離婚後の再婚禁止期間が廃止された!養育費への影響などのポイントを解説

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記事目次
2024年4月1日、民法が改正され、長らく女性にのみ課せられていた再婚禁止期間が撤廃されました。
これにより、離婚後すぐに再婚が可能となり、男女平等の推進と、複雑な父子関係の推定による「無戸籍の子」の問題解消に繋がると期待されています。
2024年民法改正で女性の再婚禁止期間が廃止
2024年4月の民法改正の概要と女性の再婚禁止期間廃止の主要ポイント
- 2024年4月1日に施行された改正民法により、女性の再婚禁止期間は廃止されました。
- これまでの民法では、女性は離婚後100日間は再婚できないと定められていましたが、今回の改正によって、離婚直後から再婚できるようになりました。
嫡出推定制度の見直しについての概要
この改正の主な背景としては、子どもの嫡出推定(父親が誰であるかを法律上推定すること)の重複を避けることや、無戸籍の子どもを減らすことなどが挙げられます。
改正後の民法では、婚姻成立後に生まれた子は、一律で現夫の子と推定されることになり、嫡出推定の重複が解消されたため、再婚禁止期間を撤廃することが可能となりました。
これまでの「100日再婚禁止期間」とは?
【100日再婚禁止期間の法的根拠と目的】
1. 再婚禁止期間の歴史的背景と問題点
女性の再婚禁止期間の制度に関して、1898年(明治31年)に施行された明治民法以来、女性は、前婚の解消又は取消しの日から6か月を経過した後でなければ、再婚をすることができないとする規定が存在しました。
当時の医学的知見や遺伝学の発展途上であった時代において、嫡出推定の重複を避けるための合理的な手段として導入されました。
しかし、再婚禁止期間は、時代の変化とともに様々な問題点が指摘されるようになりました。
- ①女性に対する不平等・差別
- ②無戸籍の子どもの問題
嫡出推定の重複を避けるという本来の目的とは裏腹に、再婚禁止期間が結果的に「無戸籍の子ども」を生み出す原因となるケースがありました。
- ③医学・科学的知見との乖離
DNA鑑定など、現代の科学技術を用いれば、子どもの生物学上の父親を正確に特定することが可能になりました。
そして、平成27年12月、最高裁判所は、女性の再婚禁止期間のうち100日を超える部分については、民法の定める父性の推定の重複を回避するために必要な期間ということはできないとして、憲法14条第1項及び第24条第2項に違反している旨の違憲判決をくだしました。
この最高裁判決を受けて、平成28年の民法改正により、女性の再婚禁止期間を6か月から100日に短縮する改正がされました。
2. 再婚禁止期間の法的根拠
再婚禁止期間の法的根拠は、改正前の民法第733条にありました。具体的には、以下のように定められていました。
(再婚禁止期間) 「女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して100日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。」
この規定の主な目的は、子どもの嫡出の推定の重複を避けることにありました。
なぜ女性だけに再婚禁止期間があったのか?
1. 嫡出推定制度とそれに伴う父親の明確化の必要性
これが、再婚禁止期間が設けられた最も直接的かつ主要な理由です。
2. 民法の嫡出推定規定
民法は、子どもの法的な父親を推定する規定を設けています。
妻が婚姻中に妊娠した子は、その夫の子と推定されます(民法第772条第1項)。
婚姻の成立から200日を経過した後、または婚姻の解消・取り消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に妊娠したものと推定されます(民法第772条第2項)。
3. 嫡出推定の重複回避の必要性
もし女性が離婚後すぐに再婚し、前の夫との婚姻解消から300日以内、かつ、新しい夫との婚姻成立から200日経過後に子どもが生まれた場合、その子どもは法律上「前夫の子」とも「現夫の子」とも推定されてしまう可能性がありました。
これを「嫡出推定の重複」と呼びます。
この重複が生じると、子どもの戸籍上の父親が不明確になり、ひいては扶養義務の所在、相続権、氏(姓)の決定など、子どもの法的地位や権利に大きな混乱を招く恐れがありました。
4. なぜ女性だけに再婚禁止期間が設けられていたか
妊娠・出産ができるのは女性であるため、この「嫡出推定の重複」の問題は、女性が再婚した場合にのみ発生し得ました。
男性の場合は、再婚によって妊娠・出産の問題が複雑になることはないため、再婚禁止期間を設ける必要がなかったのです。
民法改正で何が変わった?法改正のポイント解説
2024年4月1日に施行された改正民法における女性の再婚禁止期間の廃止について、具体的な内容について説明します。
1. 再婚禁止期間の廃止
改正民法では、女性の再婚禁止期間を定めていた民法第733条が完全に削除されました。
改正前は、民法第733条第1項で「女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して100日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。」と定められていましたが、この条文自体がなくなりました。
これにより、女性は離婚が成立すれば、直ちに再婚が可能となりました。
離婚届が受理され、離婚が有効になったその日から、新たな婚姻届を提出することができます。
2. 再婚禁止期間廃止に伴う嫡出推定の改正
再婚禁止期間が廃止された背景には、子どもの嫡出推定制度の大きな見直しがあります。
単に再婚禁止期間をなくすだけでは、嫡出推定の重複の問題が解決されないため、以下の新しいルールが導入されました。
- ①婚姻成立後に生まれた子の一律推定
改正前 | 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。 |
改正後 | 妻が婚姻中に懐胎した子は、その夫の子と推定するに加えて、 婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定するという推定規定が設けられ、子の出生時の婚姻関係に応じて、夫の子と推定することが明確化されました。 |
- ②離婚後300日以内に生まれた子に関する推定の変更
これが最も重要な変更点の一つです。
改正前 | 「婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。」 |
改正後 | 「婚姻の解消又は取消しの日から300日以内に生まれた子は、離婚後であったも、その離婚した夫の子と推定する。」という基本的な原則は維持されました。 |
しかし、新たに条文が加わり、離婚後300日以内に子どもが生まれたとしても、もしその女性が別の男性と再婚し、その再婚後に子どもが生まれた場合、その子どもは再婚した現夫の子と推定されることになりました(改正後民法772条第3項)。
3. 新たな嫡出否認の訴えの要件
上記変更に伴い、嫡出否認の訴え(夫が自分の子ではないと主張する訴え)についても、以下の見直しが行われました。
- ①嫡出否認権者の追加
子ども自身やその母親も、嫡出否認の訴えを提起できるようになりました。
- ②出訴期間の延長
嫡出否認の訴えを提起できる期間が、従来の「夫が子の出生を知った時から1年以内」から、3年以内に延長されました。
4. 施行日
これらの改正は、2024年(令和6年)4月1日に施行されました。
2024年4月1日以降に離婚が成立した女性は、直ちに再婚が可能です。
2024年4月1日以降に生まれた子どもに対して、新しい嫡出推定のルールが適用されます。
嫡出推定制度の見直しと実際の影響
1. 改正の主要な変更点
改正のポイントは、離婚後300日以内でも再婚後に生まれた子は、再婚相手(現夫)の子と推定されるという新たなルールが加わったことです。
- ① 婚姻中に妊娠した子の推定(民法第772条第1項の明確化)
改正前と改正後の考え方は基本的に同じですが、条文がより明確になりました。
「妻が婚姻中に懐胎した子は、当該婚姻における夫の子と推定する。女が婚姻前に懐胎した子であっても、婚姻が成立した後に生まれたものも、同様とする。」
子の出生時の婚姻関係に応じて、夫の子と推定することが明確化されました。
- 事例1:一般的な嫡出推定(改正前後で変更なし)
状況: A夫とA妻は婚姻中。A妻は結婚後6ヶ月で妊娠し、その4ヶ月後に出産。
改正前・後ともに: 夫Aがその子の父親であると推定されます。
- ②離婚後300日以内に生まれた子の推定の例外
民法第772条第3項が新設されました。
「女が子を懐胎した時から子の出生の時までに間に二以上の婚姻をしていたときは、その子は、その出生の直近の婚姻における夫の子と推定する。」
- 事例2:再婚後の出産のケース
- 2024年5月1日:A夫とA妻が離婚。
- 2024年6月1日:A妻がB男と再婚(再婚禁止期間が廃止されたため、すぐに再婚可能)。
- 2025年1月1日:A妻がB男との婚姻中に子Cを出産。
離婚から出産まで8ヶ月(約245日)であり、離婚後300日以内。
改正前であれば、子Cは「離婚後300日以内」のルールにより、原則として前夫Aの子と推定されていました。このため、再婚禁止期間が必要でした。
改正後(2024年4月1日以降の民法適用)は、子Cは、A妻がB男と婚姻した後に生まれた子であるため、原則として現夫B男の子と推定されます。前夫Aの子という推定は及びません。これにより、父親が明確になり、再婚禁止期間が不要となりました。
- 事例3:再婚しないまま出産
- 2024年5月1日:A夫とA妻が離婚。
- A妻は再婚しないまま 2025年1月1日にA妻が子Cを出産。
離婚から出産まで8ヶ月(約245日)であり、離婚後300日以内です。
改正後(2024年4月1日以降の適用)、この場合、子CはA妻が他の夫と婚姻した後に生まれた子ではないため、原則として前夫Aの子と推定されます。
2. 「300日問題」とは?
「300日問題」とは、改正前の民法第772条第2項の嫡出推定規定によって生じていた、離婚後300日以内に生まれた子どもは前夫の子と推定されることに起因する問題のことです。
【具体的な状況】
- ケース:真の親子関係と推定が異なる場合
夫Aと妻Bが離婚。
妻Bは、離婚成立後に別の男性Cと関係を持ち、妊娠。
しかし、子が出生したのが離婚から300日以内だった場合、法律上は前夫Aの子と推定されてしまう。
真の父親はCであるにもかかわらず、法律上はAの子となるため、戸籍上の父親と生物学上の父親が異なるという状況が生じます。
【問題点】
- ①真の親子関係との不一致
実際には生物学的に父親ではない人物が戸籍上の父親とされてしまい、子の氏名(姓)や扶養義務、相続権などが混乱するおそれがありました。
- ②嫡出否認の必要性
戸籍上の推定を覆すためには、夫が「嫡出否認の訴え」という家庭裁判所での手続きを行う必要があり、時間的・精神的負担が大きいかった。また、夫が訴えを起こさない限り、戸籍は真実の親子関係と異なるまま確定してしまうという問題もありました。
3. 「無戸籍児問題」とは?
「無戸籍児」とは、日本の戸籍に登録されていない子どものことです。
出生届が提出されていない、または受理されないために、戸籍が作られずに存在している子どもたちを指します。
4. 「300日問題」と無戸籍児問題の関連性
「300日問題」は、無戸籍児問題の最も主要な原因の一つでした。
- ケース1:前夫からのDVや虐待を恐れるケース
妻Bが前夫AからDVや虐待を受けていたため、離婚後に再婚して別の男性Cの子を妊娠・出産しても、子どもが前夫Aの子と推定されてしまうことを恐れる。
前夫Aに子どもの出生を知られることを避けるため、出生届を提出しない。
結果として、子どもが無戸籍となる。
- ケース2:戸籍上の父親が複数となる推定重複を避けるケース
妻Bが離婚後300日以内に再婚し、その再婚後に子どもを出産。
子どもが前夫Aの子と推定されることを避けたい、あるいは現夫Cの子として届けたいと考える。
しかし、当時の法律ではこの嫡出推定の重複が生じるため、どちらかの父親での届け出が難しいと感じ、結果的に出生届が提出されない。
- ケース3:前夫との連絡が取れないケース
離婚後300日以内に子どもが生まれ、前夫の子と推定されるものの、前夫と連絡が取れない、または協力を得られないため、嫡出否認の手続きが進まず、出生届が出せない。
無戸籍児が直面する問題点。戸籍がないということは、法律上存在しないに等しく、子どもが以下のような不利益が生じていました。
- 教育の機会の喪失: 公立学校への就学が困難になる場合がある。
- 医療・保健サービスの制限: 医療保険に加入できない、乳幼児健診などが受けにくい。
- 社会保障の欠如: 児童手当などの社会保障制度の対象外となる。
- 身分証明の困難: 運転免許証やパスポートなどの身分証明書が取得できず、社会生活上の様々な制約を受ける。
5. 法改正による「300日問題」解消と無戸籍児問題への影響
- ①嫡出推定規定の見直し
離婚後300日以内に生まれた子であっても、その子が再婚した後の夫と婚姻した後に生まれたものであるときは、現夫の子と推定されることになりました。
これにより、嫡出推定の重複が解消され、離婚後300日以内の再婚後の出産でも、子どもの父親が明確になります。
- ②嫡出否認権者の拡大と出訴期間の延長
夫だけでなく、子や母も嫡出否認の訴えを提起できるようになり、訴えの提起期間も「子の出生を知った時から1年以内」から「3年以内」に延長されました。
6. まとめ
- ①「300日問題」の解消
離婚後300日以内に子どもが生まれた場合でも、その間に再婚していれば、新たな夫が父親と推定されるため、戸籍上の父親が前夫とされてしまう問題が原則的に解消されます。
これにより、真の親子関係と戸籍上の推定が一致しやすくなり、父親の明確化が図られます。
- ②無戸籍児問題の大幅な改善
母親が前夫の子と推定されることを恐れて出生届を出さないという最大の理由がなくなります。
再婚していれば現夫の子、再婚していなくても嫡出否認権者の拡大により、母親自身が嫡出否認の訴えを起こせるため、子が実父の子として戸籍に記載される道が拓かれます。
離婚後すぐに再婚できる条件と手続きの流れ
2024年4月1日の民法改正により、女性の再婚禁止期間が廃止されました。
これにより、離婚後すぐに再婚するための条件と手続きが男女で統一され、シンプルになりました。
1. 条件(男女共通)
前婚の解消(離婚の成立): 離婚届が役所に受理され、正式に離婚が成立している必要があります。
2. 基本的な手続きの流れ(男女共通)
- 離婚手続きの完了
- 婚姻要件の確認:再婚相手との間で、民法に定める婚姻要件(例:双方が婚姻年齢に達していること、近親婚でないこと、重婚でないことなど)を満たしていることを確認します。
- 婚姻届の提出
【男女別の違いがなくなった点】
- ①女性の再婚禁止期間の廃止
改正前 | 女性は離婚後100日間は再婚できませんでした(民法第733条)。 |
改正後 | 民法第733条が削除され、女性も離婚が成立すれば、直ちに再婚が可能になりました。 |
- ②嫡出推定の仕組みの統一
再婚禁止期間が廃止されたのは、離婚後300日以内に生まれた子でも、再婚後の婚姻中に生まれた場合は「現夫の子」と推定されるようになったためです。
これにより、女性が離婚後すぐに再婚しても、子どもの父親が法律上不明確になるという問題が解消されました。
この結果、再婚における男女の法的制約が基本的に同一となりました。
離婚後すぐに再婚するための必要書類は?
1. 再婚に必要な書類と取得方法
再婚に必要な書類は、基本的に初婚時と大きな違いはありませんが、離婚歴があることで前婚の事実を証明する書類が必要になります。
【必須書類】
- ①婚姻届
取得方法 | 全国の市区町村役場の戸籍課窓口でもらえます。 |
また、インターネットでダウンロードできる役所もありますが、役所指定の様式があるため、事前に確認するか窓口でもらうのが確実です。
- ②戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
取得方法 | 本籍地の市区町村役場でのみ取得できます。 |
窓口での申請 | 身分証明書(運転免許証、マイナンバーカードなど)と印鑑(任意)を持参して申請します。 |
郵送での申請 | 遠方に本籍地がある場合、必要書類(申請書、本人確認書類のコピー、手数料分の定額小為替、返信用封筒)を同封して郵送で請求します。 |
オンライン申請 | マイナンバーカードをお持ちの場合、一部の自治体ではオンライン申請が可能です。 |
備考:再婚の場合、戸籍謄本に前婚の解消(離婚)の事実が記載されている必要があります。記載がない場合は、離婚が成立してから戸籍に反映されるまで時間がかかることがあるため、事前に確認してください。
- ③本人確認書類
運転免許証、マイナンバーカード、パスポート、住民基本台帳カード(写真付き)など。婚姻届提出時に窓口で本人確認が行われます。
【役所での手続き方法と注意点】
- ①提出先
夫または妻の本籍地、または住所地の市区町村役場。
どの役所でも提出可能ですが、本籍地以外の役所へ提出する場合は戸籍謄本が必須となります。
- ②手続きの流れ
- 書類の準備: 上記の必要な書類を全て揃えます。
- 婚姻届の記入: 夫婦となる二人で婚姻届に必要事項を記入し、証人2名(成人)に署名・捺印(または署名のみ)をしてもらいます。
- 役所への提出: 婚姻届と必要書類を持って、選択した役所の戸籍課窓口へ提出します。 時間外窓口(夜間・休日窓口)でも提出は可能ですが、その場合は書類の確認のみとなり、不備がなければ後日正式に受理されます。
- 本人確認: 窓口で本人確認書類を提示します。
- 受理(または補正指示): 書類に不備がなければ受理され、婚姻成立です。不備がある場合は、訂正を求められたり、追加書類を求められたりすることがあります。
- ③注意点
- 書類の有効期限: 戸籍謄本など、発行から3ヶ月以内など有効期限が定められている場合があります。事前に確認し、期限内のものを取得してください。
- 押印の有無: 最近では婚姻届への押印は任意とする自治体が増えていますが、証人の押印が必要な場合もあります。念のため印鑑を持参すると安心です。
- 世帯主と本籍: 婚姻届と同時に、新しい本籍をどこにするか、新しい世帯主を誰にするかなどを記入する必要があります。事前に決めておくとスムーズです。
- 外国人との婚姻: 外国籍の方との婚姻は、日本の法律だけでなく相手の国の法律も関係するため、非常に複雑です。必ず事前に日本の役所と、相手方の本国の在日大使館・領事館に確認し、必要な書類を揃えてください。
子どもがいる場合の再婚手続きの注意点
再婚の際に子どもがいる場合、婚姻届を提出するだけでなく、子どもの戸籍や氏(姓)に関する手続き、そして養子縁組の選択など、特有の考慮点と手続きが発生します。
1. 親権者が再婚する場合
離婚後、子どもの親権は父母のどちらか一方が単独で持ちます。
再婚しても、この親権者が変わるわけではありません。
再婚相手は、婚姻届を提出しただけでは子どもの親権を持つことにはなりません。
子どもが再婚相手と同じ戸籍に入り、同じ氏を名乗るためには、別途手続きが必要です。
再婚後の子どもの氏と戸籍については、主に以下の3つの選択肢があります。
- ①子どもの氏・戸籍を変更しない
子どもは前夫(または前妻)の氏を名乗り続け、戸籍も元の親(親権者である再婚する親の戸籍)に残ったままとなります。
メリット | 子どもの環境変化が少なく、戸籍の変更手続きも不要です。 |
デメリット | 再婚相手と子どもの氏が異なるため、学校や病院などで親子関係を説明する必要が生じる場合があります。再婚相手との間に法律上の親子関係は発生しません。 |
- ②子どもを再婚相手の氏・戸籍に入れる(養子縁組をしない場合)
- 家庭裁判所への申立て:子どもの氏(姓)を変更するには、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に「子の氏の変更許可の申立て」を行い、許可を得る必要があります。
- 役所への「入籍届」提出:家庭裁判所の許可が出たら、その審判書謄本を添付して、市区町村役場に「入籍届」を提出します。この手続きにより、子どもは再婚相手と同じ戸籍に入り、氏も再婚相手と同じになります。
メリット | 親子で同じ氏を名乗ることができ、家族の一体感が高まります。 |
デメリット | 再婚相手との間に法律上の親子関係は発生しないため、再婚相手に子どもの扶養義務や相続権は発生しません。 |
- ③子どもを再婚相手の氏・戸籍に入れる(養子縁組をする場合)
まず、再婚する親と再婚相手が婚姻届を提出し、夫婦になります。
次に夫婦になった後、市区町村役場に「養子縁組届」を提出します。
普通養子縁組が一般的です。特別養子縁組は実親との親子関係を終了させるもので、要件が非常に厳しく、連れ子再婚では通常選択されません。
メリット | 再婚相手と子どもとの間に法律上の親子関係が成立します。これにより、再婚相手は子どもの親権者となり、扶養義務を負い、子どもは再婚相手の相続人となります。また、子どもは再婚相手の戸籍に入り、氏も再婚相手と同じになります。家族としての関係が法律上も明確になります。 |
デメリット | 実親(離婚した元配偶者)の扶養義務は残りますが、養育費の減額などが認められる場合があります。 |
2. 非親権者が再婚する場合
離婚後、前婚の子どもの親権を持っていない親が再婚する場合、子どもの戸籍や氏が自動的に変更されることはありません。
子どもは引き続き、親権者である親の戸籍に残り、その氏を名乗ります。
再婚までの期間はどのくらいかかる?手続きの目安
再婚までのタイムライン:書類準備から婚姻届提出まで
【1ヶ月前〜2週間前:情報収集と書類準備の開始】
- ①役所への確認
役所によって必要書類や手続きが若干異なる場合があります。
事前に確認することで、二度手間を防ぎ、スムーズな手続きに繋がります。
婚姻届を提出する予定の市区町村役場の戸籍課に連絡し、必要書類や手続きについて具体的に確認します。
以下の点を確認するとよいでしょう。
- 婚姻届の様式(役所で取得可能か、ダウンロードできるか)
- 戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)の要否(本籍地と提出先が異なる場合は必須)
- 有効期限がある書類(戸籍謄本など)の発行日基準
- 本人確認書類の種類
- 証人の条件(署名・捺印の要否)
- 時間外窓口での提出可否、その際の注意点
- お子さんがいる場合の追加書類や手続き
- 外国籍の相手の場合の必要書類
- ②戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)の取得
夫婦となる二人それぞれの本籍地の役所から戸籍謄本を取得します。
窓口で取得 | 本人確認書類を持参。 |
郵送で取得 | 申請書、本人確認書類のコピー、返信用封筒、手数料分の定額小為替を同封して郵送。 |
オンライン申請 | マイナンバーカードがあれば可能な自治体もあります。 |
- ③婚姻届書の取得
役所の窓口でもらうか、ウェブサイトからダウンロードします。
記入事項が多いため、事前に手に入れて内容を確認し、ゆっくり記入する時間を取りましょう。
【1週間前〜数日前:最終準備と証人依頼】
- ①婚姻届書の記入と証人依頼
誤字脱字がないか、記入漏れがないか、夫婦で最終確認をします。
証人には早めに依頼し、必要事項を記入してもらいましょう。
- ②本人確認書類の準備
婚姻届提出時に提示する本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)を準備します。
- ③印鑑の準備(必要な場合)
婚姻届の訂正や、自治体によっては押印が必要な場合もあるため、念のため各自の印鑑を持参します。
【当日:婚姻届提出】
準備した婚姻届書と全ての必要書類を持参し、役所の戸籍課窓口へ提出します。
時間外に提出する場合: 宿直室や夜間・休日窓口に提出します。
この場合、書類の形式的な確認のみが行われ、不備がなければ後日正式に受理されます。
万が一不備があった場合、後日来庁して訂正が必要になることがあります。
このタイムラインはあくまで一般的な目安です。ご自身の状況に合わせて、柔軟に対応してください。
再婚時の養育費に関する取り決めポイント
再婚が養育費に与える影響は、再婚する側が親権者か非親権者か、そして養子縁組をするかどうかによって異なります。
1. 親権者が再婚した場合
原則として、養育費支払義務は自動的にはなくなりません。
- ①養子縁組をする場合
再婚相手が子どもと養子縁組をすると、再婚相手が第一次的な扶養義務者となります。
この場合、元配偶者の養育費は減額が認められる可能性があります。
- ②養子縁組をしない場合
再婚相手には法的な扶養義務が発生しないため、元配偶者の養育費支払義務は原則として継続します。
2. 非親権者が再婚した場合
原則として、養育費の支払義務は継続します。
養育費の取り決めは、後々のトラブルを防ぎ、子どもの健やかな成長を保障するためにも、次のポイントをしっかりと押さえることが重要です。
- ①金額と支払期間の明確化
- 具体的な金額:「月額〇万円」というように、具体的な金額を定めます。
- 支払期間:「子が20歳に達するまで」「子が大学を卒業するまで」「子が就職するまで」など、いつまで養育費を支払うかを明確に定めます。
- 支払方法:「毎月末日限り、義務者の口座へ振り込む」など、支払日、支払方法、振込先口座を具体的に指定します。
- ②算定方法の理解と考慮
- 養育費算定表の活用:家庭裁判所が公表している「養育費算定表」が、金額を決める上での基本的な目安となります。これは、父母双方の収入、子どもの年齢、子どもの人数などに基づいて標準的な養育費額が示されています。
- 個別事情の考慮:算定表はあくまで目安であり、次のような個別事情も考慮して金額を調整することがあります。
・子どもの医療費(持病や障がいなど)
・子どもの教育費(私立学校、塾、習い事など)
・親の特別な支出(病気治療費など)
- ③将来の変更事項の合意
- 進学費用:高校や大学などの進学費用(入学金、授業料など)をどう負担するかについて、事前に話し合っておきましょう。
- 医療費・教育費の特別な支出:将来発生する可能性のある高額な医療費や、特別な教育費(留学など)について、その際の分担方法を決めておきましょう。
- 再婚・失業など状況変化への対応:将来、状況変化があった際に、養育費の増額・減額についてどのように話し合うか、協議の場を持つことなどを定めておくと、後のトラブル防止に繋がります。
再婚で養育費はどう変わる?支払い義務の継続性
【再婚後も養育費支払い義務が継続する法的根拠】
1. 子どもの「親の扶養義務」の継続(民法第877条第1項)
最も基本的な法的根拠です。
民法第877条第1項は、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定めています。
子どもと親は「直系血族」であるため、離婚後も親と子の親子関係は消滅しません。
親子関係が存続する限り、親は未成熟な子に対して扶養する義務(生活保持義務)を負います。
そして、この扶養義務は、親が再婚したとしても、自動的に消滅するものではありません。
2. 養子縁組による扶養義務の優先順位の変更(例外)
再婚後も養育費の支払い義務が継続する原則の例外は、子どもが再婚相手と養子縁組をした場合です。
養子縁組が成立すると、養親(再婚相手)と養子(連れ子)の間に実親子と同様の法律上の親子関係が成立します(民法第809条)。
この場合、養親は実親(養子縁組をした親権者)と共に、第一次的な扶養義務者となります。
しかし、実親(離婚した元配偶者)の扶養義務が完全に消滅するわけではありません。 普通養子縁組の場合、実親との親子関係も存続します。
ただし、養親が第一次的な扶養義務者となるため、実親(離婚した元配偶者)の扶養義務は第二次的なものとされ、養育費の免除または減額が認められる可能性が高くなります。
これは、再婚相手(養親)が扶養しているにもかかわらず、元配偶者(実親)にも同程度の扶養義務を負わせるのは過剰であるという判断に基づきます。
この場合も、自動的に減額されるわけではなく、元配偶者が家庭裁判所に養育費減額調停・審判を申し立てる必要があります。
再婚相手の収入は養育費に影響する?
1 事案の背景
養育費の算定や減額請求の際に、「親権者が再婚し、再婚相手の収入がある場合、それを養育費の算定に含めるべきか?」が争われることがあります。
2 裁判例
(1)原則
再婚相手の収入は、原則的に養育費算定の基礎としません。再婚相手が養子縁組をしない場合は、再婚相手と子どもの間に扶養義務が生じず、親権者の収入状況に変化がないためです。
(2)例外的に再婚相手の収入を考慮するケースもある
宇都宮家庭裁判所令和4年5月13日審判(令和4年(家)第3015号
この事案は、親権者である母親の再婚相手が、子供と養子縁組をしていないケースですが、再婚相手が子供と同居して事実上扶養しており、養子縁組に準じる状態にあると認定し、事情の変更にあたると判断して養育費の減額を肯定しました。
3 実務上のポイント
養育費の算定表はあくまで「親権者本人」と「義務者」の収入を前提としています。
再婚相手の収入は、法的な養育費負担義務に影響はしませんが、実際の生活状況の変化を踏まえて裁判所が柔軟に判断することもあります。
養育費減額請求時には、再婚相手の収入や生活費への寄与状況が争点になることがあります。
なお、再婚相手と子どもが養子縁組をした場合は、実父の養育費支払義務は原則として消失します(最高裁平成30年6月28日決定(平成30年(許)第4号)。
養育費の減額・増額請求ができるケースとは
養育費は、一度取り決めた後も、事情の変化によって増額または減額を請求できる場合があります。
ここでは、増額・減額が認められる具体的なケース、そしてその請求手続きの流れと必要書類を説明します。
【養育費の減額・増額請求が認められる具体的なケース】
養育費の変更が認められるのは、養育費を定めた時と比べて、当事者(父母)または子どもの状況に「重大な変更」があった場合です。
1. 減額請求が認められる可能性があるケース
- ①支払い義務者(養育費を支払う側)の収入が著しく減少した
失業、倒産、病気や事故による長期入院や労働能力喪失、会社の業績悪化による給与の大幅カットなど。
- ②支払い義務者に新たな扶養家族が増えた
再婚し、再婚相手との間に実子が生まれた場合や、再婚し、再婚相手の連れ子と養子縁組をした場合(養親として扶養義務が発生するため)。
- ③受給者(養育費を受け取る側)の収入が著しく増加した
正社員になり給与が大幅に増えた、高収入な職に転職したなど。
- ④受給者(養育費を受ける側)が再婚し、子どもが養子縁組をした
養親が第一次的な扶養義務者となるため、実親(離婚した元配偶者)の扶養義務は第二次的なものとされ、養育費の免除または減額が認められる可能性があります。
2. 増額請求が認められるケース
- ①支払い義務者(養育費を支払う側)の収入が著しく増加した
昇進や転職により給与が大幅に上がった、宝くじに高額当選した、多額の遺産を相続したなど。
- ②受給者(養育費を受け取る側)の収入が著しく減少した
病気や事故による長期入院や労働能力喪失、失業、会社の倒産など。
- ③子どもの養育費が増大した
子どもに重い病気や障がいが判明し、継続的な医療費や介護費用が必要になった場合など。
【請求手続きの流れ】
養育費の増額・減額請求は、原則として以下の流れで進めます。
1. 相手方との協議(話し合い)
まずは、相手方(養育費を支払っている側、または受け取っている側)に、養育費の変更を求める理由と具体的な金額を提示し、直接話し合いをします。
合意に至れば、その内容を合意書として書面に残します。
注意点:口頭での合意は避け、必ず書面にしましょう。
2. 家庭裁判所への調停申立て
話し合いで合意に至らない場合、または話し合い自体ができない場合は、家庭裁判所に「養育費増額(減額)調停申立て」を行います。
申立先は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定めた家庭裁判所です。調停で合意が成立すれば、調停調書が作成され、その内容は確定判決と同じ法的効力を持ちます。
3. 審判(調停不成立の場合)
調停が不成立(話し合いがまとまらない)となった場合、審判手続きに移行します。
審判とは、裁判官が、提出された証拠や当事者の主張に基づき、養育費の増額・減額の要否と具体的な金額を決定します。
【必要書類】
調停を申し立てる際に、一般的に必要となる書類は以下の通りです。
詳細は、管轄の家庭裁判所のウェブサイトを確認するか、直接問い合わせて確認してください。
1. 申立書
家庭裁判所の書式があります。
相手方の情報、子どもの情報、申し立ての趣旨(養育費の増額・減額を求めること)、具体的な金額、申し立ての理由などを記載します。
2. 夫婦それぞれの戸籍謄本(全部事項証明書)
3. 子ども全員の戸籍謄本(全部事項証明書)
4. 収入に関する資料
- 源泉徴収票(直近1~2年分):会社員の場合。
- 確定申告書控え(直近1~2年分):自営業者、フリーランスの場合。
- 課税(非課税)証明書:役所で取得できます。
- 給与明細(直近2~3ヶ月分):現在の収入状況を示すため。
- その他、収入や資産がわかる資料:不動産収入、年金収入、預貯金通帳の写しなど。
5. 養育費の取り決めを証明する書類の写し
公正証書、調停調書、審判書、和解調書、離婚協議書など。
手続きをスムーズに進めるためにも、事前に家庭裁判所の窓口に問い合わせるか、ウェブサイトで確認することをお勧めします。
また、必要に応じて弁護士に相談し、適切なアドバイスを受けることも有効です。
まとめ
2024年4月1日の民法改正により、女性の再婚禁止期間が撤廃されました。
これにより、離婚後すぐに再婚が可能になりました。この改正は、父子関係の推定ルールを見直すことで、無戸籍の子を減らす目的もあります。
これまで女性にのみ課せられていた制限がなくなり、男女ともに離婚後すぐに再婚できるようになった点が大きな変更点です。
- 得意分野
- 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件 、 遺産相続 、 交通事故
- プロフィール
- 岡山大学法学部 卒業 明治大学法科大学院 修了 弁護士登録 都内の法律事務所に所属 大手信販会社にて社内弁護士として執務 大手金融機関にて社内弁護士として執務