逮捕されたらどうなる?逮捕後の流れと期間について
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逮捕されたらどうなるか?
逮捕されると、警察署内にある留置場(又は拘置所)に入れられ、ここから出ることを禁止され、外部との連絡も自由にできなくなります。
逮捕して被疑者の身柄を拘束できる時間は72時間以内と決まっています。
ほとんどの場合は逮捕に引き続き勾留(10日〜20日間)されるので、逮捕をされると最長で23日間、留置場から出ることができなくなります。
逮捕は、被疑者の逃亡や証拠隠滅を防止するために行われます。
逆にいうと、逃亡や証拠隠滅のおそれがない場合は逮捕されません。
被疑者を逮捕しないまま捜査が進められます。
送致
(1)逮捕は何のためにするの?
「勾留」は10日〜20日間という長期間にわたり被疑者の身体を拘束するので、人権を強く制約します。
そのため、逮捕した時から72時間以内に、勾留が本当に必要かどうかを判断するための手続きが行われます。
先に短期間の逮捕を行い、勾留が必要かどうかの判断を行うことによって、不必要な勾留をしないようにする仕組みが法律で決められています(これを「逮捕前置主義」といいます)。
逮捕は、身柄を拘束して取り調べを行うだけでなく、10日〜20日間にわたる「勾留」を裁判所に認めてもらうための手続きをすることも目的としているのです。
(2)検察官送致
逮捕をした時から48時間以内に、警察は、検察官に事件と被疑者の身柄を引き継ぐ「検察官送致」を行います。
単に「送致」や「送検」といわれることもありますが、全て同じ意味です。
事件は、微罪処分の対象となったもの等ごく一部を除き、全て検察官に送致されます。
検察官送致される日の朝、被疑者は、同じ警察署に留置されている他の被疑者と一緒に警察車両に乗せられて、検察庁へ行きます。
検察官との面接は、1人ずつ、15分〜20分くらいかけて行われます。
検察官は、事件の資料と被疑者との面会を踏まえて、勾留をする必要があるか無いかを判断します。
勾留の必要があると判断した場合は、検察官は、被疑者を受け取った(送致を受けた)時から24時間以内に、裁判官に対して勾留の請求を行います。
反対に、勾留の必要はないと判断した場合は、被疑者はすぐに釈放されます。釈放後は日常生活を送ることができますが、警察から取り調べなどに呼び出された場合はそれに応じなければなりません。
令和4年版犯罪白書によれば、93.9%の事件が勾留請求されています。逮捕されてから何もしなければほとんどの事件が勾留請求され、逮捕から最長で23日間の身柄拘束を受けることが決定してしまいます。
勾留
(1)勾留質問
勾留請求をされた場合、被疑者は警察署から裁判所へ警察車両で連れて行かれ、裁判官から勾留質問を受けます。
裁判官から被疑者に対して、どのような事件のために勾留されるのか、弁護人を選任できることなどの説明がされます。
裁判官は、勾留の理由があると判断した場合は速やかに勾留状を発し、勾留の理由がないと判断した場合は直ちに被疑者の釈放を命じます。
(2)勾留の理由
被疑者段階における勾留とは、被疑者が証拠を隠したり逃亡することを回避するために、刑事施設(警察署内の留置場又は拘置所)で身柄を拘束することをいいます。
勾留は、罪を犯したと疑うに足りる相当の理由がある場合で、①定まった住居がないこと、②証拠隠滅のおそれがあること、③逃亡のおそれがあることのうち少なくとも一つに該当した場合に認められます。
(3)勾留している間に起訴するかを決める
裁判官が「勾留状」を発すると、被疑者は勾留の請求がされた時から10日間身柄を拘束されます。
警察や検察は、この10日間を使って取り調べや実況見分などの捜査を行います。
さらに、やむを得ない事由があると認められる場合は、検察官の請求により、勾留の期間を10日まで延長することができます。
勾留している間に警察や検察が捜査を行い、証拠を集めます。
検察官は、勾留の期限が切れるまでに被疑者を起訴するか否か(裁判にかけるか否か)を決定します。
(4)被疑者との面会
逮捕から勾留に切り替わると、「接見禁止」となっている場合を除き、家族も面会することができます。
ただ、面会は平日日中の時間帯に限定され、時間制限(15分〜20分くらい)、回数制限(1日1回)、人数制限(1回3人まで等)があり、さらに、面会室には警察官が同席します。
これに対して、弁護士は、土日夜間も含めて基本的にいつでも接見可能です。
時間・回数・人数の制限はなく、警察官の同席もありません。
起訴
起訴とは、検察官が事件について裁判所に審理判断を求めることをいいます。
検察官は、警察から送致された全ての事件を起訴するわけではなく、さまざまな事情を考慮して事件を不起訴とすることもあります。
(1)起訴の種類
起訴には、①公判請求と②略式命令請求の2種類があります。
①の公判請求をされた場合は、公開の刑事裁判が行われ、判決が言い渡されます。
釈放されない限り判決が出るまでの間、身柄の拘束が続きます(「被告人勾留」といいます)。
公判請求された後は保釈の請求をすることができ、これが認められると保釈金を支払った上で保釈されます。
裁判の日に裁判所へ行く必要はありますが、それ以外は日常生活を送ることができるようになります。
100万円以下の罰金または科料となる事件の場合は、②の略式命令請求となることがあります。
略式命令請求は、被疑者の同意を得て、公開の裁判を行うことなく罰金刑に処せられることが確定します。
早期に有罪が確定し前科がつきますが、手続きが終わった段階で身柄の拘束が解かれて社会生活に戻ることができるので、被疑者が犯罪を犯したことを認めている場合は公判請求されるよりも負担が少ないといえます。
(2)不起訴
令和4年は、65%弱が不起訴になりました(令和5年犯罪白書)。
ここでいう不起訴処分には起訴猶予処分も含まれます。
起訴猶予処分とは、犯罪の嫌疑が認められる場合でも、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により起訴しないことをいいます。
不起訴となった場合は釈放されます。
(3)起訴・不起訴の判断で考慮される事情
被害者のいる事件では示談をすることが起訴を回避する手段として最も有効です。
被害者が示談に応じてくれない場合であっても、示談するために努力したこと(反省文を書いた、慰謝料の支払いを申し出た等)を検察官に伝える、贖罪寄付をするなど他の方法で不起訴を目指すこともできます。
刑事裁判
(1)公判請求
起訴されると、呼び名が被疑者から被告人に変わります。
公判請求をされてから1か月〜1ヶ月半くらいで第一回公判が開かれます。自白事件では2~4回くらい、否認事件では7~8回くらい公開の法廷で裁判が行われます。
(2)保釈
起訴後も逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断されると、引き続き勾留されます。
起訴された後は保釈の請求をすることができます。
身元引受人に書類を書いてもらい、保釈保証金を納めることを条件に保釈される場合があります。
保釈金は200万円を超える高額であることが多いですが、裁判が終わったら返還されます。
勾留されていない被告人は日常生活を送り、裁判の日だけ裁判所へ行きます。
(3)裁判
裁判では、名前や本籍地を確認された後、被疑事実の内容や証拠について検察官が説明します。
裁判では、被告人や弁護人の意見を述べることができますが、起訴された場合に有罪となる確率は99%を超えます。
逮捕されたら弁護士に相談すべきか?
逮捕直後の面会
逮捕されてから72時間が経過するまでは、弁護人または弁護人になろうとする者以外の面会は認められません。
逮捕されたらできるだけ早い段階で弁護士が面会(接見)に行くことが大切です。
なぜならば、逮捕された直後は非常に不安な状態であることが多く、被疑者が自分自身を守ることが難しいからです。
弁護士が会いに行き、今どのような状況に置かれているか、今後どのような手続きが行われるのか、どのくらい拘束されるのかなどを伝えます。
また、事件に関する被疑者の言い分を聞いて、取り調べでどのように答えたらいいかあるいは黙秘するのかなどのアドバイスも行います。
警察や検察は取り調べの内容を都度調書という書面にしており、調書は裁判の証拠とすることができます。
そのため、間違えて話してしまった不利な事実を調書に書かれて裁判の証拠にされてしまうなどといったことがないように、調書の内容を慎重に確認することの重要性なども説明します。
捜査機関との交渉
勾留の3要件のうち問題となることが多いのは、証拠隠滅のおそれと逃亡のおそれです。
弁護士が、なぜ証拠隠滅のおそれがないのか(隠滅可能な証拠の不存在、目撃者や被害者の住所を知らない等の事実)、なぜ逃亡のおそれがないのか(持ち家である、長年定職に就いている、家族がいる、子供がいる等の事実)を書面に丁寧に書き、説得的に身柄の解放を求めます。
また、示談交渉を行うために被害者と連絡を取りたい、ここまで示談の話が進んでいるなど情報を連携することで、身柄を解放されたり、不起訴処分となる可能性を高めることができます。
被害者との示談交渉
被害者に財産的被害や精神的苦痛が生じている事件の場合、早期釈放されるためには被害者と早い段階で示談を成立させることが重要です。
被害者との示談交渉は、被害者の心情面などから難しい場合が多いです。
また、捜査機関が加害者側に被害者の連絡先を教えることはあり得ません。
弁護士は、検察官に示談の意向がある旨を伝え、警察や検察から被害者に、示談の申し出があったことの伝達や、連絡先を弁護士に伝えて良いかなどを聞いて了承を得られた場合には連絡先を教えてもらうことができます。
被疑者やその家族ではなく弁護士が被害者の心情を踏まえた示談交渉を行うことにより、示談書を作成したり慰謝料を受け取ってもらえる場合があります。
被害者が示談に応じてくれない場合は、贖罪寄付など別の方法によって反省の意を示すこともできます。
所持品や家賃の扱いはどうなる?
スマートフォン
逮捕され留置場に入るタイミングで、スマートフォンなどの私物は全て警察に預け、留置場内にある管理ボックスで保管されます。
スマートフォン自体が証拠となる場合は、証拠品として押収されます。
証拠品にならなかった場合、取り上げられたスマートフォンは釈放時に私物と一緒に返還されます。
警察がスマートフォンの契約を解約することはありませんので、釈放された後は再び同じ携帯電話を使うことが可能です。
ただ、逮捕・勾留が長引きそのまま被告人勾留が続いたような場合、利用料金の未払いが続けば通信事業者から解約されてしまいます。
留置期間が長引きそうなときは家族に依頼して解約した方が無駄な料金を支払わずに済みます。
財布
財布も、留置場に入る時に他の私物と一緒に警察に預けることになります。
スマートフォンなどと扱いが異なる点として、財布に入っている現金は留置場での生活で使うことができます。
留置場の中では、歯ブラシや歯磨き粉、切手や便箋、お弁当などを購入することができますので、財布の中に入っていた現金を領置金として警察に預けてそこからこれらの代金を支払うことができます。
なぜお弁当を買えるかというと、留置場の中で食事は3食出ますが量が少なくこれでは足りない場合があるので、お弁当を自分で注文できるようになっているからです。
被疑者の財布の中に、家族が必要とするもの(家族の健康保険証や生活費を下ろすためのキャッシュカードなど)があれば、「宅下げ」という方法を使って家族や弁護士が受け取ることができます。
ただ、財布やその中身が犯罪の証拠となる場合には、証拠品として押収されるため宅下げはできなくなります。
家賃
(1)逮捕されたことを理由に解除されることはない
有罪の判決が出るまでの間は無罪として扱われるため、逮捕・勾留・公判請求をされたことを理由に、賃貸借契約が解除されることはありません。
また、有罪になったことのみを理由に解除できるかは事案によります(犯罪の種類などによって対応は異なります)。
(2)長期間の家賃の滞納は賃貸借契約の解除事由となる
賃料が銀行振込や手渡しの場合、逮捕・勾留されている間は家賃を支払うことができません。
一般に3ヶ月以上家賃を滞納した事実は賃貸借契約の解除事由(信頼関係の破壊)にあたると考えられます。
内容証明郵便で滞納賃料の支払いを催告され、期日までに支払わないと、訴訟手続きを経て契約を解除されます。裁判所の許可を得て残置物が処分されることもあります。
他方、賃料が銀行引き落としやクレジットカード払いとなっており、賃料を滞納することがなければ契約更新時期が重ならない限り継続して借り続けることができます。
(3)自分から解約を申し出ることはできる
有罪となり長期間服役することが確実であると考える場合は、家族や友人に依頼して、契約解除の手続きをしてもらうと家賃を払い続けるという負担がなくります。
まとめ
逮捕された後に避けたいのはまず「勾留」、その次が「起訴(公判請求)」です。
勾留されると最長で23日間外に出ることができませんから、仕事を失うリスクが高くなります。
また、長期間の勾留による精神的不調から不利な供述調書が作成されてしまう危険性も高まります。
他方、逮捕後13日目を待たずに公判請求されてしまう可能性もあります。
どちらも迅速に適切な対応をとる必要があるので、できるだけ早く弁護士に相談すると良いと思います。
- 得意分野
- 一般民事、刑事事件
- プロフィール
- 東京理科大学理学部 卒業
野村證券株式会社
成蹊大学法科大学院 修了