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投稿日: 更新日: 代表弁護士 中川 浩秀

モラハラで離婚する場合の慰謝料の相場・証拠の集め方

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モラルハラスメント(以下、「モラハラ」という)は近年、問題となっているハラスメントの類型です。

今回は、夫婦間のモラハラの典型例、モラハラを理由に離婚できる場合、モラハラを理由に慰謝料を請求できる場合と慰謝料の相場、配偶者と離婚して慰謝料請求するまでの流れなどについて解説します。

モラハラとは

モラハラとは、倫理や道徳に反した言葉や態度による嫌がらせのことをいいます。身体的な暴力とは違い、被害の実態が外から見えづらいという特徴があります。夫婦間に限らず、親子、恋人同士、友人同士、上司と部下など、あらゆる人間関係でモラハラは起こる可能性があります。

夫婦間のモラハラの典型例

夫婦間で起こるモラハラにはどのようなものがあるのでしょうか。典型的な事例をいくつかご紹介します。

1.人格を否定する行為

以下のような配偶者の人格を傷つける行為はモラハラの典型例です。

  • 「お前なんか生きている価値がない」などと人格を否定する発言を繰り返す
  • 配偶者を人前で怒鳴りつける

結婚生活の中では、家事や子育ての些細な不注意や失敗などがきっかけとなり、モラハラに発展するケースが少なくありません。配偶者からモラハラを受けていることに気づかずに、「自分が悪いのだから仕方ない」と考える方もいらっしゃいます。

2.お金を渡さない

収入があるにもかかわらず、生活費を渡さない行為もモラハラに該当する場合があります。特に、一方が専業主婦(主夫)で収入がない場合、夫(妻)からお金を受け取らなければ家庭生活が成り立たないので、悪質なハラスメントだといえるでしょう。

3.無視

気に入らないことがあると話しかけても無視し続ける、何も言わずに家を出て帰ってこないといった行為もモラハラに該当する可能性があります。配偶者から無視され続けることにより、精神的に大きなダメージを受ける場合もあるからです。

モラハラを理由に離婚を成立させることは可能?

夫婦間のモラハラに悩まされていることを理由に離婚を成立させることはできるのでしょうか。モラハラを理由に離婚できる場合とできない場合について説明します。

1.モラハラで離婚ができる場合

離婚には、協議離婚と裁判離婚の2種類があります。協議離婚とは、夫婦の話し合いによって婚姻関係を解消することについて合意し、市区町村役場に離婚届を提出することによって離婚を成立させることをいいます。日本の離婚の約9割は協議離婚によって成立しているといわれています。
協議離婚の特徴は、離婚の理由を問われないことです。離婚届にも、離婚の理由を記載する欄はありません。

①協議離婚ができる場合

上述の通り、離婚することについて相手の同意を得られた場合は、離婚することが可能です。

②一方的に離婚を成立させることが可能な場合

しかし、配偶者が離婚に同意してくれるとは限りません。離婚すること自体には同意しても、子どもの親権や養育費、財産分与等の離婚の条件で折り合いが付かずに合意に至らない場合もあります。
この場合、相手の同意がなくても一方的に離婚を成立させる手続が裁判離婚です。裁判離婚とは、家庭裁判所に申立てを行い、判決文を得て離婚を成立させる手続をいいます。
もっとも、裁判離婚を成立させるためには法律で定められた離婚事由があることが条件となります。離婚事由は以下の5つです。

  1. 配偶者に不貞な行為があったとき
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき
  3. 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

②の「悪意の遺棄」と⑤の「婚姻を継続し難い重大な理由」に、モラハラが該当する場合があります。
②の悪意の遺棄とは、家を出て行ったまま帰ってこない、収入があるのに生活費を入れない等の行為をいいます。夫婦には、お互いに助け合って生活していく義務がありますので、この義務に違反する場合、離婚が認められます。
⑤の婚姻を継続し難い重大な理由とは、①から④のいずれにも該当しないものの、離婚を成立させるのもやむを得ないと認められる場合をいいます。これに該当する典型例は、ドメスティック・バイオレンス(DV)です。夫婦の一方あるいはその子どもが相手から継続的に身体的な暴力を受けている場合には、婚姻関係を継続させることが難しいため、⑤の婚姻を継続し難い重大な理由に該当すると判断される可能性が高いです。精神的な暴力であるモラハラもDVに含まれると考えられているため、モラハラが⑤の婚姻を継続し難い重大な理由に該当すると認められる場合もあります。ただし、モラハラは身体的暴力に比べ立証が難しいため、長期に渡る悪質なモラハラがあるという証拠を集めることが重要です。

2.モラハラで離婚ができない場合

夫婦間にモラハラがあっても、裁判所が離婚を認めない場合もあります。例えば、モラハラの証拠がない場合です。裁判所は当事者の証言だけでなく、録音やLINEのやりとり等の客観的な事実を元に事実関係を認定します。モラハラが事実だったとしても、配偶者がその事実を否定し、かつ客観的な証拠が何もなければ離婚は認められない可能性が高いです。
また、モラハラがあまり悪質でない場合や、加害者である配偶者が大いに反省しており、婚姻の継続を強く希望している場合も、離婚は認められない可能性があります。
日本の裁判所は、離婚の成立について当事者の意思を尊重しつつ、一方の当事者の意思により一方的に離婚を成立させる判断には慎重になる傾向があります。これは「夫婦の協力により婚姻関係を継続させる余地があるなら、離婚を成立させるべきではない」という価値観によるものと考えられています。
また、モラハラという概念自体が比較的最近生まれたもので、モラハラに該当する行為も広範囲で曖昧な面があるため、裁判所も離婚事由として認めづらいという事情もあります。

モラハラを理由に慰謝料を請求できる可能性と慰謝料の相場

モラハラを理由に、加害者である配偶者に対して慰謝料を請求することはできるのでしょうか。慰謝料を請求できる可能性や慰謝料の相場などについて説明します。

1.モラハラを理由に慰謝料を請求できる可能性

慰謝料は、不法行為に基づき請求することができます。不法行為により損害賠償を請求するには、相手の故意または過失によって違法な権利侵害がなされ、それによって損害が生じたことが必要です(民法第709条)。
違法な権利侵害の対象には人の名誉やプライバシーなどの、人格権も含まれ、損害には精神的な損害も含まれるので、モラハラ行為に基づく損害賠償請求は可能です。ただし、全ての場合に損害賠償請求が認められるわけではなく、一般的な夫婦喧嘩中の暴言である場合、暴言が一度限りだった場合は、違法性が認められず、損害も認められない可能性が高いでしょう。
一般的には、裁判所により離婚の事由として認められる程度のモラハラであれば慰謝料請求が認められる可能性が高いと考えられています。また、夫婦は家計を共有していることも多いので、離婚が成立しない場合は、慰謝料を請求するメリットがないというケースも多いでしょう。そのため、基本的にはモラハラを理由とする慰謝料請求は離婚の請求とセットで検討されることになります。

2.モラハラで離婚する場合の慰謝料の相場

モラハラを理由に離婚する場合の慰謝料の金額はモラハラの悪質さなど個々の事情により大きく異なります。以下のような場合は高額になる可能性もあります。

  • 長期間に渡って人格を否定し続けるなど大きな精神的苦痛を受けた場合
  • 配偶者からのモラハラにより被害者がうつ病やPTSDを発症した場合

なお、一般的に、離婚時の慰謝料は50万円から300万円程度なので、モラハラを理由に離婚する場合もこの範囲内に収まると考えられます。

3.モラハラの証拠の集め方

最終的に慰謝料の金額を決めるのは裁判所です。納得できる慰謝料を得るためには、モラハラがどれだけ悪質であったか、モラハラによってどれだけ精神的な苦痛を受けたかを客観的に証明することが重要です。
例えば、配偶者の暴言を録音した音声は有力な証拠となります。録音はなるべく多く収集し、いつの録音かメモしておくとよいでしょう。また、客観性という点では録音に劣りますが、暴言の内容などを記録した日記も証拠として認められる場合があります。
メールやLINEでモラハラが行われている場合には、やりとりを記録しておくべきです。LINEのやりとりは相手に削除される可能性もあるため、スクリーンショットを撮って保存しておくとよいでしょう。
モラハラ行為を目撃した人がいる場合には、その人の証言も有力な証拠となります。証言は録音するか、文字にして署名・押印をしてもらうと証拠としての信頼性が高まります。また、モラハラにより、うつ病などの精神疾患を発症した場合は、医療記録(医師の診断書等)があると精神的な損害の証拠となります。
モラハラの内容は様々なので、離婚や慰謝料を請求する際に必要となる証拠は事案によって異なります。どのような証拠が必要かわからない場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。

配偶者と離婚して慰謝料を獲得するまでの流れ

最後に、配偶者と離婚し、慰謝料を獲得するまでの流れについて説明します。

1.離婚請求

配偶者が離婚に応じてくれた場合は協議離婚を成立させることができるので、まず、離婚の同意を得られるかどうか検討しましょう。同意を得ることが難しい場合は、裁判手続を検討する必要があります。
日本の裁判手続では、裁判を提起する前に必ず調停という手続を経る必要があります(調停前置主義)調停とは、家庭裁判所で調停委員や裁判官を交えて行う話し合いの手続です。調停における話し合いが不調に終わると審判、そして裁判という手続に移行し、最終的には裁判官が判決を下します。
裁判の際に最も重要なのが離婚事由の有無です。モラハラが離婚事由に該当する場合、十分な証拠を集めることができれば、裁判上の離婚が可能です。一方、モラハラが離婚事由に該当しない場合は、他に離婚事由に該当するような事実がないか、協議により離婚を成立させる余地がないか等を検討する必要があります。

2.慰謝料請求

慰謝料を請求する際は、まず配偶者に内容証明郵便を送付するなどして直接支払いを求めます。ただし、残念ながら、相手が任意の支払いに応じないケースの方が圧倒的に多いです。そこで、裁判所に訴訟を提起することになります。

まとめ

今回は、夫婦間のモラハラの典型例、モラハラを理由に離婚できる場合とできない場合、モラハラを理由に慰謝料を請求できる可能性と慰謝料の相場、配偶者と離婚して慰謝料を請求するまでの流れなどについて解説しました。

外から被害の実態が見えづらいモラハラですが、被害者が精神疾患を発症するなど深刻な問題に発展するケースは少なくありません。深刻な問題に発展する前に、加害者と物理的な距離を置くことが大切です。配偶者からのモラハラに悩まされている場合は、離婚も視野に入れて自分を守る方法を検討しましょう。配偶者と離婚して、モラハラの被害に対する慰謝料を請求したいという方は、離婚問題に精通した弁護士に相談することをおすすめします。

私達、東京スタートアップ法律事務所は、問題のある配偶者と離婚して新しい人生を歩みたいという方を全力でサポートしております。秘密厳守はもちろんのこと、分割払い等にも対応しておりますので、お気軽にご相談いただければと思います。

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執筆者 代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会 登録番号45484
東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士。
「ForClient」を理念として自らも多くの顧客の信頼を得ると共に、2018年の事務所開設以降、2023年までに全国12支店へと展開中。
得意分野
ベンチャー・スタートアップ法務、一般民事・刑事事件
プロフィール
京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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