示談書とは?誰が書く?自分で作成する方法とそのメリットとデメリットを解説
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記事目次
刑事事件における示談とは、加害者と被害者が、裁判所を通さずに和解をすることをいいます。
示談交渉では、加害者から被害者に支払う損害賠償金や今後の禁止事項、守秘義務などを取り決めて双方が合意すれば示談が成立です。
口頭での示談も有効ではありますが、後のトラブルを回避するためには示談書を作成しておく必要があります。
そこで今回は刑事事件の加害者の方が示談書を作成する方法や、自分で示談書を作成するメリット・デメリットを解説します。
示談書とは
示談書とは当事者同士で合意した示談内容を、書面にしたものです。
示談書を取り交わしておくことで示談内容を双方が認識できるため、後のトラブル発生を回避することができます。
示談書には強制執行認諾文言付公正証書のような強制力はありません。
加害者が示談書に記載されている損害賠償金を支払わなかったからといって、すぐに財産の差押え等を行われることはないのです。
ただし、すぐに差し押さえられないからといって放置しておくと損害賠償請求訴訟を提起されるおそれがありますので、示談書に記載されている示談内容は遵守しましょう。
示談書は自分で作成できる?
示談書は公的な書類ではありませんので、弁護士などの資格を保有していない方でも作成可能です。
刑事事件で示談書を作成する場合は以下の項目を盛り込んでおきましょう。
事件の内容
刑事事件の当事者の氏名や事件が起きた日、場所なども書いておきましょう。
その事件を特定できるようにしておく必要があります。
損害賠償金について
加害者から被害者に支払う損害賠償金の金額や支払い方法、支払期日支払先などを記載しておきます。
清算条項
示談締結後は、加害者と被害者間に金銭の支払い義務が存在しないことを確認する条項です。
清算条項がなければ、示談金を支払った後に再度金銭を要求されるリスクがありますので、必ず盛り込んでおきましょう。
接触禁止条項や禁止条項
加害者は被害者に今後一切接触しないことを約束する条項です。
痴漢などの性犯罪の場合は「被害者が利用する路線を加害者は利用しない」などの禁止事項を取り決めておくこともあります。
宥恕(ゆうじょ)条項
宥恕条項とは、被害者が加害者を許すことを明文化した条項です。
「甲は、本件事件について、乙の犯行を許し、刑事事件を望まない」などと記載します。
またこれと同時に告訴の取消や被害届の取下げに関する項目も記載しておくとより安心です。
示談書にこれらの記載があることで、検察官が不起訴と判断する可能性が高まります。
守秘義務条項
事件について、お互いが第三者に口外しないことを約束する条項です。
被害者と加害者の氏名、住所
本人を特定できるように、加害者と被害者のフルネームと住所等をそれぞれが自筆します。
示談成立日
示談成立日も記載しておきましょう。
示談書のサンプル
刑事事件の示談書のサンプルも掲載しておきますので、作成の際の参考にしてください。
ただし、事件ごとに記載すべき項目が異なりますので、状況に合っているものに変更しておきましょう。
こちらは、痴漢をしてしまった方向けの示談書サンプルです。
示談書 |
---|
被害者甲田桃子を甲、被告人を乙坂次郎として、甲と乙は、令和2年2月1日に東京都渋谷区渋谷において発生した乙の甲に対する痴漢事件(以下「本件事件」という。)について、以下のとおり示談をした。 |
記 |
第1条(謝罪) |
乙は、甲に対して、本件事件を犯した事実を認め、自らの犯行を深く謝罪する。 |
第2条(示談金) |
1.乙は、甲に対して、本件事件の示談金として、金30万円の支払義務を負う。 2.乙は、前項記載の金30万円を、甲の指定する口座に振り込む方法により支払う。 3.振込期限は、令和2年2月29日とする。 |
第3条(清算条項) |
1.甲乙間には、本示談書に定めるほか何らの債権債務も存在しないことを確認する。 2.甲及び乙は、本件事件について、今後は裁判上・裁判外を問わず一切請求を行わない。 |
第4条(接触禁止条項) |
1.乙は、甲に対して、今後は一切接触しない。 2.乙は、偶然に甲を見かけた場合でも、速やかにその場を立ち去り、一切接触しない。 |
第5条(宥恕条項) |
甲は、本件事件について、乙の犯行を許し、乙に対する刑事処罰を望まない。 |
第6条(守秘義務条項) |
甲及び乙は、本件事件について、今後はお互いに一切口外しない。 本示談契約を証するため、本書を2通作成し、各自1通を所持する。 |
令和2年2月15日 |
(甲署名) |
住所 氏名㊞ |
(乙署名) |
住所 氏名 |
示談書を自分で作成するメリットとは
刑事事件の示談書を自分で作成するメリットは以下のようなメリットがあります。
費用がかからない
示談書を自分で作成する場合、費用はほぼかかりません。
パソコンなどで作成して印刷するだけです。
自宅にパソコンがなくてもスマートフォンで作成した文書をコンビニエンスストアなどで印刷することができます。
費用の負担はほとんどありません。
短時間で作成できる
インターネット上の示談書のひな形を使う場合、事実の部分や示談内容を書き換えるだけですので数十分から1時間もあれば示談書が完成します。
弁護士などの専門家に依頼するよりも短時間で作成できるでしょう。
示談書を自分で作成するデメリット
示談書を自分で作成することにはメリットもありますが、それ以上にデメリットも存在します。
示談書を自分で作成する方はこれから説明するデメリットを念頭に置き、リスクがあることを理解しておきましょう。
オーダーメイドの示談書ではない
インターネットのひな形を利用して示談書を作成する場合、それはご自身が起こした事件の示談書ではないので、万全な示談書とは言えません。
「示談書 ひな形」で検索すると、離婚問題や交通事故などの示談書が数多くヒットします。
それらの示談書を刑事事件の示談に転用した場合、様々な問題が生じます。
できるだけご自身の事件に近い示談書を作成したければ、「傷害事件 示談書 ひな形」のように、事件名を明確にして検索しましょう。
ただしそれでもオーダーメイドの示談書とは言えませんので、できれば弁護士に相談することをお勧めします。
有効な示談書にならない可能性がある
刑事事件で被害者と示談をすることの最大のメリットが、「刑事処分の軽減が望める点」です。
しかし、ご自身で示談書を作成した場合、正しく文言が記載できず、刑事処分を軽減する効果が弱まるおそれがあります。
検察官が、起訴、不起訴を判断する前に示談が成立して、検察官に「宥恕条項」が盛り込まれた示談書を提出することができれば不起訴処分となる可能性が高まります。
しかし、宥恕条項がない場合は、その効果は弱くなってしまいます。
また、告訴状の取消や被害届の取下げなどに関する項目も忘れずに盛り込んでおかなければ、被害者が被害届の取下げや告訴状の取消しを行わないかもしれないというリスクもあります。
これらの条項を適切に示談書に盛り込みたい方は、弁護士に相談しておくと安心です。
示談内容が適切にならない可能性がある
ご自身で示談書を作成する場合、ひな形に記載された示談内容に準じた形で示談をしようと考えるはずです。
痴漢事件の場合、ひな形の示談書に「同一路線を使わないこと」などの文言が記載されていれば、それに準じた示談内容にしようとします。
しかし、ご自身が利用している最寄り駅が複数乗り入れしておらず、通勤で被害者と同一の路線を使わざるを得ないという状況ではその文言は現実的ではありません。
別の手段で被害者に納得してもらう方法を考える必要があります。
このように、示談書の作成の際には個別の状況を考慮しておかなければならないのです。
まとめ
刑事事件で被害者と示談内容に合意したら、示談書を作成しておかなければなりません。
最近ではインターネットに示談書のひな形が掲載されていますので、ご自身で作成することも不可能ではありません。
しかし、ひな形の示談書は、個別の状況に即したものではないため、示談を締結したことの効果が十分に発揮できなかったり、後日トラブルに発展したりといったデメリットもあります。
示談書を作成する場合は、刑事事件の取り扱い実績が豊富な弁護士に示談内容や示談書について助言を受けておきましょう。
自分で作成するよりも費用はかかりますが、将来のリスクは大幅に軽減することが可能です。
「ForClient」を理念として自らも多くの顧客の信頼を得ると共に、2018年の事務所開設以降、2023年までに全国12支店へと展開中。
- 得意分野
- ベンチャー・スタートアップ法務、一般民事・刑事事件
- プロフィール
- 京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設