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更新日: 代表弁護士 中川 浩秀

執行猶予とは何?期間が終わったらどうなる?最長期間や条件をわかりやすく解説

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記事目次

「執行猶予を得るためには、どのような条件を充たす必要があるの?」
「執行猶予と実刑判決には、どのような違いがあるの?」
このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、刑の全部の執行猶予と刑の一部の執行猶予、保護観察制度の概要、実刑判決と執行猶予判決の違い、執行猶予を得られる可能性がある事件、執行猶予を得られる可能性が低い事件などについて解説します。

執行猶予とは

執行猶予とは

執行猶予とは、有罪判決で刑を言い渡しながら、情状により、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その刑の全部または一部の執行を猶予する制度です。猶予期間中に取消事由が生じないまま期間が経過すると、刑の言渡しは効力を失います。

2025年6月1日施行の改正刑法により、従来の懲役と禁錮は「拘禁刑」に一本化されました。そのため、本記事では、改正前の制度や過去の判決を説明する場合を除き、「拘禁刑(旧・懲役/禁錮)」と表記します。

引用元:刑法|e-Gov法令検索

執行猶予期間が満了すると刑の言い渡しの効力や資格制限等が、将来に渡って消滅します。

ただし、執行猶予中に犯罪を犯した場合など、一定の事由が生じた場合は、執行猶予が取り消される可能性があります。

執行猶予判決には、刑の全部の執行猶予と一部の執行猶予の2つの種類があります。

執行猶予の趣旨・目的

執行猶予は、犯罪をした人を直ちに刑事施設へ収容するのではなく、社会内で反省し、改善更生する機会を与える制度です。

本人の仕事や生活基盤、家族関係などを維持しながら、再犯の防止と円滑な社会復帰を図る役割があります。

ただし、法律上の要件を満たせば当然に付されるものではありません。犯罪の内容や被害結果、前科、示談・被害弁償の状況、反省の程度、更生を支える家族や勤務先の有無などを踏まえ、裁判所が情状により判断します。刑法25条は、一定の要件を満たす場合に「情状により」執行猶予を付すことができると定めています。

引用元:刑法第25条・第25条の2|e-Gov法令検索

執行猶予がつく割合

令和7年版犯罪白書によると、令和6年に有期の懲役刑または禁錮刑を言い渡された人のうち、刑の全部について執行猶予が付された割合は66.2%でした。

もっとも、執行猶予が付くかどうかは、罪名だけでなく、犯行態様、被害の程度、前科、示談の成立、反省や再犯防止策など、個別の事情によって異なります。

引用元:令和7年版犯罪白書|法務省

執行猶予がつくとどうなるのか

執行猶予がつくとどうなるのか

執行猶予が付くと、判決で言い渡された刑の執行が一定期間猶予され、その間に再犯などがなければ刑の執行が免除されます。

つまり、刑務所に入らずに社会内で生活を続けることが可能です。

ただし、猶予期間中に再犯や重大な違反があれば、猶予が取り消されて実刑が執行されます。

執行猶予の具体例

執行猶予の具体例としては、詐欺罪で起訴された特殊詐欺の受け子の事案があります。

被告人は、組織的詐欺グループの受け子として被害者から600万円もの多額の現金を受け取っていました。

被告人は詐欺罪で起訴されましたが、弁護人が被害者と示談交渉を行い、被害金額の全額を弁償し、被告人を宥恕する内容での示談を成立させました。

この示談活動が裁判所にも評価され、裁判所は被告人に対し、3年の拘禁刑、執行猶予5年の判決を言い渡しました。 

​執行猶予が取り消されるケース

執行猶予は、一度言い渡されれば必ず猶予期間の満了まで続くわけではありません。

猶予期間中にさらに罪を犯した場合や、保護観察に付されている人が遵守事項に違反し、その情状が重い場合などには、執行猶予が取り消されることがあります。

執行猶予の取消しには、法律上の要件を満たした場合に原則として取り消される「必要的取消し」と、裁判所の判断によって取り消すことができる「裁量的取消し」があります。刑法26条・26条の2にそれぞれ要件が定められています。

執行猶予が必ず取り消しされるケース​

刑法第26条では、一定の事由がある場合、裁判所は刑の全部の執行猶予を取り消さなければならないと定めています。これを「必要的取消し」といいます。

必要的取消しとなるのは、原則として次のケースです。

  • 執行猶予期間中にさらに罪を犯し、拘禁刑以上の刑が確定し、その新しい刑の全部について執行猶予が付されなかった場合
  • 執行猶予の言渡し前に犯した別の罪について拘禁刑以上の刑が確定し、その刑の全部について執行猶予が付されなかった場合
  • 執行猶予の言渡し前に、別の罪で拘禁刑以上の刑に処せられていたことが後から発覚した場合

必要的取消しは、裁判所が取消しの必要性を個別に判断する制度ではなく、条文上の要件を満たせば、原則として執行猶予を取り消さなければならない点に特徴があります。

引用元:刑法第26条|e-Gov法令検索

執行猶予が取り消しされる可能性があるケース

刑法第26条の2では、一定の事由がある場合に、裁判所が刑の全部の執行猶予を取り消すことができると定めています。これを「裁量的取消し」といいます。

裁量的取消しの対象となるのは、次のケースです。

  • 執行猶予期間中にさらに罪を犯し、罰金刑に処せられた場合
  • 保護観察に付された人が遵守事項に違反し、その情状が重い場合
  • 執行猶予の言渡し前に、別の罪で拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予を受けていたことが発覚した場合

必要的取消しでは、法律上の要件を満たすと原則として取消しが必要です。これに対し、裁量的取消しでは、違反の内容や程度、再犯のおそれ、本人の反省や生活状況などを踏まえ、実際に取り消すかどうかを裁判所が判断します。

引用元:刑法第26条の2|e-Gov法令検索

刑の全部の執行猶予の要件

刑の全部の執行猶予の要件

刑の全部の執行猶予の要件は、初回の執行猶予(刑法第25条第1項)と再度の執行猶予(刑法第25条第2項)では異なります。

1.初回の執行猶予の場合

初回の執行猶予では、下記のいずれかに該当する被告人が3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の言い渡しを受けたときに、裁判官の裁量により刑の全部の執行を猶予します。

  • 前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者
  • 前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者

※「拘禁刑」とは、従来の懲役刑と禁錮刑を一本化して新たに創設された刑罰です(2025年6月1日施行)。

2.再度の執行猶予の場合

再度の執行猶予とは、過去に拘禁刑以上の刑を言い渡され、その刑の全部について執行猶予を受けた人が、再び有罪判決を受けた場合に、もう一度、刑の全部の執行を猶予する制度です。

2025年6月1日施行の改正刑法により、再度の執行猶予の対象となる刑は、従来の「1年以下の懲役または禁錮」から「2年以下の拘禁刑」へ拡大されました。

再度の執行猶予を得るためには、次の要件を満たす必要があります。

  • 前に拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部の執行を猶予された人であること
  • 今回言い渡される刑が2年以下の拘禁刑であること
  • 情状に特に酌量すべき事情があること
  • 再度の執行猶予を受けて保護観察に付されている期間中に、さらに罪を犯したケースではないこと

「情状に特に酌量すべき事情」があるかどうかは、犯行の軽重、被害弁償や示談、反省、再犯防止策、家族の監督、更生環境などから判断されます。

なお、改正後は、初回の保護観察付執行猶予中に犯した罪であっても、要件を満たせば再度の執行猶予が認められる余地があります。一方、再度の執行猶予には保護観察が付され、その期間中にさらに罪を犯した場合、原則として三度目の執行猶予を受けることはできません。

引用元:刑法第25条第2項・第25条の2|e-Gov法令検索

刑の一部の執行猶予

刑の一部の執行猶予(刑法第27条の2)は、2013年の刑法改正で新設され、2016年6月に施行された制度です。

刑法第27条の2第1項が「犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるとき」と規定するように、特に再犯防止を目的とした制度です。

1.一部の執行猶予とは

一部の執行猶予とは、3年以下の拘禁刑の言い渡しに対してその一部(例えば2年間の拘禁刑)は実刑判決となり、残りの期間(例えば1年間)についてはその執行を1年以上5年以下の期間、猶予することを意味します。

これまでの執行猶予制度の下では、実刑判決を受けて服役中に仮釈放された人に対しては保護観察に付すことが可能でしたが、実刑判決の服役期間満了により刑務所を出所した人に対しては保護観察に付すことができず、刑期満了者による再犯事例が多いという問題がありました。

刑の一部の執行猶予により、実刑判決の一部を執行した上でその期間満了後に最長5年までの執行猶予期間を設け、その期間満了まで保護観察をつけることができることになりました。

薬物犯罪者や、精神的な疾患により万引きを繰り返す人など、保護観察により更生を支援して再犯を防ぐ必要性が特に大きい人に対する再犯防止効果が期待されています。

2.一部の執行猶予を受ける可能性があるケース

刑の一部の執行猶予を受ける可能性があるのは、下記のいずれかに該当する被告人が3年以下の拘禁刑の言い渡しを受けた場合において、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときです。

  • 前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者
  • 前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者
  • 前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者

執行猶予判決と実刑判決との違い

執行猶予判決と実刑判決との違い

実刑判決も執行猶予判決も、裁判を経て下される有罪判決である点は同じです。

両者の違いは、簡単にいうと刑が直ちに執行されるか、一定期間猶予されるかという点です。

1.実刑判決が確定した場合の効力

実刑判決が確定した場合、一定の例外の場合を除いてその刑が執行されます。

第一審・第二審の裁判で判決を言い渡されてから14日間は上訴することができるので、この期間は刑の執行は行われませんが、閉廷後ただちに身柄を拘束されて拘置所に移送されます。(保釈されていた場合は判決言い渡しと同時に保釈が失効し、勾留されていた場合は引き続き拘束されます。)

上訴せず、あるいは最高裁で上告棄却の判決を言い渡されてから14日が経過すると実刑判決が確定して拘置所から刑務所に移送されます。

ただし、死刑判決が確定した場合は法務大臣の執行命令が出されるまで拘置所に拘置されます。

なお、判決が確定するまでに勾留されていた期間については、裁判所の判断により、未決勾留日数の全部または一部が刑期に算入されることがあります。

刑法第21条では、「未決勾留の日数は、その全部又は一部を本刑に算入することができる」と定められています。

どの程度の日数が算入されるかは、事件の経過や勾留期間などを踏まえて判断されます。

2.執行猶予判決が確定した場合の効力

①刑の全部の執行猶予の場合

刑の全部の執行猶予を付された判決が言い渡された場合、判決を受けた人は閉廷と同時に釈放されます。

判決前に勾留されていた場合は、一度拘置所に荷物を取りに戻ってから帰宅できます。

判決が確定した場合、保護観察処分が付せられている人は早期に保護観察官との面談を受け、定めた住居で保護観察官や保護司の指導監督を受けながら遵守事項を守った生活を始めることになります。

保護観察処分が付せられていない場合は、法律で禁止されている事項を除いて通常の生活を送ることが可能になります。執行猶予期間中に新たに犯罪行為で起訴され有罪判決を受ける等の事由で執行猶予を取消されることがなく猶予期間を経過した時点で、刑の言渡しは効力を失います(刑法第27条)。

②刑の一部の執行猶予の場合

刑の一部の執行猶予を付された判決が言い渡された場合、判決が確定するまでは実刑判決の場合と同様に拘置所に身柄を拘束されます。判決確定後は、猶予を受けなかった期間について拘禁刑が執行され服役することになります(刑法第27条の2第2項)。

その期間が終わったら、執行猶予期間が始まり、刑の全部の執行猶予判決が確定した場合と同様、執行猶予が取り消されずに期間を経過した時点で「猶予を受けなかった期間を刑期とする拘禁刑」の執行を受け終わったことになります(同法第27条の7)。

執行猶予を得られる可能性がある事件

1.執行猶予を得ることができない場合

刑の全部の執行猶予を受けるためには、原則として、最終的に言い渡される刑が3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金である必要があります。刑の一部の執行猶予についても、3年以下の拘禁刑が対象です。

そのため、裁判で3年を超える拘禁刑が言い渡される場合には、これらの執行猶予を受けることはできません。

一方、法定刑の下限が3年を超える犯罪であっても、未遂、従犯、自首などによる法律上の減軽や酌量減軽などによって処断刑が軽くなり、最終的に3年以下の拘禁刑が言い渡される余地がある場合には、法律上当然に執行猶予が排除されるわけではありません。刑法には刑の減軽に関する規定があります。

また、再度の執行猶予については、前に拘禁刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予を受けた人が、2年以下の拘禁刑を言い渡され、情状に特に酌量すべき事情がある場合に認められる可能性があります。

2025年6月1日の改正後は、初回の保護観察付執行猶予期間中に罪を犯した場合でも、要件を満たせば再度の執行猶予が認められる余地があります

一方、再度の執行猶予を受けて保護観察に付され、その保護観察期間中にさらに罪を犯した場合には、原則として再び執行猶予を受けることはできません。現行刑法25条2項ただし書は、この場合を再度の執行猶予の対象外としています。

2.刑の一部の執行猶予を得られる可能性がある事件

刑の一部の執行猶予には特に再犯防止という目的があることから、刑法第27条の2に定める要件を満たすことに加え、刑の一部の執行猶予を付すことが必要かつ相当であるかという点が特に考慮されます。

薬物犯罪や窃盗罪の再犯等、保護観察処分の中で更生と再犯防止のためのプログラムが用意されていて、それを受講することが望ましい場合等が、刑の一部の執行猶予を得られる可能性がある事件に該当します。

執行猶予を得られる可能性が低い事件

刑の執行猶予を得られる可能性がない事件、可能性が低い事件も存在します。

具体的にどのような事件か説明します。

1.執行猶予を得られる可能性がない事件

法定刑の有期懲役の短期が3年を超える犯罪の被疑事件については、執行猶予を得られる可能性がありません

例えば、殺人罪(刑法第199条)のように、
法定刑が死刑・無期若しくは5年以上の拘禁刑と定められている場合は、
犯情により情状酌量を最大限に行っても5年の拘禁刑となり、刑法第25条及び第27条の2の要件にあてはまらないことになります。

また、過去に拘禁刑に処せられ保護観察処分付執行猶予を付された人が、
その保護観察期間内に再び犯罪容疑で起訴され有罪判決を受けた場合は、
その犯罪の処断刑の軽重を問わず再び執行猶予を得られる可能性がありません(刑法第25条2項但書)。

2.執行猶予を得られる可能性が低い事件

執行猶予を得られる可能性が低いのは、法定刑の長期が3年を超える拘禁刑または罰金刑の多額が50万円を超える犯罪の事件で犯情が重い場合です。

例えば、詐欺罪(刑法第246条)や業務上横領罪(刑法第253条)の事件で被害金額が数千万円に及ぶ場合や、その被告人が同一または複数の被害者に対して反復継続して詐欺行為・横領行為を行っていたような場合は3年を超える拘禁刑の実刑判決が下される可能性が高くなります。

執行猶予が終わったらどうなる?

執行猶予の取り消し事由が発生せずに執行猶予期間が経過した場合は、刑の言い渡しの効力がなくなります。

もっとも、執行猶予期間を満了したとしても、前科はつきます。

取り消し事由が発生せずに経過した場合は刑の言い渡しの効力がなくなる

執行猶予期間中に再犯等の取り消し事由が生じることなく、その期間が経過した場合には、刑の言い渡しの効力は失われます。

その結果、言い渡された拘禁刑が実際に執行されることはなく、刑務所に収容されることもありません。

前科は残る

執行猶予期間が満了し、刑の言い渡しの効力が失われた場合であっても、有罪判決を受けた事実自体が消えるわけではなく、前科は残ります。

執行猶予は刑の執行を猶予する制度であり、無罪となる制度ではないためです。

前科がつくことによる社会生活上のデメリットとしては、就職や転職の場面で不利に扱われる可能性がある点が挙げられます。

特に、履歴書に賞罰欄がある場合や、身元調査が行われる職種、公務員や資格制限のある職業では影響が生じることがあります。

また、海外渡航やビザ申請の際に、犯罪歴の有無を申告しなければならず、渡航先や内容によっては制限を受ける場合もあります。

さらに、再度罪を犯した場合には、量刑判断において前科が不利な事情として考慮されることもあり、将来にわたって影響を及ぼす可能性があります。

執行猶予に関するよくある質問と回答

最後に、執行猶予に関してよくある質問とそれへの回答をご紹介したいと思います。

1.執行猶予は最長で何年ですか?

刑の全部の執行猶予の期間は、裁判が確定した日から1年以上5年以下です。

具体的な執行猶予期間は、犯罪の内容や量刑、被告人の前科、反省や再犯防止の状況などを踏まえて裁判所が定めます。刑法25条は、執行猶予期間を「1年以上5年以下」と定めています。

2.執行猶予判決を得られた場合は前科はつきませんか?

前科がつくことは避けられません。無罪判決とは異なり、有罪判決を受けているからです。執行猶予判決を得ることができても、なぜ前科がつくのかという点については誤解が多いので注意が必要です。

前科とは、有罪判決に処せられた履歴のことをいいます。執行猶予は、有罪判決に基づく刑の執行を一定期間猶予する制度です。

そのため、執行猶予判決を得ることができても有罪判決を受けた事実が変わることはないため、前科は残ることになります。

3.執行猶予中に就職することはできますか?

執行猶予中であっても、民間企業への就職が法律上一律に禁止されるわけではありません。

ただし、一部の国家資格や許認可が必要な職種では、有罪判決や拘禁刑以上の刑に処せられたことが欠格事由や登録制限に該当する場合があります。希望する資格や職種について、個別の法令を確認することが必要です。

また、応募先から犯罪歴や賞罰について質問された場合は、質問の内容に応じて正確に回答し、虚偽の申告をしないことが重要です。

保護観察付執行猶予の場合、就職自体について一律に事前許可を受ける必要があるわけではありません。ただし、保護観察官や保護司から勤務状況の申告を求められた場合は応じる必要があり、離職や転職を事前申告事項とする特別遵守事項が設定されることもあります。

実務上は、就職、転職、退職など勤務状況が変わる場合、あらかじめ担当の保護観察官または保護司に相談しておくことが安全です。

引用元:更生保護法第50条・第51条|e-Gov法令検索

4.執行猶予中に海外旅行に行くことは可能ですか?

執行猶予中であることだけを理由として、海外渡航が一律に禁止されるわけではありません。有効な旅券を所持し、渡航先の入国条件を満たしていれば、海外旅行が可能な場合があります。

ただし、旅券法第13条では、拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで、または執行を受けることがなくなるまでの人について、旅券を発給しないことができると定めています。そのため、執行猶予中に旅券を申請する場合、発給が制限される可能性があります。

また、犯罪歴がある人の入国を制限している国もあるため、渡航先の大使館や領事館などで入国条件を確認することが必要です。

保護観察付執行猶予の場合は、届け出た住居に居住し、転居または7日以上の旅行をするときは、あらかじめ保護観察所長の許可を受けなければなりません。単なる事後の届出では足りないため、海外旅行や転居を予定している場合は、日程を決める前に担当の保護観察官または保護司へ相談しましょう。

7日未満の旅行であっても、特別遵守事項として事前申告が必要とされている場合があるため、個別の遵守事項を確認することが大切です。

引用元:
旅券法第13条|e-Gov法令検索
更生保護法第50条・第51条|e-Gov法令検索

5.執行猶予と保護観察の違いは?

執行猶予と保護観察は混同されがちですが、次のような違いがあります。

執行猶予とは、裁判で有罪判決を受けた場合に、刑の執行を一定期間猶予する制度です。

一方、保護観察は、その猶予期間中に再犯を防ぐため、保護観察官や保護司の指導・監督を受けながら社会内で生活する制度です。

すなわち、執行猶予は「刑の猶予」であり、保護観察は「監督つきの更生支援」と言えます。

執行猶予が付されても必ず保護観察が付くわけではなく、裁判所の判断により決定されます。

執行猶予 保護観察
定義 有罪判決後、刑の執行を一定期間猶予する制度 更生を目的とした社会内での指導・監督制度
対象者 一般的な有罪者 執行猶予中の者や再度の執行猶予者
実施主体 裁判所 保護観察官・保護司
目的 刑の執行を猶予し、社会復帰の機会を提供 再犯防止と社会復帰の支援
必要性の有無 任意(裁判所の判断による) 再度の執行猶予には必須
遵守事項 なし あり(遵守事項の遵守が求められる)
TSLにおける被害届が出された場合の弁護事例

不同意わいせつや詐欺、過失致死等の事案で、迅速な対応により執行猶予を獲得した実績があります。
突然の逮捕で不安な思いを抱えているご本人やご家族の気持ちに寄り添い、大切な未来を守るために全力でサポートさせていただきます。

執行猶予を獲得した解決事例

東京スタートアップ法律事務所では、不同意わいせつ、窃盗、交通死亡事故などの刑事事件において、実刑判決を回避し、執行猶予付き判決を得た解決事例があります。

執行猶予を得るためには、被害者との示談や被害弁償だけでなく、本人の反省、家族による監督、再犯防止策などを裁判所に具体的に示すことが重要です。

以下では、当事務所が取り扱った執行猶予の解決事例を紹介します。

事例1|未成年者への不同意わいせつ事件で執行猶予を獲得

依頼者の息子が、未成年者に対する不同意わいせつの疑いで逮捕された事案です。

ご家族は、今後の刑事手続や判決の見通しが分からず、大きな不安を抱えていました。当事務所では、ご本人とご家族の状況を確認し、判決までの手続や必要な対応について丁寧に説明しながら弁護活動を進めました。

迅速な対応を行った結果、裁判では実刑判決を回避し、執行猶予付き判決を得ることができました。

解決事例:息子が未成年への不同意わいせつの疑いで逮捕されてしまった|執行猶予を獲得

事例2|窃盗未遂事件で示談を成立させて執行猶予を獲得

窃盗未遂の疑いで逮捕・勾留された40代女性から依頼を受けた事案です。

当事務所では、身柄拘束が長期化することを防ぐため、早期から弁護活動を開始するとともに、被害者との示談交渉を進めました。その結果、示談が成立し、依頼者は留置施設から早期に釈放されました。

裁判では拘禁刑(当時の懲役刑)が言い渡されたものの、実刑判決を回避し、執行猶予を獲得して事件を終結させることができました。

解決事例:窃盗未遂で勾留されてしまった|示談を成立させ、執行猶予を獲得

事例3|交通死亡事故で懲役1年・執行猶予3年を獲得(当時の刑名)

自動車を運転中、ブレーキが間に合わず死亡事故を起こしてしまった30代男性から依頼を受けた事案です。

私選弁護人を選任できる期限が迫っている状況でしたが、当事務所が速やかに相談を受け、限られた時間の中で弁護活動を進めました。

裁判の結果、当時の刑名で懲役1年、執行猶予3年の判決となり、刑務所への収容を回避して、社会内で生活を続けることができました。

解決事例:ブレーキが間に合わず死亡事故を起こしてしまった|懲役1年・執行猶予3年で事件終了

まとめ|執行猶予を目指すなら早めに弁護士へ相談を

まとめ

今回は、執行猶予の基本的な仕組みや執行猶予が付く割合、刑の全部・一部の執行猶予の要件、執行猶予が取り消されるケース、実刑判決との違い、執行猶予期間が終わった後の前科への影響などについて解説しました。

執行猶予を得られるかどうかは、言い渡される刑の重さだけでなく、犯行の内容や被害の程度、前科、示談・被害弁償の状況、本人の反省、再犯防止策など、さまざまな事情を踏まえて判断されます。

ご本人やご家族が刑事事件で逮捕・起訴され、実刑判決を避けたいと考えている場合には、できる限り早い段階で刑事事件に精通した弁護士へ相談することが大切です。

東京スタートアップ法律事務所では、ご相談者様の状況やご意向を丁寧に伺ったうえで、示談交渉や被害弁償、再犯防止策の検討など、執行猶予の獲得に向けた弁護活動を行います。

刑事事件でお困りの場合は、お早めにご相談ください。

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執筆者 代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会 登録番号45484
東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士として、男女問題などの一般民事事件や刑事事件を解決してきました。「ForClient」の理念を基に、個人の依頼者に対して、親身かつ迅速な法的サポートを提供しています。
得意分野
不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
プロフィール
京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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