不同意わいせつ罪で執行猶予がつく可能性は?裁判所の判断基準について解説

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記事目次
「酔っ払って相手の同意なく身体を触ってしまった」などの事例で、強制わいせつの疑いをかけられている方にとって、「刑務所で服役しなければならないかどうか」は大きな問題です。
日本の刑事裁判の有罪率は高く、刑事裁判が開かれれば高い確率で有罪判決が言い渡されます。
他方、執行猶予付き判決が言い渡されれば、刑務所に服役する必要はありません。
そこで今回は、強制わいせつで疑われている方が執行猶予付き判決を獲得するためにできることについて解説します。
不同意わいせつ罪で起訴された、執行猶予は取れる?
起訴されたあとの流れ
不同意わいせつ罪で起訴されると、刑事裁判に進みます。裁判では事実関係の審理が行われ、被告人の認否や証拠の取り調べを経て、判決が言い渡されます。判決では主に実刑か執行猶予付きかが争点となり、被害者との示談や反省の態度が量刑に影響を与えます。執行猶予が付けば、執行猶予の取り消しがなされない限り、刑務所には行かずに社会内で生活することができます。
懲役が3年以下でないと執行猶予はつかない
執行猶予が付くには、原則として言い渡される懲役(現在は法改正により拘禁刑)が3年以下であることが必要です。たとえ有罪判決でも、懲役3年以下かつ執行猶予にふさわしい事情(反省や示談など)があれば、一定期間刑の執行が猶予され、直ちに服役せずに社会内で生活することが可能となります。
情状で決まる
3年以下の拘禁刑であれば必ずしも執行猶予が付くわけではなく、執行猶予が付くかどうかは「情状」によって判断されます。以下に詳述する事情を総合的に考慮して、裁判所が更生の可能性があると判断すれば、執行猶予が付されることがあります。
情状とは
情状とは、被告人に対する刑の重さや執行猶予の有無を判断する際に考慮される事情全般を指します。大きく「犯情」と「一般情状」に分かれ、犯情には犯行の動機や態様、被害の程度などが含まれます。一方、一般情状には反省の態度、示談の有無、生活環境、前科の有無などがあり、裁判所はこれらを総合的に見て刑を決定します。情状が良好であれば、執行猶予が付される可能性もあります。
強制わいせつ罪で執行猶予をつけるには?
執行猶予がつくための主な条件は以下のとおりです。
・示談が成立し、被害者の宥恕(許し)を得ている
・前科がない、または軽微な前科しかない
・反省の態度が認められる
・犯行が悪質ではない(計画性が乏しい、短時間で終わった等)
・社会復帰の環境が整っている(家族の支援、就業状況など)
なかでも被害者との示談は極めて重要です。
被害者が処罰感情を示していないことが明らかになれば、不起訴や執行猶予の可能性が大きく高まるため、早期の示談交渉が鍵となります。
初犯者の場合の可能性
不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪)は、6月以上10年以下の拘禁刑が科される重大な犯罪ですが、初犯であれば執行猶予が付される可能性は十分にあります。裁判所は、前科の有無や反省の態度、被害者との示談、犯行態様、再犯リスク、社会復帰の見込みなどを総合的に考慮して執行猶予の可否を判断します。特に被害者との示談の成立は、執行猶予を得る上で極めて重要です。
初犯であれば、早期の示談等の適切な弁護活動によって情状が考慮され、執行猶予となることが多いと言えます。反対に、被害者の処罰感情が強く、反省の様子が見られない場合などは、初犯であっても実刑(拘禁刑)となることもあります。前科を避けるためには、早期に弁護士へ相談し、示談を含めた戦略的対応をとることが不可欠です。
示談が与える影響
不同意わいせつ罪において、示談の成立は執行猶予判決を得る上で非常に重要な要素です。被害者が加害者を許し、処罰を望まない旨を示すことで、裁判所は情状を酌むことができ、不起訴や執行猶予付き判決につながる可能性が大きく高まります。
示談金の相場はケースによりますが、50万円〜150万円程度が多く見られます。被害の程度、年齢、精神的苦痛の大きさなどで金額は上下します。
交渉のポイントは、弁護士を通じて冷静・誠実に対応することです。本人や家族が直接連絡をとると、脅迫と捉えられるおそれもあるため注意が必要です。
反省の態度と更生の意欲
裁判所が執行猶予を付すか否かを判断する際、「真摯な反省」が重要な情状として評価されます。具体的には、被害者への謝罪や示談の成立、反省文の提出に加え、性犯罪再発防止プログラムへの参加や専門のカウンセラーによる継続的な支援を受けていることなどが挙げられます。これらの取組みにより、再犯防止の意思と行動が具体的に示されるため、裁判所の心証に大きく影響を与える可能性があります。形式的な謝罪だけでなく、行動を伴った反省が重要です。
執行猶予が認められにくいケース
執行猶予が認められにくい悪質なケースの特徴は以下のとおりです。
・被害者が未成年
・計画的・反復的な犯行
・暴行・脅迫の程度が強い(凶器の有無、犯行の継続時間等)
・反省が見られない、被害者への謝罪なし
・示談が成立していない
特に未成年への犯行や計画性のある犯行は、再犯リスクが高いと判断され、実刑となる傾向が強いです。これらの事情が重なる場合、初犯でも執行猶予は極めて難しくなります。
裁判所の量刑判断基準
裁判所は不同意わいせつ罪の量刑を決める際、犯行の悪質性、被害者の年齢や被害程度、被告人の前科、反省の態度、示談の成否、再犯防止の見込みなどを総合的に評価します。量刑相場は懲役刑(拘禁刑)1〜3年程度が多いですが、示談成立や初犯であれば執行猶予も多く見られます。実際の裁判例では、情状が良ければ比較的軽微な判決となる場合もあります。
被害の程度と態様
不同意わいせつ罪の量刑は、被害の程度や犯行態様が大きく影響します。たとえば、短時間の軽微な接触で済んだ場合と、被害者が強く抵抗したにもかかわらず長時間にわたりわいせつ行為を続けた場合では、後者の方がはるかに重い刑が科される傾向があります。保育園に勤務する保育士が児童に対して陰部を触る等のわいせつな行為をした事件では、裁判所は、「被告人の立場」「被害者の年齢」「保護者の信頼」などを踏まえ、悪質性が高く実刑が相当としています。このように、犯行の態様が量刑決定における「悪質性」の判断基準となります。
被害者の年齢や関係性
被害者の年齢や加害者との関係性は不同意わいせつ罪の量刑に大きく影響します。特に未成年被害者の場合、悪質性が高いと判断され、重い刑罰が科されやすいです。16歳未満の被害者に対しては、暴行や脅迫がなくても処罰されるため、量刑はより重くなります。また、被害者と加害者の間に親子や教師、生徒などの信頼関係がある場合は、その信頼を裏切った悪質性が強調され、実刑判決の可能性が高まります。裁判所はこうした事情を考慮し、被害者保護の観点から厳しい判断を下す傾向があります。
犯行後の対応と示談
犯行後の謝罪や被害者対応は、不同意わいせつ罪の量刑に大きく影響します。誠実な謝罪や被害者の精神的負担軽減を図る対応は、裁判所から真摯な反省として評価され、執行猶予獲得の可能性を高めます。示談が成立すれば、被害者の処罰感情が和らぎ、不起訴や量刑軽減につながることが多いです。示談のタイミングは早期が望ましく、弁護士を通じた冷静かつ丁寧な交渉が重要です。本人が直接連絡を取ると誤解やトラブルを招く恐れがあるため、専門家のサポートを受けることが効果的です。
過去の判例にみる傾向
不同意わいせつ罪の量刑判断では、示談の有無、反省の程度、犯行の悪質性、被害者の属性や被害状況が重要な要素となります。判例の傾向を見ると、初犯であり、示談が成立していて、反省の姿勢が明確に示されている場合は執行猶予付き判決が出ることが多いといえます。さらに、家族の支援や更生プログラムへの参加など、再犯防止への取り組みも情状として評価されます。
一方で、被害者が未成年である場合や、犯行が計画的・執拗である場合、あるいは再犯である場合などは、たとえ初犯でも実刑判決が下される傾向があります。裁判所は、加害者の社会復帰の可能性とともに、被害者の受けた精神的影響や社会的影響を重く見て判断します。
このように、裁判所は事件ごとの事情を総合的に評価して量刑を決定しており、早期の対応と適切な弁護活動が判決の結果を大きく左右します。
不同意わいせつ罪の執行猶予確率
平成27年版『犯罪白書』によると、平成26年の強制わいせつ罪(現在の不同意わいせつ罪)の起訴事件における執行猶予率は約65%と高い水準にあります。これは示談成立や初犯者が多いためです。執行猶予率は犯罪の性質や情状により異なりますが、不同意わいせつ罪は比較的執行猶予が認められやすい傾向があります。
初犯の場合の確率
初犯の不同意わいせつ罪では、示談の成立や真摯な反省の態度が見られる場合、執行猶予が認められることが多いです。裁判所は量刑を判断する際、「情状酌量の余地」があるかを重視します。たとえば、被害者との示談が成立していること、謝罪の意思が明確であること、再犯防止のためのカウンセリングや更生プログラムに取り組んでいること、家族や職場の支援体制が整っていることなどが評価されます。これらの要素が揃っていれば、社会内での更生が可能と判断されやすくなります。
再犯の場合の可能性
再犯者が不同意わいせつ罪で執行猶予を獲得するのは非常に難しいのが現実です。裁判所は再犯のリスクを重視し、社会保護の観点から厳しい判断を下す傾向があります。ただし、前回の執行猶予から相当期間(通常5年以上)が経過し、再犯の間隔が長く、真摯に反省している場合は情状酌量が認められることもあります。しかし、多くの場合は実刑判決となるため、再犯防止や更生プログラムの受講が重要です。
執行猶予獲得の弁護戦略
執行猶予判決を獲得するためには、弁護士が早期に介入し、的確な戦略を立てることが重要です。まず、被害者との示談交渉を迅速に進め、処罰感情の緩和を図ります。また、被告人の反省態度や社会復帰の意欲を示すため、更生プログラムの参加状況やカウンセリングの記録を証拠として提出します。さらに、家族や職場の関係者を情状証人として呼び、被告人の人柄や支援環境を証言してもらうことで、裁判所の心証を良くします。これらを総合的に組み合わせ、裁判所に再犯防止の意志と社会復帰の可能性を強く訴えることが、執行猶予獲得の鍵となります。
執行猶予判決の実例分析
・松江地裁平成30年2月26日判決
被告人が勤務先の元同僚女性に対し、飲酒後に抱きつき胸を触るなどの不同意わいせつ行為を行った事件です。被告人は初犯で、被害者との示談が成立し、反省の態度が認められたことから、執行猶予付きの判決が言い渡されました。
・新潟地裁長岡支部令和6年4月30日判決
被告人が職場の部下である女性に対し、上司の立場を利用して複数回にわたり不同意わいせつ行為を行った事件です。犯行の悪質性は高いとされるものの、被害者への損害賠償や反省の態度、免職処分や家族の監督体制が評価され、執行猶予が付されました。
両判例に共通するのは、被害者との示談や賠償、被告人の反省の態度、社会的制裁の有無、更生を支える環境の存在が情状酌量の重要な要素として評価されている点です。これらが裁判所に「情状酌量の余地」を認めさせ、実刑を回避し執行猶予が付く決め手となっています。悪質な犯行内容でも、これらの要素が整えば社会内での更生の可能性があると判断されるため、弁護活動では示談交渉や更生支援の立証が不可欠です。
強制わいせつ罪で執行猶予を獲得したい方は弁護士に相談
不同意わいせつ罪で執行猶予を獲得するには、示談の成立や真摯な反省、適切な弁護が不可欠です。前科を避け、社会復帰を目指すためにも、早期に専門家へ相談し、最善の対応を取りましょう。まずは無料相談でお気軽にご連絡ください。
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- 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
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同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
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