【逮捕の条件】ストーカー行為で逮捕されるケース!刑事事件化の流れを弁護士が徹底解説

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スマートフォンやSNSの発達により、無意識のうちにストーカーとみなされる行為が増えています。
一見すると軽い接触でも、繰り返されれば逮捕に至る可能性があるのがストーカー規制法の特徴です。
本記事では、どのような行動が違法とされ、どの段階で逮捕や刑事事件に発展するのか、法律の専門家の視点から丁寧に解説します。
予防と対策のためにも、正しい知識を身につけましょう。
ストーカー行為の定義
- ストーカー規制法が禁止する「つきまとい等」を反復して行うことがストーカー行為
- 代表例:つきまとい、無言電話、交際の強要、SNSでの監視、誹謗中傷の書き込みなど
- 家族への嫌がらせやGPS追跡も規制の対象
- 行為の反復継続がポイント
法律で定められた8つの「つきまとい等」行為とは
ストーカー規制法における「つきまとい等」の8類型(第2条)
① つきまとい・待ち伏せ・押しかけ
例:毎日通勤ルートに現れる、自宅前で待機する
② 監視していると告げる行為
例:「昨日どこにいたか知ってるよ」といった発言やメッセージ
③ 面会や交際の要求
例:何度断られても「会いたい」「やり直したい」としつこく迫る
④ 著しく乱暴な言動
例:「殺すぞ」といった発言やメッセージ
⑤ 無言電話や連続メッセージ
例:深夜の無言電話、1日に何十件ものLINE送信
⑥ 汚物などの送付
例:意味不明な手紙、汚れた物や不快な物を自宅に送る
⑦ 名誉を傷つける行為
例:SNSで虚偽の噂を拡散、職場に悪評を流す
⑧ 性的羞恥心を害する言動
例:わいせつなメッセージや画像を一方的に送る
これらの行為が恋愛感情や恨みを背景に反復されると、ストーカー行為として逮捕や処罰の対象になります。
悪意がなくても、相手が苦痛を感じれば違法と判断される可能性があります。
SNSやネット上の行為も対象になる
SNSやメールを利用したストーカー行為は、近年増加傾向にあり、ストーカー規制法の対象にもなりました。
具体例としては、相手が返信しないにもかかわらず、LINEやDMを執拗に送り続ける行為や、Instagramのストーリーを何度も閲覧し「見ているぞ」と無言の圧力をかける行為が挙げられます。
また、位置情報のタグ付けや、投稿への過剰な反応、無断で撮影した写真の掲載、虚偽の誹謗中傷をSNSに投稿するなども該当します。
これらは「監視の告知行為」や「名誉毀損行為」「連続した通信」としてストーカー規制法第2条に基づく「つきまとい等」にあたり、繰り返されることでストーカー行為と認定されます。
オンライン上の接触でも、相手の意思に反して恐怖や不快感を与える場合、法的責任を問われる可能性があるため注意が必要です。
ストーカーと単なる迷惑行為の線引きはどこ?
ストーカー行為として法的に認定されるためには、まず「恋愛感情やそれに類する執着、またはそれが拒否されたことによる恨み」が動機であること、そして「つきまとい等」の迷惑行為が反復して行われていることが必要です。
つまり、単発ではなく継続的に行われ、被害者の生活の平穏を著しく損なう場合にストーカー規制法の適用対象となります。
一方で、例えばたまたま同じ場所で出くわしたり、1回限りの連絡を送った場合は、たとえ相手が不快に感じても、直ちにストーカー行為とは認定されません。
ただし、それが繰り返されれば違法とされる可能性もあります。重要なのは、行為の継続性と動機、そして被害者が恐怖や苦痛を感じているかどうかです。
迷惑行為は不適切でも違法とは限りませんが、執拗に繰り返されるとストーカー行為として刑事処分の対象になり得ます。
ストーカー規制法の仕組みと罰則
ストーカー規制法は、つきまとい等の行為を防止・抑制するための法律です。
警察は被害相談を受けるとまず警告を行い、それでも行為が続く場合は公安委員会による禁止命令が出されます。
命令違反や悪質な継続行為があると逮捕・刑事事件化へと進みます。
警察による「警告」と「禁止命令」の違いは?
警告は比較的軽い対応で、強制力はありませんが、再発防止のための第一段階として重要です。
一方、禁止命令は法的な拘束力を持ち、違反した場合は刑事処分の対象となる厳しい措置です。
警告 | 禁止命令 | |
---|---|---|
根拠法令 | ストーカー規制法第4条 | ストーカー規制法第5条 |
発令機関 | 警察署長など(警察) | 都道府県公安委員会 |
発令条件 | つきまとい等の事実が認められ、再発の恐れがある場合 | 警告後も行為が継続・再発の恐れが高い場合 |
手続き | 任意措置(口頭・文書) | 対象者に弁明の機会あり |
法的拘束力 | 拘束力なし(命令ではない) | 法的拘束力あり(違反で罰則) |
違反時の扱い | 違反しても直ちに処罰はされない | 違反すると逮捕・罰則対象 (2年以下の拘禁刑等) |
主な目的 | 注意喚起と自主的中止を促す | 行為の強制的な禁止 |
2021年改正で何が変わった?厳罰化のポイント
2021年に行われたストーカー規制法の改正では、3つの新たな行為が取り締まりの対象に加わりました。
まず、対象者の現在地における監視行為が規制され、旅行先や外出先など、その場限りの滞在場所でも見張るような行動が違法とされました。
次に、相手から送付を拒否されても、手紙などの書面を繰り返し送りつける行為が新たに禁止されました。
従来は、文書による接触が法の対象外とされることもありましたが、これにより好意や執着を示す文書、個人情報の記載された書面なども処罰可能となりました。
最後に、同意なくGPS機器などを使って位置情報を取得したり、それらの装置を対象者の持ち物などに取り付ける行為が新たに規制されました。
技術の進化を見越し、対象装置を広く定義することで、より柔軟な対応が可能となっています。
逮捕される具体的な行動パターン
ストーカー行為は、内容や状況によっては刑事事件として逮捕に至ることがあります。
ここでは、具体的にどのようなケースで逮捕されるのかを分類し、それぞれの特徴をわかりやすく解説します。
逮捕に至る主なケースとその特徴
① 禁止命令違反による逮捕
公安委員会から出された禁止命令には法的拘束力があり、それに違反した場合は速やかに逮捕される可能性があります。
禁止された接近や連絡が確認されれば、証拠が明確であるため、刑事処分に直結しやすいです。
② 悪質かつ継続的な行為による逮捕
警察による警告後も、つきまといや執拗な連絡が繰り返されると、ストーカー行為として立件されやすくなります。
行為の反復性と被害者の恐怖の度合いが重視され、逮捕に至る典型的なケースです。
③ 脅迫・暴力などの犯罪が含まれる場合
「殺す」「ぶっ壊す」などの発言や、物理的な暴行・器物損壊がある場合は、ストーカー規制法だけでなく、脅迫罪や暴行罪の適用も考慮され、強制的な逮捕につながることがあります。
④ 差し迫った危険が認められるケース
被害者に対する重大な危害が切迫していると警察が判断すれば、警告や禁止命令を経ることなく、逮捕がなされることがあります。
「警告」無視で即逮捕されるケース
ストーカー行為に対して警察から警告を受けたにもかかわらず、行為をやめずに継続すると、公安委員会が「禁止命令」(ストーカー規制法第5条)を発出します。
これらの命令には法的拘束力があり、違反すれば刑事罰の対象となります。
たとえば、禁止命令で接近を禁じられていたにもかかわらず、被害者の職場に現れたり、連絡を繰り返したケースでは、ストーカー規制法第19条第1項に基づき、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金が科される可能性があります。
実際に、命令違反後すぐに自宅付近に現れた加害者が逮捕された例もあり、再犯のリスクが高い場合や、命令を軽視していると判断されると、警察は速やかに身柄を拘束します。
警告や命令を軽んじる行為は、逮捕・起訴へ直結する重大な違反とされます。
執念深い追跡や監視で逮捕された事例
追跡や監視行為が原因で逮捕に至ったケースでは、行動の執拗さや被害者の生活圏への侵入が特に重視されます。
たとえば、被害者の通勤ルートを毎日尾行し、駅のホームや帰宅路で待ち伏せを繰り返していた男性が、ストーカー規制法違反で逮捕された事例があります。
このケースでは、尾行だけでなく、被害者が特定されたくない場所にまで現れたことや、毎回異なる時間帯・場所を選んで監視していた点が問題視されました。
こうした事案では、「単なる接触」ではなく、意図的な追跡・監視の継続性と、被害者が恐怖を感じたかどうかが立件の決め手となります。
物理的接触がなくても、行動パターンから明らかな監視と判断されれば、逮捕に至る可能性は十分にあります。
SNSやメールでのストーカー行為と逮捕基準
オンライン上のストーカー行為でも、内容や態様によっては現実世界と同様に逮捕される可能性があります。
ストーカー規制法では、2021年の法改正により、SNSのDM(ダイレクトメッセージ)や通話アプリを用いた連続的な連絡行為、さらには位置情報の無断取得・送信が「つきまとい等」として明確に規制対象に追加されました。
たとえば、X(旧Twitter)で特定のユーザーに対し、無視されているにもかかわらず何十通ものメッセージを送り続けた上、「いつも〇〇にいるね」などと位置情報を匂わせる投稿を繰り返した行為が、ストーカー規制法に違反するとされた事例があります。
このケースでは、「連続した通信」(法第2条第1項第5号)および「監視していることを示す行為」(第2号)に該当すると判断されました。
オンライン行為でも、反復性・執拗さ・被害者の恐怖感が揃えば、リアルのつきまといと同じく法的責任を問われ、警告を経ずに逮捕されることもあります。
相手の同意なしに行う執拗な接触や行動監視は、デジタル空間でも厳しく取り締まられています。
立証に必要な証拠と効果的な記録方法
ストーカー被害を警察や弁護士に相談する際、有効な証拠を確保しておくことが非常に重要です。
証拠として有効な記録方法の基本は、「日時・場所・内容」を明確に残すことです。
たとえば、メールやSNSのメッセージはスクリーンショットで保存し、送信日時がわかるようにしておくと信頼性が高まります。また、通話履歴や無言電話も、着信履歴を画面ごと撮影して記録しましょう。
つきまといや待ち伏せがある場合は、ボイスレコーダーやスマートフォンの録音機能を活用し、現場の状況を音声で残すのが有効です。
可能であれば、防犯カメラや自宅のインターホン映像も保存しましょう。
また、被害の発生日時・状況を日付順にノートやメモアプリで記録する「被害日記」も重要な証拠になります。
証拠は改ざんされていないことが求められるため、削除せず原本のまま保存することが大切です。
複数の場所にバックアップを取り、安全に保管しておきましょう。
証拠の質と量が被害の信憑性を左右します。
罰則・刑事罰の内容
「つきまとい等」を繰り返してストーカー行為を行った場合、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されます(法第18条)。
禁止命令に違反してストーカー行為をした場合は、さらに重く2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金(法第19条)、違反の態様によっては6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(法第20条)も科されます。
悪質性や再犯性が高い場合は実刑判決もあり、近年はSNS等を利用した執拗な行為にも厳罰化の傾向があります。
ストーカー規制法違反で科される刑罰
ストーカー規制法違反に対しては、行為の内容や程度に応じてさまざまな刑罰が科されます。
ここでは、法律上の刑罰の種類と、実際の裁判で下された量刑の傾向を一覧表にまとめて解説します。
罪種別 | 法定刑 | 実際の量刑例(例示) |
---|---|---|
つきまとい等のストーカー行為(第18条) | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 | 初犯かつ軽度の場合は罰金 30~50万円の略式罰金 |
禁止命令違反(第19条) | 2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金 | 繰り替えし違反した場合、懲役6カ月~1年の実刑・執行猶予 |
禁止命令(第20条) | 6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 | 初犯でも執拗な行為があれば略式罰金 |
その他(脅迫・傷害を伴う場合) | 刑法による:脅迫罪(2年以下の拘禁刑等)など適用あり | 暴力や脅迫があれば、懲役刑が科される例が多数 |
禁止命令違反と初犯での量刑の違い
ストーカー規制法違反において、禁止命令違反と初犯では量刑に明確な違いが見られます。
初犯で軽微なつきまとい行為のみの場合、略式命令による罰金刑(30〜50万円程度)で処理されるケースが一般的です。
たとえば、元交際相手に数回メッセージを送った程度の事案では、罰金30万円の略式命令が出された例があります。
一方で、禁止命令に違反して行為を継続した場合は、悪質性が高いとみなされます。
禁止命令後も被害者宅を訪れ、接触を試みた加害者に対し、懲役1年・執行猶予3年の有罪判決が言い渡された事例もあります。
裁判所は「命令を無視した態度は反省が乏しく、再犯の恐れがある」と判断しています。
このように、禁止命令違反は実刑に近づく要因となり、初犯か否かよりも「警告・命令を受けたうえで行為を継続したかどうか」が量刑判断で重視されます。
逮捕後、加害者はすぐに釈放される?
ストーカー規制法違反で逮捕されると、まず警察によって最大48時間身柄を拘束され、送致された検察官は24時間以内に勾留の要否を判断します。
勾留が認められた場合、原則10日間、延長が認められるとさらに最大10日間の拘束が可能です。
勾留中に検察が起訴すれば、正式な刑事裁判が開始されます。軽微な事件では略式起訴となり、罰金処分で終了することもあります。
一方、起訴後の保釈は、裁判所に申請し許可を得る必要があり、逃亡や証拠隠滅の恐れがないことが前提となります。
ストーカー被害の証拠として認められるものは?
ストーカー被害を立証するためには、被害の実態を裏付ける客観的な証拠を集めることが重要です。
法的に有効とされる証拠には、まずメッセージの記録(LINE、メール、SNSのDMなど)があり、送信日時と内容がわかる状態でスクリーンショットを保存することが望まれます。
また、着信履歴や通話記録もストーカー性を示す証拠となり、画面の撮影や通信会社からの明細取得が有効です。
つきまとい行為の録音・録画も強力な証拠になります。
スマートフォンの録音機能や、ICレコーダー、防犯カメラ、自宅インターホンの映像などを活用し、日時と場所が明確な映像・音声として記録しましょう。
さらに、被害日誌をつけておくことも有効です。
被害を受けた日付、時間、場所、内容、相手の様子などを詳細に記録することで、継続性や精神的被害の裏付けになります。
すべての証拠は改ざんされていない状態で保存することが重要であり、デジタルデータはバックアップも推奨されます。
これらを組み合わせることで、警察や弁護士への相談時に説得力のある資料として活用できます。
加害者が逮捕された後の安全確保はどうすれば?
ストーカー加害者が逮捕された後も、被害者の安全が直ちに確保されるとは限りません。
釈放や不起訴後の再接触に備え、引き続き対策を講じることが重要です。
まず、住居や通勤経路の変更を検討し、インターホンカメラや防犯カメラの設置など物理的な防犯対策を強化しましょう。
また、SNSの設定を非公開にし、位置情報の発信を避けるなどデジタル上の配慮も必要です。
警察には「生活安全課」などがあり、相談すればパトロール強化や緊急通報装置の貸与といった支援を受けられる場合があります。
さらに、女性相談支援センターや犯罪被害者支援センターなどの支援団体では、シェルター提供やカウンセリング、法的手続きのサポートを行っています。
状況に応じてこれらの公的支援を積極的に活用することで、継続的な安全確保につながります。
まとめ
ストーカー問題は、被害者にとっては早期の対処と継続的な安全確保が重要であり、加害者にとっても法的リスクの理解と適切な対応が求められます。
どちらの立場でも、正確な情報と専門的な支援が不可欠です。
まずは是非とも弁護士へご相談ください。
- 得意分野
- 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件 、 遺産相続 、 交通事故
- プロフィール
- 岡山大学法学部 卒業 明治大学法科大学院 修了 弁護士登録 都内の法律事務所に所属 大手信販会社にて社内弁護士として執務 大手金融機関にて社内弁護士として執務