自首とは|出頭との違い、減刑の可能性などのメリットは?
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「自首と出頭は、どのように違うのか知りたい」
「自首した場合のメリットについて理解したい」
「実際に自首するには、どうすればいいのか知りたい」
このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
自首することは相当な勇気を必要としますが、自首しなかった場合よりも本人に有利な処分を受けられる可能性があります。
今回は、刑事事件における自首の成立要件と効果、事実上のメリット、自首後の刑事手続の流れ、自首に弁護士が同行するメリットなどについて解説します。
自首とは
自首とは、犯罪行為を行った者が、捜査機関に発覚する前に自ら捜査機関(司法警察員または検察官)に対して、罪を自発的に申告し、処分を求めて名乗り出ることをいいます。
自首は刑法第7章「犯罪の不成立及び刑の減免」の第42条に刑の任意的減免事由の1つとして規定されています。
この他、個別の犯罪条項には刑の必要的免除や必要的減軽事由として「自首した者」が挙げられているものがあります(刑法第80条等)。
刑法第42条が刑の任意的減軽を認める理由として、一般には以下の理由が挙げられます。
- 犯人の悔い改めによる責任非難(規範意識の欠如に対する非難可能性)の減少
- 犯罪の捜査及び犯人の処罰を容易にして訴訟手続の円滑な運用に寄与するという刑事政策的理由
自首と出頭の違い
出頭とは、既に犯罪の被疑者として特定されている者が捜査機関に出向くことをいいます。
自首と出頭の明確な違いは、捜査機関が犯行の事実と犯人の特定を既に行っているか否かです。
自首の場合、犯人の特定・犯罪事実の特定が行われる前に犯人が名乗り出ていますが、出頭の場合は既に捜査機関がそれらを把握しています。
つまり、指名手配されている犯人が捜査機関に出向いて自己の氏名と犯罪事実を告白した場合は自首とは認められず、出頭の扱いになります。
刑事ドラマなどでよく警察官が犯人に対して「自首すれば罪が軽くなる」と呼びかけるシーンがありますが、その時点で警察が犯人と犯罪事実を把握していた場合、犯人が呼びかけに応じたとしても自首ではなく出頭にすぎないことになります。
被疑者が出頭しても有利な処分が得られるとは限りませんが、被疑者が捜査機関に出頭したことにより逃亡や証拠隠滅のおそれが相当低くなるため、逮捕されない可能性や、逮捕された後に勾留されずに身柄が解放される可能性は高くなります。
自首による減刑の可能性とその他のメリット
刑法第42条は、自首の効果として、裁判官が刑を減軽することができる(刑の任意的減軽・酌量減刑)と定めています。
このように刑法の規定上は有罪判決が下される場合の裁判官の裁量による減刑だけが定められていますが、実際にはこれ以外にもメリットがあります。
また、刑の減軽の具体的な方法については刑法第68条に定められており、例えば有期懲役又は禁錮刑を減軽する場合は刑期が長期・短期とも半分に減らされます。
自首によって刑が減軽されるのはどのような場合か、また刑の任意的減軽以外にどのようなメリットがあるのか説明します。
1.自首によって認められるのは刑の任意的減軽
犯人が捜査機関に出向いて自己の犯罪事実を告白したことが自首として認められたとしても、起訴されて有罪判決が下される場合に必ず刑が軽くなるというわけではありません。
どのような犯罪や状況であれば減刑が認められやすいかという点については一概には言えないものの、以下のような場合は減刑が認められやすい傾向にあります。
- 自首した被告人が反省していることが証拠によって示されている
- 被害者と示談が成立している
被害者と示談が成立している場合は、自首をしていなくても法定刑の範囲で執行猶予や酌量減刑が行われやすいため、減刑が認められやすいです。
なお、刑法には第42条の例外として、特定の犯罪において自首の効果として刑の必要的免除(必ず免除される)や必要的減軽が定められています。
これらの犯罪は、関係者による自首以外の方法による捜査が困難である、あるいは発生自体が重大な法益侵害をもたらすことから特に自首のメリットを大きくする必要があるためです。
- 刑の必要的免除の例:刑法第80条(第77条の内乱罪)・第93条(私戦予備陰謀罪)
- 刑の必要的減免の例 刑法第228条の3(身代金目的略取等予備罪)
2.逮捕されない・不起訴・執行猶予の可能性は高くなる
犯罪被疑者の逮捕の要件(刑事訴訟法第199条)である逮捕の理由と必要性は、具体的には逃亡や証拠隠滅のおそれがあることです。
自首が認められれば、逃亡のおそれは事実上なくなります。
また、犯罪事実について詳細に供述すれば証拠隠滅のおそれも相当程度低くなります。
それにより、逮捕されず在宅事件として扱われることになる可能性が高くなります。
また、本人の反省の意思が自首という行動によって示されているので、被害者の処罰感情が薄まり、示談の成功率が高くなります。
示談が成立した場合は、起訴猶予になる可能性も高くなります。
3.その他のメリット
前述したメリット以外にも、逮捕を免れることによる二次的なメリットとして、メディアに公表されないということがあります。
逮捕されると多くの場合テレビ・新聞・ネットニュース等で報道され、被疑者が20歳以上(2022年4月からは18歳以上)であれば氏名も公表されることになります。
これにより本人に多大な不利益が及ぶだけでなく家族等も不利益を被るのはいうまでもありません。
逮捕を免れれば、一般人の場合は送検されても報道されることはほとんどありません。
自首する方法と注意点
実際に自首する際はどのような方法で行えばよいのでしょうか。自首する方法と注意すべき点について説明します。
1.事件が発生した場所を管轄する警察署に出頭する
自首する際は、事件が発生した場所を管轄する警察署に出頭して下さい。
自首しようとする者が警察署に現れた場合、警察官は管轄区域内の事件であるか否かを問わず受理しなければならないとされています(犯罪捜査規範第63条)。
しかし、当該犯罪が行われた場所や犯人の居住地域等と全く関係ない警察署に自首しようとしても、受け付けてもらえない可能性もあります。
2.証拠を可能な限り持参する
警察署では捜査の一環として本人に犯行を再現させて撮影するということがよく行われます(実況見分:犯罪捜査規範第104条)。
その際、本人には犯行時に着用していた服を着てもらいます。
衣服のポケットに凶器を入れる等、犯行時の衣服が犯罪行為と関係があることが多いからです。
本人が別の服で出頭した場合、警察が犯行時の衣服を取りに自宅に行くことになります。
これによって家族等に知られてしまうことを避けるためには、自首する際、可能な限り犯行時の衣服(鞄類、靴等を含む)を着用して出頭して下さい。
また、家宅捜索を防止するためにも、事件の証拠になりそうなもの(パソコン、交通系ICカード等)も持参するとよいでしょう。
自首する前に証拠を捨ててしまうと、証拠隠滅とみなされて逮捕される可能性が高くなります。
そのため、自首を決意した際は、証拠物を残し、出頭時に可能な限り持参することが大切です。
3.家族等を介して自首することは認められない
犯人が自分の配偶者や兄弟等の身内に頼んで、警察署に犯罪事実を申告してもらうことは自首に該当するのでしょうか。
被害者等の告訴権者が告訴をする場合には、代理人により告訴を行うことができますが(刑事訴訟法第240条)、自首について代理人により行うことは認められません。
もっとも、犯人が警察署の近くまで同行している等、捜査機関の支配内に入る姿勢であれば、他人を介しての自首も認められると解されています。
なお、本人が自首する意思があるものの病気や突然の怪我等で警察署に出頭できない場合に、弁護士が代わりに出頭することは可能です。
自首した後の刑事手続の流れ
犯人が警察署に出向いて自己の犯罪事実を告白し、自首と認められた場合、被害届が出されていれば警察は逮捕するか、逮捕せずに送検するかを判断します。
自首した後の刑事手続の流れについて説明します。
1.自首後の取調べ
犯人が警察署に出向いて自首した場合、警察で本人の供述に基づいて自首調書を作成します(刑事訴訟法第241条2項)。
ただし、被害届が出されていない場合、本人の供述以外の証拠が存在しなければ自首調書を作成しない場合もあります。
その場合は事件として立件されず、被疑者として前科前歴が残ることもありません。
自首調書を作成後、警察官は逮捕の理由と必要性を判断した上で、逮捕する場合は裁判所に逮捕状を請求します(同法第199条1項2項)。
2.逮捕・勾留または在宅捜査
被疑者が逮捕されると、警察官の判断により、証拠物や警察官の意見書とともに48時間以内に送検されます(刑事訴訟法第203条2項)。被疑者の身柄が釈放されている場合は送検手続の時間制限はありません。
逮捕後送検の場合、検察官は被疑者を受け取った時から24時間以内に裁判官に勾留請求を行うか、被疑者を釈放します(同法第205条1項)。
被疑者が勾留された場合、勾留状を発行する裁判官は被疑者に被疑事実を告げるとともに、被疑者が私選弁護人を選任していない場合で、被疑者が経済的理由その他の事情により私選弁護人を選任できなければ国選弁護人の選任を請求できる旨を伝えます(同法第207条2項)。
勾留期間は原則10日間、延長が認められれば原則として最大20日間となります(同法第208条)。
勾留期間中あるいは在宅事件の取調べ中に、検察官は被疑者を起訴するか不起訴処分とするかを判断します。
自首が認められていて不起訴処分になる場合は起訴猶予(同法第248条・事件事務規程第75条2項20号)を理由とすることが多いです。
3.起訴された場合
勾留された場合、裁判官の判断により上限を2か月として起訴後勾留(刑事訴訟法第60条)される可能性がありますが、勾留された場合、被告人または弁護人その他刑事訴訟法第88条が定める保釈請求権者の請求により保釈請求することができます。
保釈の要件を定める刑事訴訟法第89条または第90条のいずれかに該当する(裁判官がその旨認める)場合は、保釈金納付を条件に保釈が認められます。
そして、公訴提起から1~2か月後に、第1回公判が行われます。
通常の公判手続の流れは以下の通りです。
開廷前の手続:公判準備(証拠整理・開示等)・期日指定・召喚・通知など
冒頭手続:人定質問・起訴状朗読・被告人に対する黙秘権等の告知・被告人及び弁護人の意見陳述など
証拠調べ手続:冒頭陳述・証拠調べ請求・証拠決定・証拠調べ実施など
証拠調べ終了後の手続:検察官の論告(求刑)・被告人及び弁護人の意見陳述
判決言渡し
被疑事件が裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第2条に該当し、裁判員と裁判官との合議体で裁判が行われる場合は、第1回公判の前に公判前整理手続(刑事訴訟法第316条の2~27)が行われます。
裁判官の職権又は検察官・被告人・弁護人のいずれかの請求により、第1回公判後に期日間整理手続が行われる場合もあります(刑事訴訟法第316条の28)
4.略式起訴された場合
被疑犯罪が100万円以下の罰金刑を含む場合、検察官が、略式命令請求が相当と判断すると、勾留中あるいは在宅被疑者の取調べ中に被疑者にその旨伝え、略式手続について説明します(刑事訴訟法第461条の2)。
その後、被疑者が異議を申立てなければ、検察官は公訴提起(起訴)と同時に書面で簡易裁判所に対して略式命令請求を行います(同法第462条)。
略式命令請求が行われると簡易裁判所で非公開の略式手続が行われ、100万円以下の罰金または科料を科す命令が出されます。
略式命令に対しては執行猶予(刑法第25条)の他、没収等の処分を行うことができます(刑事訴訟法第461条)。
自首に弁護士が同行するメリット
自首する際に弁護士が同行した場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的なメリットについて説明します。
1.逮捕される可能性が低くなる
弁護士が同行することにより、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを証明しやすくなるため、逮捕される可能性が低くなります。
2.家族や職場への発覚を回避できる
自首が認められて逮捕されなかった場合、身元引受手続として、身元引受人となった人に警察署まで本人を迎えに来てもらいます。
身元引受人とは、刑事事件で警察の聴取等を受けた被疑者が以後逃走や証拠隠滅をせず再度罪を犯すことがないよう監督する人のことをいいます。
身元引受人が必要となる場合の1つに、自首同行のために警察へ出頭する場合があります。
弁護士が同行する場合、弁護士が身元引受人となることができます。
そのため、警察署からの連絡は弁護士に行くことになり、自首したことや犯罪事実について家族や勤務先に知られずに済みます。
3.自首に伴う精神的な負担を減らすことができる
自首する本人は「自首しても刑が軽くなるだろうか」「刑は軽くなるかもしれないが、起訴されて前科がついてしまうのだろうか」など、自分が起こした事件について自首することによって得られるメリットがあるのかわからず不安な気持ちになることもあるかと思います。
また、逮捕された後、取調べで誘導尋問されて、自分が行っていないことまで自白させられるのではないかという不安もあるかと思います。
自首前から弁護士に相談することで、その事件で不利益な処分を回避できる見通しについて説明を受けられます。
また、自首する際に警察署に持参すべき証拠類や、自首してからの供述の仕方などに関するアドバイスも受けられます。
また、一人で警察署に行くのではなく弁護士がついていてくれるという安心感も得られます。
4.弁護士が自首に同行した場合の費用
弁護士が自首前から相談を受け、自首に同行する場合の費用については、法律事務所により報酬体系が異なります。
「自首同行サービス」、「身元引受人サービス」等としてそのサポート内容と料金を明示している事務所もあります。
サポートの内容も事務所によって異なりますが、逮捕されなかった場合は、自首するか否かの判断から身元引受人まで含めて、通常10万円~20万円程度が相場です。
その後、自首調書が作成されて立件され本事件での弁護を依頼する場合に本事件の着手金が発生しますが、その場合に自首同行の費用を着手金から控除する法律事務所も多くあります。
まとめ
今回は、刑事事件における自首の成立要件と効果、事実上のメリット、自首後の刑事手続の流れ、自首に弁護士が同行するメリットなどについて解説しました。
自首して取調べを受け、逮捕・勾留された場合や、在宅で送検された場合は自身の刑事弁護や示談交渉のために弁護人が必要となります。
自首することを決意した段階で弁護士に相談すれば、自首するかどうかの判断も含め、初期段階から適切な判断や行動ができるようにアドバイスを受けることができます。
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