痴漢で不起訴になるには?不起訴を獲得するための行動も解説

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記事目次
満員電車内などで突然、痴漢の疑いをかけられてしまった場合、これから自分の身に何が起こるのか、逮捕されてしまうのか、仕事や家族はどうなるのかと、極度の不安に襲われていることと思います。
日本の刑事裁判における有罪率は約99.9%と言われており、一度起訴(裁判にかけられること)されてしまうと、無罪を勝ち取ることは極めて困難です。
「99.9%」という数字は絶望的に見えるかもしれません。
しかし、これは裏を返せば「刑事弁護の勝負は、起訴される前の捜査段階ですべてが決まる」ということを意味します。裁判になってからではなく、その手前の段階でいかに「不起訴」を勝ち取るか。
これが、私たちの弁護活動における最重要テーマです。
検察官によって「不起訴処分」となれば、裁判は開かれず、前科もつきません。 社会生活への影響を最小限に抑えるためには、この「不起訴」の獲得が最大の目標となります。
この記事では、痴漢事件の基礎知識から、不起訴処分を獲得するために今すぐ取るべき具体的な行動について、弁護士監修のもと分かりやすく解説します。
痴漢事件が発覚してからの流れ
痴漢事件は、被害者が声を上げたり、周囲の乗客が気づいたりすることで発覚します。
警察が介入した後、どのような手続が進んでいくのか、まずは全体像を把握しましょう。
逮捕までは現行犯と任意同行の2パターン
痴漢事件で警察が介入するパターンは、主に「現行犯逮捕逮捕」と「任意同行」の2つに分かれます。
- 現行犯逮捕
痴漢行為をしたその場、または犯行直後に、被害者や駅員、周囲の目撃者などによって取り押さえられるケースです。
逮捕状は不要で、一般人(私人)でも逮捕が可能(私人逮捕)です。
その後、駆けつけた警察官に身柄を引き渡されます。
痴漢事件の多くはこの現行犯逮捕の形式をとります。
逃亡や証拠隠滅の恐れがあると判断された場合、そのまま警察署へ連行され、留置場に収容されることになります。
- 任意同行
被害者が後日警察に被害届を提出した場合や、現場では逮捕されなかったものの、防犯カメラの映像などから被疑者が特定された場合に行われます。
警察官から「話を聞きたいので署まで来てほしい」と求められ、これに応じる形で警察署へ向かいます。
あくまで「任意」ですが、正当な理由なく拒否し続けると、逮捕状を請求され「通常逮捕(後日逮捕)」に切り替わるリスクがあります。
逮捕から裁判までの流れ
逮捕された場合、そこからの刑事手続は非常に厳格な時間制限の中で進められます。
特に最初の72時間が勝負と言われています。
- 逮捕~送致(48時間以内)
警察での取調べが行われ、原則として48時間以内に身柄と書類が検察庁へ送られます(送致)。 - 勾留請求の判断(24時間以内)
検察官は、送致から24時間以内に被疑者を取調べ、引き続き身柄の拘束(勾留)が必要かどうかを判断し、必要と考えた場合は裁判官に勾留請求を、不要と考えた場合は釈放します。 - 勾留(原則10日間、最大20日間)
裁判官が勾留を認めると、原則10日間、延長が認められれば最大20日間、身柄拘束が続きます。この期間中に、検察官は起訴するか不起訴にするかを決定します。 - 起訴・不起訴の決定
検察官は証拠や情状を総合的に判断し、処分を決定します。
・起訴: 刑事裁判にかけられます。略式起訴(罰金刑)となる場合もあります。
・不起訴: 裁判は行われず、身柄は釈放されます。前科はつきません。
この流れの中で、いかに早く弁護活動を開始できるかが、早期釈放や不起訴獲得の鍵を握ります。
ここに注意!供述調書の署名は慎重に
逮捕直後の取調べは、精神的に非常に追い詰められます。
「認めれば早く帰れる」といった甘い言葉で、事実と異なる自白を誘導されるケースも実務上散見されます。
一度署名・押印した供述調書を後から覆すことは極めて困難です。
自分の記憶と異なる内容が含まれている場合は、断固として署名を拒否する必要があります。
署名の拒否や内容の変更を要求することは被疑者の権利です。
痴漢事件が不起訴処分となるケースと判例
「不起訴」とは、検察官が「裁判にかける必要がない(または証拠が足りない)」と判断し、手続を終了させる処分です。
痴漢事件において不起訴となる主なケースを3つ解説します。
嫌疑不十分(証拠が不十分な場合)
「自分はやっていない」と否認している冤罪事件などで、検察官が有罪を立証するだけの十分な証拠がないと判断した場合、「嫌疑不十分」として不起訴になります。
- 事例1:目撃証言の不一致
満員電車内で痴漢を疑われたが、被害者の証言する犯人の特徴(服装や立ち位置)と、被疑者の状況や防犯カメラの映像が一致せず、犯人であると断定できなかったケース。
- 事例2:故意の立証が困難
電車が揺れた拍子に手が当たってしまったと主張。接触の事実はあるものの、それが性的意図を持った「痴漢行為」であったという故意を証明する証拠がなく、不起訴となったケース。
起訴猶予(被害者との示談成立)
犯罪の事実は認められるものの、被疑者の反省の度合いや被害者の感情などを考慮し、検察官の裁量で起訴を見送る場合、「起訴猶予」となります。痴漢事件において、この処分を獲得できる最大の要因は「被害者との示談成立」です。
- 事例:粘り強い交渉による示談成立
犯行を認め、弁護士を通じて被害者に謝罪と示談金の支払いを申し入れたケース。
担当弁護士の活動メモ
当初、被害者様は「絶対に許せない。顔も見たくない」と頑なに示談を拒否されていました。
しかし、私が代理人としてご家族の監督誓約書を持参し、加害者本人の真摯な反省文を添えて何度も手紙をお送りするなど、粘り強く誠意をお伝えし続けました。
最終的にその誠意が通じ、示談成立と嘆願書の提出に至り、不起訴を獲得できました。
単にお金を払えば済むものではない、心の活動が重要となる場面です。
起訴猶予(初犯・反省の情が深い)
示談が成立していなくても、犯行が悪質でなく、被疑者が深く反省しており、再犯の可能性が低いと判断された場合には、起訴猶予となることがあります。
ただし、これはあくまで検察官の総合判断によるものであり、示談成立に比べるとハードルは高くなります。
- 事例1:初犯で軽微な事案
過去に犯罪歴(前科・前歴)がなく、魔が差して衣服の上から短時間触れてしまった等の比較的軽微な事案。本人が深く反省し、家族が監督を誓約していることなどを考慮され、不起訴となったケース。
- 事例2:再犯防止への取り組み
定職に就いており社会的制裁(逮捕による不利益)を既に受けている上、専門のクリニックに通院して再犯防止に取り組む姿勢を見せたことで、起訴の必要性がないと判断されたケース。
痴漢は何罪に当たる?不起訴率は?
痴漢行為は、その態様や悪質性によって適用される法律が異なります。
主に適用されるのは「迷惑防止条例違反」と「不同意わいせつ罪(旧:強制わいせつ罪)」の2つです。
それぞれの罪の重さと、統計的な不起訴の傾向について解説します。
迷惑行為防止条例違反
多くの痴漢事件(衣服の上からお尻や胸を触る、下半身を押し付けるなどの行為)は、各都道府県が定める「迷惑防止条例違反」に該当します。
- 罰則(東京都の例)
6ヶ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
(※常習性がある場合は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金と重くなります)
出典:e-Gov法令検索「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(東京都)」
不起訴率の傾向
迷惑防止条例違反は、比較的軽微な犯罪と見なされることもありますが、近年の厳罰化の流れにより、初犯でも起訴(略式起訴による罰金刑を含む)される可能性は十分にあります。
一方で、被害者が特定されている犯罪であるため、被害者との示談が成立すれば、不起訴(起訴猶予)になる可能性が極めて高い類型でもあります。
不同意わいせつ罪
下着の中に手を入れて直接体に触れるなど、より悪質性が高いと判断された場合は、刑法の「不同意わいせつ罪(旧:強制わいせつ罪)」が適用されます。
2023年7月の刑法改正により、暴行や脅迫がなくても「相手の同意がない」ことが要件の中心となりました。
- 罰則
6ヶ月以上10年以下の拘禁刑
不起訴率の傾向
不同意わいせつ罪には「罰金刑」がありません。
つまり、起訴される場合は公開の法廷で審理される「公判請求」となり、拘禁刑(実刑または執行猶予)が求刑されることになります。
略式起訴(書類上の手続だけで罰金を払って終わる手続)ができないため、検察官の起訴判断はより慎重になります。
重大な犯罪ですが、それゆえに被害者との示談が成立し、被害者の宥恕(許すこと)があれば、不起訴となる可能性は残されています。
痴漢で不起訴を獲得するために取るべき行動
痴漢事件で前科をつけず、平穏な生活を取り戻すためには、ただ結果を待つのではなく、能動的に動く必要があります。
不起訴処分を獲得するために、今すぐ取るべき具体的な行動は以下の3点です。
1. 直ちに弁護士に連絡する(必須)
痴漢事件の解決において、弁護士の存在は不可欠です。
逮捕直後の72時間は、原則として家族であっても面会が制限されますが、弁護士であれば制限なく接見(面会)し、法的なアドバイスを行うことができます。
- 取調べへの対応を助言
「やっていない」のに自白を強要される冤罪を防ぐため、あるいは不利な供述調書を作られないために、取調べでどのように話すべきか具体的にアドバイスします。 - 早期釈放・不起訴への活動
逃亡や証拠隠滅の恐れがないことを主張し、勾留の阻止や早期釈放を働きかけます。また、検察官に対して不起訴処分を求める意見書を提出します。
国選弁護人は勾留決定後でなければ選任されないケースが多いため、逮捕直後の最も重要な局面では、私選弁護人に依頼することが、不起訴獲得への第一歩です。
2. 被害者との示談交渉を進める
前述の通り、痴漢事件で不起訴を獲得するための最大の鍵は「被害者との示談」です。しかし、加害者本人やその家族が、被害者に直接連絡を取ることは実質不可能です。
- 連絡先を知る術がない
警察や検察は、被害者保護の観点から、加害者本人やその家族に対して被害者の連絡先を教えることはほとんどありません。
弁護士ならどう動く?
弁護士であれば、検察官を通じて「謝罪と賠償のために連絡を取りたい」という旨を被害者に伝達できます。被害者も「弁護士限りであれば(加害者本人には教えない条件で)」と同意してくれることもあり、その場合は連絡先が開示され、交渉のテーブルに着くことが可能になります。この「連絡先の壁」を超えることができるのは、守秘義務を持つ弁護士だけです。
3. 反省の意思表示と再犯防止策
犯行を認めている場合、単に謝罪するだけでなく、「二度と同じ過ちを繰り返さない」という具体的な再犯防止策を示すことが、検察官の心証を良くし、不起訴(起訴猶予)の判断を引き出す材料になります。
- 反省文・謝罪文の作成
事の重大さを認識し、深く反省していることを文書で示します。 - 家族による監督
家族が身元引受人となり、今後の生活を監督する旨の上申書を提出します。 - 専門機関への受診
性的衝動が抑えられないなどの事情がある場合は、専門の医療機関やカウンセリングに通い、治療に取り組む姿勢を示すことも有効です。
まとめ
痴漢事件で逮捕されてしまった場合でも、「不起訴処分」を獲得できれば、前科はつかず、早期に社会復帰できる可能性が高まります。
不起訴になるためには、以下のポイントが重要です。
- 逮捕直後(72時間以内)の初動対応が命運を分ける
- 「迷惑防止条例違反」や「不同意わいせつ罪」でも、示談成立により不起訴の可能性はある
- 被害者との示談交渉は弁護士にしかできない
痴漢の疑いをかけられた際は、一刻も早く刑事事件に強い弁護士へ相談してください。あなたの迅速な行動が、あなた自身の未来と家族の生活を守ることにつながります。
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- 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
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