婚姻費用分担請求調停は離婚調停と同時に申し立てるべき?メリット・デメリットを紹介

全国20拠点以上!安心の全国対応
60分3,300円(税込)
離婚とあわせて不貞慰謝料でも
お悩みの場合は無料相談となります
※
※
記事目次
離婚に向けた話し合いを進める中で、「婚姻費用」の問題も同時に検討すべき問題です。
特に、別居中の生活費が確保できるかどうかは、精神的な安定にも直結する重要な要素です。
離婚調停と同時に、生活費を請求する「婚姻費用分担請求調停」を申し立てるべきか、多くの方が悩むポイントでしょう。
本記事では、2つの調停を同時に進めるメリット・デメリット、手続の流れや注意点について、法律の専門家が分かりやすく解説します。
婚姻費用分担請求調停とは何か
婚姻費用分担請求調停とは、夫婦が別居している場合に、収入の少ない方が多い方に対して、生活費の支払いを求めるための家庭裁判所での話し合いの手続です。
法律上、夫婦は互いに協力し、助け合う義務があります(出典:e-Gov法令検索「民法」第七百五十二条)。
この義務には、お互いの生活レベルが同等になるように助け合う「生活保持義務」が含まれており、たとえ別居していても、離婚が成立するまではこの義務が続きます。
夫婦間で婚姻費用の金額や支払方法について合意できない場合、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。
婚姻費用の内訳
婚姻費用には、夫婦と未成熟の子どもが、収入や社会的地位に応じた通常の社会生活を維持するために必要な費用が含まれます。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 衣食住の費用:家賃、住宅ローン、食費、水道光熱費、日用品費など
- 医療費:診療費、薬代など
- 子どもの費用:学費、習い事の月謝、お小遣いなど
- 交際費:相当な範囲での交際費や娯楽費
申立てを検討した方がいい人
以下のような状況にある方は、婚姻費用分担請求調停の申立てを検討することをおすすめします。
- 相手から一方的に生活費を打ち切られた
- 別居後、生活が困窮している
- 婚姻費用の金額について、相手と話し合いがまとまらない
- 相手が話し合いに全く応じようとしない
婚姻費用分担請求調停と離婚調停を同時に申し立てる3つのメリット
離婚調停と婚姻費用分担請求調調停は、同時に申し立てることが可能です。これにより、離婚に関する話し合いと並行して、当面の生活費について話し合うことが可能となります。同時に申し立てることには、主に3つのメリットがあります。
メリット① 手続の効率化が図れる
離婚調停と婚姻費用分担請求調停を同時に申し立てると、多くの場合、同じ調停委員が担当し、同じ期日で話し合いが進められます。
離婚調停が不成立となった後で婚姻費用分担調停を申し立てると、裁判所に何度も足を運ぶことにもなり、時間的・身体的な負担が発生してしまいます。
同時に申し立てると、双方の収入資料なども一度に提出すれば済むため、書類準備の手間も省けるでしょう。離婚調停が係属中に、後で婚姻費用分担調停を申し立てることもできますが、解決までの期間が長引いてしまう可能性がありますので、同時に申し立てるメリットは大きいです。
メリット② 経済的な安定を得ながら離婚協議を進められる
別居中の収入が少ない側にとって、生活費の確保は最も重要な問題です。
先に婚姻費用について取り決めることで、離婚成立までの間の経済的な見通しが立ち、安心して離婚の話し合いに臨むことができます。
また、家庭裁判所としても、経済的に追い込まれぬよう、婚姻費用についての話し合いを優先してくれることがほとんどです。
また、生活費の不安から、財産分与や慰謝料、親権など、他の離婚条件で不利な内容を受け入れてしまうといった事態を避けることにも繋がります。
メリット③ 相手に離婚協議へ真摯に応じさせるきっかけになる
離婚に応じたくない相手方が、婚姻費用の支払義務を負担に感じ、離婚協議に真摯に応じるようになるケースがあります。
それは、婚姻費用は離婚が成立するまで(または再び同居するまで)支払い義務が続くため、支払う側にとっては大きな経済的負担となるからです。
この負担を解消するために、早期に離婚を成立させようと、話し合いが前向きに進展する可能性があります。
婚姻費用分担請求調停と離婚調停を同時に申し立てる3つのデメリット
一方で、2つの調停を同時に申し立てることにはデメリットも存在します。状況によっては、別々に申し立てた方がスムーズに進むケースもあるため、慎重な判断が必要です。
デメリット① 話し合うべき議題が増え、調停が長期化する可能性がある
離婚条件(財産分与、慰謝料、親権など)に加えて婚姻費用も争点となるため、話し合うべき内容が複雑になります。
双方の主張が大きく食い違う場合、それぞれの論点で対立が深まり、かえって調停全体の解決が遅れてしまう可能性があります。
特に、夫婦間の感情的な対立が激しい場合には、議論が発散し、長期化するリスクが高まります。
ただし、先ほど述べたように、婚姻費用についての話し合いを優先してくれるケースは多いですので、内容が複雑になるから婚姻費用分担調停を申し立てないと判断するのは時期尚早といえるでしょう。
デメリット② 相手の感情を逆なでし、対立が激化する恐れがある
離婚の話し合いだけでも精神的な負担が大きい中で、金銭の支払いを求める調停を同時に申し立てることで、相手が「自分からお金を奪うつもりか!」と感じ、感情的に反発を強めることがあります。
その結果、相手が態度を硬化させ、本来であれば合意できたはずの他の離婚条件についても、非協力的な姿勢を取るようになる可能性があります。
特に、相手方が過去において「自分のお金で生活できているのだろ!」などというケースは注意が必要です。
デメリット③ 申立て時の手間や費用が若干増える
同時に申し立てる場合、2つの申立書を作成する必要があります。
また、申立てに必要な手数料(収入印紙)も、離婚調停とは別に婚姻費用分担請求調停の分を用意しなければなりません。
離婚調停の収入印紙代1,200円に加え、婚姻費用分担請求調停の収入印紙代として1,200円が別途必要です。
書類作成の手間や費用が、わずかではありますが余分にかかる点はデメリットと言えるでしょう。
婚姻費用と離婚について調停で話し合う際の注意点
婚姻費用と離婚の両方を調停で話し合う場合、スムーズに手続を進めるためにはいくつかの注意点があります。感情的な対立を避け、建設的な話し合いを目指しましょう。
注意点① 収入に関する客観的な資料を準備する
婚姻費用の金額は、裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」(出典:裁判所ウェブサイト)を基準に、夫婦双方の収入のバランスで決まるのが一般的です。
そのため、自身の収入を証明する源泉徴収票、課税証明書、確定申告書の控えといった客観的な資料を必ず準備しましょう。
相手の収入資料がない場合でも、裁判所を通じて開示を求める手続(調査嘱託)を利用できるケースがあります。
注意点② 感情的にならず、冷静に話し合う
離婚や金銭問題が絡むため、感情的になりやすいのは当然です。
しかし、調停の場で相手を一方的に非難したり、感情的な発言を繰り返したりしても、有利な結果には繋がりません。
むしろ、調停委員の心証を悪くしてしまうだけです。調停委員に自身の主張を冷静に伝え、法的な根拠に基づいて話し合いを進めることが、早期解決の鍵となります。
相手の挑発には乗らず、あくまで「解決」という目標を見失わないようにしましょう。
注意点③ 優先順位を明確にしておく
離婚調停では、親権、養育費、財産分与、慰謝料など、多くのことを決めなければなりません。
婚姻費用と合わせてすべてを一度に解決しようとすると、交渉が複雑になりがちです。
まずは当面の生活を安定させるために婚姻費用を優先的に話し合うのか、あるいは離婚全体の早期解決を目指すのかなど、自分の中で交渉の優先順位を明確にしておくと、話し合いがスムーズに進みます。
婚姻費用の分担請求調停をせずに児童手当を確保する方法
別居中、子どもを監護していない非監護親が子どものための児童手当を受給している場合、受給者を実際に子どもを監護している親へ変更できる可能性があります。
離婚調停中または婚姻費用分担請求調停中であることを証明する書類(事件係属証明書など)を添えて、お住まいの市区町村の窓口で手続を行うことで、受給者を変更できる場合があります。(出典:内閣府「児童手当Q&A」)
これにより、調停の結論を待たずに、子どものための公的な手当を確保することができます。詳しくは、お住まいの自治体にご確認ください。
よくある質問
婚姻費用分担請求調停に関して、多くの方が抱く疑問についてお答えします。
Q1. 調停で決まった婚姻費用を相手が払わない場合はどうなりますか?
調停で合意した内容は「調停調書」という法的な強制力を持つ書面に記載されます。これは確定判決と同じ効力を持つため、相手が支払いを怠った場合は、調停調書に基づいて相手の給与や預貯金などの財産を差し押さえる「強制執行」の申立てが可能です。 強制執行の手続については、離婚相手が養育費を支払わない場合の対処法│差し押さえの方法や流れを紹介の記事も参考にしてください。
Q2. 婚姻費用はいつから、いつまでもらえますか?
婚姻費用は、一般的に「請求した時(通常は調停を申し立てた月)」から支払われることになります。別居開始時に遡って請求することは、相手が任意に応じない限り難しいのが実情です。そして、支払いの終期は「離婚が成立する月」または「再び同居する月」までとなります。生活に困窮している場合は、一日でも早く申立てを行うことが重要です。
Q3. 調停で婚姻費用の金額が決まらなかったらどうなりますか?
話し合いがまとまらず調停が不成立となった場合、自動的に「審判」という手続に移行します。 審判では、調停のように話し合いで解決するのではなく、裁判官が双方から提出された資料や主張をもとに、一切の事情を考慮して、支払うべき婚姻費用の金額を決定します。審判で下された決定(審判書)にも、調停調書と同様の法的強制力があります。
婚姻費用分担請求調停の申立て先や必要書類
婚姻費用分担請求調停を申し立てる際の、具体的な手続について解説します。ご自身で手続を進めることも可能ですが、不安な場合は弁護士に相談することをおすすめします。
申立て先・申立ての費用
- 申立て先:原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。(出典:裁判所「裁判所の管轄」)
- 申立ての費用:
- 収入印紙:1,200円分
- 連絡用の郵便切手:数千円程度(裁判所によって異なります)
必要書類
申立てには、主に以下の書類が必要です。
- 申立書(原本1通と相手方の人数分の写し)
- 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 申立人の収入関係資料(源泉徴収票、給与明細、確定申告書、課税証明書などの写し)
- (相手の収入資料があれば)相手の収入関係資料
- (年金受給者の場合)年金等の受給額が分かる書類の写し
- (必要に応じて)事情説明書、子どもの住民票など
記入例
申立書の書式や記入例は、裁判所のウェブサイトで確認できます。事前に目を通しておくことで、スムーズに準備を進めることができるでしょう。
その他不安な点がある場合は、管轄の家庭裁判所に連絡してみましょう。
参考:裁判所「婚姻費用の分担請求調停の申立書」
まとめ
離婚調停と婚姻費用分担請求調停を同時に申し立てるか否かは、それぞれのメリット・デメリットを十分に理解し、ご自身の状況に合わせて慎重に判断することが大切です。
同時に申し立てることで、手続が効率化され、経済的な安定を得ながら離婚協議を進められるという大きな利点があります。 一方で、論点が増えることで対立が激化し、かえって解決が長引くリスクも考慮しなければなりません。
いずれにせよ、別居中の生活費である婚姻費用は、正当な権利として請求できるものです。相手との話し合いが難しい場合や、手続に不安がある場合は、一人で抱え込まずに、離婚問題に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
あわせて読みたい記事
- 得意分野
- 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
- プロフィール
- 京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設