痴漢で後日逮捕されるケースはある?現行犯以外の場合や流れについて解説
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記事目次
痴漢は後日逮捕されることもある?逮捕のケースとは
痴漢で後日逮捕される可能性は高い
痴漢といえば、その場で被害者や目撃者に取り押さえられたりするといった、現行犯逮捕のイメージが強いかもしれません。
しかし、実際には、被害者による被害届の提出や、防犯カメラ映像の調査等を通じて発覚するケースも多く、捜査の結果、後日になって逮捕されるケースも多いです。
逮捕の要件は、大きく、「嫌疑の相当性」と「逮捕の必要性」の2つに分けられます。
捜査の結果、痴漢行為をしたことが判明し嫌疑が生じた場合において、「罪証隠滅のおそれ」、または「逃亡のおそれ」が認められれば、現行犯でなくても後日逮捕される可能性があります。
痴漢は在宅事件になるケースも
以上のように、逮捕のためには、嫌疑の相当性だけでなく、罪証隠滅や逃亡のおそれといった「逮捕の必要性」も認められることが必要です。
証拠隠滅のおそれも逃亡のおそれもないと判断される場合には、身柄拘束の方法によらず、都度警察署等に赴いて取調べを受ける、いわゆる在宅事件として進められる場合もあります。
在宅事件の場合、警察や検察との間で日程調整を行い、予定された日時に警察署や検察庁に行き、取調べを受けることになります。
取調べの回数や一回当たりの時間は、事件内容によってもまちまちです。
痴漢で逮捕されるケース
痴漢で逮捕される場合、痴漢行為を行ったその場で逮捕されるケースもあれば、後日、捜査の結果、被疑者が特定されて逮捕されるケースもあります。
ここでは、それぞれのケースの特徴を紹介します。
1.現行犯逮捕
現に痴漢行為を行い、または行って間がない場合には、現行犯人として逮捕される場合があります。
この場合が、現行犯逮捕と呼ばれる類型です。
現行犯逮捕ができるケースでは、今まさに犯行を行っていたことを現認していることが求められるため、犯人性が明白です。
そのため、例外的に、裁判所の審査の結果発付される逮捕状がなくても身体拘束をすることが可能です。
また、現行犯逮捕は、私人逮捕が可能である点でも特徴的です。
そのため、現場に居合わせた目撃者が痴漢行為を行った人物を取り押さえ、その後すみやかに身柄を警察に引き渡す、といったこともあり得ます。
2.後日逮捕
後日逮捕の場合は、捜査機関の請求を受けて裁判所が発付する逮捕状に基づき、被疑者の身柄を拘束することになります。
法令上は、「通常逮捕」と呼ばれる、逮捕の原則型です。
被害者による被害申告や目撃証言、防犯カメラの映像分析といった後日の捜査を通じて、被疑者を特定して逮捕する流れとなります。
後日逮捕される場合、逮捕までの期間はケースによって異なります。
痴漢行為から数日後に逮捕されたり、1年程度経ってから逮捕されたりする場合もあり、その間は安心できない日々が続くことになるでしょう。
痴漢で後日逮捕された際の犯罪類型とは?
痴漢で後日逮捕される場合、犯罪類型と行為の態様次第で、問われる罪は様々に考えられます。
痴漢行為に伴って、あるいは先後してその姿態を撮影している場合には、盗撮(性的姿態等撮影罪)に当たるとして処罰される可能性があります。
また、痴漢行為をした相手方に自分の体液を付着させる等して汚損した場合には、その物の効用を失わせたとして、器物損壊罪に問われるおそれもあります。
被害者の利用する電車等を探したりして、被害者を執拗に付けねらった場合には、ストーカー規制法違反の可能性も生じます。
このように、痴漢行為は様々な刑事法規に抵触する可能性がある行為です。
その中でも、特に類型として多く見られるのが、「迷惑防止条例違反」に問われるケースと、「強制わいせつ罪」に問われるケースです。
ここでは、その2つの類型について、より詳しく解説します。
痴漢で後日逮捕されるときは“迷惑防止条例違反”が多い
迷惑防止条例は、各都道府県がそれぞれに定める内容となります。
ただ、刑罰の細かな内容こそ異なるものの、概ねその内容は一致しているといってよいです。
ここでは、東京都の迷惑防止条例を中心に、内容を紹介していきます。
東京都の迷惑防止条例にあたる、『公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例』では、「公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れ」て、人を著しく羞恥させ、または人に不安を覚えさせる行為を禁じるとともに(第5条第1項第1号)、これに違反した者を、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金に処する、と定めています(第8条第1項第2号)。
具体的に、迷惑防止条例に違反する痴漢行為としては、以下が考えられます。
- 電車内や駅のホーム等で、被害者の衣服の上から胸・尻・下着・太もも等を触る
- 満員電車内で、被害者に過度に密着して下半身を押し付ける
- 公共の場所で、被害者の衣服のボタンや下着を外す
悪質な痴漢行為の場合は後日“強制わいせつ罪”で逮捕されることも
しかし、迷惑防止条例違反として処罰される程度を超えて、より悪質であると判断される場合には、強制わいせつ罪として処罰される可能性があります。
強制わいせつ罪とは、13歳以上の男女に対してその反抗を困難にするような暴行もしくは脅迫を用いて、または13歳未満の男女に対して、わいせつな行為をした場合に成立する罪です。
これに該当すると、6か月以上10年以下の懲役に処せられるものと定められています。
具体的に、強制わいせつ罪に該当する痴漢行為としては、以下があり得ます。
- 衣服や下着の中に手を入れて、直接に被害者の乳房・陰部等に触れる
- 衣服を無理に脱がせる
- 意思に反して無理やりキスをしたり、身体等を舐めたりする
これ以外にも、たとえば衣服の上から被害者の身体に触れる場合であっても、長時間にわたって執拗に撫でまわすような悪質なケースについても、強制わいせつ罪で処罰される可能性があります。
痴漢で後日逮捕された場合の刑事手続
捜査機関からの連絡・接触
被害者からの被害届提出等をきっかけに、警察において捜査が開始されます。
その結果、被疑者が特定された場合には、何らかの方法によって、警察から連絡が来たり、接触をはかられたりすることがあります。
この時、すでに捜査機関において被疑者を通常逮捕できるだけの、嫌疑の相当性と逮捕の必要性を裏付けられると判断した場合には、事前に逮捕状を取得したうえで、身柄拘束を行うべく居所等を訪問してくる可能性もあるので、注意が必要です。
また、通常逮捕が可能な場合でも、まずは任意同行を求めるというケースもあります。
この時点でまだ通常逮捕に足りるとはいえないと判断した場合には、日程調整のうえで警察署に来てもらうように、との要請がされます。
これについて拒否すると、「逃亡のおそれがある」として逮捕の必要性が認められ、通常逮捕されてしまう可能性がありますので、これには応じておくのが賢明でしょう。
後日逮捕としての通常逮捕後
通常逮捕がされた後は、警察官による取調べを受けた後で、逮捕時から48時間以内に、事件が検察官に送致されます。
この段階での取調べでは、まずは、被疑者本人の身上や経歴に関する聴取が行われることが多いです。
これに加えて、事実関係の概要を聞き取っていく流れになるのが、一般的といえます。
検察官送致後の流れ
事件が検察官に送致された後は、主に検察官からの取調べを受けることになります。
ここでは、警察官からの取調べで尋ねられた内容について、より深掘りして、勾留の必要性を判断するために必要な判断材料を確認されることが多いでしょう。
勾留請求後の流れ
その後、引き続き身体拘束の必要があると検察官が判断した場合には、勾留請求がされます。
裁判所の判断の結果、勾留の必要性があると認められた場合、10日間の身体拘束が行われます。
この期間中に、検察官が、被疑者を起訴すべきかどうかを判断することになります。
この10日間だけでは終局処分の可否判断に時間が足りない場合には、最大で10日間、勾留機関がさらに延長される場合もあります。
起訴後
最終的に検察官が、被疑者について起訴すべきか、釈放すべきかの判断をします。
釈放される場合としては、そもそも嫌疑や証拠が不十分である、という理由も考えられますが、諸般の事情を考慮して、起訴猶予がされ、裁判にならないこともあります。
しかし、嫌疑や証拠が十分認められ、なおかつ刑事判決を求めていくことが適切だと判断されれば、公訴提起され刑事裁判に進みます。
刑事裁判の公判期日は、起訴からおよそ1か月~2か月後に指定されることが多いです。
この時点で身柄拘束されていた場合、起訴後の保釈請求によって身柄解放されるケースは多いですが、なお逃亡のおそれが認められる場合には、引き続き身柄拘束が続くこともあります。
痴漢で後日逮捕された際の日常生活への影響
痴漢行為を理由に後日逮捕されてしまうと、日常生活において様々なデメリットが発生します。
ここでは、考えられるデメリットの代表例を具体的に紹介します。
学校や職場に発覚してしまう
すでにご説明したように、痴漢で後日逮捕されると、最大23日間は、身体拘束を受け、取調べを受けなければなりません。
この間、被疑者が外部と連絡を取ることは、基本的に制限されます。
そのため、学校や職場に、自分で欠席や欠勤を伝えることはできなくなります。
このように相当程度長期にわたって連絡がつかない状況が続くと、当然、学校や職場には、何らかのトラブルに遭ったのではと心配をかけることになってしまいます。
また、何らかの理由をこじつけるにしても、期間が長引くと、不自然さは拭えません。
このような状況が続けば、捜査機関によって身柄拘束を受けているために欠席・欠勤が続いているのだと発覚してしまうのは、時間の問題といえるでしょう。
実名報道がされると社会的信用が損なわれる
こうして学校や職場に発覚してしまうと、場合によっては停学・退学処分を受けてしまったり、会社を懲戒解雇されたりしてしまう危険があります。
加えて、痴漢は社会的にも関心を集めやすい事件といえるため、報道機関によって実名報道がされる場合も多いです。
この報道を通じて学校や職場に発覚し、学校や職場の社会的評価を貶めたとして、処分を受けるおそれがあります。
また、近年はSNSの発達もあって、目撃者が痴漢や逃走している様子などを動画や写真に撮り、それをSNS・インターネット上で発信してしまうケースもあります。
このようにして、ひとたび実名報道や映像がインターネット情報として発信されてしまうと、長期間にわたりその内容が残されてしまいます。
そうなると、社会的信用が失われる状態が、長く続くことになります。
今後の就職・転職にとって大きな障害となる
痴漢行為が原因となって前科がついてしまうと、その後の生活再建にも障害となるおそれがあります。
その典型的な場面としては、就職・転職の場面です。
まず、前科がついてしまうと、就職活動における履歴書で、前科があることを賞罰欄に記入しなければならなくなります。
仮に記載せずに就職・転職できたとしても、前科を隠していたことが入社後に発覚してしまうと、経歴詐称に当たるとして、最悪の場合、懲戒処分の対象となる危険もあります。
また、前科のあることだけで、就職できない職種も存在します。
士業や警備員、金融業がその代表例ですが、これらにおいては、他人の財産を監督したり保護したりすることが業務として求められるため、就業制限が定められています。
交際相手との結婚に妨げになるほか、婚姻関係にあるパートナーとの離婚等を求められる可能性がある
痴漢行為を含め、何らかの犯罪行為を行って前科がついている場合、それに対する社会的なまなざしは、なお厳しいものといわざるを得ないでしょう。
特に痴漢行為のような性犯罪の類型においては、現在交際相手や結婚相手がいる場合に、その相手に与える衝撃も大きいものといえます。
場合によっては、そのような前科のあること自体が、交際相手と結婚するにあたって、忌避したいと思ってしまう理由になったり、周囲の関係者たちから反対される理由になったりする可能性があります。
現在すでに婚姻関係にある場合であっても、前科を理由に社会的に白眼視されたり、家庭内の関係にも悪影響を生じたりして、離婚や関係解消に至る可能性もあります。
痴漢の疑いや後日逮捕が心配な場合は弁護士に相談しましょう
痴漢行為を理由に後日逮捕される可能性が心配である場合には、なるべく早く弁護士に相談されるのが賢明です。
弁護士に相談するメリットとしては、主に以下の各点が挙げられます。
被害者との示談交渉を進めることができる
痴漢行為による逮捕後の長期間の身体拘束や刑事処分を避ける最大の防御方法として、被害者との示談交渉が挙げられます。
被害者との間で示談をすることによって、被害者が刑事処罰を望んでいないことを明確に示すことができますし、同時に民事上の慰謝料についても解決することができるためです。
とはいえ、自身で被害者に示談交渉をするとなると、そもそも痴漢のような性犯罪において、被害者としても恐怖や嫌悪感を抱くのが通常であり、直接の交渉に応じることは考えにくいです。
しかし、弁護士に依頼すれば、弁護士が代理人として、捜査機関を通じて被害者の連絡先を確認し、示談交渉を進めることが可能です。
第三者である弁護士が間に入ることで、被害者としても冷静に話し合える可能性が高まるでしょう。
刑事弁護に精通した弁護士ならば、示談交渉を円滑に進めるノウハウにも長けているため、有効に示談交渉を進めていくことが期待できます。
自首を検討できる
痴漢行為がまだ捜査機関に発覚していない場合、自首をすれば、刑の任意的減軽事由となる可能性があります(刑法第42条)。
自首とは、捜査機関への発覚前に犯人がみずから自己の犯罪事実を捜査機関に申告し、その処分に服する意思表示と定義されます。
弁護士に相談すれば、事件が自首すべきものかどうか、そもそも自首に当たるものかを判断することが可能です。
また、自首をする場合にも、刑の任意的減軽を確保するために、自首のために警察署に同行してくれたり、自首したことを証拠化する書面を準備したり、具体的なサポートも期待できます。
また、刑事事件や痴漢事件の対応に精通した弁護士であれば、事件当時の状況を聴取して、捜査の進捗状況や被疑者特定の可能性についても、大まかな当たりをつけることも可能な場合があります。
より軽い刑事処分を狙うことができる
仮に痴漢行為を理由に後日逮捕され、刑事裁判にかけられることとなっても、弁護士に相談することで、少しでも軽い刑事処分を目指していくことが可能です。
具体的には、先ほど述べた示談を被害者と早期に行って、身柄拘束の回避、不起訴処分の獲得、実刑の回避といった結果を期待できます。
また、捜査機関による取調べについても、対応方法や供述の際の注意点を教えてくれるため、不利な供述調書を作られてしまうことも回避できます。
さらに、そもそも痴漢冤罪に当たるような場合には、その事実関係を裏付けるのに必要な証拠を収集することもできますし、冤罪ではない場合であっても、有利な情状証拠を集めて主張していくこともでき、依頼者の利益を最大化するための法的な尽力を期待できます。
接見を通じて精神的なサポートも
逮捕・勾留された場合、被疑者は身柄を拘束されるため、親族や友人で会っても自由には面会することができません。
しかし、弁護士には接見交通権があるため、基本的に時間を問わず、接見をすることが可能です。
接見を通じて、捜査の進捗状況を確認したり、それを踏まえて対応方法をアドバイスしたりするだけでなく、励ますことで精神的にサポートをしていくこともできるでしょう。
再犯防止のために適切な医療機関等も紹介してくれる
一般に、痴漢をはじめとする性犯罪は、再犯率が高いといわれています。
再犯に及んでしまった場合、初犯の場合よりも一層重い刑事処罰を受ける可能性も高いです。
このため、裁判所としても、被疑者・被告人が再犯をしないかという観点からも判断をすることになります。
そこで、性犯罪における弁護活動としては、現在立件されている事件についての対応だけでなく、今後再犯をしないための対策もしていかなければなりません。
具体的には、依存症の疑いがある場合には専門的な医療機関等でカウンセリングを行う必要がありますし、生活の立て直しために監督者を選任することも考えられます。
性犯罪弁護につき専門性の高い弁護士であれば、性依存症の専門機関や社会復帰支援のNPO法人とも繋がりのあることが期待できます。
このような紹介を受けてサポートしてもらうことも肝要です。
まとめ
後日逮捕を回避し、少しでも軽い刑事処分を目指していくためには、なるべく早期に弁護士に相談することが重要です。
東京スタートアップ法律事務所には、性犯罪弁護をはじめ様々な事件類型に経験のある弁護士が揃っていますので、お困りの際はぜひご相談下さい。
- 得意分野
- 一般民事、家事事件(離婚等)、企業法務
- プロフィール
- 大阪府出身
京都大学法学部 卒業
同大学法科大学院 修了