特有財産とは何?財産分与への影響や具体例、証明する方法、事例を徹底解説

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記事目次
離婚時に行われる財産分与では、夫婦で築いた「共有財産」と、
結婚前から持っていた財産や相続・贈与で得た「特有財産」とが区別されます。
特有財産は原則として分与の対象外となりますが、その判断には具体的な証明が必要です。
本記事では、特有財産の定義や共有財産との違い、財産分与における影響、証明方法や具体的な事例をわかりやすく解説し、離婚に直面した際に知っておくべき基礎知識を整理します。
特有財産とは
特有財産とは、夫婦が結婚生活を送る中で共有財産とは区別され、配偶者の一方にのみ帰属する財産をいいます。
民法上、婚姻後に夫婦が協力して形成した財産は原則として共有財産と推定されますが
(民法762条2項)
婚姻前から持っていた財産や、婚姻中に一方が相続や贈与によって取得した財産などは、
その人固有の財産として「特有財産」と扱われます。
つまり、夫婦の生活共同体とは切り離され、その人個人の権利に属する財産であり、
離婚時の財産分与の対象外となる点が大きな特徴です。
特有財産に関する裁判例
特有財産をめぐっては多くの裁判例があり、その判断基準も一定の方向性が示されています。
例えば、相続財産について、「夫婦の協力によらない相続財産は、特段の事由がない限り特有財産」と判事されております。(高松高決昭和63年10月28日家庭裁判月報41巻1号115頁)
また、相続した不動産の賃料収入に関しても生活費に用いられていなければ特有財産に当たると判事されております。(東京高決昭和57年7月26日家庭裁判月報35巻11号80頁)。
さらに、不法行為に基づいて発生する慰謝料は、夫婦の協力とは無関係に発生した精神的苦痛の補償であるとして特有財産に分類しています。(大阪高決平成17年6月9日家庭裁判月報58巻5号67頁)
特有財産の種類や具体例
特有財産には、大きく分けて以下の種類があります。
第一に、婚姻前から一方が有していた預貯金や不動産、株式などの資産。
第二に、婚姻中に一方が相続や贈与で取得した財産、第三に、個人的な権利(例として、慰謝料請求権や著作権等)です。
例えば、結婚前から貯めていた預金1000万円は、そのまま特有財産ですし、親から相続した実家の土地や建物も特有財産です。
また、他方配偶者の不貞行為や交通事故の被害による慰謝料もみなされることが原則です。
逆に、夫婦の給与収入や婚姻後に共同で形成した貯蓄、不動産の購入資金などは共有財産となるため、離婚時の分与対象に含まれるのが原則です。
特有財産が争われるケース
特有財産を巡る争いは、離婚時の財産分与で頻発します。特に預貯金や不動産が
「婚姻前からの財産か」「婚姻中の共有か」が問題となり、立証の有無で結果が大きく変わります。
住宅ローンの頭金を支払ったケース
婚姻前の預金から住宅ローンの頭金を支払った場合、
その部分は特有財産と評価される可能性があります。
ただし、頭金を証明できなければ共有財産とみなされ、分与対象に含まれてしまいます。
長年の婚姻期間による預貯金
長年の婚姻期間中に形成された預貯金は、原則として夫婦共有財産に該当します。
たとえ預金口座の名義が一方だけであっても、夫婦が協力して形成した財産である以上、
財産分与の対象とされるのが通常です。
例えば、夫が長年にわたり勤務先から得た給与を自分名義の口座に積み立てていた場合でも、
それは夫婦共同生活の成果として共有財産に分類されます。
他方で、婚姻前に蓄えていた預貯金をそのまま維持していた場合には、
特有財産と認められます。しかし、婚姻前の預金と婚姻後の収入が混ざってしまうと、境界が不明確になり、特有財産と主張することが困難になります。
そのため、通帳や入出金履歴を明確にしておくことが重要です。
預貯金の浪費が発覚したケース
夫婦の一方が預貯金を浪費していた場合、それが財産分与にどのように影響するかは大きな問題です。
たとえば、配偶者がギャンブルや不貞関係に多額の支出をしていた場合、その浪費部分をどのように評価するかが裁判で争点となります。原則として、浪費によって減少した財産も含め、残存財産を基準に分与が行われます。
しかし、浪費が著しい場合には、裁判所がその分を考慮し、公平の観点から分与割合を調整することがあります。
浪費が「特有財産」から支出された場合には本人の自由とされやすい一方、共有財産からの浪費であれば配偶者にとって不利益となるため、立証活動が重要となります。記録や領収書、口座履歴の開示請求がカギとなる事例です。
毎月の小遣いは特有財産になる?
夫婦間で取り決められた毎月の小遣いは、原則として共有財産から拠出されているため、その残額は特有財産とはいえません。
しかし、小遣いを貯めて独自に形成した預金や投資がある場合、その性質は微妙です。
多くの裁判例では、共有財産から出た小遣いの範囲で貯蓄したものは結局共有財産と評価される傾向があります。
ただし、宝くじの当選金や個人の才覚によって発生した副業収入など、夫婦の共同生活と無関係に取得した財産であれば特有財産と認められる余地があります。
特有財産は存在証明が必要?
特有財産と主張するには、明確な証拠が不可欠です。
通帳、契約書、遺産分割協議書などで取得時期や資金の由来を立証できなければ、共有財産と推定されてしまいます。
特有財産における立証責任について
特有財産を主張する側には、立証責任が課されています。
民法上、婚姻中に形成された財産は原則として夫婦共有と推定されるため民法762条2項)、その例外として「これは私の特有財産だ」と主張する場合には、取得時期や資金の出所を証拠で示す必要があるのです。
典型的な証拠としては、預金通帳の入出金履歴、不動産登記簿、相続財産の遺産分割協議書、贈与契約書などがあります。
逆に、証拠が不十分な場合には、たとえ実際には婚姻前から所有していた財産であっても、裁判所に共有財産と扱われてしまう可能性があります。実務的には、弁護士の助言のもとで資料を揃え、客観的資料に基づく説得的な主張立証を行うことが求められます。
特有財産を主張する際の例
特有財産を主張する具体的な場面として、以下のような事例が考えられます。
第一に、婚姻前の貯金を根拠に「この預金は結婚前から私が積み立てていたものなので、財産分与の対象外である」と主張するケース。
この場合、通帳に婚姻前の残高が明記されていれば強力な証拠となります。
第二に、相続によって取得した財産について「親から相続した財産であり、夫婦の共同生活とは関係がない」と説明するケース。
遺産分割協議書や相続税申告書などが有効な資料となります。
第三に、婚姻中に個人名義で受け取った慰謝料や保険金の一部について、個人的損害に対する補填であることを理由に特有財産と主張するケースです。
例えば、交通事故による後遺障害慰謝料は特有財産とされやすい傾向があります。
さらに、婚姻後に株式を取得した場合でも、その購入資金が婚姻前の預金から拠出されたことを証明できれば、特有財産と主張できます。他方、共有財産との混在があると線引きが難しくなるため、資金の流れを明確に示すことが大切です。
このように、特有財産の主張には必ず裏付け資料が求められ、単なる口頭主張では認められません。弁護士を通じて証拠を整理し、裁判所に合理的に説明することが成功の鍵となります。
特有財産を証明する方法
特有財産を主張するためには、具体的な資料によってその存在や取得経緯を明らかにする必要があります。
例えば、預金通帳や明細を提示して婚姻前の残高を示すことで、その資金が婚姻前からの財産であることを立証できます。
また、不動産の場合には登記簿を用いて取得時期や名義を確認することが有効です。
さらに、相続や贈与によって得た財産については、遺産分割協議書や贈与契約書を証拠とすることで特有性を裏付けることができます。
交通事故による慰謝料等についても、支払い通知書などを示すことで個人に帰属する財産であると証明できます。
なお、共有財産との資金の混在を避け、出所を明確にしておくことが特有財産を守る上で極めて重要です。
以下財産に種類に対する立証方法・有効な資料をまとめた表です。
財産の種類 | 立証方法・有効な資料 | ポイント |
---|---|---|
預金 | 預金通帳、取引明細 | 婚姻前の残高や入金時期を明示する |
不動産 | 登記簿謄本、売買契約書 | 取得時期や名義を確認できる書類を提示 |
相続財産 | 遺産分割協議書、遺言書、相続登記簿 | 相続による取得であることを明確にする |
贈与財産 | 贈与契約書、贈与税の申告書 | 婚姻期間中でも個人の財産であることを証明 |
交通事故の慰謝料・損害賠償 | 保険会社からの支払い通知書、示談書 | 個人に帰属する財産であることを立証 |
退職金(婚姻前の勤続分) | 勤務先からの証明書、計算明細 | 婚姻前に発生した部分を切り分けて主張 |
有価証券・株式 | 証券口座の取引履歴 | 購入時期や資金の出所を明確にする |
動産(宝飾品・車等) | 購入時の領収書、保証書 | 購入資金の由来を示すことが重要 |
保険金(死亡保険金等) | 保険契約書、保険金支払通知書 | 受取人固有の財産であることを証明 |
特有財産に関するよくある質問
Q1. 相続財産は必ず特有財産になりますか?
原則として、婚姻中に一方が取得した相続財産は特有財産にあたります。
ただし、注意点として、相続財産を夫婦の共有口座に入れて生活費や投資に使用してしまうと、財産が混同し特有性が失われ、共有財産と評価されるリスクがあります。
裁判例でも、相続財産をそのまま保持していれば特有財産と認められる傾向にあるため、取得後は個人口座に分けて管理するなどの工夫が必要です。
Q2. 結婚前の預金が婚姻中に混ざってしまったらどうなりますか?
結婚前の預金が婚姻後の給与振込口座に入金され、生活費や貯蓄と混ざってしまうと、特有財産と主張することが難しくなります。
裁判では「区別できない財産=共有財産」と判断されやすいためです。
ただし、入出金履歴や証拠資料によって「婚姻前残高」と「婚姻後形成部分」を分けて説明できれば、特有部分を認めてもらえる可能性があります。そのため、通帳や記録を整理しておくことが極めて重要です。
Q3. 特有財産と認められやすい慰謝料の種類は?
慰謝料のうち「個人的損害」に対する補償は特有財産と認められる傾向があります。
例えば、交通事故による後遺障害慰謝料や不法行為による精神的苦痛への賠償金です。
また、不貞慰謝料に関しても、夫婦生活の過程ではありますが、不貞慰謝料は、夫婦の一方が不貞行為を受けたことにより被った精神的苦痛を補償するものであり、婚姻共同生活の成果とは関係がありません。
つまり、不貞慰謝料は夫婦の協力によって形成された財産ではなく、被害を受けた配偶者個人に帰属する権利といえます。
要するに「夫婦生活の成果」とは無関係に、一方の人格権を侵害した結果の補償は特有財産となりやすいのです。
Q4. 特有財産を証明するのに必要な書類は何ですか?
特有財産を証明するには、財産の由来や取得時期を示す資料が不可欠です。
具体的には、預金通帳や振込明細、不動産登記簿、遺産分割協議書、贈与契約書、相続税申告書、保険金支払通知書などが有効です。
裁判所は口頭での主張のみでは認めず、客観的な証拠を重視します。したがって、婚姻前後の通帳を分けて保管し、資金の流れを明確にしておくことが、将来のトラブルを防ぎ、特有財産を守る上で極めて重要になります。
まとめ
特有財産を主張するには、通帳や登記簿、贈与契約書などの証拠を揃えて取得経緯を明確にすることが大切です。
共有財産と混在させない工夫も必要となるため、具体的な対応に迷う場合は弁護士に相談してみてください。
- 得意分野
- 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
- プロフィール
- 京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設