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不貞行為はどこから?定義や条件と判断基準のチェックリスト

不貞行為はどこから?定義や条件と判断基準のチェックリスト
中川 浩秀 東京スタートアップ法律事務所

監修弁護士

中川 浩秀 東京スタートアップ法律事務所

東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士。男女問題・不倫慰謝料に関する相談を多数解決。

    「夫のスマホに知らない女性からのLINEが。浮気されてるのかも…」
    「不貞行為って?不倫とはどう違うの?」

    自分の夫や妻が不倫をしていると気づいたショックは、言葉で言い表せないほどでしょう。

    もし本当に配偶者が不貞行為に及んでいたとしたら…つらい状況の中でも、「離婚するのか?」「やり直すのか?」「慰謝料はどうする?」といった、さまざまな選択をしなければなりません。

    まずは、あなたの配偶者の行動が不貞行為に当たるかどうか、以下のチェックリストで確認しましょう。

    確認できている行為不貞行為に当たるか
    頻繁にLINEや電話をしている×
    2人でランチに出かける×
    2人で夜、食事をしたり、お酒を飲んだりする×
    2人だけでデートする△
    相手の自宅に出入りしている△
    手をつないだり、腕を組んだりしている×
    ハグをしたりキスをしたりする×
    肉体関係がある(性交渉をしたことがある)○

    配偶者と不倫相手に肉体関係があるかどうかを確認するのは、簡単ではありません。このチェックリストでは判断がつかない場合もあるでしょう。

    そこで今回は、不貞行為とはどのような行為を指すのか、言葉の定義や判断基準を解説します。

    この記事を読むと分かること

    • 不貞行為の定義と判断基準
    • 不貞行為の例外的なケース
    • 不貞行為をされたときの2つの選択肢
    • 不貞行為の証拠とつかみ方

    この記事を読めば、不貞行為とはどのような行為なのか、その定義と判断基準が分かります。

    不貞行為とは何なのか、配偶者の行動が不貞行為に当たるのかを知り、配偶者とやり直すにしても、離婚するにしても、あなたにとって最善の選択をつかみとれるでしょう。

    配偶者の行動は不貞行為に当たるのか、もしそうなら次にどうすればいいのかとやきもきしているのなら、ぜひこの記事をご一読ください。少しでもお役に立てれば幸いです。

    不貞行為とはどこから?定義のポイントは肉体関係

    不貞行為の定義とは「肉体関係があること

    まずは「不貞行為」の定義を正しく理解しましょう。

    不貞行為はどんな意味か、また、似たような言葉として使われる「浮気」や「不倫」とはどう違うかを、解説します。

    ▽不貞行為とは

    配偶者以外との「肉体関係(性交渉)」を意味する、民法に定められている法律用語です。一般に浮気や不倫と呼ばれる場合もありますが、厳密には、少し意味が異なります。

    浮気と不倫・不貞行為の違いは、以下の2つの点で異なります。

    • 結婚の有無
    • 行為の内容

    それぞれの違いについて、以下の比較表で確認してみましょう。

     婚姻関係にあるか肉体関係があるか
    浮気結婚していない場合も含む肉体関係がない場合も含む
    不倫結婚している場合に限る肉体関係がない場合も含む
    不貞行為結婚している場合に限る肉体関係がある場合に限る

    浮気は結婚していないカップルにも使う言葉で、肉体関係がない場合も含みます。

    不倫は浮気と違い、結婚している夫婦にのみ使う言葉で、こちらも肉体関係の有無を問わず使えます。

    一方、不貞行為は不倫同様、結婚している夫婦で、なおかつ肉体関係がある場合のみを指します。

    不貞行為の法律上の根拠は、民法第770条1項1号にあります。

    (裁判上の離婚)
    第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
    1 配偶者に不貞な行為があったとき。

    出典:民法 | e-Gov法令検索

    第770条が定めているのは、配偶者が離婚に同意しない場合に、裁判を起こすための「法定離婚事由」です。

    不貞行為が認められると、たとえ配偶者が拒否しても、離婚が認められます。不貞行為は、法律上で、離婚を認めさせる効力を有するほどの、重大な行為に当たるのです。

    【チェックリストで確認!】配偶者の浮気が不貞行為に該当する判断基準

    【チェックリストで確認!】配偶者の浮気が不貞行為に該当する判断基準

    ここでは、配偶者が不倫相手と行っている行為が、不貞行為に当たるかどうかの判断基準を紹介します。

    まずは、確認できている行為が不貞行為に当てはまるか、以下の表で確認してみましょう。

    確認できている行為不貞行為に当たるか
    頻繁にLINEや電話をしている×
    2人でランチに出かける×
    2人で夜、食事をしたり、お酒を飲んだりする×
    2人だけでデートする△
    相手の自宅に出入りしている△
    手をつないだり、腕を組んだりしている×
    ハグをしたりキスをしたりする×
    肉体関係がある(性交渉をしたことがある)○

    たとえ不倫をしている本人同士に「恋人同士」だとか「付き合っている」という自覚があったとしても、肉体関係のない、プラトニックな関係では「不貞行為」とは認められません。

    あなたが「浮気や不倫だ!」と思っている行為でも、不貞行為に該当しない場合があるのです。

    この章では、不貞行為に関する、下記の2つを理解していきましょう。

    • 不貞行為が認められるのは「肉体関係の有無」による
    • 肉体関係が確認できなくても、不貞行為に当たる可能性のあるケース

    不貞行為が認められるのは「肉体関係があるかどうか」

    「不貞行為に当たるか」を言い換えると、「肉体関係があるかどうか」となります。

    頻繁に連絡を取り合っていても、2人きりで出掛けていても、ハグやキスなどの肉体的な接触があっても、「肉体関係がない」限り、「不貞行為」には該当しません。

    ただし「肉体関係があるのではないか…」と疑われるような行為は、不貞行為だと判断される場合もあります。例えば上記の表で「△」としたようなケースです。続けて解説していきます。

    肉体関係が確認できなくても不貞行為に当たる可能性のあるケース

    「肉体関係がある」とハッキリ確認できなくても、行為によっては不貞行為だと判断されます。

    具体的には、下記3つの事例のような、「肉体関係があると推測できる」疑わしい行為です。

    • ラブホテルを2人で利用している
    • 2人で泊まりがけの旅行をしている
    • 同棲している

    1つずつ説明します。

    ラブホテルを2人で利用している

    不倫を疑われる2人が、ラブホテルを利用している場合、不貞行為に当たる可能性が高いと考えられます。

    一般的にラブホテルは「性交渉をするために利用する」場所です。社会の常識としても「ラブホテルを利用しているカップルは、肉体関係がある」と考えるのが、自然ではないでしょうか。

    ラブホテルの部屋の中で、2人が何をしていたか確認できなくても、利用していることが証明できれば「肉体関係がある」と認められます。

    不倫の当事者による「ラブホテルに2人で入ったが、何もしていない」という言い訳は、通用しません。

    2人で泊まりがけの旅行をしている

    お泊りデートをした場合、不貞行為に当たる可能性があります。

    泊まりがけのデートは、ただのデートと違います。密室で誰にも見られずに、長い時間を2人きりで過ごすため、肉体関係があると推測できるからです。

    特に、同じホテルの同じ部屋に宿泊している場合には、性交渉を行った可能性が高いと考えられます。

    同棲している

    配偶者と不倫相手の関係が進展し、同棲に至っている場合、肉体関係があるという証明になります。

    交際相手と一緒に住んでいるにもかかわらず、「肉体関係はない」という主張には無理があるからです。

    同棲はしていなかったとしても、相手のために部屋を借りていたり、お互いの自宅とは別に、逢引きのための部屋を借りていたりする場合も、同様に不貞行為の証拠となるでしょう。

    不貞行為があっても慰謝料請求が認められないケース

    肉体関係があっても不貞行為に当たらない可能性のあるケース

    配偶者が第三者と性的関係を持っていた場合でも、必ずしも配偶者と不倫相手の双方に慰謝料を請求できるわけではありません。

    特に、以下のような事情がある場合には、慰謝料請求が認められるかどうかを慎重に判断する必要があります。

    • 不貞行為が行われる前から夫婦関係が破綻していた場合
    • 配偶者が独身であると偽り、不倫相手が既婚者であることを知らなかった場合
    • 配偶者が脅迫や強要によって第三者と性的関係を持った場合

    ただし、これらはすべて同じ理由で慰謝料請求が否定されるわけではありません。

    夫婦関係の破綻が問題となるケースと、不倫相手の故意・過失や性的関係への同意が問題となるケースを区別して考える必要があります。

    すでに夫婦関係が破綻している場合

    配偶者と第三者が性的関係を持つ前から、すでに夫婦関係が修復困難な状態にあった場合には、不倫相手に対する慰謝料請求が認められないことがあります。

    これは、不貞行為が行われた時点ですでに婚姻共同生活の平穏が失われていた場合、その平穏を侵害したことを理由とする損害賠償責任が成立しないと判断される可能性があるためです。

    ただし、夫婦が別居していたり、夫婦仲が悪化していたりするだけで、直ちに婚姻関係が破綻していたと判断されるわけではありません。

    別居期間や夫婦間の交流状況、関係修復に向けた取り組みなどを踏まえて、個別に判断されます。

    また、婚姻関係が破綻していた場合でも、配偶者の不貞行為そのものが存在しなかったことになるわけではありません。

    不貞行為の成立と、慰謝料請求が認められるかどうかは、区別して考える必要があります。

    ①両方に離婚の意思がある(主観的要素)

    • 妻と夫の両方に離婚の意思がある
    • 夫婦関係を修復する意思がない

    ②長期間の別居や家庭内別居をしている(客観的要素)

    • 5年以上に及ぶ長期間、別居している
    • 数年以上にわたる徹底した家庭内別居をしている(生活の場や家計が別、会話が全くないなど)

    ③夫婦間に明らかな問題がある(有責性)

    • DVやモラハラ
    • 家事・育児の放棄
    • 性の不一致(セックスレスなど)

    配偶者が「独身」を自称し、不倫相手を騙している場合

    配偶者が独身であると偽り、第三者と性的関係を持っていた場合でも、配偶者側の不貞行為が否定されるわけではありません。

    一方、不倫相手が配偶者の婚姻状況を知らず、知らなかったことについて過失もない場合には、不倫相手に対する慰謝料請求が認められない可能性があります。

    たとえば、配偶者が独身者向けのマッチングアプリを利用し、プロフィールにも独身と記載していた場合などが考えられます。

    ただし、独身者向けのサービスで知り合ったという理由だけで、必ず不倫相手の責任が否定されるわけではありません。

    交際中の言動や結婚指輪の有無、家族に関する会話なども踏まえて、不倫相手が既婚者であることを認識していたか、認識できたかどうかが判断されます。

    また、配偶者が独身であると偽っていた場合には、不倫相手自身も騙された被害者として、配偶者に損害賠償を請求できる可能性があります。

    このように、配偶者の不貞行為が成立することと、不倫相手が慰謝料の支払義務を負うことは、別の問題です。

    配偶者が強引に関係を迫った場合

    配偶者が第三者に対して脅迫や強要を行い、相手の意思に反して性的関係を持った場合には、その相手に不貞行為の責任を負わせることはできません。

    たとえば、職場での立場を利用して性的関係を強要した場合や、秘密を暴露すると脅して関係を持たせた場合などが考えられます。

    このようなケースでは、性的関係があったという事実だけで、不倫相手に故意・過失に基づく損害賠償責任が成立するわけではありません。

    また、強要された側は、性的被害を受けた被害者として、強要した配偶者に対して損害賠償を請求できる可能性があります。

    一方、性的関係を強要した配偶者については、第三者との性的関係が存在する以上、その行為が婚姻関係に与えた影響や本人の行為内容などを踏まえ、離婚原因や慰謝料請求の対象になるかどうかが判断されます。

    したがって、配偶者による強要があった場合には、不倫相手に責任がないことと、配偶者自身の法的責任を区別することが重要です。

    参考:e-Gov法令検索「民法第709条・第770条」

    不貞行為をされて離婚する場合の進め方

    離婚するためには、大きく分けて3つの方法があります。

    協議離婚

    夫婦の話し合いによって離婚する方法です。夫婦間での合意があれば離婚することができます。

    大半の夫婦が「協議離婚」によって離婚しています。

    調停離婚

    家庭裁判所に離婚調停を申し立て、調停手続の中での話し合いによって離婚する方法です。

    裁判所が夫婦の間に入り、双方の意見を聞きます。最終的に夫婦間での合意が得られれば離婚することができます。

    裁判離婚

    調停手続の中で合意できなかった場合、裁判所に離婚訴訟を提起することになります。

    相手方の不貞行為は、離婚事由(民法770条1項1号)にあたりますので、離婚が認められます。

    「相手方の不貞が原因で離婚したいけど、どうすればいいのかわからない。」という場合には、一度弁護士にご相談ください。

    不貞行為に対する慰謝料は誰に請求できる?

    不貞行為を行った配偶者に対して請求する

    まず、不貞行為を行った配偶者に対して、不貞行為に関する慰謝料を請求することができます。

    夫婦間には、他の異性と不貞行為を行わないという義務があるところ、不貞行為を行うこと自体がこの義務に違反するものだからです。

    そのため、配偶者と離婚をするか否かに関わらず当該慰謝料を請求することができます。

    もっとも、離婚をしない場合、家計が同じである配偶者に対して慰謝料を請求しても、世帯的な経済的メリットは見込めません。

    配偶者の不貞相手に対して請求する

    不貞行為に基づく慰謝料請求は、不貞行為があったことによって夫婦関係の平穏が害されたことを根拠とするものです。

    そして、かかる慰謝料は、不貞行為を行った者が連帯して支払う責任を負うものです。

    よって、配偶者の不貞相手に対しても不貞行為に関する慰謝料を請求することができます。

    もっとも、配偶者が既婚者であることを不貞相手が過失なく知らなかった場合、不貞相手は当該慰謝料を支払う義務を負わないことになります。

    そこで、不貞相手からこうした反論が考えられる場合には、こうした反論を覆すための証拠を集めておく必要があります。

    配偶者+不貞相手の双方に請求する

    既述の通り、配偶者にも不貞相手にも不貞行為に関する慰謝料を請求することができます。

    そして、配偶者か不貞相手かいずれか一方に対してのみ慰謝料を請求することも、両方に対して慰謝料を請求することも自由です。

    ただし、両方に対して慰謝料を請求する場合、いずれか一方に対してのみ請求する場合と比べて慰謝料額が2倍になるという訳ではない点には注意が必要です。

    すなわち、例えば慰謝料150万円を支払うことが妥当なケースであれば、この150万円を配偶者と不貞相手が連帯責任として支払えば足りることになるため、一方が150万円を支払ってしまえば、他方には請求できないという理屈になります。

    配偶者に不貞行為をされたときの選択肢と慰謝料請求について

    配偶者に不貞行為をされたときの選択肢と慰謝料請求について"

    配偶者の不貞行為が明らかになったら、その後の行動には大きく分けて、以下2つの選択肢があります。

    • 夫婦関係を再構築する(離婚しない)
    • 離婚する

    つらい状況ではありますが、離婚するか、しないかを選択することになります。どちらを選ぶにしても、一番大切なのは、その選択があなたの明るい未来につながる、最善の選択であるかどうかです。

    配偶者と今後どうするかを考えるときには、不倫相手や配偶者に、あなたが精神的苦痛を受けた分の慰謝料請求も、検討しましょう。

    不貞行為により、あなたが不倫相手や配偶者に請求できる慰謝料には、下記の2種類があります。

     意味請求できるケース請求できる相手
    ①不貞慰謝料配偶者の不貞行為によって受けた精神的苦痛に対して請求する離婚する・しない場合
    両方
    配偶者
    不倫相手
    ②離婚慰謝料離婚によって受けた精神的苦痛に対して請求する離婚する場合のみ配偶者のみ

    離婚する場合としない場合で、取れる慰謝料の種類と、取れる相手が異なります。

    ここからは、不貞行為をされたあなたが、今後決断する必要のある選択肢と、それぞれのケースで取れる慰謝料について、解説します。

    関係を再構築する(離婚しない)場合

    まずは離婚せずに、夫婦の関係を再構築するという選択肢があります。

    再構築する場合は、下記の3つのパターンが考えられます。

    • 何もせず穏便に済ませる
    • 不倫相手に慰謝料を請求する
    • 配偶者に慰謝料を請求する

    特に何もせず穏便に済ませるつもりなら、不倫相手と直接会ったり、謝罪文や誓約書を書かせたりするのはやめましょう。トラブルを引き起こすリスクがあります。

    現状の法律では、不倫相手に下せる社会的制裁は、慰謝料の請求しかありません。少しでも「相手への恨みを晴らしたい」という思いがあるなら、慰謝料の請求をおすすめします。

    配偶者と離婚しない場合に請求できる慰謝料は、「不貞慰謝料」です。

     意味請求できるケース請求できる相手
    不貞慰謝料配偶者の不貞行為によって受けた精神的苦痛に対して請求する離婚する・しない場合
    両方
    配偶者
    不倫相手

    ここからは、不倫相手と配偶者、それぞれに慰謝料を請求する場合について、解説していきます。

    不貞行為の慰謝料請求は時効がある!

    時効
    上記の時効は、以下の民法724条で制定されています。

    不貞行為による慰謝料請求には、消滅時効があります。

    民法724条では、不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効について、以下の2つの期間が定められています。

    • 被害者が損害および加害者を知った時から3年間
    • 不法行為の時から20年間

    2020年4月1日に施行された改正民法により、従来「除斥期間」と解されていた20年間の期間は、消滅時効として定められました。

    そのため、「不貞行為が始まってから20年間」という説明は正確ではありません。

    不貞行為が複数回にわたる場合には、それぞれの行為が行われた時期や損害の発生状況などを踏まえて、時効の起算点を検討する必要があります。

    また、3年間の消滅時効についても、不貞行為の事実を知っただけで、必ずしも進行するわけではありません。

    たとえば、不倫相手に慰謝料を請求する場合には、不貞行為による損害と、その相手方を知った時が起算点となります。

    一方、配偶者に対する慰謝料請求では、配偶者が加害者であると認識しているかどうかなど、具体的な事情によって起算点が異なります。

    なお、時効期間が経過した場合でも、時効の完成猶予や更新が認められることがあります。

    慰謝料請求を検討する場合には、不貞行為が行われた時期や発覚した時期を整理し、早めに弁護士に相談することが大切です。

    参考:e-Gov法令検索「民法第724条」

    参考:厚生労働省「民法上の不法行為による損害賠償請求権の消滅時効」

    不倫相手に慰謝料を請求する

    配偶者と離婚しなくても、慰謝料は「不倫相手のみ」に請求できます。

    不倫相手に請求するのは、不貞行為によってあなたが受けた「精神的被害」への慰謝料なので、離婚をするかどうかは関係ありません。

    ただし、不倫相手のみに慰謝料を請求するなら、「求償権」について知っておくべきでしょう。

    ▽求償権とは

    慰謝料の請求を受け、その全額を支払った不倫相手に発生する権利。

    不倫相手である配偶者に、負担割合分の支払いを求めることができます。

    不貞行為は、配偶者と不倫相手が、共同であなたに被害を加えた「共同不法行為」に当たります。

    共同不法行為

    そのため、不倫相手のみに慰謝料を請求すると、「私だけが払うなんて平等じゃないのでは?あなたも支払ってよ!」と、配偶者に支払い負担が課せられるリスクがあります。

    共同不法行為

    不貞行為による慰謝料の負担割合は、不倫相手よりも配偶者の方が大きくなるケースがほとんどです。

    実務上は、多くのケースで【配偶者:不倫相手=6:4または7:3】程度と、判断されています。

    負担割合が4:6の場合、以下の図のように、求償権を行使される可能性があります。

    求償権

    求償権については、「求償権の放棄とは?不倫の慰謝料の求償権放棄のメリット、デメリット手続を解説」で詳しく解説していますので、ぜひご参考ください。

    不倫相手だけに請求する場合は「求償権放棄」も検討しよう

    実際には、不倫相手が求償権を行使する可能性は低いと考えられます。費用も時間もかかり、裁判になることもあるため、不倫相手も簡単には行使してこないからです。しかし、万が一にも求償権の行使を避けるためには、「求償権放棄」の検討がマストです。

    不倫相手に求償権の放棄を提案し、代わりに慰謝料の減額に応じ、お互いにwin-winな解決を目指す選択をする方も多くいます。

    不倫相手に求償権を請求されると、一度は関係を絶ったはずの相手と、再びつながる必要が生じます。

    不倫相手と二度と関わりたくないのであれば、「求償権放棄」という選択がおすすめです。

    配偶者に慰謝料を請求する

    離婚せずに、配偶者に慰謝料を請求することは可能です。過去の裁判でも、認められた事例があります。

    しかし、一般的ではないため、以下のような壁に阻まれる可能性があります。

    • 配偶者や周囲の理解が得られない
    • 弁護士などの専門家に相談しても、断られる
    • 裁判が長引くと、解決までに時間と費用がかさむ
    • 裁判に至った場合、配偶者との関係が悪化するリスクがある

    上記の問題を考慮すると、離婚せずに配偶者に慰謝料を請求するのは、現実的ではないと分かります。

    「配偶者にも不倫相手と同じだけの責任があるから、制裁を受けさせたい」

    「次同じことをしたら離婚するつもりだから、先を見越して慰謝料を受け取っておく」

    という方は、上記の障害を考慮し、それなりの覚悟を持って、請求すべきでしょう。

    離婚する場合

    配偶者の不貞行為がきっかけで、離婚を決断した場合です。

    相手と離婚する場合は、お互いに話し合って行う「協議離婚」で合意する方が大半です。

    しかし協議離婚でお互いに合意が取れない場合などは、家庭裁判所に離婚の申し立てをする、「調停離婚」を進めることになります。

    離婚をする上で、「不貞行為」による慰謝料請求をするときは、下記の3つのケースがあります。

    • 配偶者にのみ慰謝料を請求する
    • 不倫相手のみに慰謝料を請求する
    • 配偶者と不倫相手の両方に慰謝料を請求する

    調停や裁判に進んだとしても、ほとんどの場合、不貞行為をされた被害者が有利な立場で離婚を進められるので、安心してくださいね。

    離婚を決意される場合は、「離婚手続の種類と流れ・離婚前後の確認事項や必要な届け出も解説」で詳しく説明しているため、ご参考ください。

    離婚する際に、あなたが誰にも慰謝料を請求しない場合

    離婚する際には、慰謝料のほかにも、以下のような条件について話し合う必要があります。

    1. 財産分与(預貯金、不動産、保険、退職金などの分け方)
    2. 親権(共同親権または単独親権の選択)
    3. 養育費(金額、支払期間、支払方法など)
    4. 親子交流(子どもとの面会や連絡の方法、頻度など)

    2026年4月1日に施行された改正民法により、離婚後は父母双方が親権を持つ「共同親権」と、父母の一方が親権を持つ「単独親権」を選択できるようになりました。

    協議離婚では父母の話し合いによって親権者を定めますが、合意できない場合には家庭裁判所の手続きによって決めることになります。

    親権者の決定では、父母のどちらが離婚の原因を作ったかだけでなく、これまでの養育状況や子どもの意思、生活環境などを考慮し、子どもの利益を最優先に判断します。

    また、DVや児童虐待などの事情があり、共同親権とすることが子どもの利益を害する場合には、単独親権とする必要があります。

    なお、共同親権を選択した場合でも、必ず父母が交代で子どもを育てるわけではありません。

    養育費や子どもとの交流方法などについても、子どもの生活を安定させるために具体的に取り決めておくことが重要です。

    参考:法務省「父母の離婚後等の子の養育に関する民法等改正」

    参考:法務省「Q&A形式の解説資料(行政手続・支援編)」

    配偶者にのみ慰謝料を請求する

    原稿内にある「不貞慰謝料」と「離婚慰謝料」の時効比較表も、以下の内容に変更してください。

    慰謝料の種類消滅時効の基本的な考え方
    不貞慰謝料損害および加害者を知った時から3年、または不法行為の時から20年
    離婚慰謝料原則として離婚成立時から3年。請求原因などによって起算点の検討が必要

    不貞慰謝料の20年間は、現在の民法では除斥期間ではなく消滅時効です。

    また、不貞行為が継続していた場合には、各行為の時期や損害の発生状況によって時効の判断が異なる可能性があります。

    離婚慰謝料についても、単に離婚成立日だけでなく、請求の根拠となる行為や損害の内容を確認することが大切です。

    参考:e-Gov法令検索「民法第724条」

    不倫相手のみに慰謝料を請求する

    「離婚する場合」でもお伝えしたように、不倫相手に請求できるのは、「①不貞慰謝料」のみです。

     意味請求できるケース請求できる相手
    不貞慰謝料配偶者の不貞行為によって受けた精神的苦痛に対して請求する離婚する・しない場合
    両方
    配偶者
    不倫相手

    あなたが不貞行為による離婚をしても、不倫相手には「離婚をしたことによる慰謝料」を支払う義務はないとされています。

    離婚はあくまで、婚姻関係の当事者が行うことです。夫婦の離婚の原因が不貞行為であり、その一端を不倫相手が担っていたとしても、慰謝料の請求はできません。

    基本的に請求できるのは、不貞行為によってあなたが受けた精神的苦痛に対する「①不貞慰謝料」のみです。

    離婚する場合、不倫相手の支払う慰謝料の金額は大きくなる

    「夫婦を離婚させることをねらって」不貞行為に及んだと認められた場合、不貞慰謝料とは別に、離婚慰謝料の請求が認められる可能性があります。

    また、不貞行為によって離婚することになった場合、離婚しない場合よりも被害者に与えた損害が大きいと判断されます。そのため、不倫相手が支払うべき不貞慰謝料の金額は、相対的に上がります。

    配偶者と不倫相手の両方に慰謝料を請求する

    離婚するときに、配偶者と不倫相手、両方に慰謝料を請求する場合は、それぞれに下記の慰謝料が請求できます。

     意味請求できるケース請求できる相手
    ①不貞慰謝料配偶者の不貞行為によって受けた精神的苦痛に対して請求する離婚する・しない場合
    両方
    配偶者
    不倫相手
    ②離婚慰謝料離婚によって受けた精神的苦痛に対して請求する離婚する場合のみ配偶者のみ

    「配偶者にのみ慰謝料を請求する」で説明したように、不貞行為による慰謝料で、配偶者から取れる可能性があるのは「①不貞慰謝料」と「②離婚慰謝料」です。

    不貞行為が原因で離婚した場合でも、配偶者に対して離婚慰謝料を請求できる可能性があります。

    ただし、不貞行為による精神的苦痛と、離婚による精神的苦痛が重なる場合には、慰謝料の金額を一体的に判断することがあります。

    一方、不倫相手に対しては、原則として不貞行為によって受けた精神的苦痛に対する慰謝料を請求することになります。

    不倫相手に離婚そのものによる慰謝料を請求するためには、最高裁判所平成31年2月19日判決で示された特段の事情が必要です。

    また、配偶者と不倫相手の双方に慰謝料を請求する場合でも、同じ精神的損害について二重に賠償を受けることはできません。

    そのため、それぞれの責任の範囲や、すでに支払われた慰謝料の金額などを確認したうえで請求を進めることが重要です。

    参考:隼あすか法律事務所「不貞行為と離婚慰謝料(最高裁平成31年2月19日判決)」

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    不貞行為に対する慰謝料増減のポイントは?

    不貞行為の期間、回数

    不貞行為の期間が長いこと、回数が多いことは、不貞行為の悪質性を裏付ける事情となり、慰謝料の増額事由となる可能性があります。

    不貞相手の認識

    不貞行為を開始するにあたって婦関係がどういった状況だと認識していたかという点について、例えば、夫婦関係が円満であると認識していながらこれを破壊しようとして不貞行為に至ったというケースでは、そうでないケースよりも慰謝料が増額される可能性があります。

    不貞に至った経緯

    不貞に至った経緯についても、例えば、相手が夫婦関係が円満ではないと嘘を付いて積極的に誘ってきたために不貞に至ったという事情があれば、減額事由として主張できる可能性があります。

    不貞行為に対する反省の有無

    例えば、不貞行為発覚後も不貞行為を続けたケースのように、不貞行為に対する反省がないと評価され得る態度をとることは慰謝料の増額事由となる可能性があります。

    不貞行為による妊娠の有無

    不貞行為により妊娠をしたという事情があれば、慰謝料の増額事由となる可能性があります。

    不貞行為時の婚姻関係の状態

    不貞行為時に婚姻関係が円満でなかったことは慰謝料の減額事由になる可能性があります。

    また、婚姻関係が破綻していたようなケースでは慰謝料がゼロとなるケースもあります。

    もっとも、裁判になった場合、これらを理由に減額を主張していくためには、婚姻関係の破綻や円満でなかったことを証明する必要があり、そのハードルは高いことが多いです。

    婚姻期間の長さ

    一般的には、婚姻期間が長い方が短い場合よりも慰謝料が増額される傾向にあります。

    幼い子供の有無

    夫婦間に幼い子供がいることは、慰謝料の増額事由とされる可能性があります。

    離婚や別居の有無

    不貞行為によって夫婦が離婚や別居に至ったか否かという点は慰謝料の相場を分ける大きな事情となります。

    そして、不貞行為によって夫婦が離婚に至ったケースでは、不貞行為の結果が重大といえ、慰謝料が高くなる傾向にあります。

    不貞行為に対する慰謝料の相場|高額になる場合、減額される場合の具体例は?

    不貞行為による慰謝料の相場は?

    慰謝料の金額は、様々なポイントによって増減しますが、特に肉体関係の有無と不貞関係が発覚した後の夫婦関係は大きく影響します。

    肉体関係がある場合、不貞行為に対する慰謝料の相場は、離婚しない場合が50〜100万円程度、不貞が原因で別居に至った場合は100〜200万円程度、不貞が原因で離婚に至った場合は150〜300万円程度です。

    離婚しない場合50〜100万円程度
    不貞が原因で別居に至った場合100〜200万円程度
    不貞が原因で離婚に至った場合150〜300万円程度

    一方で、肉体関係がない場合には、「不貞行為」にはあたらないので、慰謝料の相場は数十万円程度と低額です。

    ただし、交渉次第では、相場よりも高額な慰謝料となることもあります。

    不貞行為に対する慰謝料請求の判例

    東京地判令和3年1月20日

    この裁判例では、約11年間にわたって平穏な家庭生活を営んでいた夫婦関係が不貞行為によって破綻したこと、原告(妻)が不貞行為によって食欲不振や睡眠障害などの心身の不調による通院をするようになったこと、夫婦間に小学生の子が二人いること、夫と不貞相手が両者間で生まれた子供と同居していることいること等を踏まえて、慰謝料300万円が相当であるとの判断が下されました。

    東京地判平成30年1月23日

    この裁判では、不貞が行われた時に夫婦が別居していたこと等から婚姻関係が破綻していたか否かが争われました。

    裁判所は、夫婦が別居していること自体から直ちに婚姻関係の破綻は認めませんでした。

    また、別居中も妻が関係修復のための努力を行っていたこと等から、婚姻関係は破綻の危機に瀕していたにとどまる(破綻していたとまでいえない)と判断しています。

    他方で、夫婦関係が円満でなかったことに加え、不貞相手には婚姻関係の平穏を害することにつき故意があったとまではいえず過失にとどまることを理由に、慰謝料としては40万円が相当という判断をしました。

    東京地判平成29年1月18日

    この裁判例では、原告の妻が原告との会話の中で不貞行為を認めたことを理由に原告が妻の不貞相手である被告に対して慰謝料請求をしました。

    これに対して、裁判所は、原告の妻の発言が不貞行為の正確な日時、前後の経緯等を具体的に述べるものでもなく、裏付けとなる証拠もないこと等から、不貞行為があったことを認定するに足りる証拠がないと判断し、原告の請求を認めませんでした。

    不貞行為による慰謝料の請求には証拠が重要!

    不貞行為による慰謝料の請求には証拠が重要!
    慰謝料の請求や離婚など、あなたがこれから行動を起こすなら、不貞行為の証拠が必要です。

    「不貞行為は立証が難しい」とよく言われますが、証拠さえ揃えれば、不可能ではありません。

    加害者側は、被害者の主張が事実であっても、嘘をついてでも否定してきます。だからこそ、相手が認めざるを得なくなるだけの十分な証拠を集めて、請求に臨みましょう。

    不貞行為の証拠は、主に以下の2つのパターンが考えられます。

    1. 1つだけでも有効となりうる決定的な証拠
    2. 1つでは効力が薄いけれど、複数を合わせることで有効となる証拠

    ここからは、どのようなものが不貞行為の証拠として有効となるのか、実例を挙げて紹介していきます。

    証拠は「日時確認できるもの」で揃えよう!

    不貞行為の証拠を集めるときには、「日時確認」ができるものを揃えるように意識してください。例えば以下のような日時が確認できると理想的でしょう。

    • 不貞行為が始まった日付
    • 不貞行為の継続期間
    • 不貞行為に該当する行為が起きた日時

    不貞行為の証拠は、裁判などで、不貞行為の内容について、客観的な議論を行う際に必要となります。

    日記を付ける場合には、毎回記録した日付と時間帯を書くようにしましょう。

    写真も撮影日時が分かるように、徹底してください。写真を撮影した日時を記録する方法には、以下のような手段があります。

    • 可能であれば被写体に日時の分かるものを入れる
    • カメラの時間設定を正確な時刻に合わせる
    • 撮影後するに画像データをメール送信する

    もし日記や写真を裁判などの証拠として使う場合には、「その写真がいつから存在するのか」を公的に証明してもらえる「確定日付」をもらっておくと良いでしょう。

    詳しくは、日本公証人連合会HP内の「確定日付」のページをご確認ください。

    確定日付の手続きは、全国約300カ所にある「公証役場」で行うことができます。

    1つだけで有効な5個の証拠

    1つだけで有効となる証拠は、「不貞行為に及んだ」という事実がひと目で分かる、決定的なものでなければいけません。

    ここでは以下の5つの証拠について、それぞれ解説します。

    1. 不倫中の画像や映像
    2. 会話などの録音データ
    3. LINEやメールなどの履歴
    4. 妊娠・堕胎の事実書類や子のDNA鑑定
    5. 不貞行為を認める念書や誓約書、動画・録音データなど

    ①不倫中の画像や映像

    最もイメージしやすいのが、不貞行為(性交渉)に及んでいる最中の、画像や映像です。

    とはいえ不倫をしている2人が、不貞行為中の画像や動画を残すことはまれでしょう。密室の中を撮影するのも困難です。

    そこで実際に証拠となるのは、不貞行為に及んでいると推定できるような画像や動画だと考えられます。例えば以下のようなものであれば、手に入る可能性があります。

    1. 2人が裸体や下着姿で、同じ部屋にいることが分かる写真や動画
    2. ラブホテルや同棲している部屋に2人が出入りしている(入退室両方)写真や動画
    スマートフォン

    重要なのは、これらの写真や動画に「2人の顔がハッキリ写っていて、撮影場所が分かる」ことです。

    さらに撮影日時の確認ができれば、かなり有力な証拠となるでしょう。

    Caution!

    撮影時は、入室・退室どちらかではなく、必ず「入退室両方」の写真や動画を押さえてください。

    不倫相手と配偶者が過ごした時間帯(特に深夜)や、一緒に過ごしている時間の長さが、不貞行為の証拠になります。

    また、画像や動画は別の日時で2回以上撮影したものがあるとベターです。

    不貞行為が2回以上確認される場合、常習性が高いと判断されるため、より有力な証拠となります。

    ②会話などの録音データ

    配偶者と不倫相手の会話を、ボイスレコーダーなどで録音したデータも有効です。

    会話などの録音データ
    • 不貞行為(性交渉)の最中、その前後の音声データ
    • 不貞行為に関する内容を喋っている、録音データ

    こちらも①の画像や映像と同じくらい、有力な証拠となる可能性があります。

    なお、上記のような決定的といえる、不貞行為に関する会話などの録音データでなくても、他の証拠と合わせると、効力を発揮する場合もあります。

    録音データの集め方

    録音データを集める際は、下記の2箇所にスマートフォンなどを仕掛けると良いでしょう。

    • 自宅(リビングや寝室)
    • 自家用車

    車は意外と盲点なのではないでしょうか。

    過去の判例には、車内での性交渉中の音声データを、証拠として掲示したケースもあります。

    ③LINEやメールなどの履歴

    LINEやメールでのやり取りで、性交渉について直接言及している履歴があれば、証拠となります。

    LINEやメールなどの履歴

    「そんなことについてLINEで話す…?」と思うかもしれません。

    しかし不倫行為に夢中になっている当事者は、臆面もなく「気持ち良かったね」「昨日のホテル、また行きたいね」などと、性交渉についてやり取りしているケースが珍しくないのです。

    ただし「昨日は良かったね」「熱い夜だったね」などのように、性交渉について話しているとしても、遠回しな言い方だと、証拠となりにくくなります。

    その場合には「複数集めることで効力を持つ10個の証拠」で紹介するような、他の証拠と合わせる必要があるでしょう。

    不倫相手が積極的に求愛している内容も証拠となる!

    ①~③では、不貞行為(性交渉)に言及している画像や映像、録音データ、LINEやメールの履歴が、不貞行為の決定的な証拠になると解説しました。

    これは、不貞行為が認められるためには、2人に肉体関係がある証拠が必要だからです。

    でも不貞行為に関する証拠がなくても、不貞行為が認められる証拠もあります。それが「不倫相手が配偶者に積極的に求愛している」と分かる証拠です。

    例えば不倫相手が以下のような発言をしていたり、メールやLINEを送っていたりすると、「積極的に求愛している」と認められ、不貞行為が認められる可能性があります。

    • 絶対結婚しようね♡(結婚の約束をしている)
    • 早く奥さんと別れて幸せになろう♡愛してる!(離婚を促している)
    • 家を出て、一緒に住もう(被害者との別居、自分との同棲を促している)

    このように自分との同棲や結婚、被害者との別居や離婚を積極的に喚起している場合、またハートマークや「愛してる」などの文句を多用している場合、不貞行為として認められるケースがあるようです。

    Caution!

    証拠にするときは、スクリーンショットではなく、相手のスマートフォンの画面ごと自分のカメラで撮影してください。

    「データの改ざんのしようがない、完全な証拠」となります。日付も分かるとベストです。

    【OK例:相手のスマホを撮影している】
    OK例:相手のスマホを撮影している

    【NG例:スクリーンショットを撮っている】
    NG例:スクリーンショットを撮っている

    ④妊娠・堕胎の事実書類や子のDNA鑑定

    妊娠・堕胎の事実書類や子のDNA鑑定

    配偶者が不倫相手を妊娠・堕胎させたケースや、夫が不倫した妻を訴えるケースで証拠となるのが、妊娠・堕胎の事実書類です。具体的には以下のようなものが考えられます。

    • 母子健康手帳
    • 妊娠中のエコー写真
    • 産婦人科の診療報酬明細書

    妻が不倫相手の子どもを妊娠、すでに出産している場合、子どもの血液型やDNA鑑定で発覚する場合もあります。

    ⑤不貞行為を認める念書や誓約書、動画・録音データなど

    配偶者や不倫相手が不倫を認めている場合、それを念書や誓約書といった書面、あるいは動画・録音などで形に残すと証拠になります。

    念書を作成する場合には、以下のような項目を盛り込みます。作成するのは手書きでもパソコンでも構いません。最後に念書を作成した年月日と場所、本人の直筆の署名か捺印を入れましょう。

    不貞行為を認める念書や誓約書に盛り込むべき項目

    • 不貞行為のあった期間
    • 不貞行為の回数や頻度
    • 不貞行為を行った場所
    • 不貞行為を行った相手の名前、職業、住所
    • 不倫相手の場合、不貞行為を行った相手が既婚者である認知の有無

    余裕があれば上記の不貞行為の内容に、以下のような誓約内容を加えることもできます。

    • 交際を解消する
    • 二度と会わない
    • 連絡を取らない(連絡先を削除する)
    • 慰謝料の請求に応じる(金額や期限、振り込み方法を含めるとより良い)

    動画や録音データで証拠を残す場合には、上記に挙げた項目を、相手に発言させるようにしましょう。

    ただし動画や録音データを証拠とする場合、編集後のデータでは認められないケースがあります。相手が、「無理やり言わされた」と主張する可能性も否めません。

    確実な証拠としたいなら、音声よりも、念書や誓約書といった、書面に残す方が安心です。

    複数集めることで効力を持つ10個の証拠

    「1つだけで有効な5個の証拠」で紹介したような決定的な証拠は、つかむのが簡単ではありません。

    1つだけでは証拠とならないような証拠でも、複数の証拠を集めることで、効力を持つ場合もあります。

    ここでは、複数集めれば効力を持つ可能性の高い、10個の証拠を紹介します。

    ①不倫について書かれたメモやスケジュール帳など

    不倫について書かれたメモやスケジュール帳など

    不倫や、不倫相手について書かれたメモや、スケジュール帳が証拠となる場合があります。

    例えば以下のようなものがあれば、④不倫に関するレシートや領収書・ポイントカードやサービス券や、⑦カーナビ・ドライブレコーダー・ETCの利用履歴など合わせて、証拠の1つとなるかもしれません。

    • 不倫相手から受け取った、デートや密会の誘いの付箋やメモ
    • デートや密会を行う日付や場所を記したメモ
    • デートや密会の予定や記録を残した(と推測できる)スケジュール帳

    ②不倫相手にもらった手紙やカード

    誕生日やクリスマスなどにもらった、手紙やカードの内容から、2人の関係性が分かる場合があります。

    特に数枚に渡る、長文の手紙の場合、出会いや関係などが詳細に記してあるかもしれません。

    記念日を祝う手紙やカードなら、不倫が始まったタイミングや期間が判明する可能性もあります。

    Caution!

    手紙やカードを見つけたら、どこで見つけたか分かるように写真撮影しましょう。

    例えばカバンやジャケットのポケットの中に見つけた場合には、まず入っている様子を撮影します。その後、カバンやポケットから取り出して、全体像を撮影してください。

    ③不倫相手にもらったプレゼント

    不倫相手にもらった手紙やカード

    不倫相手からもらったであろうプレゼントが、証拠になる場合もあります。

    特に友人同士では贈り合うことのないような、高級ブランドの衣類やカバンなど、高額なプレゼントをもらっている場合、不倫相手にもらった可能性が高いと考えられます。

    ④不倫に関するレシートや領収書・ポイントカードやサービス券

    不倫に関するレシートや領収書・ポイントカードやサービス券

    不倫相手と訪れたラブホテルやホテル、旅館のレシートや領収書は、比較的効力を持つ証拠となります。

    同じホテルを何度も使っている場合には、ポイントカードやサービス券が出てくることもあります。使った日付や回数がハッキリ分かる場合には、特に有力な証拠となるでしょう。

    何の変哲もないコンビニのレシートであっても、本来なら買う必要のない、女性用の下着や避妊具を買っていたら、かなり怪しいですよね。

    その他、ゆかりのない土地のガソリンスタンドのレシートや領収書、遊園地や水族館など、1人で行く可能性の低い場所のチケットが出てきた場合にも、デートの可能性が疑われます。

    ⑤通話履歴

    通話履歴

    スマホの通話履歴も、証拠となる場合があります。
    定期的に長時間の通話をしていたり、長時間ではなくても頻繁に連絡を取り合っている様子がある場合、不倫相手の可能性があるでしょう。

    ⑥インターネットブラウザの閲覧・検索履歴

    インターネットブラウザの閲覧・検索履歴

    スマホやパソコンに残っている、インターネットの閲覧履歴や、検索履歴も証拠となります。不貞行為をしている場合に考えられる閲覧内容としては、以下のようなものが考えられます。

    • 不倫相手とのデート場所やプランの下調べ
    • 密会場所となるラブホテルやお泊り旅行の宿泊先の予約
    • 不倫相手へのプレゼントのリサーチや購入

    「浮気の隠し方」や「不倫がバレない方法」というキーワードで検索している場合もあります。

    ②不倫相手にもらった手紙やカードや③不倫相手にもらったプレゼント、④不倫に関するレシートや領収書・ポイントカードやサービス券と組み合わせれば、効力を発揮するのではないでしょうか。

    Caution!

    証拠にする際は、日付が分かるように撮影してください。
    パソコンに証拠が残っている場合も、紙に印刷するのではなく、スマホで写真に残しましょう。

    例えばスマートフォンの検索履歴の場合、下記の右側の画面を、スクリーンショットではなく、あなたのスマートフォンで撮影してください。
    スマートフォン撮影

    ⑦カーナビ・ドライブレコーダー・ETCの利用履歴

    カーナビ・ドライブレコーダー・ETCの利用履歴
    主な移動手段が自家用車の場合、不倫相手と会うときに車を使った履歴が、カーナビに残っている場合があります。検索履歴や走行履歴が残るタイプのカーナビなら、比較的簡単に証拠を集められます。

    ドライブレコーダーを設置している場合には、録画映像が証拠となります。レコーダーの機能によっては、車内だけでなく車外の映像を録画できたり、音声記録ができることもあります。

    さらにGPS機能付きの機種なら、不貞行為に及んだ日時や場所の特定が容易で、有力な証拠となります。

    ETCの利用履歴は、利用照会サービスで確認できます。お泊り旅行などで遠出したときには、ETCを使っている可能性が高いでしょう。

    ①不倫について書かれたメモやスケジュール帳などや④不倫に関するレシートや領収書・ポイントカードやサービス券と組み合わせると、説得力のある証拠になりそうです。

    ⑧交通ICカードの利用履歴

    交通ICカードの利用履歴

    主な交通手段がバスや電車、地下鉄で、PASMOやSuicaといった交通ICカードを使っている場合、カードやアプリを使って利用履歴の確認ができます。

    デートや密会が怪しまれる日の、足取りをつかみましょう。

    自宅や会社の、最寄り駅や停留所以外の、駅や停留所を繰り返し利用している場合、不倫相手の自宅や勤務先、密会場所だと推測できます。

    確認できる利用履歴の件数には限りがあります。定期的に確認し、写真やスクリーンショットで保存しておきましょう。

    ⑨不倫に関するクレジットカードの利用明細

    不倫に関するクレジットカードの利用明細

    クレジットカードの利用履歴も、④不倫に関するレシートや領収書・ポイントカードやサービス券のように証拠となりえます。

    クレジットカードの利用履歴は明細書やアプリでまとめて確認できます。配偶者がキャッシュレス派なら、いとも簡単に、何にお金を使ったのかが分かるでしょう。

    ⑩第三者の証言

    第三者の証言

    友人や知人など、第三者の証言も証拠として認められる場合があります。

    例えば以下のような証言が考えられます。

    • 〇月〇日〇時頃、〇〇町のラブホテルに誰かと入るところを見た。
    • 〇月〇日〇時頃、〇〇町のラブホテルから女性と出てきたところに居合わせ、口止めをされた。
    • 〇月〇日〇時頃、〇〇町のカフェに呼び出されて、不貞行為を打ち明けられた。

    証言だけでは信用に足りなくても、他の証拠と組み合わせると、信ぴょう性が上がります。

    ただし、証言をする第三者が被害者側の家族や親友だった場合、証言の公平性に疑問を持たれる可能性があります。

    証言をしてもらう第三者は、被害者や配偶者と利害関係にない相手であることが望ましいでしょう。

    不貞行為の証拠がないときに自力で集める方法

    不貞行為の証拠がないときに自力で集める方法
    今、手元に不貞行為の証拠がないからといって、諦める必要はありません。証拠がまだないのであれば、これから証拠を集めていけばいいのです。

    自力で証拠を集める場合、大きく分けて以下2つの方法が考えられます。

    1. すでにある証拠を調べる
    2. 証拠がなく、これから集める

    2つの方法について、より詳しく解説していきます。

    すでにある証拠を調べる場合

    すでにある証拠というのは、不貞行為に及んでいる配偶者の持ち物などを指します。具体的には、以下のようなものが考えられるのではないでしょうか。

    • 自宅のリビングや寝室、配偶者の部屋を調べる
    • 財布やカバンの中身を確認する
    • スマホやパソコンの履歴やデータをチェックする
    • 車内の様子やカーナビ、ドライブレコーダーの履歴を確認する

    これらの方法で配偶者の持ち物やスマホのデータを調べると、「不貞行為による慰謝料の請求には証拠が重要!」で挙げたような証拠が見つけられる場合があります。

    証拠を見つけた際には、以下のような点に注意して、記録しましょう。

    形のある証拠の場合実物ではなく、スマホなどのカメラで写真に残すメモレシートサービス券
    データ類を記録する証拠の場合データのコピーや抜き取りはせず、配偶者のスマホやパソコンの画面に映した状態で撮影するスマホパソコンカーナビドライブレコーダー

    形のある証拠は、実物を集めると配偶者にバレてしまう可能性があり、その後の証拠集めが難しくなるかもしれません。

    とはいえ現物の写真だけでは、証拠にならない可能性があります。相手の財布やカバン、服に入っていたと分かるように、状況ごとの写真から撮影しましょう。

    データ類の記録では、「LINEやメール」は、送受信した日時が分かるように撮影しましょう。相手のスマホを自分のカメラで撮影すると、データの改ざんを疑われるリスクが下げられます。

    これから証拠を集める場合

    現在証拠が全くないのであれば、積極的に行動を起こして証拠を集めましょう。具体的には以下のような方法が考えられます。

    • 自家用車にGPSやボイスレコーダーを設置する
    • 自宅に防犯カメラを設置する
    • 配偶者や不倫相手の尾行や張り込みをする

    これらの方法で、配偶者の居場所や動向が分かったり、不貞行為に及んでいる画像や映像、音声データが手に入る可能性があります。

    ただし、積極的に証拠を集めようとすると、気づかないうちに法を犯してしまう可能性も。上記のような証拠集めをするときには、以下のような点に注意してくださいね。

    証拠収集の機器類を設置する場合設置場所は自宅や自家用車内に限るGPSボイスレコーダー防犯カメラ
    動画や音声を録音する場合編集の必要がある場合には、データをコピーして行い、編集前のオリジナルデータを残すようにする

    GPSやボイスレコーダー、防犯カメラを設置するなら、自宅か自家用車内に留めましょう。

    不倫相手の自宅に設置すると、プライバシーの侵害や住居侵入罪法などの罪に問われる危険があります。自宅か自家用車であれば、夫婦共有の財産のため、違法性を問われるリスクが下げられます。

    動画や音声を録音したデータは、編集の必要がある場合でもデータをコピーして行い、編集前のオリジナルデータを残すようにしてください。

    必要な部分の切り取りや編集は、データの改ざんを疑われ、証拠として無効となるリスクがあります。

    自力で不貞行為の証拠を集めるときの注意点3つ

    自力で不貞行為の証拠を集めるときの注意点3つ

    自分で証拠を集める場合、「どこまでやっていいのか?」という疑問や不安があるかもしれません。

    実際には、不貞行為の疑いがある場合、証拠集めの方法が法律的にグレーゾーンであっても、「不貞行為を立証するための証拠集め」と大目に見られることがほとんどです。

    この根拠として、有名な「昭和52年7月15日東京高裁判決」という判例があります。

    判例には、民事裁判で提出する証拠は「著しく反社会的な手段を用いて、人の精神的肉体的自由を拘束する等の人格権侵害を伴う方法によって採集されたもの」でない限り、証拠能力が認められるとあります。

    とはいえ、「何をやってもOK」ではありません。

    どんなに有力な証拠を手に入れても、証拠集めの方法が目に余る違法行為に該当する場合、「証拠能力なし」とされてしまう可能性があります。最悪、被害者側の自分が罪に問われるかもしれません。

    最低限、以下のような行為には気を付けましょう。

    • データの加工や編集をしない
    • データの捏造や偽造をしない
    • 不倫相手の自宅や勤務先に出向かない

    データの加工や編集をしない

    データの改ざんを疑われると、証拠能力がないと見なされる場合があります。

    長い動画や画像の一部分だけを切り出すなど、必要があってデータの加工や編集を行う場合も、オリジナルデータは残すようにしましょう。

    データの捏造や偽造をしない

    ありもしないデータを勝手に作り上げてはいけません。

    0から作り上げるのはもちろん、メールやLINEの一部の文面を変えるのもNGです。不正が明らかになれば、自身が罪に問われる可能性があります。

    不倫相手の自宅や勤務先に出向かない

    GPSやボイスレコーダー、防犯カメラを設置してもいいのは、自分と配偶者の家や自家用車内だけです。

    不倫相手の自宅や勤務先に出向いたり、GPSやボイスレコーダー、防犯カメラを仕掛けたりすると、相手に訴えられるかもしれません。

    不貞行為の証拠を自力で集めることが難しい場合の依頼先

    自力での証拠集めが難しいときの依頼先2つ

    自力での証拠集めが難しい場合は、第三者の力を借りる方法を考えましょう。

    この章では、下記の2つの依頼先について、説明します。

    • 探偵や興信所に依頼する
    • 弁護士に相談する

    探偵や興信所に依頼する

    自分で証拠を集めるのが難しければ、プロの探偵や興信所に依頼するという手があります。

    公安委員会に届け出をしている探偵であれば、「探偵業法」という法律の範囲内で調査を行ってくれます。

    いずれも、調査結果を「調査報告書」という成果物として受け取れます。不倫相手の会社や本名が分からない場合、報告書で判明するケースがあります。

    しかし、報告書単体しかない場合は、証拠としては使えません。「1つだけで有効な5個の証拠」のような、写真や映像などの決定的な証拠を手に入れられるように、依頼しましょう。

    探偵や興信所に依頼すると、少なくとも数十万単位の費用がかかります。

    自分である程度下調べをして、証拠の得られそうな日時や場所を特定してから依頼するようにすれば、予算を抑えられるでしょう。

    弁護士に相談する

    証拠集めが難しい場合は、弁護士に相談するという手もあります。

    弁護士は、探偵や興信所のように、証拠集めはできません。しかし法的に有効な証拠集めのアドバイスなどをしてくれます。

    • どのような証拠が必要か
    • どうやって証拠を集めればいいか
    • 証拠集めをする際にはどのような点に注意すべきか
    • 手持ちの証拠だとどのような判決が考えられるか

    また、弁護士は弁護士法に基づく「弁護士会照会制度」を活用して、不倫相手の連絡先や住所を調べることもできます。必要に応じて、戸籍謄本や住民票の写しの請求も可能です。

    不貞行為による離婚を進める前に確認すべきこと

    不貞行為による離婚を進める前には、財産分与、婚姻費用、親権、養育費といった離婚条件を決めるにあたって必要となる情報・証拠などを収集し、その見通しを確認すべきです。以下、それぞれ説明します。

    財産分与

    不貞行為による離婚に際し、財産分与は原則として夫婦の共有財産を公平に分けることが基本です。不貞行為自体は財産分与の割合に直接影響を与えることは少ないため、預貯金、不動産、退職金、保険などの財産を正確に把握し、名義や取得時期を確認する必要があります。また、特有財産(婚前に取得した財産や相続財産)は分与の対象外となる場合があります。

    婚姻費用

    不貞行為による離婚を進める際、婚姻費用の取り決めは重要なポイントです。婚姻費用とは、夫婦が別居中であっても生活を維持するために必要な費用(生活費、住居費、教育費など)を分担する義務があることを意味します。不貞行為が原因であっても、収入に差がある場合は、収入の多い側が一定額を支払う義務を負うことがあります。ただし、不貞行為を行った配偶者が婚姻費用を請求するにあたっては、その請求が制限される可能性があるので、注意が必要です。
    婚姻費用は別居開始時点から請求できるため、早めに配偶者に請求することが望ましいです。支払いの有無や金額は個別の事情により異なるため、正確な収入状況を把握し、公平な負担がなされるように調整する必要があります。

    親権

    不貞行為による離婚を進める際、未成年の子どもがいる場合は、親権者を取り決めることになります。現状、離婚後は、いずれか一方が単独で親権を持つことになるため、どちらが親権者にふさわしいかを慎重に判断する必要があります。親権者の選定においては、不貞行為の有無よりも、子どもの福祉と利益が最優先されます。
    たとえば、これまでの養育実績、経済力、生活環境、子どもとの関係性などが考慮され、安定した生活を提供できるかが問われます。仮に配偶者に不貞行為があったとしても、親権獲得に直接的な不利となるとは限りません。そのため、自身が親権を希望する場合は、子どもの養育環境を具体的に整え、証拠や資料を用意することが大切です。また、親権だけでなく監護権(実際に子どもを育てる権利)についても整理する必要がある場合があります。

    養育費

    不貞行為による離婚を進めるにあたって、親権者が決まると、養育費の取り決めを行うことになります。養育費は、親権を持たない親が子どもの生活や教育を支えるために支払うもので、不貞行為の有無にかかわらず、子どもに対する責任として支払い義務があります。
    金額は、両親の収入や子どもの年齢・人数に基づき「養育費算定表」を参考にして決定されるのが一般的です。
    口約束ではなく、公正証書といった法的効力を持つ形で取り決めておくことが将来のトラブル回避につながります。支払いが滞った場合に備えて、強制執行できるよう文書化しておくことが重要です。必要に応じて専門家の助言を受けながら進めましょう。

    不貞行為による離婚で後悔しがちなポイントとは?

    不貞行為による離婚は感情的な衝突が大きくなりやすく、勢いで決断してしまうことで後悔につながるケースが少なくありません。以下に、離婚後に後悔しがちな主なポイントをまとめます。

    1. 慰謝料や証拠に関する準備不足

    不貞行為が原因で慰謝料請求を考える場合、証拠が不十分だと請求が認められなかったり、思うような金額が得られなかったりします。写真やSNSのやり取り、ラブホテルの利用履歴など、法的に有効な証拠を準備せずに離婚を進めたことで、後になって「もっときちんと準備しておけばよかった」と悔やむ人も多いです。

    2. 財産分与や年金分割の確認不足

    感情的になってしまい、「すべて放棄する」と勢いで財産分与を求めなかったり、相手の資産状況を正確に把握しないまま離婚した結果、本来受け取れたはずの財産や年金を逃して後悔することもあります。特に専業主婦(夫)だった場合、将来の生活設計に大きく影響します。

    3. 親権・面会交流に関する後悔

    離婚時には「相手には親権を渡したくない」という強い感情があっても、実際に親権を持って育てていく責任や負担が大きいことに離婚後に気づき、悩むケースもあります。また、感情的に面会交流を拒否する取り決めをした結果、子どもが親に会えず傷つくことになり、後悔する場合もあります。

    4. 養育費の取り決めが曖昧だった

    養育費について口約束だけで離婚した結果、相手が支払いをしなくなった際に法的な対応が難しくなり、経済的に困窮するケースも見受けられます。離婚後の生活設計に直結する問題であり、きちんと文書化しておかなかったことを後悔する人は少なくありません。

    5. 子どもへの影響を十分に考えなかった

    不貞行為に対する怒りで頭がいっぱいになり、子どもの気持ちや生活環境の変化に十分配慮しないまま離婚してしまうと、子どもが精神的に不安定になったり、後になって親子関係にひびが入ることもあります。離婚後、子どもに「離婚しなければよかった」と言われて深く後悔する親もいます。

    6. 感情優先で話し合いをせずに決断した

    離婚に至るまでの話し合いを避け、感情的なまま一方的に離婚を突き進めると、後から不明確な点や取り決め漏れが判明し、トラブルになることがあります。特に不貞行為の加害者側であっても、冷静に協議しないまま離婚した結果、不利な条件を受け入れてしまったと後悔するケースがあります。
    離婚は人生における大きな転機です。特に不貞行為が関係する場合は強い怒りや悲しみが伴いますが、冷静に情報を整理し、法律的・経済的・心理的な側面をしっかりと検討したうえで判断することが、後悔を減らすためには不可欠です。弁護士や専門家のサポートを受けながら進めることをおすすめします。

    弁護士に相談するメリット

    不貞行為による離婚を弁護士に相談することで、感情的な状況でも冷静かつ法的に適切な対応が可能になります。弁護士に相談するメリットを5つ挙げ、それぞれ解説します。

    1. 法的根拠に基づいた慰謝料請求ができる

    慰謝料を受け取るためには、法律上有効な証拠を収集し、請求していくことが重要です。弁護士に相談すれば、どのような証拠が必要か、どのように取得すべきかを具体的にアドバイスしてもらえます。また、慰謝料の相場や請求時期、交渉の進め方も法的観点から適切に対応してもらえるため、不利益を被るリスクを避けられます。相手方との直接交渉を避けたい場合も、代理人として弁護士が対応してくれるため、精神的な負担も大幅に軽減されます。

    2. 財産分与の適正な把握と交渉ができる

    離婚における財産分与では、共有財産と特有財産の区別、相手の資産内容の調査、適正な分与割合の判断が必要です。弁護士に相談すれば、隠された財産がないか調査し、公平な財産分与を主張するための法的なサポートを受けられます。また、相手が不利な条件を押しつけてきた場合でも、交渉力のある弁護士が法的根拠に基づいて対応することで、自分にとって不利にならないよう防ぐことができます。離婚後の生活に直結する大切なお金の話を、安心して任せられる点は大きなメリットです。

    3. 親権・監護権に関する判断と主張ができる

    不貞行為の有無よりも、子どもの利益が最優先される親権や監護権の問題は、感情的な判断ではなく冷静な視点が必要です。弁護士に相談すれば、過去の養育実績や生活環境、収入状況などを踏まえたうえで、自身が親権者としてふさわしいと主張するための資料作成や証拠の整理を手伝ってもらえます。調停や裁判に発展した場合でも、法律の専門家が代理人として出席し、子どもの将来のために適切な主張を行えることが大きな安心材料になります。

    4. 養育費や婚姻費用の取り決めを確実にできる

    養育費や婚姻費用の取り決めを口頭で済ませてしまうと、後々の支払いトラブルや不履行に悩まされることが多くあります。弁護士に相談すれば、裁判所の算定表に基づく適正な金額の算出や、将来の生活変化に応じた見直し条項の設定も含めて、法的効力のある合意書や公正証書を作成する支援をしてくれます。また、支払いが滞った際には強制執行の手続きもスムーズに行えるよう準備してくれるため、経済的な不安を軽減できます。

    5. 精神的な負担の軽減と冷静な判断ができる

    不貞行為による離婚は強い怒りや悲しみを伴い、自分一人では冷静な判断が難しい場面が多くあります。弁護士は法律的な視点だけでなく、第三者として客観的に状況を整理し、依頼者の立場を守りながら的確な助言を行ってくれます。特に相手方との交渉や調停・裁判など精神的に負担の大きい局面では、弁護士の存在が大きな支えとなります。安心して手続きを任せることで、自身や子どもの将来に向けた前向きな行動が取りやすくなります。

    不貞行為による離婚に関するよくある質問

    Q1. 不貞行為の証拠がなくても慰謝料は請求できますか?

    請求自体は可能です。しかし、証拠がない場合、相手が不貞行為を否定すれば請求が認められない可能性が高くなります。ラブホテルの利用記録、親密なメッセージ、写真などの客観的証拠を集めておくことが重要です。必要に応じて探偵の利用も検討しましょう。

    Q2. 不貞行為をされた側でも親権を取れないことはありますか?

    親権は、不貞行為の有無ではなく、子どもの利益や生活環境、育児能力などを総合的に考慮して決まります。不貞をされたからといって自動的に親権が取れるわけではなく、子どもにとって最も安定した環境を提供できるかが重視されます。ですので、不貞行為をされた側でも親権が取れないこともあります。

    Q3. 不貞された場合、子どもを連れて勝手に別居を開始してもいいですか?

    避けましょう。配偶者の同意なく子どもを勝手に連れ出して別居すると、「子の連れ去り・引渡し」といった問題に発展してしまいます。この問題は、親権にも影響を与えます。ですので、配偶者に不貞行為があり、それによって離婚を検討することになったとしても、感情的にならずに冷静に対応するようにしましょう。

    まとめ

    いかがでしょうか。
    不貞行為といった問題は、慰謝料の問題だけでなく離婚の問題にも発展する可能性があります。たしかに、大きな枠組みで捉えると同じ問題にみえます。しかし、当事者が異なる以上、それぞれの考え方、悩んでいる点、今後どうしていきたいか等に違いが生じます。

    あなたが抱えるお悩みに対して適切なアドバイスを行い、適切な解決を導くためには、直接お話を伺う必要があります。
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    中川 浩秀
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