に話し、調停委員を介して話し合いを進めることが多く、家庭裁判所において夫と妻が顔を合わせずに済むような配慮がされる場合も多いです。合意が成立すれば、調停調書にその内容が記載され、判決と同じ法的効力が生じます。さらに、調停はあくまでも任意の話し合いであり、その合意の内容は柔軟に決定することができます。

離婚訴訟

離婚調停も成立しなかった場合、訴訟に移行し、裁判所に離婚をすべきかの判断を仰ぐしかありません。裁判離婚には法定離婚原因のいずれかに該当することが必要です。法定離婚原因は、①配偶者の不貞行為、②配偶者による悪意の遺棄、③配偶者の3年以上の生死不明、④配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない、⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由(暴力、モラハラ、長期間の別居等)の5つです。そうすると、単に「配偶者に対する不満がたまっているから」というような理由の場合、裁判離婚は難しいということになります。

熟年離婚に関するよくある質問

熟年離婚に関しては、手続きやお金のこと、今後の生活設計など、多くの不安や疑問を抱える方が少なくありません。ここでは、相談の中でも特に多く寄せられる質問とその回答を取り上げ、判断や準備の参考にしていただけるよう解説します。

慰謝料の請求はできますか?

離婚一般において、離婚の原因となった事項について慰謝料を請求できる場合はあります。代表的なものとしては、不貞行為、DV、モラハラ、理由のない一方的な性交渉拒否等が挙げられます。一方、単に性格が合わない、生活上のすれ違い等では、慰謝料は認められません。慰謝料を請求するためには証拠が非常に重要であり、可能な限り、上記の事由を示すメール等の文面、録音等を収集しておきましょう。

離婚した後、死亡保険金の受取人を元配偶者にしている場合、変更は必要ですか?

離婚後も生命保険の受取人を元配偶者のままにしている方は少なくありませんが、特別な事情がなければ受取人の変更手続きは早めに行うべきです。離婚しても、契約上の受取人が元配偶者のままであれば、そのまま元配偶者に保険金が支払われてしまいます。特に、自分の死後に子どもや兄弟姉妹等に保険金を残したいと考えている場合は、忘れずに受取人を変更しましょう。変更には契約者自身の手続きが必要で、保険会社への届出が必要です。

熟年離婚を決断する前に、夫婦関係を改善する方法はありますか?

夫婦関係が円満でなくなり、離婚をすべきか迷っている場合、夫婦関係調整調停(円満)を家庭裁判所に申し立てることができます。これは、離婚を前提とはせず、夫婦関係の修復や今後の生活のあり方を話し合うための手続きです。調停手続では、調停委員が間に入り当事者双方から話を聞き、夫婦関係を円満でなくなった原因、その原因をどのように解決するか等について話し合いを進め、夫婦関係の改善を目指します。離婚を急がずに関係改善の可能性を探りたい方には、有効な手続です。

まとめ

ここまで、熟年離婚の原因、メリット・デメリット、必要な準備などをご紹介してきましたが、いかがでしたか? 熟年離婚は、人生の再スタートでもありますが、その分、慎重な判断と具体的な備えが必要です。感情だけで進めると、思わぬトラブルに発展することもあります。不安な点や迷いがある方は、ぜひ一度、弁護士にご相談ください。法律の専門家と一緒に、納得のいくかたちで離婚を成立させましょう。

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執筆者 弁護士宮地 政和 第二東京弁護士会 登録番号48945
弁護士登録後、都内の法律事務所に所属し、主にマレーシアやインドネシアの日系企業をサポート。その後、大手信販会社や金融機関で信販・クレジットカード・リース業務に関する法務やコンプライアンス、プロジェクトファイナンスなどの経験を積む。これらの経験を活かし、個人の法的問題に対し、専門的かつ丁寧に対応しています。
得意分野
不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件 、 遺産相続 、 交通事故
プロフィール
岡山大学法学部 卒業 明治大学法科大学院 修了 弁護士登録 都内の法律事務所に所属 大手信販会社にて社内弁護士として執務 大手金融機関にて社内弁護士として執務
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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