離婚に伴う財産分与の対象となるものとは?分配割合や手続きの流れをわかりやすく解説
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記事目次
離婚に伴う財産分与とは?
財産分与とは、離婚する際または離婚した後に、夫婦が婚姻期間中に協力して築き上げた財産を分け合うことをいいます。
法律上は、夫婦の一方が他方に対して財産分与を請求することができると定められています(民法第762条第1項)。
事実上は、財産を管理していない側や相手の方が財産を多く持ってそうと考える側が、相手に対して財産分与を請求することで、協議がスタートすることが多い印象です。
本記事では、財産分与について詳しく解説します。
財産分与をせずに離婚できる?
夫婦間で合意すれば、財産分与をせずに離婚することができます。
財産分与をせずに離婚する旨の合意をすると、後から「やっぱり財産分与をしたい」と主張しても認められないことがあります。
そのため、財産分与をせずに離婚するかどうかは、対象となる財産を調査したうえで判断するようにしましょう。
十分な調査をしたうえで財産分与をしない旨の合意をするのであれば、合意書を作成するなどして、証拠として残すことを推奨します。
財産分与の種類は主に3種に分けられる
財産分与には3種類あります。
清算的財産分与、扶養的財産分与、慰謝料的財産分与です。
これらは目的の違いによって生じているため、それぞれの目的を理解することが重要です。
以下、各目的に着目して解説します。
1.清算的財産分与
清算的財産分与は、婚姻期間中に夫婦で築き上げた財産を離婚時公平に分け合うことを目的としています。
夫婦間における収入の格差、財産分与の対象となる財産がどちらの名義か等の点を問わず、2分の1ずつ分け合うのが原則となります。
清算的財産分与では、離婚原因があるか否かによって結論が左右されません。
そのため、離婚原因を生じさせた者から財産分与を請求することも可能です。
ただし、離婚原因を生じさせた者は、別途、慰謝料を支払う義務を負うことがある点に注意が必要です。
慰謝料と財産分与の関係については、後述します。
2.扶養的財産分与
扶養的財産分与は、離婚によって夫婦の一方が生活に困る場合に、経済的に自立するまでの生活を補助することを目的としています。
実務上は、離婚した夫婦に明らかな経済的格差がある場合に認められることが少なくないです。
例えば、夫婦の一方が専業主婦(主夫)であったため、経済的に自立できる収入を得られるまでに時間を要する場合、健康上の都合からすぐに働けない場合などがあげられます。
経済的に自立するまでの生活の補助を目的としているので、通常は、毎月一定額の現金を一定期間分け与えるという旨の合意をすることになります。
3.慰謝料的財産分与
慰謝料的財産分与は、離婚原因が夫婦の一方による不貞行為やモラハラといった事情にある場合に、このような事情によって生じる慰謝料について、財産分与の中で解決することを目的としています。
本来、財産分与と慰謝料請求は別々に検討すべき問題です。しかし、慰謝料請求を財産分与の中で検討することで柔軟な解決につながることがあります。
例えば、「慰謝料の支払いの代わりに自動車を分与してください。」といった交渉が可能となります。
このように、慰謝料の代わりに金銭以外の財産を受け取りたい場合に特に有効な手段となります。
離婚に伴う財産分与の対象となる財産【共有財産】
財産分与の対象となるのは共有財産です。
共有財産とは、婚姻期間中に夫婦の協力によって形成・維持された財産をいいます。
婚姻期間は婚姻日から別居時までとなるのが通常ですが、合意によって定めることもできます。
1.不動産
婚姻期間中に購入した家や土地といった不動産は、財産分与の対象となります。
不動産が夫婦の共同名義となっているか否かは問いません。
不動産の財産分与で最も注意すべき点は、住宅ローンとの関係です。
例えば、オーバーローン(住宅ローンの借入残高が不動産の現在価値よりも高額となる場合)の場合、基本的には財産分与の対象となりません。
この場合、夫婦の一方が不動産に住み続けてローンを支払っていくことになるのが通常です。
また、住宅ローンがいわゆるペアローンとなっている場合にも、特有の問題が生じることがあります。
2.現金・預貯金
婚姻期間中に貯めたお金は財産分与の対象となります。
預貯金口座が共同名義になっているか否かは問いません。
夫婦の一方が専業主婦(主夫)であっても分与されます。
別居時における現金の金額や口座残高を基準に分与することになるのが原則です。
お子様名義の預貯金口座であっても財産分与の対象となることがあります。
3.その他経済的価値があるもの
婚姻期間中に購入した自動車、株、家具・家財といった経済的価値がある物についても、夫婦どちらの名義かを問わず、財産分与の対象となります。
これらを売却して得たお金を半分ずつに分けるか、一方が取得して時価の半額を支払うなどして清算します。
4.保険
婚姻期間中に加入した保険は、解約返戻金が生じるものに限り財産分与の対象となります。
例えば、生命保険や学資保険などがあげられます。
婚姻前に加入した保険であっても婚姻後に保険料を支払いがなされているのであれば、これによって生じる解約返戻金は財産分与の対象となります。
保険会社から解約返戻金に関する資料を提供してもらい、その資料をふまえて協議を進めることになります。
なお、学資保険は、子どもの将来のための貯蓄とも考えられるため、財産分与の対象外とする合意を夫婦間で取り交わすことがあります。
5.退職金
退職金も財産分与の対象となります。
既に支払いを受けている退職金は、婚姻期間と就労期間が重なり合う範囲で対象となります。
ただし、すでに使われている部分は除かれます。
他方で、これから支払いを受ける予定の退職金が財産分与の対象となるかは、支払いが確実になされるか否かによって判断されます。
具体的には、勤務先との間の雇用契約や就業規則に退職金の規定があるか、会社の規模や財務状況、定年退職までの期間、転職歴などが考慮されます。
退職金制度の内容については、お互いに資料を開示することになります。
6.年金
婚姻期間中に積み立てられた個人型確定拠出年金(iDeCo)、企業型確定拠出年金(企業型DC)、確定給付企業年金(DB)、私企業が販売する個人年金保険などは、財産分与の対象となります。
いまだ確定拠出年金の受給を受けていない場合、受給額が確定していないため評価額の算定が困難なことがあります。
なお、年金には厚生年金という種類もありますが、これは年金分割制度において検討されるため、財産分与の対象外となります。
離婚に伴う財産分与の対象にならない財産【特有財産】
離婚に伴う財産分与の対象にならない財産として、特有財産があげられます。
特有財産とは、夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻期間中に夫婦の協力とは無関係に取得した財産をいいます。
例えば、婚姻前に貯めていた預貯金、贈与や相続によって得た財産、婚姻前に購入した自動車や株式などの有価証券などがあげられます。
ただし、特有財産が財産分与の対象となることもあります。
例えば、婚姻後に夫婦が協力したことによって特有財産の価値が維持された場合、夫婦の協力があったことから特有財産の価値が増加した場合があげられます。
このような場合には、協力の程度に応じて財産分与の対象となることがあります。
「特有財産」にあたるか否かは法的判断が含まれますので、弁護士に相談して確認することを推奨します。
離婚すると借金やローンも財産分与の対象になる?
夫婦共同生活のために生じた借金やローンは財産分与の対象となります。
実務では、プラスの資産からマイナスの資産を差し引いた残額を分与することになります。
例えば、婚姻期間中に自動車をローンで購入した場合、自動車の現在価値からローン残高を差し引いた残額を分与することになります。
プラスの資産からマイナスの資産を差し引いた結果、マイナスになる場合には財産分与を行わないのが通常です。
この場合、残る借金は、借金を借りた本人が返済することになります。
なお、婚姻前に生じた借金、婚姻期間中に個人的な趣味やギャンブル等を目的とした借金等は、夫婦の共同生活のために生じた借金とはいえないため、財産分与の対象外となります。
離婚における財産分与の割合
離婚における財産分与の割合は原則として2分の1ずつとなります。
共働きの夫婦の場合であっても、お互いの収入に差がある場合であっても、一方が専業主婦(主夫)の場合であっても、変わりありません。
繰り返しになりますが、財産分与は夫婦が婚姻期間中に協力して築き上げた財産を分け合うことをいい、「協力」の形は様々あります。
夫婦の共同生活が夫婦の一方の収入によって成り立っている場合を想定しましょう。
たしかに、夫婦の一方が労働の対価として得た収入であることに違いありません。
しかし、その収入を得ることができているのは、日常の家事等を行うなどして支えている他方の協力があるからと考えられます。
専業主婦(主夫)の方には財産分与をためらう方もいらっしゃいますが、躊躇せずに財産分与を請求してみましょう。
ただし、夫婦の一方の特別な努力や能力によって財産が形成された場合には、財産分与の割合が修正されることがあります。
離婚に伴う財産分与の手続きの流れ
離婚に伴う財産分与の手続きは大まかに3つの手順に分けられます。
すなわち①対象となる財産の種類や価値を確認する、②夫婦間における協議を行う、③調停や裁判で解決する、の3つです。
以下、それぞれ解説します。
対象となる財産の種類と価値を確認する
まず、財産分与の対象となる共有財産の種類を明らかにします。
財産分与の対象は、婚姻後から財産分与の基準となる時点までの間に夫婦で築き上げた財産です。
財産分与の基準となる時点は、原則として別居時となります。
別居しない場合には夫婦間の合意で決定します。
次に、対象となる財産の価値を明らかにします。
例えば、預貯金の場合には基準となる時点の預貯金残高、不動産の場合には現在価値を明らかにします。
不動産は専門業者に査定を依頼することになります。
住宅ローンがある場合には、ローン会社にローン残高を証明する資料を共有してもらいます。
そして、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いた残額が財産の価値となります。
夫婦間における協議
対象となる財産の種類と価値を確認できたら、分配方法について夫婦間で協議することになります。
分配方法は夫婦間の協議によって自由に決めることができます。
夫婦間の協議で合意に至った場合、合意内容を記載した離婚協議書を作成することを推奨します。
書面で残しておかないと、後々紛争に発展することがあるからです。
もっとも、離婚協議書だけでは、相手が離婚協議書に従って財産を分与しない場合に、相手の財産を差し押さえられないという問題が残ります。
そこで、公正証書化することを推奨します。
公正証書化すると、相手が約束したとおりに財産を分与しない場合に、強制執行の手続きを行い、相手の財産を差し押さえることができます。
調停や裁判を申し立てる
対象となる財産の種類や価値が確認できない場合や夫婦間の協議で合意に至らない場合、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。
調停は、裁判官や調停委員といった第三者を交えて協議を行い、解決を目指す手続きです。
裁判官や調停員が両者の主張をふまえた上で、第三者の立場から一定の解決案等を示してくれるのが通常です。
あくまで協議の場ですので、両者が納得しない場合には調停で解決することはできません。
この場合には裁判や審判に進むことになります。
調停等を円滑かつ有利に進めるためには、裁判官や調停員に対して、自らの考えを法的に整理して説得的に伝えることが重要です。
そのため、弁護士に依頼することを推奨します。
離婚に伴う財産分与を弁護士に依頼するメリット
財産分与は考えるべき事項が多く、複雑なケースがあります。
そのため、夫婦間で解決しようとしても、協議が進まないことが少なくありません。
仮に協議が進んだとしても、対象となる財産に漏れが生じたり、気づかずに損をしていることもあります。
弁護士に依頼することで、これらのリスクを回避できます。
また、弁護士が代わりに交渉等を進めるため、時間、手間、精神的負担を軽減できます。
さらに、協議で解決する場合には、相手と話し合った内容を正確に離婚協議書に落とし込む必要がありますし、調停や裁判となる場合には、協議で解決する場合以上に専門的な知識が必要となります。
以上から、弁護士に依頼することを強く推奨します。
離婚に伴う財産分与に関するよくある質問
これまで離婚に伴う財産分与について解説してきました。
以下は、よくある質問に関する回答を6つほどお示ししますので、参考にしていただけると幸いです。
財産分与には期間制限があるの?
離婚後の財産分与には、離婚した日から2年以内という期間制限があります。
この期間を超えると相手に財産分与を請求することができなくなってしまいます。
「離婚して落ち着いてから財産分与を請求しようと考えていたら、離婚から2年が経過してしまい、財産分与を請求できなくなってしまった。」という事態に陥らないように、離婚する際に財産分与を請求することを推奨します。
離婚した日から2年を過ぎたとしても、当事者間で任意に財産分与の合意をすることは可能ですが、相手方が応じてくれなければ、財産分与をすることができません。
財産分与で得た財産には、税金がかかるの?
財産分与は、夫婦が協力して築き上げた財産関係を清算することや離婚後の生活保障を目的としています。
分与された財産に贈与税といった税金を課してしまうと、このような目的が十分に達成されなくなるおそれがあります。
そのため、財産分与には贈与税といった税金がかかりません。
ただし、夫婦が協力して築き上げた財産関係を清算する目的や離婚後の生活保障という目的を超えて、一方があまりに多くの財産を分与されている場合や、税金を逃れる目的を有していることが明らかな場合には、贈与税といった税金がかかることがあります。
相手が財産情報を開示してくれない場合はどうすればいいの?
弁護士会照会と調査嘱託という方法があります。
弁護士会照会とは、弁護士が弁護士会を通じて、金融機関などに相手の財産情報の開示を求める制度のことをいいます。
次に、調査嘱託とは、裁判所を通じて金融機関などに相手の財産情報の開示を求める制度です。
弁護士会照会は、協議段階から利用することができます。
他方で、調査嘱託は、協議段階で利用することはできず、裁判所の手続として財産分与請求が行われている必要があります。
弁護士会照会では回答されない場合であっても、調査嘱託であれば回答されることがあります。
財産を隠すとどうなるの?
財産分与の対象となる財産を隠したとしても、刑務所に収監されたり、罰金を課されるといった刑事上の責任を負うことはありません。
他方で、損害賠償請求といった民事上の責任を負うことはあります。
また、財産分与について合意したものの、その後、財産隠しが発覚するケースもあります。
このようなケースにおいて、隠し財産が重要なものであり、隠し財産の存在を知っていれば当初の内容で合意しなかったといえる場合には、離婚した日から2年以内であれば、裁判所を利用して財産分与をやり直すことができる可能性があります。
共有財産を勝手に処分されそうな場合の対処法はあるの?
相手が離婚成立前に共有財産を勝手に処分するのを防ぐための手続として、保全手続があります。
例えば、処分禁止の仮処分という手続があげられます。
相手が共有財産の不動産を勝手に売却しようとしているケースを想定しましょう。
この場合、処分禁止の仮処分を申し立て、裁判所がこれを認めると、相手は不動産を売却することが実質的にできなくなります。
保全処分の手続は、相手が財産を処分する前に申し立て、裁判所に認めてもらう必要があります。
そのため、時間との勝負という要素もありますので、弁護士に依頼することを推奨します。
調停や審判の流れについて具体的に教えてください。
離婚前の場合には夫婦関係調整調停を、離婚後の場合には財産分与請求調停を申し立てたうえで、財産分与について協議することになります。
協議がまとまらず合意に至らない場合、調停は不成立となり、自動的に審判手続が開始されます。
審判手続では、裁判官が、一切の事情を考慮して、審判をすることになります。
調停や審判を申し立てるには、必要書類を準備するだけでもそれなりの労力を要します。
また、裁判官や調停委員に自らの主張を法的に整理した上で説得的に伝える必要があります。
そのため、弁護士に依頼することを推奨します。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。
財産分与は、協議を開始するにあたって集めるべき資料が多く、検討すべき法的な問題も多いです。
上述のとおり、調停等になる場合には、裁判官や調停委員に自らの主張を法的に整理した上で説得的に伝える必要があります。
これら全てをご自身で対応されると、かなりの労力や精神的な負担が生じてしまいます。
ですので、お一人で悩まずに、お気軽に弁護士に相談してみましょう。
- 得意分野
- 契約法務 、 人事・労務問題 、 紛争解決 、 海外進出法務 、 債権回収 、 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件 、 遺産相続 、 交通事故
- プロフィール
- 東京都出身 日本大学法学部 卒業 上智大学法科大学院 修了 弁護士登録 東京スタートアップ法律事務所 入所