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更新日: 代表弁護士 中川 浩秀

同性不倫だった場合、不貞行為に該当する?慰謝料請求や離婚が可能かどうか解説

同性不倫だった場合、不貞行為に該当する?慰謝料請求や離婚が可能かどうか解説
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「配偶者が同性の相手と不倫をしていた…」このような事態に直面したとき、大きなショックを受けると共に、「同性との不倫でも、離婚や慰謝料請求はできるのだろうか?」という疑問を抱かれる方は少なくありません。

法律上の「不貞行為」は、伝統的に異性間の肉体関係を指すものとされてきました。

しかし、価値観が多様化する現代において、裁判所の判断も変化しつつあります。

この記事では、同性間の不倫が法律上どのように扱われるのか、離婚や慰謝料請求が認められるための条件、そして具体的な手続の流れについて、法律の専門家が分かりやすく解説します。

同性と不倫されたのを理由に離婚できる?

配偶者が同性と不倫をした場合、それを理由に離婚することは可能なのでしょうか。

離婚の方法によって、その可否や考え方が異なります。ここでは、離婚の基本的な手続と、同性不倫が法律上どのように位置づけられるかを解説します。

夫婦の同意があれば認められる

離婚には、主に協議離婚・調停離婚・裁判離婚の3つの手続があります。

  • 協議離婚: 夫婦間の話し合いで離婚に合意する方法です。
  • 調停離婚: 家庭裁判所の調停委員を介して話し合い、合意を目指す方法です。

この協議離婚や調停離婚の場合、夫婦双方が離婚に同意さえすれば、その理由が何であれ離婚は成立します。 

したがって、配偶者の同性不倫が原因で離婚を決意し、相手もそれに同意すれば、問題なく離婚することができます。

離婚の進め方については、「離婚手続の種類と流れ・離婚前後の確認事項や必要な届け出も解説」の記事もご参照ください。

裁判離婚の場合には法定離婚事由が必要

夫婦の一方が離婚に同意しない場合、最終的には裁判で離婚を認めてもらう必要があり、これを「裁判離婚」といいます。

裁判離婚が認められるためには、法律で定められた離婚理由(法定離婚事由)が必要です。これは民法第770条第1項に定められています。

  1. 配偶者に不貞な行為があったとき
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき
  3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

(出典:e-Gov法令検索「民法」

配偶者の同性不倫を理由に裁判離婚を申し立てる場合、主に上記1号の「不貞な行為」または5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかが争点となります。

同性との不倫は不貞行為に該当するのか

法律上の不貞行為とは、「配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」と解釈されており、これは伝統的に男女間の肉体関係(性交渉)を指すものと考えられてきました。

そのため、過去の裁判例では、同性同士の性的関係は、この定義に当てはまらないとして「不貞行為」には該当しないと判断されることが一般的でした。

しかし、近年ではこの考え方にも変化が見られ、同性間の不倫関係も、性交又はそれに準ずる程度の密接な性的行為が認められるのであれば、不貞行為として扱われる可能性も出てきたと言えます。

 不貞行為として評価されなかったとしてもその行為が「夫婦間の婚姻共同生活の平和を侵害する」と評価されれば、5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると判断されることがあります。

以上のように、現在の裁判実務では、同性間の性的関係も、異性間の不貞行為と実質的に変わらない裏切り行為であり、夫婦の信頼関係を根本から破壊するものとして、離婚や慰謝料請求の原因となり得るとの考え方も出てきています。

ただし、最終的な判断は個別の事案ごとに異なりますので、専門家である弁護士にご相談ください。

配偶者の不倫相手が同性だった場合の慰謝料請求は可能?

離婚問題と並行して、または離婚はせずに、配偶者やその不倫相手に対して慰謝料を請求したいと考える方も多いでしょう。

ここでは、同性不倫における慰謝料請求の可否について解説します。

慰謝料とは

そもそも慰謝料とは、不法行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償金のことです。

不倫における慰謝料は、配偶者や不倫相手の行為によって「夫婦の婚姻共同生活の平和」という権利が侵害され、多大な精神的ダメージを被ったことに対して支払われるものです。慰謝料の基本的な考え方については、「不倫の慰謝料とは?請求できる3つのケースと、弁護士が解説する請求の流れ」も参考にしてください。

慰謝料を請求することは可能?

結論から申し上げますと、配偶者の不倫相手が同性であった場合でも、慰謝料の請求ができる可能性があります

前述のとおり、同性間の関係は法律上の「不貞行為」には該当しないと判断される可能性もあるところです。しかし、慰謝料請求の根拠は、民法709条の「不法行為」です。

(出典:e-Gov法令検索「民法」)

裁判所は、夫婦の一方が配偶者以外の者と性的関係を持つことは、それが同性間であっても「婚姻生活の平和を害する行為」として不法行為が成立し得ると判断する傾向にあります。

実際に、同性の不倫相手に対する慰謝料請求を認めた裁判例も存在します。

同性不倫の慰謝料請求の流れ・注意点

同性不倫で慰謝料を請求する場合、異性間の不倫とは異なる注意点もあります。

ここでは、請求の基本的な流れと、各段階でのポイントを解説します。

Step1:証拠を集める

慰謝料を請求するためには、配偶者とその相手との間に肉体関係またはそれに準ずる親密な関係があったことを示す証拠が不可欠です。

同性間の場合は、異性間よりも関係性の立証が難しいケースがあるため、客観的な証拠を慎重に集めることが重要です。

<有効な証拠の例>

  • SNSやメールのやり取り: 「愛している」などの愛情表現や、性的な関係をうかがわせる内容
  • 写真や動画: 二人が親密そうにしている写真、二人で旅行した際の写真など
  • ラブホテルへの出入りがわかる写真や領収書
  • 探偵事務所の調査報告書
  • 配偶者や不倫相手が関係を認めた音声データや念書

Step2:内容証明郵便で請求し、交渉する

証拠が集まったら、まずは内容証明郵便を利用して、不倫相手に慰謝料を請求する書面を送付するのが一般的です。

内容証明郵便には、誰が、いつ、どのような内容の文書を送ったかを郵便局が証明してくれる効力があり、相手に心理的なプレッシャーを与え、本気度を示すことができます。

書面を送付した後は、相手との間で慰謝料の金額や支払方法について交渉(話し合い)を行います。

Step3:裁判(訴訟)を申し立てる

交渉で合意に至らない場合や、相手が請求を無視する場合には、裁判所に慰謝料請求訴訟を申し立てることになります。

訴訟では、集めた証拠をもとに、同性間の不倫が不法行為に該当することを主張・立証していくことになります。

裁判は専門的な知識が必要となり、精神的な負担も大きいため、弁護士に依頼して手続を進めるのが通常です。

慰謝料以外に決めておきたい離婚条件

同性不倫を理由に離婚する場合、慰謝料の問題だけでなく、今後の生活のために決めておくべき重要な条件がいくつかあります。

後々のトラブルを防ぐためにも、離婚届を提出する前に、これらの条件について夫婦でしっかりと話し合い、合意した内容は離婚協議書などの書面に残しておくことが大切です。

  • 親権: 未成年の子どもがいる場合、父母のどちらが親権者となるか。
  • 養育費: 子どもが成人するまでにかかる生活費や教育費などを、親権者でない親が分担する金額や支払方法。
  • 財産分与: 婚姻期間中に夫婦で協力して築いた財産(預貯金、不動産、保険など)をどのように分けるか。
  • 年金分割: 婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録を分割する割合。
  • 面会交流: 親権者とならない親が、子どもと定期的・継続的に会って交流する方法。

支払いが遅延している場合の対処法

慰謝料や養育費など、離婚時に取り決めた金銭の支払いが滞ってしまった場合、いくつかの対処法があります。

まず、離婚協議書を公正証書として作成しておくことが非常に重要です。

「強制執行認諾文言」を付けておけば、支払いが滞った際に、裁判を経ずに直ちに相手の給与や預貯金などの財産を差し押さえる「強制執行」の手続をとることが可能になります。

公正証書がない場合は、家庭裁判所に支払いを求める調停を申し立てたり、訴訟を起こしたりして、支払いを命じる判決などを得た上で強制執行の手続に進むことになります。

よくある質問

Q1. 同性不倫を立証するには、どのような証拠が必要ですか?

肉体関係を直接証明できる証拠がなくても、社会通念上、夫婦の貞操義務に違反するような親密な関係であることを示す証拠を積み重ねることが重要です。

具体的には、愛情表現を含むSNSやメールのやり取り、二人きりで頻繁に会っていたことがわかるスケジュール帳やGPSの記録、二人で旅行した際の写真や領収書、探偵の調査報告書などが有効です。

Q2. 同性不倫の慰謝料の相場はいくらくらいですか?

異性間の不倫の場合と同様、ケースバイケースですが、数十万円から300万円程度がひとつの目安となります。

慰謝料の金額は、婚姻期間の長さ、不倫の期間や頻度、不倫が原因で離婚に至ったかどうか、未成年の子どもの有無など、様々な事情を総合的に考慮して決められます。

特に、不倫によって婚姻関係が破綻し、離婚に至った場合は、慰謝料が高額になる傾向があります。

まとめ

今回は、同性間の不倫における離婚や慰謝料請求の問題について解説しました。

  • 同性間の不倫も、裁判上の離婚理由や慰謝料請求の原因となり得ます。
  • 法律上の「不貞行為」に該当しなくても、「婚姻を継続し難い重大な事由」「不法行為」として認められる可能性があります。
  • 請求を認めてもらうためには、貞操義務に違反する親密な関係があったことを示す客観的な証拠を集めることが非常に重要です。

配偶者の同性不倫という問題は、法律的に複雑な側面を持つだけでなく、精神的にも非常に大きな苦痛を伴います。

一人で抱え込まず、できるだけ早い段階で、離婚や男女問題に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

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執筆者 代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会 登録番号45484
東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士として、男女問題などの一般民事事件や刑事事件を解決してきました。「ForClient」の理念を基に、個人の依頼者に対して、親身かつ迅速な法的サポートを提供しています。
得意分野
不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
プロフィール
京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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