威力業務妨害罪とは?要件や偽計業務妨害罪との違い、逮捕された場合の流れを紹介

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記事目次
ニュースなどで時折目にする「威力業務妨害罪」。
どのような場合に、威力業務妨害罪が成立するのでしょうか。
また、偽計業務妨害罪と威力業務妨害罪はどのように違うのか紹介します。
威力業務妨害罪とは何か
まず、威力業務妨害罪とは、偽計業務妨害罪とあわせて業務妨害罪という類型の犯罪です。この罪の保護法益は業務活動そのものだとされています。
ここでいう「業務」とは、職業その他の社会生活上の地位に基づいて継続して従事する事務のことをいうとされています。
そして、この業務妨害罪には、妨害の手段ごとに①虚偽の風説を流布、②偽計、③威力するものがあります。
このうち、威力業務妨害の「威力」とは、人の意思を制圧するに足りる勢力を示すことであると言われています。
偽計執行妨害罪との違いとは
偽計業務妨害は、人を欺罔(ぎもう)し、あるいは人の錯誤または不知を利用することをいいます。欺罔というのは、簡単にいうと相手をだますことをいいます。
偽計業務妨害罪の具体例としては、飲食店の厨房に害虫が大量にいるという虚偽のSNS投稿をしたりする行為が挙げられます。
他には、架空のクレームを大量に送付する行為や、インターネットで虚偽の情報を流す、飲食店に偽名で大量注文しドタキャンするなどの行為です。
ほかにも、新聞社の経営者が、他紙の購読者を奪うために、競合他社と紛らわしい題字としている事例も偽計業務妨害罪にあたります。
偽計業務妨害罪と威力業務妨害罪の区別はやや難しいところです。
人を欺く側面と暴力的な性質が混在している場合には、それらがあいまって、人に対する脅迫行為を形成しているとみるのが自然のため、威力業務妨害罪が成立すると考えられています。
偽計業務妨害罪と威力業務妨害罪の違いを整理すると次のようになります。
- 相手に障害を「公然と」誇示すれば、威力業務妨害罪
- 相手に障害を「非公然と」こっそり行っているのであれば、偽計業務妨害罪
公務執行妨害罪との違いとは
公務執行妨害罪は、公務員の職務の執行に対して暴力や脅迫を加えた場合に成立する犯罪です。公務執行妨害罪は、公務員が客体になるので、公務を行っている者だとしても、公務員ではない者(非公務員)に暴行・脅迫をした場合には成立しません。
また、公務執行妨害については、公務員の職務が適法であることが要求されています。
公務執行妨害罪と威力業務妨害罪の違いを整理すると次のようになります
- 公務執行妨害罪は公務員が客体である
- 威力業務妨害罪は公務員ではない者が客体である
- 公務執行妨害罪は公務を妨害することが要求される
- 公務執行妨害罪は前提として公務が適法であることが要求される
威力業務妨害罪が成立する要件
威力業務妨害罪が成立するための主な要件としては、①威力を用いていること、②妨害した対象が業務であること、③妨害があることです。他にも主観的な構成要件として、④故意が要求されます。
「威力を用いる」の意味とは
それでは、「威力を用いる」とはどのような意味でしょうか。
この「威力」は、暴行や脅迫よりも広く緩やかな概念であり、暴行や脅迫はもちろんのこと、それには至らない威迫行為を含むと言われています。
たとえば、デパートの食堂配膳部で蛇を巻き散らしたりする行為や、ネコの死骸を事務机の中にいれたりする行為がこれに当たります。
「業務を妨害した」の意味
「業務を妨害した」といえるためには、まず「業務」とは、判例の立場に従うと業務活動そのものだと理解されています。
すなわち、ここでいう「業務」は職業その他の社会生活上の地位に基づいて継続して従事する事務のことをいいます。
「妨害」とは、ありていにいうと業務の邪魔をすることをいいます。
もっとも、「妨害した」といえるためには、現に業務妨害の結果が生じっていることを要さず、業務を妨害するおそれのある行為が行われていれば足りると考えられています。
具体例
威力業務妨害罪の具体例としては、次のようなものがあります。
- デパートの食堂の配膳部にむかってしまへび20匹をまき散らし、その場に居た客と営業している食堂に対し、嫌悪や畏怖の感情を生じさせる
- 競馬の開催を妨害する意図目的で馬場に幅2メートルにわたって、釘を1樽分撒いて興行を行えないようにすう行為
- 工場のモニター室の配電盤のスイッチを切り、工場の機会の運転を停止し、操業できない状態にする行為
裁判の例
実際に威力業務妨害罪が成立すると判断された裁判として、先に説明した具体例のほかにも、次のようなものがあります。
- 営業中のお店の表のほとんど全面にわたって板で囲い、看板や店灯などを街路から見えないようにし、店の重要な室内を暗黒にして営業を不可能にした場合
- 弁護士が業務に用いている訟廷日誌や訴訟記録が入ったかばんを奪い取り、2か月にわたって自宅で隠し持って保管する行為
これらの行為も、裁判において威力業務妨害罪が成立すると判断されました。
罰則
威力業務妨害罪の場合、3年以下の懲役拘禁刑または50万円以下の罰金になる可能性があります。
初犯の場合は、執行猶予になる可能性もありますので、疑いを掛けられた際は、弁護士にご相談ください。
(1)威力業務妨害罪の罰則
威力業務妨害罪の刑罰は「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」です。 初犯であっても、手口が悪質である場合は執行猶予が付かず、実刑となる可能性もあります。また、偽計業務妨害罪も同様に「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」、公務執行妨害罪は「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」とされています。
(2)暴行や脅迫などは別に罪に問われる
業務妨害の際に相手に暴行を加えたり、物を壊したりすると、威力業務妨害罪とは別に、暴行罪・傷害罪・器物損壊罪などにも問われます。その場合、科される刑罰はより重くなります。
威力業務妨害罪で逮捕された場合
威力業務妨害罪が発覚すると逮捕されることもあります。
警察に逮捕された場合、逮捕から48時間以内に検察に送致され、検察は身柄の送致を受けてから24時間以内に、裁判所に勾留請求することになります。
さらに、勾留が認められると、勾留請求から10日間勾留されることとなります。これが延長されることもあります。
したがって、最長で逮捕から23日間にわたって、身体拘束されることがあります。
逮捕されたらすぐに弁護士に相談を
威力業務妨害罪で身近な人が逮捕された場合は、やはり弁護士に相談する必要があるでしょう。
なぜなら、弁護士であれば、弁護士と被害者と話し合いの機会を設定し、示談交渉をすることができるからです。
また、被疑者が逮捕や勾留などで身体拘束されている場合、身体拘束からの解放を実現するための活動をすることができます。
一日でも早く身体拘束を解放しなければ、職場を解雇されるリスクなどが高まります。
示談交渉の際は、示談金がいくらになるかは具体的な事案によります。威力業務妨害罪で逮捕された場合などでお困りの際は、弁護士にご相談ください。
まとめ
威力業務妨害罪は、偽計業務妨害罪や公務執行妨害罪と似ており区別が難しいところです。もし業務妨害罪のことでお悩みの場合は、東京スタートアップ法律事務所にご相談ください。
- 得意分野
- ベンチャー・スタートアップ法務、一般民事・刑事事件
- プロフィール
- 京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設