処分保留で釈放とは?再逮捕の可能性や不起訴との違いを解説
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記事目次
「逮捕後、勾留されたものの処分保留される」という事例は数多く報道されています。
2020年3月には、死体遺棄で逮捕された男性1人が処分保留で釈放されています。
また2020年6月には、大麻取締法違反の疑いで逮捕されていた警察官が、処分保留で釈放されました。
では、処分保留で釈放されたあとはどうなるのでしょうか。
処分保留の概要や、処分保留になる理由とともに解説します。
「処分保留」とは?
刑事事件における「処分保留」とは、その時点では起訴しない判断を検察が下すという意味では「不起訴処分」と同様ですが、それぞれ違う意味で使用されます。
処分保留という判断が、具体的にどのような意味を持つのかについて解説していきます。
処分保留とはどういう意味?
処分保留とは、起訴しないという判断を下す「不起訴処分」と異なり、一旦起訴か不起訴の判断を保留する手続きのことを指します。
犯罪の被疑者を逮捕した場合には、検察官は最終的に被疑者を刑事裁判にかけるか、被疑者を不起訴にするかを決定する必要があります。
通常であれば、逮捕されてから最大で23日の間に、検察官が起訴か不起訴の判断をおこないます。
しかし、犯罪の証拠が揃っていない場合や、起訴するタイミングを測っている場合には、勾留期間中に起訴や不起訴の判断までおこなえない場合があります。
この場合、起訴か不起訴の判断を一旦保留して、被疑者の身柄を解放したうえで、引き続き事件の捜査や取り調べなどをおこなうことがあります。この判断のことを、刑事手続きでは「処分保留」と言います。
処分保留で保釈になるに理由・タイミング
処分保留になる理由は、おもに次の2つです。
- 犯罪の証拠は十分に集まらなかった場合
- 余罪の捜査状況との関係で、起訴するタイミングを図っている場合
処分保留は、勾留期間が満了するまでに捜査が完了しなかった場合にとられる措置です。
事件の被疑者は、逮捕されてから最長3日間、警察と検察官に身柄を拘束されます。
その後勾留が決定したら原則10日間、勾留満期時に必要に応じて「勾留延長」という措置がとられて、さらに10日間延長されて、最大で合計23日間の身柄拘束が継続します。
検察官は、その期間中に取調べや捜査を行って、起訴をするかどうかを決定しなければなりません。
起訴とは、検察官が裁判所に対してその事件を刑事裁判に付して被告人の処罰を求めることです。
日本での刑事裁判の有罪率は99%を超えていますので、起訴をされると非常に高い確率で有罪判決が言い渡されます。
なぜ、このような高い確率で有罪になるかというと、検察官は有罪になる可能性が濃厚である事件しか起訴をしないからです。
実は検察官に送致された事件のうち、起訴されたものは2018年時点で全体の32.8%(参考:令和元年犯罪白書)と、全体の3分の1にも満たない件数なのです。
身体拘束の期間内に有罪にできるだけの証拠が集まらなかった場合や起訴するタイミングを図っている場合には、処分保留として一旦被疑者を釈放することがあります。
また、処分保留になるタイミングは、勾留期間が終了する勾留後19日目もしくは20日目であることが多いです。
先述したように、勾留期間は原則10日間ですが、必要に応じてさらに10日間延長されることにより、逮捕時から数えると最大で23日間に渡ります。
多くの場合、勾留期間を延長して最大限調査を進めたうえで、処分保留の判断を下すことになるでしょう。
なお、弁護士が検察官に尋ねれば、勾留後19日目か20日目には、処分保留になるかどうかを教えてもらえることがあります。
処分保留後に起訴・再逮捕される可能性
処分保留になった後はどうなってしまうのかを解説します。
不起訴になるケースが多い
処分保留は不起訴ではありませんので、引き続き検察官は捜査を続けます。
ところが、多くの事件で処分保留後に不起訴処分になります。
たとえば、20代女性が大麻取締法違反で逮捕、勾留された事件では、2020年4月末に処分保留で釈放されて、2日後には不起訴処分となりました。
また、30代男性が麻薬取締法違反で逮捕、勾留されていた事件でも、処分保留で釈放された3日後に不起訴処分となっています。
不起訴処分になれば、その後は同じ事件について再度罪に問われる可能性は非常に低いです。
不起訴処分になったことで、被害者や報道で知った人が「検察審査会」という手続を申し立てて検察審査会で「起訴相当」という起訴をすべきであるという結果になった場合は、再度検察官が事件について検討します。
令和元年版の犯罪白書によると、平成30年に検察審査会で受理された事件数は2242件、そのうち起訴相当や、不起訴不当と判断された事件は84件。
実際に起訴されることになった件数はそのうちのわずか21件でした。
したがって、一度不起訴処分になれば、検察審査会を申し立てられて起訴される可能性は非常に低いといえます。
再逮捕の可能性
処分保留で釈放された場合、再逮捕されるという可能性はあります。
別の事件での再逮捕の可能性
原則として、一度逮捕されていた事件では再度逮捕をすることができません。
しかしながら、複数の事件を起こしていた場合は一度目の逮捕とは別の事件で逮捕をされる可能性があります。
逮捕を繰り返すことで、拘束期間を延長させることができるのです。
別の罪名で一度逮捕して捜査が進んで行ったり、期間が終了した際はもう一つの罪名で逮捕します。
よって、複数の店舗で万引きを繰り返してという場合は、それぞれの万引きについて逮捕をすることができるのです。
キャンプで男子小学生に性的暴行を加えたとして強制わいせつ容疑で逮捕、処分保留となっていた男性が、別の児童への児童ポルノ禁止法違反容疑で再逮捕されたという事例もあります。
求令状起訴による身柄拘束
求令状起訴とは、逮捕とは異なります。
これは、検察官が起訴と同時に被告人の身柄の勾留を求める手続です。
身柄を拘束されていない被疑者に対して、起訴をする際に、身柄拘束の必要があると判断された場合に求令状起訴が行われることがあります。
処分保留で釈放後、仕事や学校に復帰可能か
処分保留で身柄が釈放された場合、仕事や学校に行くのは自由です。
処分保留となり、処分が決まっていない状態は、「在宅事件」と同じ状態ですので、行動の制限はありません。
会社や学校へ行くことは可能です。
ただし、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断されるような行動は慎みましょう。
処分保留で釈放されてから処分が決定するまでの期間、結果の通知
次に、処分保留で釈放されてから処分が決定するまでの期間や処分の通知について解説します。
処分保留で釈放されてから処分が決定するまでの期間
処分保留で釈放されてから処分が決定するまでの期間は、「不起訴」であれば数日から1か月程度、長くても半月です。
しかしながら、公訴時効成立までは起訴される可能性がありますので、「これくらい経過したから大丈夫」とは決して言えません。
実際に、処分保留後、不起訴処分になった直近の事例の期間を確認してみましょう。
死体遺棄容疑で逮捕後処分保留、釈放された事例→釈放から不起訴まで5日間
乗用車で女性の遺体が発見され、男女4人が死体遺棄の疑いで逮捕、勾留されていた事件では、男性の1人が処分保留で釈放されて、不起訴処分になっています。
処分保留釈放が2019年11月8日、不起訴処分の決定が11月13日です。
あおり運転容疑で逮捕後処分保留、釈放された事例→釈放から不起訴まで24日
あおり運転をした上で、相手の車を刃物で傷つけたとして逮捕された60代の男性は、2019年9月17日に逮捕、9月27日に処分保留で釈放、10月21日に不起訴処分になりました。
殺人容疑で逮捕後処分保留、釈放された事例→釈放から不起訴まで2か月弱
老人ホームの入居者を殺害したとして、男性職員が殺人容疑で逮捕された事件では、2019年2月5日に逮捕、2月26日に処分保留で釈放され、4月に不起訴処分となりました。
しかしながら、この事件では被害者の遺族が、奈良検察審査会に審査を申し立てており、その結果は未だ報じられていません。
処分が決定した際の連絡
処分保留で釈放されて、不起訴処分になった場合、検察官から連絡がくることはありません。
自分で検察官に問い合わせる必要があります。
処分保留で釈放されてから数か月が経過した後、問い合わせてみるとよいでしょう。
不起訴処分告知書の返信用封筒同封の申請書を検察官に発送して、不起訴処分告知書の発送を申請すれば、不起訴になったことが明記されている書類を受け取ることができます。
また、検察庁に出向いて請求することもできます。
起訴される場合は、裁判所から起訴状が送達されます。
処分保留で釈放された後の呼び出し
処分保留後も、検察官が捜査を続けている場合は、取調べで呼び出される可能性があります。
呼び出された理由は、起訴、不起訴を決める最終判断をするためなのか、取調べのためなのかは分かりませんので、呼び出しを受けたら素直に応じておきましょう。
呼び出しに応じなければ、別の事件で再逮捕されてしまうおそれもあります。
弁護人が、「国選弁護人」であった場合は、処分保留で釈放されてしまうと、選任が失効してしまい、その弁護人に国選弁護という形で弁護を依頼し続けることができませんので、新たに私選弁護人として弁護人に弁護を依頼する必要があります。
まとめ
刑事事件においては、処分保留で釈放された場合不起訴になるケースが多いですが、中には再逮捕や起訴をされてしまう事例もあります。
現在、処分保留となりその後の処分について不安がある方は一度弁護士にご相談ください。
事情を丁寧にヒアリングした上で、現状を把握して、今やるべきこと、できることをアドバイス致します。
東京スタートアップ法律事務所では、様々な局面の刑事事件への対応実績がありますので、処分保留で釈放された方につきましても、その方に合った適切なサポートが可能です。
ぜひ一度ご相談ください。
「ForClient」を理念として自らも多くの顧客の信頼を得ると共に、2018年の事務所開設以降、2023年までに全国12支店へと展開中。
- 得意分野
- ベンチャー・スタートアップ法務、一般民事・刑事事件
- プロフィール
- 京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設