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更新日: 弁護士 新妻 俊稀

強姦罪(ごうかんざい)とは?改正による変更点や強姦に該当するケースを徹底解説

強姦罪(ごうかんざい)とは?改正による変更点や強姦に該当するケースを徹底解説
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強姦罪は、性犯罪の厳罰化の流れの中、近年で数回の改正が行われています。

ここでは、強姦罪がどのように変わったのか、そして、強姦罪に該当するケース等について解説します。

強姦罪とは?

平成29年までは、「強姦罪」という犯罪が刑法に定められていました。

しかし、近年の性犯罪に対する厳罰化により、平成29年には「強制性交等罪」に改正され、その後令和5年の法改正で現行の「不同意性交等罪」と改正されました。

かつての強姦罪は、姦淫(性交)のみが対象となっていましたが、強制性交等罪に変更されたことにより、性交のほか、肛門性交や口腔性交も処罰の対象となり、罪の主体及び客体ともに男女とも該当することになりました。

また、従来の強姦罪は親告罪として、被害者の名誉やプライバシーに配慮して、加害者を起訴するためには被害者等からの告訴が必要とされていましたが、法改正により、非親告罪として告訴がなくとも起訴できることとなりました。

法定刑に関しても、下限が3年から5年に引き上げられました。

これにより、酌量減刑されない限りは、原則として執行猶予がつかないことになりました。

このように、強姦罪は、年々厳罰化の傾向にあるといえます。

強制性交等罪とは

強制性交等罪について、改正前刑法177条は、「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。」と規定していました。

「暴行又は脅迫」とは、判例・通説によれば、反抗を著しく困難にする程度のもので足りるとされており、強盗罪のように犯行を抑圧する程度までは要しないものとされています。

また、「肛門性交」や「口腔性交」とは、陰茎を肛門や口腔内に挿入する行為を意味し、従来は強制わいせつ罪の対象となっていたものが、厳罰化により強制性交等罪の対象となりました。

不同意性交罪とは

令和5年の法改正により、強制性交等罪が不同意性交等罪に変更されました。

不同意性交等罪は、被害者が性的行為に「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」または被害者を「わいせつな行為ではない」と誤信させたり、人違いをさせたりして性交等を行った場合に成立します。

そして、不同意性交等罪が成立するためには、次の行為を原因として、被害者が同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にされることは必要です。

  • 暴行または脅迫
  • 心身の障害
  • アルコールまたは薬物の影響
  • 睡眠その他の意識不明瞭
  • 同意しない意思を形成、表明、全うする暇の不存在(不意打ちなど)
  • 予想と異なる事態との直面に起因する恐怖または驚愕
  • 虐待に起因する心理的反応
  • 経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮(上司・部下、教師・生徒等の関係に基づく影響力による不利益が生じるのではないかと不安を感じること)

また、「性交等」についても、令和5年改正前は、「陰茎」を膣、肛門、口へ挿入することを意味していましたが、陰茎以外の身体の一部もしくは物を挿入する行為も「性交等」に含まれることになりました。

加えて、夫婦間であっても不同意性交等罪の対象となることが条文上明記されるにいたりました。

強姦罪の改正による変更点

このように、強姦罪は近年の性犯罪の厳罰化に伴う法改正が行われてきましたが、次では、性的行為年齢・罰則・告訴の要否について具体的にどのように変更されたかについて解説します。

性的行為年齢の引き上げについて

令和5年改正前の刑法では、被害者が13歳未満の場合に、被害者の同意があっても処罰の対象となっていました。

しかし、改正後の不同意性交等罪では、被害者の同意年齢が以下のように改正されるに至りました。

  1. 被害者が16歳未満の場合
    改正により、性交等同意年齢が16歳に引き上げられました。
  2. 被害者が13歳以上16歳未満の場合
    被害者の年齢が13歳以上16歳未満であれば、加害者と被害者の年齢差によって成立要件が異なることになります。
    加害者と被害者の年齢差が5歳以上であれば、たとえ性交等についての被害者の同意があったとしても、不同意性交等罪が成立することとなります。
  3. 被害者が13歳未満の場合
    従来通り、被害者が13歳未満であれば、たとえ被害者の同意があったとしても、性交等を行えば不同意性交等罪が成立することとなります。

罰則の変更点

平成29年改正前の強姦罪では、法定刑が3年以上20年以下の有期懲役とされていました。

しかし、平成29年に強制性交等罪に変更されたことにより、法定刑の下限は5年に引き上げられることとなりました。

また、令和5年に不同意性交等罪に改正された際に、5年以上の「有期懲役」から5年以上の「有期拘禁刑」へと変更されました。

執行猶予を得られるのは、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金の言渡しを受けた」者に限られます(刑法25条)。

そのため、平成29年改正前の刑法では、執行猶予を付すことも可能でした。

しかし、平成29年改正によって、法定刑の下限が5年以上の有期懲役に変更されたため、酌量減刑されなければ原則として執行猶予を付すことはできないことになりました。

また、不同意性交等罪の刑罰は「拘禁刑」に変更されています。

これまでは自由刑の種類として刑務作業が義務付けられる「懲役」と刑務作業が義務ではない「禁固」が分かれていましたが、これらの刑罰を統合して「拘禁刑」に一本化されることになりました。

「拘禁刑」では、刑務作業は義務ではなく、受刑者の改善更生を図るために必要な場合に、刑務作業を行わせることができることになりました。

親告罪から”非親告罪”に

親告罪とは、被害者等からの告訴がなければ起訴することができない罪をいいます。

平成29年改正前は、強姦罪は親告罪となっていました。

しかし、改正によって非親告罪となり、被害者等からの告訴なしでも起訴することができるようになりました。

強姦罪が親告罪とされていた理由は、被害者のプライバシーや名誉を守るためにありましたが、非親告罪となったことで捜査機関としては被害者の告訴が無くとも独自に捜査を進めることができるようになったため、被害者の二次被害の発生などが懸念されています。

強姦罪に該当するケース・該当しないケースの例

それでは、具体的にどのような場合が強姦罪に該当するのでしょうか。

次では、想定される具体例について解説します。

該当するケース①

例:学生時代の仲間との同窓会があり、終電間際に泥酔した女性を介抱していたが、女性は自分で歩くことができず、そのまま自分の自宅に連れて行き、性交に及んだが女性に拒絶されることはなかった。

不同意性交等罪は、アルコールの影響下にあるために「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」性交等をした場合に成立します。

上記例の被害者は飲酒をして泥酔していたとのことで、性交に及ぶことについて理性にしたがって正常な判断ができる状態ではなかった可能性があります。

そのような状況であれば、「アルコール若しくは薬物を摂取させること又はその影響があること」(刑法176条1項3号)に該当し、女性がアルコールの影響で同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難であった可能性があり、そのような状態で加害者が性交に及んだ場合には、たとえ被害者が明確に拒絶しなかったとしても、不同意性交等罪が成立します。

該当するケース②

例:妻とのセックスレス期間が長くなり、自分からの求めに一切応じてくれないので、妻に睡眠薬を飲ませ、熟睡させたうえで性交した。

性交渉は、夫婦間の婚姻関係を円満に保つための重要な要素ですが、あくまでお互いの合意があることが前提となります。

一般的には夫婦間では性交渉に応じる義務があるとされることがありますが、ただちに法的な義務があるとはいえません。

また、不同意性交等罪は、「婚姻関係の有無にかかわらず同罪を適用する」と定められており、相手が同意しない状態で性交に及べば、不同意性交等罪に該当する可能性があります。

そのため、上記の例でも、不同意性交等罪に該当する可能性があるといえます。

該当しないケース①

例:直属の上司から性交渉を求められ、一度は断ったものの、何度も繰り返し性交渉を求められた。

もともと昇進の見込は乏しかったが、上司の誘いに応じれば昇進させてもらえるのではないかと期待して上司の誘いを受け、性交をした。

不同意性交等罪は、経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させることまたはそれを憂慮していることにより、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」性交等をした場合に成立します。

上記の例では、当事者は上司と部下の関係にあり、上下関係に基づく相手方からの影響力があるといえます。

しかし、昇進の見込が乏しい中で、上司の誘いに応じることで昇進させてもらえるかもしれないという「利益」を期待しているにすぎないものといえます。

このように、「不利益を憂慮」するのではなく、あくまで「利益を期待」する場合には、上記の要件を満たさず、不同意性交等罪に該当しない可能性があります。

該当しないケース②

例:22歳の大学生の男性は、SNSを通じて知り合った女性と同意の上で性交した。女性からは、18歳で●●大学に通っていると聞いていた。しかし、その女性は実際には15歳だった。

16歳未満の相手との性交等は、性交等の合意があった場合でも不同意性交等罪が成立します。

もっとも、不同意性交等罪が成立する要件として、故意すなわち相手が16歳未満であることを知っていたことが必要になります。

そのため、16歳未満であると知らなかった場合には、故意がないものとして、不同意性交等罪が成立しません。

上記の例では、女性は自らを18歳の大学生と偽っており、男性は、相手女性が18歳以上であると信じており故意がないものとして、不同意性交等罪に該当しない可能性があります。

強姦罪における早期示談交渉のメリット

不同意性交等罪は非親告罪ですが、被害者との示談が成立しているかどうか非常に重要なポイントです。

そこで、強姦罪において早期に示談交渉を行うメリットについて解説します。

前科を回避できる

性犯罪における処分を決めるにあたっては、被害者の処罰感情が非常に重視されます。

そのため、被害者との示談が成立し、被害者が被害届を取り下げたり、加害者を許す意思を明確に示すことで、検察官が不起訴の判断を下す可能性が高くなります。

不起訴となれば、前科がつかないため、早期の示談交渉には大きなメリットがあるといえます。

執行猶予を獲得できる

不同意性交等罪の法定刑は、5年以上の拘禁刑となっており、原則としては執行猶予を付すことができません。

もっとも、反省の姿勢や被害感情の緩和を示す示談が成立することによって、量刑判断において有利な事情として考慮されることになり、情状酌量により刑期が短くなることで執行猶予付の判決が下される可能性が生じます。

早期釈放の可能性が高まる

不同意性交等罪で逮捕されてしまうと、逮捕から最長で23日間にわたって身体拘束されることが考えられます。

しかし、先ほど説明したように、不同意性交等罪は被害者の処罰感情が非常に重要となります。

そのため、被害者が加害者を許し、示談が早期に成立することで、身柄拘束の必要性に乏しいとして、釈放の可能性が生じることとなります。

強姦罪に関するQ&A

ここからは強姦罪について、よくある質問にお答えします。

Q.相手の女性が16歳未満だと知らなかった場合でも、不同意性交等罪は成立してしまうのでしょうか。

A.不同意性交等罪は、相手方が16歳未満であれば、原則として同意の上での性交であったかにかかわらず成立することになります。

もっとも、不同意性交等罪が成立するための要件として、故意が必要になりますが、相手方が16歳未満であることを知らなかった場合には、故意がないものとして犯罪が成立しない可能性があります。

Q.不同意性交等罪の時効は何年ですか?

A.不同意性交等罪の公訴時効は15年と定められています。

公訴時効は、犯罪が発生した時から進行し、時効期間が経過すると検察官は起訴することができなくなります。

なお、不同意性交等に伴い、被害者が死傷した場合には、不同意性交等致傷罪については20年、不同意性交等致死罪については30年が公訴時効となります。

Q.不同意性交等罪で逮捕されるのはどのようなときでしょうか。必ず逮捕されるのでしょうか。

A.被害者が被害届を捜査機関に提出したことを前提として、逮捕の要件が満たされている場合には、逮捕される可能性が生じます。

逮捕の要件が満たされているかどうかは、被害者及び加害者の供述内容、加害者が定職についているか、加害者に同居する家族がいるか等が考慮して、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがあるかによって判断されることになります。

そのため、必ず逮捕されるというわけではありません。

自分が逮捕されるかもしれないと不安に思われている方は、弁護士に相談すると良いでしょう。

Q.被害者が示談に応じてくれません。どうすれば良いのでしょうか。

A.不同意性交等罪の被害者は、大きな精神的苦痛を受けている方が多いため、示談に応じていただけない方も相応にいます。

示談に応じていただけるよう、真摯な謝罪を伝え続けることが重要です。

もっとも、最終的に示談に応じていただけない場合には、贖罪寄付を行い、捜査機関や裁判所に反省や謝罪の意思を示すことも考えられます。

まとめ

今回は、強姦罪について解説しました。

改正後の不同意性交等罪は、実行行為が暴行または脅迫のみとされていた改正前の強制性交等罪よりも、処罰範囲が拡大されていますので、自分が不同意性交等罪にあたる行為をしてしまったのか不安に思われる方もいると思います。

不同意性交等罪に該当する行為をしてしまった場合には、逮捕を回避したり、不起訴処分を獲得するために早期の弁護活動が非常に重要になります。

まずは、弁護士に相談してみましょう。

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執筆者 弁護士新妻 俊稀 千葉県弁護士会 登録番号65131
私は、弁護士として、法律上の問題解決に向けて丁寧に取り組むことはもちろんですが、まずはお客様のお話に真摯に耳を傾け、気持ちの面でもしっかりと寄り添い共に最良の解決を目指していきたいと思っています。そのためにも、法律知識の習得だけでなく、人間力を磨き、よりお客様が相談しやすい弁護士を目指して努力してまいります。
得意分野
不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件 、 遺産相続
プロフィール
福島県出身 慶應義塾大学法学部法律学科 卒業 民間企業勤務 弁護士登録 東京スタートアップ法律事務所入所

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