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投稿日: 更新日: 代表弁護士 中川 浩秀

詐欺は未遂でも逮捕される?未遂の場合の処罰や逮捕要件を説明

詐欺は未遂でも逮捕される?未遂の場合の処罰や逮捕要件を説明
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詐欺は、未遂であっても逮捕されることもありますし、裁判になれば有罪判決が言い渡されることもあります。

300万円をだまし取ろうとしたという詐欺未遂事件では懲役2年4か月が言い渡されたという事例もありました。

そこで今回は、詐欺罪の成立要件や逮捕された場合の流れ、刑罰、逮捕された事例について解説します。

詐欺罪の定義や成立要件、刑罰

まずは詐欺罪が成立する要件や、刑罰を解説します。

詐欺罪の定義と成立要件

詐欺罪とは、刑法246条で以下のように規定されている犯罪です。

「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する」

簡単に言うと「人をだましてお金等の財産を奪うこと」が詐欺罪です。

これだけでは説明が足りませんので、「成立要件」を確認しておきましょう。

成立要件とは、その罪が成立するための条件のことです。

詐欺罪が成立するためには主に以下の3つの要件を満たしている必要があります。

欺罔行為(ぎもうこうい)

欺罔行為とは、相手をだまそうとする行為のことです。

「1日1分スマホを操作するだけで日給100万円稼げる方法があるよ」と、虚偽の情報を伝えることは欺罔行為といえます。

相手方の錯誤(さくご)

誤った情報によって相手が事実とは異なることを認識することです。

相手が虚偽の情報により「スマホを1日1分操作するだけで日給100万円稼げるんだ!」と思い込むことを「錯誤」といいます。

財物の処分

財物の処分とは、相手が自分の意思で財物を手放すことをいいます。

「1日で100万円稼ぐ方法を20万円で教えてあげる」と言われて、20万円支払うことが財物の処分です。

詐欺罪の刑罰

詐欺罪の刑罰は「10年以下の懲役」です。

詐欺罪は、法定刑が重く罰金刑がありません

詐欺が悪質だと判断されると、初犯であっても実刑判決が言い渡されることがあります。

詐欺未遂は状況によって刑罰が軽減されることも

詐欺罪は未遂であっても処罰される犯罪です。

未遂の場合の法定刑も「10年以下の懲役」となっていますが、未遂の場合は実際に財物を処分した場合よりも、刑罰が軽くなる可能性はあります。

刑法43条では、未遂罪について以下のように規定しています。

「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を軽減することができる。
ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を軽減し、又は免除する」

未遂罪は、罪を軽減することができると刑法43条に規定されています。

軽減されるのは、「単純未遂」「中止未遂」の2種類の未遂です。

単純未遂とは、「お金を欺しとろうと思ったが、相手が詐欺に気付いた」などのケースが想定されます。

中止未遂は、「お金をだまし取ろうとしたけど、良心が咎めて中止した」など、自分の意思で犯行を辞めることです。

単純未遂の場合は、罪を軽減するかどうかは裁判官の判断に委ねられます。

しかし、中止未遂の場合は必ず罪が軽減されます

詐欺未遂で逮捕された場合は、どうして詐欺を完遂できなかったかが、刑罰に大きな影響を与えます

早い段階で弁護士に連絡をして接見してもらい、本人に詳しい話をきいてもらいましょう。

詐欺未遂で逮捕された事例とは?

実際に詐欺未遂で逮捕された事例や、有罪判決が言い渡された事例を確認してみましょう。

宝くじを偽造して現行犯逮捕

偽造した宝くじを銀行に持って行き、当選金7億円をだましとろうとしたとして、無職の男性が詐欺未遂の疑いで現行犯逮捕されました。

偽のJCB券でゲーム機を購入しようとして逮捕

JCBの偽のギフトカードで、ゲーム機を購入しようとした男女3人が詐欺未遂の疑いで逮捕されました。

彼らの拠点にはゲーム機50点と、偽造カード約300万枚が発見されたとのこと。

店員が、カードの手触りを不審に思い、警察に通報して逮捕にいたりました。

医療費の還付金があるとしてキャッシュカードをだまし取ろうして逮捕

20代の男性が70代の女性に市役所職員を名乗って電話をし、「医療費の還付金」があるとしてキャッシュカードをだまし取ろうとしました。

同日に特殊詐欺とみられる電話があったことから、警戒にあたっていた警察署員が駅で不審な男性2人を発見し、事情を聞いたところ上記の犯行が発覚したとのことです。

男性2人は詐欺未遂の疑いで逮捕されています。

「だまされたふり作戦」で逮捕

被害者とその長男が在宅中に、息子を装った男性から電話がかかってきたため、被害者は詐欺だと見抜きだまされたふり作戦を敢行しました。

結果、24歳の男性が詐欺未遂の疑いで逮捕されました。

だまされたふりをした被害者宅に現金を取りに来たところ、警察署員に取り押さえられたとのことです。

詐欺罪で逮捕されたらどうなる?逮捕の種類と逮捕後の流れ

では、詐欺罪で逮捕されたらどうなるのでしょうか。

逮捕の2つの種類と、逮捕後の流れを解説します。

現行犯逮捕と通常逮捕

逮捕には、現行犯逮捕通常逮捕緊急逮捕の3つの種類があります。

このうち詐欺未遂罪で行われる可能性がある逮捕が現行犯逮捕と通常逮捕です。

ここでは、現行犯逮捕と通常逮捕について解説します。

現行犯逮捕

現行犯逮捕とは、犯行の最中や犯行の直後に行われる逮捕のことです。

現行犯逮捕は、警察官や検察官だけでなく、被害者や目撃者なども可能となります。

犯行後、時間を空けずに逃げている最中は犯行の最中や直後ではありませんが、準現行犯逮捕として逮捕可能です。

通常逮捕

通常逮捕とは、警察官等が逮捕令状を示して行われる逮捕のことをいいます。

逮捕令状とは、捜査機関が捜査を行った上で、裁判所に逮捕令状の発付を請求し、裁判所が認めた場合に発行される書類です。

現行犯逮捕は、犯行中若しくは犯行直後に行われますが、通常逮捕は、捜査の後に行われます。

逮捕後の流れ

詐欺未遂罪で逮捕された場合の手続の流れは以下のように進みます。

逮捕後最長72時間の身柄拘束

逮捕されると、警察によって最長48時間は身柄が拘束されて、取調べを受けます

警察が検察官への送致が必要であると判断すると、検察官に事件が引き継がれます。

引き続き検察官によって、最長24時間の身柄拘束が続きます。

勾留

勾留とは、原則10日間、必要に応じて10日延長されることがある身柄拘束の措置です。

逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断された場合に、とられる措置です。

勾留するかどうかを判断するのは、検察官で、決定を下すのは裁判官です。

検察官が「勾留が必要」と判断すると、裁判官に勾留請求を行います。

裁判官も検察官と同じ判断をした場合は、勾留を決定します。

起訴、不起訴の判断

検察官は、勾留期間が終了するまでに起訴するかどうかを判断します。

起訴すると刑事裁判が開かれます。

不起訴になると裁判は開かれることはありません。

勾留されなかった場合は、在宅事件として1か月半から数か月間捜査が行われた後、起訴するかどうかが判断されます。

刑事裁判

起訴が決定すると、刑事裁判が開かれ有罪か無罪か、そして有罪の場合の量刑が決定されます。

日本では刑事裁判での有罪率が99.9%を超えており、刑事裁判が開かれたら有罪判決を免れることは難しいです。

しかし、詐欺未遂であれば、罪が軽減される可能性は充分にあります

詐欺罪の刑罰の軽減や不起訴処分の獲得、身柄拘束期間を短縮する方法

詐欺未遂を疑われている場合、先ほどお話ししたように、「身柄拘束」と、「前科がつく」という大きな不利益が生じるおそれがあります。

逮捕と勾留だけで最長23日間、起訴後も勾留が続く場合はさらに数ヶ月間の身柄拘束が続きます。

多くの企業や学校では逮捕や勾留による身柄拘束が続けば、退職や退学を余儀なくされることが多く、社会的な影響は甚大です。

さらに、起訴されて有罪判決が言い渡されれば前科がついてしまいます

これらの不利益を回避するために有効なのが、「弁護士による被害者への示談交渉」と、「勾留阻止のための弁護活動」です。

起訴するかどうかの判断においては、被害者と示談が成立していることかどうかが大きな影響を与えます。

被害者と示談が成立し、深く反省しており、初犯であれば不起訴処分が獲得できる可能性が高まるのです。

また、起訴されたとしても執行猶予付判決が見込めるなど、罪の軽減が期待できます。

さらに、勾留を回避するために有効なのが、弁護士による勾留阻止のための弁護活動です。

弁護士が、勾留の必要がないことを検察官や裁判官に働きかけることで、勾留を阻止できる可能性があるのです。

「詐欺未遂で逮捕されたことでの影響を最小限に抑えたい」という場合は、逮捕後なるべく早い段階で弁護士に弁護をご依頼ください

詐欺未遂に関するご相談は弁護士へ

詐欺罪は、未遂であっても処罰される可能性がある犯罪です。

詐欺罪の法定刑は懲役10年以下

未遂の場合は、罪が軽減される可能性があるものの、執行猶予付判決が言い渡されなければ刑務所に服役しなければなりません

詐欺未遂で逮捕された場合は、身柄拘束や起訴を回避するために弁護士に弁護を依頼するのが得策です。

被害者との示談交渉や、勾留阻止のための弁護活動に早急に着手してもらい、逮捕されたことによる影響を最小限に抑えるように務めましょう。

本人が逮捕されている場合は、周囲の人が弁護士を探してあげることが大切です。

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執筆者 代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会 登録番号45484
東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士。
「ForClient」を理念として自らも多くの顧客の信頼を得ると共に、2018年の事務所開設以降、2023年までに全国12支店へと展開中。
得意分野
ベンチャー・スタートアップ法務、一般民事・刑事事件
プロフィール
京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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