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更新日: 代表弁護士 中川 浩秀

マイホームを購入したばかりで離婚する場合はどうすればいい?対処法や注意点を解説

マイホームを購入したばかりで離婚する場合はどうすればいい?対処法や注意点を解説
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「夢のマイホーム」を手に入れたはずが、まさかの離婚…。

これから始まるはずだった新しい生活、そして始まったばかりの住宅ローンを思うと、頭が真っ白になり、「この家はどうなるの?」「ローンは誰が払うの?」「私はどこに住めば…」と、次から次へと不安が押し寄せてくることと思います。

マイホーム購入という大きなライフイベントは、ときに夫婦のすれ違いを生むきっかけにもなり得ます。

そして、いざ離婚となると、このマイホームが財産分与の大きな障壁として立ちはだかるケースは、決して少なくありません。

しかし、ご安心ください。問題が複雑に見えても、一つひとつ手順を踏んで整理していけば、必ず解決の道筋は見つかります。

この記事では、マイホームを購入したばかりで離婚に直面している方へ向けて、専門家が具体的な対処法や選択肢、そして後悔しないための注意点を分かりやすく解説します。

マイホームを購入したばかりなのに離婚に至る理由とは?

マイホームの購入は、多くの夫婦にとって最大のライフイベントの一つです。

しかし、その大きな変化が引き金となり、残念ながら離婚に至ってしまうケースも存在します。

購入前は同じ夢を描いていたはずなのに、なぜこのような事態が起こるのでしょうか。

主な理由として、以下のような点が挙げられます。

  • 価値観のズレの顕在化: インテリアの好み、お金の使い方、ご近所付き合いの方法など、新生活を始める中で、それまで見えていなかった価値観のズレが表面化し、対立が深まることがあります。
  • 経済的なプレッシャー: 数千万円にものぼる住宅ローンの返済は、夫婦双方に大きな精神的・経済的負担をかけます。将来への不安から、些細なことで口論が増えることも少なくありません。
  • 環境の変化によるストレス: 新しい住環境やコミュニティへの適応、引っ越しの疲れなどがストレスとなり、夫婦関係がぎくしゃくしてしまうことがあります。
  • もともとあった問題の表面化: マイホーム購入を機に、「もう後戻りはできない」という思いから、これまで我慢してきた相手への不満や問題点が噴出し、関係の修復が困難になることもあります。

弁護士として多くの離婚相談を受ける中で、マイホーム購入をきっかけに「こんなはずではなかった」と関係が悪化するご夫婦は実際にいらっしゃいます。

特に、購入前の話し合いが不十分だったり、どちらか一方の意見を強く押し通したりした場合に、後々不満が大きくなる傾向があるように感じます。

マイホーム購入後の離婚率

「マイホーム購入後の離婚率」に関する公的な統計データは、残念ながら存在しません。

しかし、裁判所の司法統計によれば、離婚した夫婦の同居期間は「5年未満」が最も多い割合を占めています(出典:裁判所「司法統計年報」)。

この期間は、結婚して数年が経ち、マイホームを購入する夫婦が多い時期と重なります。

このことから、マイホーム購入という大きなイベントが、結婚初期の夫婦関係にとって一つの試練となり得ることがうかがえます。

離婚したらマイホームはどうすればいい?

離婚する際、マイホームは夫婦の共有財産として財産分与の対象となります。

しかし、現金のように単純に半分に分けることはできません。

なぜなら、マイホームには「住宅ローン」という負債がセットになっているからです。

この不動産というプラスの財産と、住宅ローンというマイナスの財産をどう清算するかが、極めて重要なポイントになります。

まずは感情的にならず、夫婦で協力して「この家をどうするのか」を冷静に話し合うことが、円満な解決への第一歩です。

離婚する際のマイホームについて確認すべきこと

具体的な話し合いを進める前に、まずはマイホームの現状を正確に把握する必要があります。

特に重要なのが「名義」と「住宅ローンの内容」です。

名義

まず、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、以下の2つの名義を確認しましょう。

  1. 不動産(土地・建物)の名義: 夫または妻の単独名義か、夫婦の共有名義かを確認します。共有名義の場合、それぞれの持分割合がどうなっているかも重要です。
  2. 住宅ローンの名義(債務者): 誰がローン契約者になっているかを確認します。夫婦の一方が契約し、もう一方が連帯保証人連帯債務者になっているケースも多いため、契約書をよく確認しましょう。

これらの名義が誰になっているかによって、今後の手続の進め方や選択肢が大きく変わってきます。

住宅ローンの契約内容や残債

次に、住宅ローンを契約した金融機関に問い合わせるなどして、以下の情報を正確に把握しましょう。

  • 住宅ローンの残高: 現時点で、あといくら返済が残っているのか。
  • 家の現在の価値: 不動産会社に査定を依頼し、今売ったらいくらになるのかを把握します。

この2つを比較することが非常に重要です。

  • アンダーローン: 家の価値 > ローン残高
    家を売ればローンを完済でき、手元にお金が残る可能性がある状態です。
  • オーバーローン: 家の価値 < ローン残高
    家を売ってもローンが残り、その負債を別に返済する必要がある状態です。

日本の不動産市場では、購入直後の場合、オーバーローンになっているケースが少なくありません。

家の査定額とローン残高を把握することで、初めて具体的な選択肢を現実的に検討できるようになります。

離婚後のマイホームにおける選択肢

マイホームの現状を確認したら、次はいよいよ「この家をどうするか」という具体的な選択肢を検討します。

主な選択肢は以下の5つです。

それぞれのメリット・デメリットを理解し、ご自身の状況に最も合った方法を見つけましょう。

①住宅ローンの名義人がそのまま住む

最もシンプルな方法の一つが、住宅ローンの名義人がそのまま家に住み続け、ローンも返済し続けるパターンです。

メリット

金融機関との手続が不要で、名義変更などの手間がかからない。

子どもがいる場合、転校などをせずに生活環境を維持できる。

デメリット・注意点

出ていく側は、家の財産価値の半分(貢献度に応じて変動)を受け取る権利があります。そのため、住み続ける側はまとまったお金(代償金)を支払う必要があります。

出ていく側が連帯保証人になっている場合、保証人の立場は離婚しても解消されません。名義人が返済を滞納すれば、保証人に返済義務が生じるリスクが残ります。

代償金の算出方法は「(現在の家の評価額 - ローン残高)÷ 2」が基本です。

例えば、家の評価額が3,000万円、ローン残高が2,500万円の場合、財産価値は500万円となり、代償金はその半分の250万円が一つの目安となります。

この代償金を一括で支払うのが難しい場合は、分割払いの交渉や、将来の退職金から支払う約束をするなど、柔軟な解決策を検討します。

支払いを確実にするためにも、必ず合意内容は公正証書に残しておきましょう。

②住宅ローンの名義人を変える

例えば、「ローンの名義は夫だが、妻と子どもが住み続けたい」といった場合に、ローンの名義を夫から妻へ変更する方法です。

メリット

実際に住む人とローンの名義人が一致するため、後々のトラブルを防ぎやすい。

デメリット・注意点

金融機関の審査が非常に厳しく、現実的には困難なケースが多いです。

金融機関は、新しい名義人に十分な返済能力があるかを厳しく審査します。

特に専業主婦やパートの方では、審査を通過するのは難しいでしょう。

ローン契約の「債務者の変更」は原則として認められていないため、実質的には別の金融機関で「借り換え」を行うことになります。

③ローンの名義人でないほうが住む

「ローンの名義は夫だが、夫は家を出ていき、妻と子どもが住み続ける。ローンは夫が払い続ける」というパターンです。

一見よさそうに見えますが、将来にわたって極めて大きなリスクを伴うため、基本的には避けるべき選択肢です。

メリット

一時的には、妻側は家賃負担なく住み続けられる。

デメリット・注意点

名義人である夫がローンの返済を滞納した場合、家は差し押さえられ、競売にかけられてしまいます。

その結果、住んでいる妻子は強制的に退去させられることになります。

夫が勝手に家を売却してしまうリスクがあります。

金融機関とのローン契約では、契約者本人が居住することが条件となっている場合が多く、契約違反とみなされる可能性があります。

弁護士のワンポイントアドバイス

どうしてもこの方法を選択せざるを得ない場合は、最低限のリスク対策として、「賃貸借契約」または「使用貸借契約」を元夫婦間で結び、それを公正証書にしておくことを検討してください。

この点について、住宅ローンと養育費の支払いが重なることで負担が大きくなると、最終的にどちらも支払うことができなくなるというケースも散見されます。

そこで、 例えば、「子どもが20歳になるまでは、養育費の一部として無償で居住させる」といった内容を法的な書面で残しておくことで、元配偶者が一方的に「出ていけ」と要求したり、不当に家を売却したりする行為に対する一定の抑止力となります。

ただし、ローンの滞納リスクは残るため、恒久的な解決策ではないことをご理解ください。

④家を売却して財産分与をする

夫婦のどちらも家に住むことを希望しない場合や、公平に財産を分けたい場合に最も推奨される方法です。

メリット

不動産を現金化するため、公平な財産分与がしやすい。

住宅ローンを完済できれば、将来の返済義務やトラブルの種をなくすことができる。

デメリット・注意点:

アンダーローンの場合、売却価格からローン残高や仲介手数料などの諸経費を引いた残額を、夫婦で分け合います。

オーバーローンの場合、売却してもローンが残ります。その残債を夫婦でどう分担するかを話し合う必要があります。

売却には時間がかかる場合があり、すぐに現金化できるとは限りません。

⑤賃貸物件として貸し出す

家を売却せず、第三者に貸し出して家賃収入を得る方法です。

なお、賃貸物件として貸し出す場合でも、元夫婦いずれかが賃貸物件の所有者となる必要があるため、名義人を決める必要や財産価値を清算する必要が生じる点に注意しましょう。

メリット

家賃収入をローン返済に充てることができる。

将来的に価値が上がる可能性があれば、資産として持ち続けられる。

デメリット・注意点:

住宅ローンは契約者本人が住むことが前提のため、賃貸に出すには金融機関の承諾が必要です。

無断で貸し出すと契約違反となり、一括返済を求められるリスクがあります。

空室リスクや、修繕費・固定資産税などの維持費がかかります。

家賃収入がローン返済額や経費を上回るとは限りません。

離婚する際にマイホームは任意売却できる?

家の査定額がローン残高を下回る「オーバーローン」の状態では、通常、家を売却してもローンを完済できないため、金融機関は売却を許可しません(抵当権を外してくれません)。

このような状況で活用されるのが「任意売却」という手続です。

任意売却とは、金融機関(債権者)の合意を得たうえで、一般の不動産市場で家を売却する方法です。

競売と違い、市場価格に近い価格で売れる可能性が高く、売却後の残債についても分割返済の交渉がしやすいというメリットがあります。

離婚に伴い、オーバーローン状態のマイホームの処分に困っている場合、任意売却は有効な選択肢の一つとなり得ます。

ただし、手続には専門的な知識が必要となるため、弁護士や専門の不動産会社に相談しながら進めることが重要です。

マイホーム購入後に離婚する際の注意点

マイホーム購入直後の離婚では、特有の注意点が存在します。

後々のトラブルを防ぐためにも、以下の点を必ず押さえておきましょう。

住宅ローンの返済義務に関する話し合いをする

離婚が成立しても、住宅ローンの返済義務はなくなりません。

特に、夫婦の一方が主たる債務者で、もう一方が連帯保証人や連帯債務者になっているケースでは注意が必要です。

連帯保証人・連帯債務者は、主たる債務者と同等の返済義務を負っています。

もし名義人である元配偶者が返済を滞納した場合、金融機関は連帯保証人・連帯債務者に対して残額の一括返済を求めてきます。

「離婚したから関係ない」は通用しません。

誰がどのようにローンを返済していくのか、万が一返済できなくなった場合はどうするのかを、必ず書面で取り決めておきましょう。

公正証書を作成する

財産分与の内容、住宅ローンの負担割合、慰謝料や養育費の支払いなど、離婚に際して夫婦で取り決めた内容は、必ず公正証書という公的な文書にしておきましょう。

口約束や当事者間で作成した合意書だけでは、取り決めの内容によっては法的な強制力が弱いこともあり、相手が約束を破った場合に支払いを強制することが困難となることもあります。

公正証書に「強制執行認諾文言」という一文を入れておけば、相手が支払いを怠った際に、裁判を起こすことなく、相手の給与や預貯金などを差し押さえる「強制執行」の申立てが可能になります。

建築中の場合は工事を中止することができない

もしマイホームがまだ建築中の段階で離婚が決まった場合、原則として工事を一方的に中止(契約解除)することはできません。

建築請負契約を施主の都合で解除する場合、それまでにかかった工事費用に加え、ハウスメーカー側が被る損害(逸失利益など)を賠償する必要があり、高額な違約金が発生する可能性があります。

まずは速やかにハウスメーカーや工務店に事情を説明し、今後の対応について相談することが不可欠です。

養育費などの費用を考慮してローンについて話し合う

お子さんがいる場合、マイホームの問題と切り離して考えられないのが養育費です。

例えば、「夫が家に住み続け、ローンを返済しながら養育費も支払う」という取り決めをしたとします。

しかし、その負担は現実的に可能でしょうか?

離婚後の生活設計を立てる際は、家のローンだけでなく、養育費やその他の生活費もすべて含めたうえで、双方にとって無理のない支払い計画を立てることが極めて重要です。

これまで解説してきたとおり、財産分与や養育費などの離婚条件は、専門的な知識を要します。

離婚後のリスクを未然に防ぎ、あなたの希望に沿った解決をはかるため、まずは弁護士に相談してみるとよいでしょう。

よくある質問

住宅ローンの名義が夫、連帯保証人が妻です。離婚後、妻の保証人義務はなくなりますか?

なくなりません。 離婚と住宅ローンの契約は別問題であり、金融機関との間で保証人契約の解除手続をしない限り、保証人としての返済義務は残ります。

保証人から外れるには、代わりの保証人を立てるか、別の担保を提供するなどの方法で金融機関の承諾を得る必要がありますが、ハードルは非常に高いのが実情です。

家の財産分与で揉めています。どうすればいいですか?

当事者間での話し合い(協議)がまとまらない場合は、家庭裁判所に「離婚調停」または「財産分与請求調停」の申立てを行うことができます。

調停では、調停委員という中立な第三者が間に入り、双方の意見を聞きながら、合意に向けた話し合いを進めてくれます。

それでも話がまとまらなければ、最終的には裁判(審判)で裁判官に判断を委ねることになります。

 ペアローンを組んでいますが、離婚する場合どうなりますか?

ペアローンは、夫婦それぞれが独立したローン契約を結んでいる状態です。

そのため、離婚後もそれぞれが自身のローン返済義務を負い続けます。

最もトラブルが少ない解決策は、家を売却し、その売却金で夫婦双方のローンを完済することです。

どちらかが住み続ける場合は、もう一方のローンを借り換えて一本化するなどの方法が考えられますが、金融機関の審査が必要であり、簡単ではありません。

まとめ

マイホームを購入したばかりのタイミングでの離婚は、精神的なショックに加え、財産分与と住宅ローンという複雑な問題が絡み合い、大きな困難を伴います。

今、この記事を読んでくださっているあなたは、きっと大きな不安の中にいらっしゃることでしょう。

しかし、問題を一つひとつ整理していけば、必ず解決の道筋は見えてきます。

  • まずは現状把握: 不動産とローンの名義、ローン残高と家の価値を正確に確認する。
  • 冷静な話し合い: 感情的にならず、将来を見据えてどのような選択肢があるかを夫婦で話し合う。
  • 取り決めは書面に: 話し合った内容は、必ず公正証書などの法的な効力を持つ書面に残す。

当事者だけでの解決が難しいと感じたら、決して一人で抱え込まないでください。

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執筆者 代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会 登録番号45484
東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士として、男女問題などの一般民事事件や刑事事件を解決してきました。「ForClient」の理念を基に、個人の依頼者に対して、親身かつ迅速な法的サポートを提供しています。
得意分野
不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
プロフィール
京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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