モラハラの特徴とは?対処法や離婚する場合の流れ、注意点を徹底解説

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記事目次
ここ数年、よく耳にするようになった「モラハラ」。実際に離婚原因としてあげられることも増えてきました。
しかし、モラハラは肉体的暴力と違い、その痕跡も残らず、立証することも難しいです。そのため、モラハラを受けていて離婚したいと考えていても「この程度のことで離婚原因になるのか?」と不安に思われる方も多いと思います。
モラハラを行っている側は、自分がモラハラをしていることに気づいていない、指摘されてもモラハラであることを否定したりすることも多いでしょう。
モラハラというと、夫が妻に対して行うイメージがあるかもしれませんが、裁判所の統計によると、夫側がモラハラを受けていることを理由に離婚を望んでいるケースもかなりの数にのぼります。
モラハラの定義
モラハラとは「モラルハラスメント」の略語です。道徳や倫理に反した言動により、相手に精神的な苦痛を与える行動をいいます。モラハラは職場などで行われるケースもありますが、夫婦間や家族内で行われるモラハラが近年注目されています。
夫婦間や家族内のモラハラは、精神的DV(ドメスティック・バイオレンス)に分類され、モラハラは離婚原因にもなり得ます。
モラハラを理由に離婚するケースは多い
令和5年(2023年)司法統計年報家事編「第19表 婚姻関係事件数―申立ての動機別」より、「離婚したい」と裁判所に申し立てた理由として上位3つをまとめた表が記載されています。
このうち、よくある離婚理由を抜き出してみました。
「性格が合わない」(夫側9,103、妻側15,835)
「異性関係」(夫側1,817、妻側5,362)
「暴力を振るう」(夫側1,320、妻側7,717)
「浪費する」(夫側1,748、妻側3,550)
「精神的に虐待する」(夫側3,252、妻側10,881)
モラハラは夫側で2番目、妻側で3番目に多い離婚原因となっています。
よく離婚原因としてあげられる「異性関係」「浪費する」よりも、「精神的に虐待する(モラハラ)」の数がかなり多いことや、実際に「暴力を振るう」よりも「精神的に虐待する(モラハラ)」の方が多いことがわかります。
参考:令和5年(2023年)司法統計年報家事編「第19表 婚姻関係事件数―申立ての動機別」 https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/719/012719.pdf |
モラハラの特徴とは?
日常的にモラハラ被害に遭っていると、日々浴びせられている言葉が「モラハラ」に当たるのか、それとも自分が間違っているのかが判断できなくなってしまいます。モラハラには、「自己中心的」「相手を支配しようとする」「外面が良い」といった特徴があります。
多くあてはまるようであれば、モラハラ被害を受けている可能性が高いといえます。以下に、モラハラの特徴をまとめましたので、チェックしてみてください。
妻(夫)の人格や価値観を否定する
「ここは俺の家だ!」「文句があるなら出ていけ」、(専業主婦に対して)「仕事もしていないくせに」、「大した稼ぎもないくせに」、などと、妻(夫)の人格や経済力などを貶める言動を繰り返すことがあります。「俺がいなければ生活もできないくせに」「パート程度の稼ぎで大きな顔をするな」などと妻のやっていること自体の価値を否定する場合もあります。妻(夫)が家事や育児をしてくれていて生活が成り立っているにもかかわらず、自分が優位に立てる収入などを盾に、相手を攻撃して服従させようとします。
妻(夫)を見下している
「お前はなにもわかっていない」「お前はバカだ」「できるはずがない」「口ごたえするな」などと、妻(夫)の判断力や学力(学歴)考え方そのものを否定する言動もモラハラにあたります。ただの夫婦喧嘩でも相手に対して「バカ」などと言うことはありますよね。
喧嘩をしているわけでもないのにバカにしてくる、喧嘩をしている際に高圧的に罵る、話している内容が低次元であるなどと言い、言われた側が反撃できないような状況が作り上げられているのであれば、これはケンカではなく、モラハラといえます。
理由もなく突然怒る
喧嘩をしているわけでもないのにいきなり怒り出す、大したことでもないのに怒鳴り出す、などの行動もモラハラにあたります。怒ったり、怒鳴ったりすることで相手を制圧して、自分の気持ちを落ち着けようとすることがあります。これに対して、妻(夫)の側が「なんでそんなことで怒っているの?」「八つ当たりしないで。」と強く反撃できれば良いのですが、それができない関係性が構築されてしまっている場合や、元々気の弱い妻(夫)で反撃できないことがわかっていて、このような行動をとるケースは多いです。
理由なく不機嫌な態度をとる
「理由もなく突然怒る」と似ています。結局、このような態度を取られた側は、萎縮し、これ以上不機嫌になられないように気を使わなければならなくなります。夫婦や子どもも含めた家族で生活する場であるのに、相手の機嫌が悪いだけで、その空間がくつろげない、ストレスを感じる場所になってしまいます。
モラハラをしている側としては、自分が相手を支配しているその状態に快感を覚えているといえます。
自分の非を認めず、責任転嫁する
夫婦間で問題があった場合、なんらかの手続きがうまくいかなかった場合、物事がうまく進まなかった場合に、モラハラ夫(妻)は自分の非を認めません。全てを相手のせいにします。「お前があの時〜しなかったから」「忙しい俺(私)がそんなことできるはずがないだろう」「暇なお前がやればよかったんだ」などという言い分です。自分に都合の悪いことは棚に上げて、自分の非を指摘されないために、より高圧的に妻(夫)に接することが多くあります。
冷静に自分の責任を認めることができないと感じる場合は、他にもモラハラをされていないか、確認してみると良いと思います。
妻(夫)の気持ちより自分の都合を優先する(例:勝手に予定を入れる、セックスを強要する)
全てを「自分軸」で考え、何かを決定する際に相手の気持ちを考慮することがない、相手に何かを押し付けることもモラハラにあたります。夫婦で一緒に生活しているのであれば、夫や妻の行動は、2人の意思や気持ちを考慮して決めるべきです。
しかし、モラハラ夫(妻)は、「これは妻(夫)がやる」「自分の実家に帰るのは当然」妻(夫)の体調や気持ちを考慮することなく「セックスを強要する」、などの強行に出ます。「自分の思い通りになって当然である」という認識から、自分の都合を優先し、妻(夫)の気持ちなど考慮する余地もないのでしょう。
妻(夫)を束縛する
モラハラ夫は、妻(夫)を束縛することが多いです。自分は好き勝手に行動しておきながら、相手の居場所、やること、交友関係にまで口を出してきて、自分が把握できない場所へ相手が行くことや、自分が嫌だと思う相手と会うことを許さないことがあります。実家への帰省を認めない、飲み会に行かせない、妻(夫)が仕事をすることを認めないなど、よくある事案です。よりエスカレートすると、携帯の写真やLINEをチェックされる、位置情報の共有を強要されるなど、プライバシーが守られないケースも出てきます。
合理的な理由がない限り、自由に行動することを咎められる関係性は健全とはいえない場合が多いです。
妻(夫)を無視する
話しかけても返事をしない、これもモラハラにあたります。家の大切なことや、子どもの学校などで、夫(妻)と相談する必要があるのに無視され続けるので、大切なことはLINEやメールで連絡しているという夫婦もいらっしゃいます。これも、その人の存在を無視していることにつながりますので、モラハラ行動の一つです。
コミュニケーションをとることができない状況があれば、それはモラハラ行動が原因なのではないかと、確認してみてください。
生活費を渡さな
生活費を渡さない心理としては、妻(夫)が自由に使えるお金をなくし間接的に相手を束縛する、自分が働いているから生活できることを思い知らせる、家計の管理をさせないことで相手が自立することを妨げる、など妻を自分の言いなりにさせようとするものがあげられます。また、妻(夫)がいうことをきかない時や、言い返した時に「生活費を渡さない」「生活費を減らすぞ」などと懲罰的に生活費をコントロールしようとする場合があります。これは、「経済的DV」にあたります。
妻(夫)の親族や友人をバカにした言動をする
単に、親族や友人をバカにし侮辱しているにとどまらず、精神的に支配・孤立させるための手段であることが少なくありません。頼りになるのは自分であり、実家や友人に頼ることを阻止しようとする、よくあるモラハラの一種です。
両親や育ちを貶め、自分との生活の方が優位であると思い込ませることもあります。「お前は育ちが悪いから、この程度のこともできないんだ」など、両親と妻(夫)の両方を罵るケースもよく見受けられます。孤立すればするほど、束縛したいモラハラ夫(妻)としても都合がいいのです。
モラハラ夫(妻)になってしまう原因
モラハラをしてしまう原因としては、本人の性格や過去の経験、家庭環境、社会的背景などが複合的に関係しているといえます。本人の性格としては、自己肯定感の低さや劣等感の裏返しとしてモラハラを行うようになります。
このような人は承認欲求が強く、高圧的態度で相手を支配することにより、自己の存在価値を見出します。次に、育った環境があげられます。育った家が、亭主関白な家であった、母親が父親に逆らえない関係性であった、親から虐待を受けて育った、などです。
暴力や無視・侮辱などの精神的虐待を受けて育った反動で、自分が家庭を持った段階で、今度は自分が支配者になろうとします。
また、 性役割への歪んだ古い価値観を持っている場合もモラハラをしやすいといえます。外では優秀な人、良い夫(妻)、いい父親(母親)を演じて、その疲れを妻(夫)に対するモラハラ行動で発散しようとする場合もあります。モラハラ夫(妻)は、外から見ると「とてもいい人」であることもよくあります。
中には、モラハラの自覚なく、妻(夫)のためを思った言動がモラハラになってしまっているケースもあります。自分の夫(妻)がどのタイプか、観察しているとわかるようになってくると思います。
夫(妻)からのモラハラ行為の例
言葉によるモラハラとして、妻(夫)を侮辱する、妻(夫)の人格を否定する、責任転嫁し全て相手のせいにするなどがあげられます。また、モラハラ夫(妻)の態度としては、無視する、威圧的行動をする、監視する、怒鳴らずに圧迫する(落ち着いた口調で侮蔑する、脅す)なとが見受けられます。他には、相手の人的関係を遮断、実家や友人との関係を制限することによって、事実上の支配をする場合があります。生活費を渡さない、相手の収入を管理するなどの方法により経済的支配をし、相手の自立や自尊心が育つことを阻止しようとします。
侮辱、人的関係の切断、経済的支配を通して、最終的に妻(夫)の自信を奪い、自分から逃げられないと思わせる精神的支配が完成してしまいます。
夫婦間におけるモラハラチェックリスト
モラハラでよくみられる項目をチェックリストの形式にしました。夫の行動で当てはまるものがあったら、項目にチェックを入れてください。チェックが多いほどモラハラにあたる可能性が高いといえます。チェックが多い場合、精神的ダメージがこれ以上深くなる前に、相談する等の対応が必要だと考えられます。
モラハラは治るの?
モラハラ夫が変わってくれれば、平穏な生活が送れるのにと考えている人は多いと思います。「結婚前の優しい夫(妻)に戻ってくれたら」という願いは叶うのでしょうか。一般的に、モラハラを治すことは難しいといわれています。なぜ難しいのか、以下に関連する事由を記載します。
モラハラは心の病気でもある
モラハラは性格から生じる場合と、心の病気によって引き起こされている場合があります。正式名称「モラルハラスメント」は医学的な病名ではありません。「モラハラ」が心の病気に起因するのであれば、「自己愛性パーソナリティ障害」であるといえます。
自己愛性パーソナリティ障害の患者は、誇大な優越感から自己の能力を過大評価し、一方で他者の能力を過小評価して貶める傾向にあるほか、共感性に乏しいという特徴があります。このような点は、モラハラの行為態様と一致しています。
治るかどうかは本人に自覚と意思次第
モラハラが心の病気に起因するのであれば、改善する可能性はあるのでしょうか?病気であれば、改善の余地があるといえます。
しかしながら、病気の治療は、まず本人が病気であることや治療が必要であることを認め行動しなければなりません。モラハラの場合、夫がこの事実を受け入れることが困難である場合が多いです。そのため、モラハラ夫が精神科医の診察やカウンセリングを受けることに拒否感を示すことは大いに考えられます。
妻(夫)から「あなたは病気かもしれないから精神科へ行ってみたら」などと言われようものなら、夫(妻)がキレる可能性があります。
加害者である夫(妻)に長年染み付いたモラハラ体質は、そう簡単には治らないと思っておいたほうが良いかもしれません。
モラハラ夫(妻)への対処法
前述したとおり、モラハラは夫婦喧嘩ではなく、一方的な精神的暴力行為です。モラハラを長期間受け続けた場合、あなたの心に深刻なダメージをもたらして、最終的にはうつ病などの精神疾患になってしまう可能性もあります。夫のモラハラに悩んだときに、どのように対応したら良いかを記載します。
どの対応ならできそうか、考えながら読んでみてください。
①証拠を集める
今すぐ離婚するつもりがなくても、「いつか」役に立つことがあります。証拠を集めておくことで、離婚する場合、慰謝料を請求する場合、親権を取りたいと思う場合などで役立つことがあります。また、モラハラを受けていた期間も長ければ長いほど、離婚や慰謝料を請求しやすくなります。
離婚相談にいらっしゃる方は、「結婚して半年くらいからモラハラがあって」などとおっしゃるのですが、証拠が何一つ残っていないと、相手が否定してきた際に証明することができなくなってしまいます。いつか使えるかもしれません。今はスマホで録音も録画もできます。コツコツ、証拠を集めてみてください。
②モラハラを自覚させる
モラハラが常態化してしまうと、言い返せない雰囲気がどんどん強くなってしまいます。モラハラだと感じたら、夫(妻)の発言に対して抗議しましょう。「あなたのそういう言い方は傷つくからやめてほしい」「私の親を馬鹿にしないでほしい」「仕事をする自由は私にもある」「干渉しないでほしい」と、モラハラ行動をやめるようにはっきり伝えると良いです。
感情的にならず、事実に基づいて伝えるようにします。モラハラ夫(妻)が逆上する可能性があるのであれば、カフェやファミレスなどの第三者がいる場所で話し合いをすると良いと思います。
暴力を振るわれたことがある場合は、話し合いは避けたほうが良いかもしれません。
③毅然とした態度で対応する
モラハラ夫(妻)は、言い返さない相手を見て、さらに調子に乗りモラハラもエスカレートしていきます。「いちいち言い返していたらキリがない」などと諦めず、「やめてほしい」と伝えるようにしましょう。
モラハラに慣れすぎてしまうと、「自分には価値がない」「夫(妻)がいないと何もできない」などと自分の認知も歪んでしまう危険性があります。
④別居する
モラハラ夫(妻)の行動がひどい場合には、別居をすることが有効です。離婚する、しないにかかわらず、距離を置いて、自分や子供の安全を確保することができます。モラハラ夫(妻)から離れることで、人に相談しやすくなったり、自分の意見をまとめることができます。
モラハラ夫(妻)は、相手を自分の支配下に置きたいと考えていますし、相手からの勝手な提案や行動を許さないと考えられます。そのため、別居を切り出す前に、実家、親族宅、賃貸物件、自治体が運営するDV避難施設などの安全な別居先を確保ておくことが重要です。
可能であれば、生活費など、別居生活を継続させられるように準備しておくことも大切です。モラハラを原因とする別居は正当な行為です。自分の心身や子供の健全な成長のために、別居してモラハラ夫(妻)と距離を置くことは正当な権利です。別居中にかかる生活費を夫に支払わせることも法的には可能ですので、この点については弁護士に相談すると良いです。
⑤離婚する
離婚するには、3つのステップがあります。
①夫婦の話し合いによる離婚
②話し合いでまとまらない場合は裁判所の「調停」を利用して話し合いを行い離婚する
③調停でもまとまらなかった場合は裁判所に「裁判」を申し立てます。
モラハラ夫(妻)との離婚が①の話し合いですんなり決まるとも思えませんし、仮に話し合いでまとまった場合、妻(夫)に不利な条件をつけられている可能性大です。そのため、離婚するのであれば、自身の権利を守るためにも、弁護士に相談することをお勧めします。
モラハラ夫と離婚できる?離婚の方法とは
モラハラは、離婚原因となります。ただ、相手がモラハラを認めないことが考えられますので、証拠を揃えてから行動するのが良いと考えます。別居した後に「モラハラ夫(妻)と別居したい」とご相談いただくこともありますが、別居した後に「モラハラの証拠」を集めることは難しいので、可能であれば、同居中にモラハラの証拠を残してください。別居してしまった後は、モラハラ夫(妻)とのメールやLINEのやり取りを証拠として集めたりすることになります。
モラハラによる協議離婚は難しい
モラハラ夫との協議離婚(夫婦の話し合いによる離婚) は難しいのが現状です。まず、モラハラ夫は妻が「離婚したい」などと言い出すこと自体を認めません。自分が決めて、妻がそれに従うものであると考えているからです。「稼ぎもないくせに」「生活力もないくせに」「何もできないくせに」離婚してどうやって生きていくのかと罵られるのが目に見えています。自分がモラハラをした事実を認識していない場合も認識している場合も、絶対にモラハラの事実は認めません。そうすると離婚原因がないことになってしまいます。仮に、離婚に応じるといった場合は、「おまえの都合で離婚するんだから、逆に慰謝料を払え」「財産分与には応じないぞ」などと、法的にはあり得ない夫に有利な条件を押し付けられることになります。
これを避けるためには、弁護士に相談してください。親権や、慰謝料、養育費など、法的に離婚後に自分を守ってくれる制度はたくさんあります。この点について、法律家の意見を聞くというステップを踏まないのは危険すぎます。
モラハラ夫の場合、弁護士が間に入ったとしても、自分中心の主張を続け、離婚が成立しないことや離婚協議が長引くことが多いです。
協議離婚に失敗した場合は調停離婚
協議離婚に失敗した場合、裁判所の「調停」を使って離婚する手続きに移行します。裁判所の調停では、調停委員2名が担当としてついてくれ、話し合いの間に入ってくれます。また、家庭裁判所の裁判官1名も担当してくれますので、夫の自己中心的な離婚条件は認められにくくなります。また、調停委員が、離婚する際に必要な事項や、財産分与、慰謝料、養育費などについても説明してくれます。
調停の段階で弁護士に依頼すると、弁護士と、調停委員や裁判官で話を進めることになるので、早期解決につながる可能性があります。ただ、モラハラ夫側が譲歩しないことが多いので、調停で離婚が決まらないこともあります。
離婚調停でも相手が合意しない場合は離婚訴訟を起こす
離婚調停でも相手が合意しない場合、離婚「訴訟」を起こすことになります。裁判で離婚するためには、「離婚をする理由」が大切になります。そこで、「モラハラがあった事実」を、離婚原因として裁判官に示す必要があります。この時に、集めておいた証拠が役に立ちます。裁判を行うと、「離婚する」か「離婚しない」の結論を裁判官が決めることになります。
モラハラ夫との離婚協議完了までにかかる期間
モラハラで相手と離婚するまでにどれくらい時間がかかるのか、気になると思います。
①まず、協議離婚(夫婦の話し合い)による離婚の場合には、3ヶ月くらいで離婚が成立することが多いです。ただ、モラハラ夫が自分に有利な内容でないと離婚しないなどと主張した場合はもう少し長くかかります。
②話し合いでまとまりそうもない場合は、裁判所の「調停」を使った離婚を試みます。調停を利用した場合、早ければ3ヶ月、長いと6ヶ月以上かかる場合があります。夫婦の意見がかけ離れている場合、裁判官が「調停で離婚することは難しい」と判断し、調停は不成立で終了します。
③調停でも離婚できなかった場合は、裁判を起こすことになります。
よって、裁判をすることなく離婚するためには、早ければ7ヶ月、長くかかると1年を超えることもあるといえます。
夫のモラハラが原因で離婚した場合の慰謝料相場
モラハラは相手の心を傷つける行為で、これによってモラハラを受けた側は精神的苦痛を被ることになります。よってモラハラは不法行為にあたり、被害を受けた側は、慰謝料を請求することができます。
裁判で慰謝料を請求した場合、モラハラの実態などを総合的に判断して、慰謝料の金額が決定されます。
・モラハラ行為が行われた期間、頻度
・モラハラの内容
・モラハラを受けた側の精神的苦痛の程度
・婚姻期間の長短
慰謝料の金額は、事案によって10万円~100万円程度といわれています。多くの場合は10万円~50万円程度にとどまっているのが実情です。50万円を超える高額な慰謝料が認められるのは、長期間行われたこと、モラハラ行為が悪質であること、妻がうつ病などの精神的疾患を発症したことなど、被害者側の苦痛が大きい場合です。
このような事情から、「モラハラの証拠」を早期から、たくさん集めておくことが大切です。
軽度のモラハラだと慰謝料請求できない場合もある
軽度のモラハラですと、慰謝料を請求できない場合もあります。例えば、「夫(妻)に無視された」「傷つく言葉を言われた」という証拠のない曖昧な主張だとモラハラがあったこと自体が認定されないことがあります。人間ですから、機嫌の悪い日や体調が悪い日もあります。このようなときに妻からの問いかけに答えられなかっただけで「モラハラ」とはいえません。また、妻の側も夫の人格を否定するようなことを言いモラハラの応酬をしている場合は、単なる夫婦喧嘩と見られてしまいます。
モラハラ夫(妻)と離婚や別居する際の注意点
モラハラ夫(妻)との離婚や別居は、通常の離婚や別居と比べると注意すべき点が多いです。そもそも、妻(夫)を支配しようとする気持ちからモラハラを働いているので、が自分から離れて生活すること自体を認めたくない気持ちや、自分が損をしたくないという気持ちから、さまざまな妨害をされる可能性があります。
別居後生活する場所を見つけておく
モラハラ夫と二人で話し合っても、別居をすんなり認められたり、離婚をすんなり受け入れることは考えられません。離婚や別居を切り出すことで更にひどいモラハラを受ける可能性や、エスカレートして暴力を受ける可能性もあります。そのため、別居というステップを踏み、距離を置いて離婚の話を進めることも選択肢に入れると良いと思います。
別居後に離婚の意思を夫に伝えるくらいがちょうど良いと考えますので、別居後どこで暮らすのか、どのように生計を立てるのか、など事前に準備をしておくことをお勧めします。
別居する前に必要な情報を得ておく
離婚する際は、夫婦の財産を半分に分ける「財産分与」も行います。モラハラ夫は自分の財産を妻に渡したくないと考え隠すことも考えられますので、一緒に住んでいる間に、夫の全取引金融機関、証券会社から届いた書面がある場合はその会社名、保険証券、保有している車の車種・年代、など財産に該当するものの資料を揃えておくと良いでしょう。
例えば、離婚調停の際に、夫が証券会社との取引を隠した場合、その財産の半分を受け取れなくなります。別居前に何をすべきかなどは、弁護士にご相談いただくと良いと思います。
別居する前にモラハラの証拠を押さえておく
離婚原因として「モラハラがあった」ことを証拠によって立証しなければなりません。そのため、同居している間に、できるだけ多くの証拠を集めておくことが大切です。単なる記録よりも、夫のモラハラ発言を録音しておく方が良いです。単に罵る言葉であっても、その言い方や声の大きさで「モラハラ」度合いが違ってきます。別居後にモラハラの証拠を集める機会としては、夫とファミレス等で話し合いをする時などが考えられます。また、別居後は、メールやメッセージ、LINEでのやり取りが続きますので、ここにモラハラ発言があれは記録できます。
ただ、機転のきく夫の場合、別居後はその行動に特に気をつけてモラハラの証拠になるようなことはしない可能性もありますから、夫に気づかれる前に証拠を集めた方が良いでしょう。
モラハラに関する悩みの相談先
モラハラに関する悩みの相談先として、次の4つが考えられます。ご自身の状況や、自分がどうしたいと考えているかによって、相談先を決めても良いですし、複数の相談先に連絡してみるのも良いと思います。まずは、専門家に話をしてみましょう。
DV相談プラス
内閣府男女共同参画局が実施しているサービスで、配偶者やパートナーから受けている様々な暴力(DV)について、専門相談員が相談に乗ってくれます。実際の暴力だけでなく、精神的暴力(モラハラ)の相談もできますので、ぜひ使ってみてください。24時間の電話相談のほか、メールやSNSによる相談も可能です。
配偶者暴力相談支援センター
都道府県や市町村が行っているサービスで、配偶者からの暴力の防止および被害者の保護を図るため、相談や相談機関の紹介、カウンセリング、被害者等の緊急時における安全の確保および一時保護などを行っています。
ここ数年、年間の相談件数は12万件を超えて利用されています。ホームページにアクセスして、お住まいの地域の相談窓口を探してみてください。
法テラス(日本司法支援センター)
金銭的に余裕がない場合であっても、法テラスであれば、弁護士費用を立替え、後から分割(月額5000円〜1万円)で支払うことができます。電話で事情を説明して初回相談を申し込むことができます。法テラスのホームページから、お住まいの地域の法テラスの電話番号を調べることができますので、検索してみると良いと思います。
ただ、収入が一定以上ある場合には、法テラスを使うことができません。
法律事務所
モラハラを原因として離婚したいと考えている場合や、別居して生活費だけ貰いたいなどと考えている場合は、弁護士に相談いただくことで、離婚や別居後の生活費の取得を、早期に実現できるようになります。すぐに離婚と考えていない場合であっても、現在持っている証拠で足りるか、足りない場合「証拠」を取得する方法や、取得すべき証拠の種類などをお伝えすることができます。また、別居して生活費を払って欲しいと考える場合も、いくらくらい支払われるのかをお伝えすることもできます。
モラハラによる離婚に関するよくある質問
質問1:モラハラで離婚できる?
モラハラは離婚原因になります。話し合い、調停で離婚が成立しなかった場合は、裁判で「離婚原因があるか」の判断がなされますので、モラハラの証拠をできる限り多く集めておくことが大切です。今は、スマホで簡単に録音、録画することができます。使わなくなった古いスマホの録音録画機能だけ使うこともできます。モラハラ夫にバレないように、たくさんの証拠を取得してください。
質問2:モラハラを受けている場合、無断で別居してもいい?
良いです。精神的暴力を受けているのですから、自分を守るために逃げることに問題はありません。子供がいる場合、子供も一緒に避難して問題ありません。夫に相談して、すんなり「別居していいよ」と言われる可能性はこれまでの経緯からして難しいと考えられます。別居してから離婚するまでの生活費をモラハラ夫に請求することができます(「婚姻費用」といいます)。この手続きは自分ですることもできますが、まずは弁護士に相談していくらくらい受け取れそうか聞いてみるのも良いと思います。
質問3:モラハラ夫とスムーズに離婚するためには?
①まずは、第三者を間に入れて話し合うことが大切です。二人きりで話をしたら、モラハラがエスカレートする原因になりかねません。
離婚する原因についても、自分は悪くない、お前が悪いとまたモラハラ発言が始まることでしょう。反面、モラハラ夫は、外面が良いです。そのため、第三者の前で、妻を罵るようなことをいうのはおかしいと知っています。
よって、第三者を入れて話うことは有効だと思います。②離婚条件について、最低限譲れないラインを決めておくと良いです。どのような請求ができるか知らない人も多いので、この点は弁護士に相談いただくと良いと思います。
③モラハラ夫との離婚は難しい点が多いので、最終的には離婚調停や離婚訴訟を行うことも視野に入れておくと良いです。
間違えても「話し合ったけど離婚できなかった」で終わらせないようにしてください。
質問4:離婚した場合、養育費はもらえるのか
養育費は法律上認められた権利です。夫と妻の収入から、養育費の金額を割り出すことができます。話し合いだけで養育費を決めてしまうと、本来認められる金額より低い金額で合意してしまうこともあるので、弁護士に相談して「妥当な養育費金額」を知っておいた方が良いです。なお、低い金額で合意して離婚した後でも、「養育費を増額せよ」と裁判所の調停を申し立てることもできます。
質問5:子どもの親権はどうなるか?
子どもがまだ小さい場合、モラハラ夫に親権を渡したくないと思うことが多いでしょう。「夫が『親権は渡さない』と言ってきた」このような場合にどうしたら良いでしょうか。まず、別居する場合は、子供と一緒に自宅を離れてください。子供を夫の元に置いてきた場合、親権を主張する際、不利になる可能性があります。親権を渡したくないのであれば、子供と一緒の生活を続けられるようにしてください。親権を決める際は、裁判所がどのように判断するかまで考慮に入れる必要がありますので、この点も弁護士に相談していただいた方が良いと思います。
質問6:もしかしたら、自分に原因があるのかもしれないと悩む
モラハラは、相手の自尊心を崩していきます。よって、「私がきちんとできていないからいけない」「私がいけないから夫が注意してくれている」「夫は社会的にもしっかりしているし」「外では良い旦那さんだねと言われるし」など、いざ別居や離婚をしようとすると、別居や離婚のハードルの高さから、逃げのように自分が変われば状況が良くなるのではないかと考えてしまいます。悩んで終わらせないで、第三者の意見(親、友人、専門家、弁護士)を聞いて、客観的な視点を持てるようにしてください。
まとめ
モラハラはしている側もされている側もその認識が希薄である場合も多いです。ただ、モラハラにより精神的に疲弊していきますし、子供がいる場合は、その子供の成長へ悪影響を及ぼしたり、子供が結婚した後に再びモラハラ家庭を作ってしまう危険性があります。当事者が「おかしい」と感じる場合、第三者から見たらすでに「相当切羽詰まった状態」であるかもしれません。まずは、専門機関や弁護士に相談してみることをお勧めします。
- 得意分野
- 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
- プロフィール
- 京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設