公正証書とは?自分で作れる?作成するメリットや必要書類、費用目安などの作り方を徹底解説

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記事目次
「公正証書」を作成した方が良いと聞いたけれど、「手続が難しそう」「費用が高額なのでは?」と、一歩を踏み出せずにいませんか?
離婚の際の養育費、親子間の金銭の貸し借り、あるいは大切な家族に残す遺言など、「口約束だけでは不安だ」「将来、相手が約束を守ってくれなかったらどうしよう」といった悩みは尽きないものです。
この記事では、そのような不安を解消するために、公正証書の基本的な知識から、具体的な作成手続、費用の目安までを専門家が徹底解説します。
この記事を最後まで読めば、公正証書があなたの権利と大切な約束事を守るための、いかに強力なツールであるかがお分かりいただけるはずです。
ご自身の状況に合わせて、作成を検討すべきか判断するための確かな知識を身につけましょう。
公正証書とは
公正証書とは、法律の専門家である「公証人」が、法律に従って作成する公文書のことです。
個人や法人が作成した契約書や合意書(私文書)も、当事者の間では有効ですが、その文書が本当に当事者の意思に基づいて作成されたのか、内容が法的に有効なのかといった点で、後から争いになる可能性があります。
これに対し、公正証書は、公証人が当事者の本人確認を行い、内容が法律に違反していないかを確認した上で作成するため、非常に高い証明力を持っています。
さらに、金銭の支払いに関する契約など、一定の条件を満たす公正証書には「執行力」が認められており、万が一相手方が支払いを怠った場合、裁判を起こし勝訴判決を得る必要なく、直ちに強制執行(財産の差押えなど)の手続に入ることができます。
公証人とは
公証人とは、裁判官や検察官、弁護士などを長年務めた法律実務の経験豊富な専門家の中から、法務大臣が任命する公務員です。
全国各地にある「公証役場」で、公正証書の作成や私文書の認証などの業務を行っています。
中立・公正な立場で、国民の権利や財産を守るための重要な役割を担っています。
公証役場とは
公証役場とは、公証人が執務を行う事務所のことです。
全国に約300カ所設置されており、基本的にはどこの公証役場でも公正証書を作成することができます。
お住まいの地域や職場の近くなど、ご自身がアクセスしやすい公証役場を選ぶとよいでしょう。
所在地については、日本公証人連合会のウェブサイトで確認できます。
公正証書の種類
公正証書には様々な種類があり、私たちの生活の多様な場面で活用されています。
ここでは、代表的な公正証書の種類について解説します。
契約書類に関する公正証書
当事者間の合意内容を明確にし、将来のトラブルを防ぐために作成されます。
任意後見契約
将来、ご自身が認知症などで判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめ財産管理や身上監護(生活や治療、介護などに関する手続)を任せる人(任意後見人)と、その具体的な内容を決めておく契約です。
この契約は、法律により公正証書で作成することが義務付けられています。(出典:e-Gov法令検索「任意後見契約に関する法律」第三条)
金銭消費貸借契約
個人間や事業者間でお金の貸し借りをする際に作成します。
返済金額、返済方法、返済期日、利息、遅延損害金などを明確に定めます。
特に、「強制執行認諾文言」を入れた公正証書を作成しておくことで、万が一返済が滞った場合に、裁判を経ずに債務者の財産を差し押さえる強制執行が可能となります。
土地建物賃貸借契約
事業用の店舗や事務所など、比較的高額な賃料の建物の賃貸借契約で利用されることがあります。
契約期間、賃料、更新に関する事項などを公正証書にしておくことで、契約内容の明確化を図り、トラブルを未然に防ぐことができます。
また、契約終了時の建物の明け渡しについても、強制執行認諾文言を付すことで、法的手続をスムーズに進めることが可能です。
離婚給付等契約
離婚する際に、夫婦間で合意した慰謝料、財産分与、養育費などの金銭の支払いについて定める契約です。
特に、子どものための養育費は極めて重要です。
しかし、厚生労働省の調査(出典:厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」)によれば、離婚後に養育費を「受け取ったことがない」母子世帯は半数以上にのぼるという厳しい現実があります。
このような事態を防ぐため、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておくことが非常に有効です。
万が一不払いが発生した場合に、裁判を経ずに相手の給与や預貯金を差し押さえることが可能となり、お子様のための大切な権利を守ることができます。
弁護士のワンポイントアドバイス
離婚給付契約の公正証書を作成する際は、単に金額を決めるだけでなく、「支払いが遅れた場合の遅延損害金」や「子どもの進学など特別な支出に関する協議条項」なども盛り込んでおくことをお勧めします。
私が担当した案件では、将来起こりうる変化をあらかじめ想定した条項を入れておいたことで、後々のトラブルを未然に防ぐことができました。
何を決めておくべきか迷われたら、ぜひ専門家にご相談ください。
単独行為に関する公正証書(遺言など)
契約とは異なり、相手方がいない、一方的な意思表示を内容とするものです。代表的なものに「公正証書遺言」があります。
遺言者が公証人に遺言の内容を伝え、公証人がそれを文書にまとめ、証人2名以上の立会いのもとで作成します。
自筆証書遺言と異なり、方式の不備で無効になる心配がありません。
また、原本が公証役場に保管されるため、紛失や偽造、隠匿のおそれがないという大きなメリットがあります。
家庭裁判所での「検認」という手続も不要なため、相続開始後、スムーズに相続手続を進めることができます。
実務上、相続トラブルの多くは遺言書がない、あるいは自筆証書遺言の内容が不明確であることに起因します。
公正証書遺言の作成には費用はかかりますが、将来の相続トラブルを予防する最も確実な方法の一つと言えるでしょう。
特に、相続人同士の関係が複雑な場合や、特定の相続人に多くの財産を残したいと考えている場合には、強くお勧めします。
保証意思宣明公正証書
事業用の融資を受ける際に、個人が安易に保証人になることを防ぐ目的で導入された制度です。
事業用の融資の保証人になろうとする人は、保証契約の締結に先立ち、公証人の前で「保証する意思」を口頭で述べ、公証人がその内容を録取して公正証書を作成します。
この手続を経なければ、その保証契約は無効となります。(出典:e-Gov法令検索「民法」第465条の6)
これにより、保証人になろうとする人が、保証のリスクを十分に理解した上で、自らの真摯な意思で保証契約を結ぶことを担保しています。
事実実験公正証書
公証人が、自ら見たり聞いたりして直接体験(五感の働きで認識)した事実を、客観的な立場からありのままに記録して作成する公正証書です。例えば、以下のような場面で利用されます。
- 知的財産権の保護: ウェブサイトのデザインやプログラムのソースコード、発明のアイデアなどを公証人に確認してもらい、その存在日時を確定させることで、他者による盗用や権利侵害に対する証拠となります。
- 不動産の状態の記録: 土地の境界線の状況や、建物のひび割れなどの損傷状態を記録しておくことで、将来の隣地トラブルや賃貸物件の原状回復に関する紛争の証拠として活用できます。
- 株主総会の議事録: 株主総会に公証人が立ち会い、議事の経過や内容を記録することで、議事録の正確性を担保します。
公正証書のメリット・効力
公正証書を作成することには、多くの強力なメリットがあります。
① 非常に高い証明力がある
公正証書は、公証人が当事者双方の本人確認と意思確認を厳格に行った上で作成するため、「本人が作成した覚えはない」「無理やり署名させられた」といった後日の言い逃れが非常に困難になります。
裁判になった場合でも、公正証書は文書の成立の真正が強く推定されるため、極めて有力な証拠として扱われます。
② 裁判なしで強制執行ができる(執行力)
金銭の支払いに関する公正証書に「債務者は、本契約に定められた金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨を認諾した」という一文(強制執行認諾文言)を入れておくと、その公正証書は裁判の判決と同じ強力な効力を持ちます。
これにより、もし相手が養育費や貸金を支払わなかった場合、時間と費用のかかる裁判を完全に省略し、直ちに相手の財産を差し押さえる手続(強制執行)を申し立てることが可能になります。
例えば、相手の勤務先が分かっていれば、裁判所を通じて勤務先に通知し、給料の一部を天引きして直接あなたに支払ってもらう、といったことが可能になるのです。
これは、約束を守らせるための最も強力な手段であり、公正証書が持つ最大のメリットと言えます。
弁護士のワンポイントアドバイス
強制執行は非常に強力ですが、差し押さえられる財産には上限があります(例えば給与は原則として手取り額の4分の1まで)。
また、相手が転職したり、財産を隠したりすると、差押えが難しくなるケースもあります。
だからこそ、公正証書を作成するだけでなく、支払いが滞る前に早めに専門家へ相談することが重要です。
③ 偽造や紛失のリスクがなく安全
作成された公正証書の原本は、原則として20年間(遺言の場合は遺言者が120歳になるまで)、公証役場に厳重に保管されます。
そのため、当事者が手元に保管する正本や謄本を紛失してしまっても再発行が可能です。
また、公文書であるため、第三者による偽造や変造が極めて困難であり、安全に契約内容を保管できます。
④ 将来のトラブルを予防する効果がある
公正証書を作成する過程で、法律の専門家である公証人が内容を確認し、法的に有効かつ明確な文章に整えてくれます。
これにより、契約内容の解釈をめぐる争いを未然に防ぐことができます。
また、「公正証書にした」という事実が当事者にとって心理的なプレッシャーとなり、「約束をきちんと守らなければならない」という意識を高め、契約の履行を促す効果も期待できます。
公正証書のデメリット
多くのメリットがある一方、公正証書にはいくつかのデメリットも存在します。
① 作成に費用がかかる
公正証書の作成には、公証人に支払う手数料が必要です。
この手数料は、契約の目的となる金額(例えば、貸金の元本や、養育費の総額など)に応じて法律で定められています。
当事者間で作成する契約書(私文書)であれば印紙代程度で済む場合と比較すると、費用がかかる点はデメリットと言えるでしょう(具体的な費用については後述します。)。
② 作成に手間と時間がかかる
公正証書を作成するためには、事前に公証役場と連絡を取り、内容の打ち合わせや必要書類の準備を行う必要があります。そして、作成日当日は、原則として当事者双方が公証役場に出向かなければなりません(代理人による作成も可能)。
このように、私文書と比べて作成に手間と時間がかかる点も考慮しておく必要があります。
公正証書の作り方・流れ
作成の流れ
公正証書は、ご自身で手続を進めることも、弁護士に依頼することも可能です。それぞれの一般的な流れを見ていきましょう。
ご自身で作成する場合の流れ
ステップ1:当事者間での合意形成
ステップ2:公証役場への相談・申込み
ステップ3:必要書類の収集
ステップ4:公証人による証書案の作成・確認
ステップ5:公証役場にて署名・押印
弁護士に依頼した場合の流れ
ステップ1:弁護士に相談
ステップ2:弁護士が代理人として相手方と交渉・合意形成
ステップ3:弁護士が公証人との打ち合わせ・書類準備を代行
ステップ4:証書案の最終確認
ステップ5:公証役場にて署名・押印(弁護士の同席も可能)
弁護士のワンポイントアドバイス】
ご自身で進める場合、最も大変なのが「当事者間での合意形成」と「公証人との専門的な打ち合わせ」です。
特に相手方と感情的な対立がある場合、話し合いが全く進まないことも少なくありません。
弁護士にご依頼いただければ、法的な観点から交渉を有利に進め、複雑な手続もすべて代行しますので、ご依頼者様の時間的・精神的な負担を大幅に軽減できます。
必要な書類
作成する公正証書の種類によって異なりますが、一般的に以下のような書類が必要となります。
- 当事者が個人の場合
- 印鑑登録証明書(発行後3ヶ月以内)と実印
- 運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどの顔写真付き公的身分証明書と認印
- 当事者が法人の場合
- 法人の登記事項証明書(発行後3ヶ月以内)
- 代表者の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)と代表者印
- その他、契約内容に応じた書類
- 不動産に関する契約の場合:不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書
- 離婚給付契約の場合:戸籍謄本、年金分割のための年金手帳など
- 遺言の場合:遺言者と相続人の関係がわかる戸籍謄本、財産に関する資料(預金通帳の写し、不動産の登記事項証明書など)
必要書類は事案によって大きく異なります。
二度手間を防ぐためにも、必ず事前に公証役場に確認するようにしてください。
弁護士に依頼すれば、これらの書類収集や公証人との打ち合わせも代行することが可能です。
作成にかかる費用
公正証書の作成費用(公証人手数料)は、法律行為の目的の価額に応じて計算されます。
これは「公証人手数料令」という政令によって全国一律で定められています。
基本手数料(出典:e-Gov法令検索「公証人手数料令」第九条)
| 目的の価額 | 手数料 |
| 100万円以下 | 5,000円 |
| 100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円を超え500万円以下 | 11,000円 |
| 500万円を超え1,000万円以下 | 17,000円 |
| 1,000万円を超え3,000万円以下 | 23,000円 |
| 3,000万円を超え5,000万円以下 | 29,000円 |
| 5,000万円を超え1億円以下 | 43,000円 |
| 1億円を超え3億円以下 | 43,000円に超過額5,000万円までごとに13,000円を加算 |
| 3億円を超え10億円以下 | 95,000円に超過額5,000万円までごとに11,000円を加算 |
| 10億円を超える場合 | 249,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算 |
- 遺言公正証書の場合は、上記の手数料に加え、目的の価額が1億円以下の場合は11,000円が加算されるなど、別途加算規定があります。
- 証書の枚数が法務省令で定める枚数(4枚)を超える場合、超過1枚につき250円が加算されます。
- このほか、正本・謄本の交付手数料(1枚250円)などがかかります。
正確な手数料は事案によって異なりますので、必ず事前に公証役場にご確認ください。
まとめ
今回は、公正証書の定義から種類、メリット・デメリット、作成手続までを詳しく解説しました。
公正証書は、高い証明力と執行力を持ち、将来の無用なトラブルを未然に防ぐための非常に有効な手段です。
特に、離婚時の養育費や財産分与、個人間での金銭の貸し借り、そしてご自身の意思を確実に残すための遺言など、重要な約束事を形にする際には、その作成を検討する価値があります。
確かに、作成には費用や手間がかかるという側面もありますが、万が一トラブルが発生した場合の訴訟費用や時間、精神的な負担を考えれば、結果的に安価で確実な解決策となるケースも少なくありません。
当事者間での話し合いがまとまらない場合や、どのような内容で公正証書を作成すればよいか分からない場合は、弁護士にご相談ください。
専門家があなたの代理人として相手方と交渉し、公証人との打ち合わせや書類作成をスムーズに進めるお手伝いをいたします。
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- 得意分野
- 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
- プロフィール
- 京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設








