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更新日: 弁護士 宮地 政和

覚醒剤で逮捕されるとどうなる?流れや刑罰などを紹介

覚醒剤で逮捕されるとどうなる?流れや刑罰などを紹介
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突然ニュースで目にした、芸能人の覚醒剤所持等による逮捕。あるいは、身近な人が関わっていたという衝撃的な知らせ。覚醒剤事件は決して特別な世界の話ではなく、誰にとっても無関係ではありません。

「もし逮捕されたらどうなるの?」

「どんな刑罰が科されるの?」

そんな疑問や不安を抱える方に向けて、覚醒剤事件における逮捕後の流れや裁判、量刑の相場、社会的な影響などを、弁護士がわかりやすく解説します。

覚醒剤で逮捕されるケース

逮捕には大きく分けて、現行犯逮捕・通常逮捕・緊急逮捕の3つの種類があります。

各逮捕手続きの違いについては『現行犯逮捕とは?要件や通常逮捕・緊急逮捕との違いを解説』の記事を参照してください。

そして、覚醒剤事件でよくある逮捕のきっかけとしては、以下の3つが挙げられます。

職務質問がきっかけで現行犯逮捕

警察による職務質問の際、所持品検査が行われることがあります。その時に覚醒剤だと思われる薬物が発見されると、簡易検査キットによる予試験が実施され、覚醒剤だと判明すれば、その場で現行犯逮捕されることになります。

また、職務質問の際に、声をかけられた方の言動や挙動に不審な点があると、警察が任意での尿検査を依頼することもあります。尿検査の結果として陽性反応が出た場合、その場で現行犯逮捕されることになるでしょう。

別の事件や事故がきっかけで逮捕

別の事件がきっかけで捜索が行われた際に覚醒剤が発見され、そのまま現行犯逮捕されたり、既に別罪で逮捕されていた場合には覚醒剤所持に関して再逮捕されるというケースもあります。

また、交通事故が起きたため警察が臨場すると、運転手の言動や挙動に怪しいところが認められ、任意での尿検査を求めたところ陽性反応が出たため、逮捕に至るというケースも少なくありません。

第三者からの通報や売人とのやり取り履歴をきっかけに逮捕

覚醒剤事件は被害者のいない密行性の高い犯罪であるだけでなく、資金が反社会的勢力に流れていくという特徴があるため、警察は覚醒剤事件の被疑者を逮捕すると、携帯の履歴等から覚醒剤についての関係者を芋づる式に割り出そうとします。そのため、いくら覚醒剤を所持または使用している本人が警察にバレないように気を付けていたとしても、関係者が捕まったことによって芋づる式に逮捕されることも多いです。

また、覚醒剤の使用に気づいて使用を辞めさせたいと願う家族が通報するといったケースや、異常な挙動を見せているために周囲の人が通報するといったケースもあります。

覚醒剤で逮捕された後の流れは?

覚醒剤に限らず、逮捕されると最大48時間以内に警察から検察へ送致され、検察官はさらに24時間以内に勾留請求するかを判断します。勾留が認められると原則10日間、必要に応じてさらに10日間延長されることがあります。この間に取り調べが行われ、証拠収集が進められます。勾留期間内に起訴するかどうかが決定され、起訴されれば刑事裁判に移行します。不起訴となれば釈放され、事件は終了します。全体で最長23日間の拘束が可能です。

逮捕後の流れや期間等についての詳しい説明は、『逮捕されたらどうなる?逮捕後の流れと期間について』の記事をご参照ください。

逮捕された場合の勾留率

検察庁既済事件(過失運転致死傷等及び道交法違反を除く)について、令和6年版の犯罪白書によれば、令和5年に警察が身柄付きで検察に送致した事件(いわゆる「身柄事件」)のうち、94.8%が勾留請求され、そのうち95.6%で勾留請求が認められています。

覚醒剤事件に限ると、身柄事件のうち99.7%で勾留請求され、そのうち99.8%で勾留請求が認められています。

身柄事件になる確率は全体で34.8%ですが、覚醒剤事件の場合には身柄事件になる確率は70.0%にも及びます。

このように、覚醒剤事件で逮捕された場合には、かなり高い確率で勾留されてしまうことになるでしょう。

逮捕された場合の起訴率

令和6年版の犯罪白書によれば、令和5年の覚醒剤取締法違反の起訴率は70.9%で、起訴猶予率(起訴されずに不起訴として釈放される割合)は、10.3%でした。道交法を除く特別法犯全体の起訴猶予率が47.8%であることを踏まえると、覚醒剤事件は起訴される可能性が非常に高い事案だと言えるでしょう。そして令和6年版の犯罪白書によれば、令和5年に確定した裁判のうち、無罪が確定したのはたったの0.04%。つまり起訴された場合の有罪率は99.9%を超えているため、覚醒剤事件で逮捕された場合には、有罪判決が出てしまう可能性が非常に高いと考えられます。

保釈の請求について

保釈制度とは、刑事事件で起訴された被告人が、判決確定前に一定の条件のもとで身柄の拘束を解かれ、社会内で裁判を受けることを可能にする制度です。保釈が認められるための条件としては、重大事件ではないこと、常習性がないこと、罪証隠滅の恐れがないこと、証人に害をなすおそれがないことなどが必要であり、裁判所が個別の事情を考慮して保釈の可否を判断します。保釈について詳しく知りたい方は、『保釈とは?保釈の流れ・手順、保釈金の意義と金額の決まり方をわかりやすく解説!』の記事をご参照ください。

覚醒剤取締法違反事件の場合、交友関係や再犯可能性の高さ、組織犯罪との関連性などから、保釈が認められにくい傾向があります。特に初犯でなく、証拠がまだ十分に収集されていない段階では、罪証隠滅の懸念から保釈請求が却下されるケースも少なくありません。ただし、初犯で常習性が見られず、家族などによる監督体制が整っている場合などには、保釈が認められる可能性もあります。

保釈が認められた場合に支払う保釈金は、事件の内容や被告人の経済状況に応じて裁判所が決定しますが、一般的に150万円から300万円程度が相場です。なお、保釈中に逃亡や証拠隠滅行為などがなければ、保釈金は裁判終了後に返還されます。

覚醒剤取締法の刑罰について

覚醒剤事件には複数の態様があり、それぞれの態様に応じて罪の重さは変わってきます。

そもそも覚醒剤とは

覚醒剤とは、覚醒剤取締法により規制される薬物で、第2条第1項において以下のように定義されています。

第二条 この法律で「覚醒剤」とは、次に掲げる物をいう。

一 フエニルアミノプロパン、フエニルメチルアミノプロパン及び各その塩類

二 前号に掲げる物と同種の覚醒作用を有する物であつて政令で指定するもの

三 前二号に掲げる物のいずれかを含有する物

これらの物質は中枢神経を刺激し、使用により多幸感や覚醒作用をもたらす一方、依存性や幻覚、妄想などの深刻な副作用を引き起こします。覚醒剤は一般には「シャブ」「スピード」「アイス」などの別称で呼ばれ、密売や使用の場面で隠語として使われることも多く、取り締まりや捜査の対象となっています。

態様と刑罰

覚醒剤事犯には、所持・使用・譲渡・譲受・製造・輸出入などの類型があります。

営利目的の有無によって刑罰の重さに違いがあるのが特徴となっています。

非営利目的 営利目的
所持・使用・譲渡・譲受 10年以下の懲役 1年以上の懲役
製造・輸出入 1年以上の懲役 無期若しくは3年以上の懲役

さらに、営利目的の場合には情状により、所持・使用等で500万円以下の罰金、製造・輸出入で1000万円以下の罰金が併科されることもあります。

なお、2025年6月1日からは、懲役刑と禁固刑が一本化されて拘禁刑となりますが、こちらの記事では執筆時点(2025年4月)に合わせ、「懲役」と記載しています。

刑罰を左右する要素

覚醒剤事件で起訴された場合の量刑は、以下のような事情によって大きく左右されます。

・初犯か否か(前科・前歴の有無)

・覚醒剤の使用量、所持量

・使用目的(自己使用か営利目的か)

・反省の態度の有無

・再犯可能性

・更生の可能性(家族の監督体制や治療の有無など)

・組織性の有無

 

覚醒剤事件の中でも特に検挙数の多い使用及び所持の場合における量刑の相場は以下の通りとなっています。

1.初犯で自己使用・所持(営利目的なし)

 → 懲役1年6か月程度が相場。多くの場合、執行猶予付き判決(3年程度の猶予)が付されます。

2.再犯で自己使用・所持(営利目的なし)

 → 懲役2年程度が多く、実刑判決となる可能性が非常に高いです。再犯の回数によって年数が増加していく傾向があります。

3.営利目的の所持・譲渡等

 → 懲役5年以上も珍しくなく、執行猶予は基本的に付きません。量が多かったり組織性が認められると、懲役7年以上になるケースもあります。また、罰金が併科される例も多く見られます。

覚醒剤で逮捕されることのデメリット5つ

当然のことではありますが、覚醒剤事件で逮捕されると日常生活に支障をきたす可能性が非常に高いです。

具体的には、以下の5つのデメリットが考えられます。

長期間に及ぶ身柄拘束

逮捕・勾留され長期間にも及ぶ身柄拘束がなされると、被疑者・被告人本人はもちろん、家族や職場など周囲の人々にも深刻な影響を及ぼします。

まず本人にとっては、社会から隔離された状態が続くことで精神的な負担が大きく、ストレスや不安、孤独感に苦しむケースが少なくありません。また、身体拘束中は自由な生活ができず、面会や差し入れも制限されるため、外部との関係が希薄になります。

さらに、身柄拘束が長引くと、仕事を失う可能性が高まります。職場に無断で長期間出勤できない状況が続くと、懲戒解雇や契約解除に至ることも多くあります。また、学生であれば出席日数が不足し、最悪の場合退学処分になることもあります。

家族にとっても大きな負担となり、精神的苦痛はもちろん、世間体や経済的困窮といった問題が重なります。身柄拘束が長期化することで、事件が発覚する範囲も広がり、社会的信用の失墜にも繋がってしまいます。

前科がつく可能性がある

前科とは、刑事裁判で有罪判決を受けた経歴のことをいい、法的・社会的に不利な扱いを受ける原因となります。

初犯の場合には執行猶予判決が出る可能性が高いと説明しましたが、執行猶予付きの判決であっても有罪判決であることには変わりないため、前科がつくことになります。

前科があると社会的信用を失いやすく、就職や転職、資格取得、ローン審査、賃貸契約などに不利に働くことがあったり、海外渡航やビザ取得にも制限が生じたりすることがあります。また、再犯した場合には量刑が重くなるなど、司法手続き上も不利に扱われます。

実名報道されるリスク

逮捕されると、事件の内容や氏名、顔写真などが報道される可能性があります。著名人や公職者だけでなく、一般市民であっても報道対象となることがあり、その情報はインターネット上に半永久的に残ってしまいます。このような報道によって社会的信用を失うだけでなく、職場での解雇、人間関係の悪化、就職活動や転職活動への悪影響など、人生全体に深刻なダメージを及ぼすことがあります。たとえ後に不起訴や無罪になっても、一度広まった情報は完全には消せず、風評被害に苦しむことも少なくありません。

海外渡航やビザ取得が困難になる

覚醒剤で逮捕され、有罪判決を受けた場合、海外渡航やビザ取得に重大な制限がかかる可能性があります。多くの国では薬物犯罪を重く見ているため、前科があると入国を拒否されてしまうことがあります。特にアメリカやカナダ、オーストラリアなどは厳しく、ビザの申請時に薬物関連の違反歴を申告する必要があり、場合によっては申請が却下されてしまうこともあります。かといって虚偽の内容を申告してしまえば、入国拒否や強制退去につながります。また、たとえ短期渡航でも、ESTAやETAといったビザ免除プログラムの利用が不可になる場合があります。逮捕歴だけでも審査に影響することがあり、長期的に海外渡航が困難になる恐れがあります。

経済的な損失

逮捕されると、経済的にも一定の影響が生じます。まず、逮捕・勾留中は仕事を継続できないため、給与の減額や休職、場合によっては解雇のリスクもあります。特に自営業やフリーランスの方は、取引先との契約打ち切り等により、収入が一時的に途絶える可能性があります。また、逮捕歴や前科の有無によっては、将来的な就職や契約面で不利になることもあり、長期的な視点での経済的影響が考えられます。

さらに、法的手続きに対応するため、数十万円単位で弁護士費用が発生することもあります。もっとも、弁護活動を通じて身の回りの被害を最小限に抑え、今後の社会復帰や信用回復を図ることができるため、将来的に考えると弁護士費用は重要な投資とも言えます。

まとめ

覚醒剤事件で逮捕されると、身柄拘束、前科、実名報道、海外渡航制限、経済的損失など、多方面にわたる深刻な影響が生じます。特に覚醒剤取締法違反は起訴・有罪率が非常に高く、今後の人生に長く影を落とすことになりかねません。しかし、早期に弁護士に相談し、適切な対応を取ることで、ダメージを最小限に抑えることは可能です。一人で抱え込まず、専門家の力を借りて冷静に対応していくことが重要です。

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執筆者 弁護士宮地 政和 第二東京弁護士会 登録番号48945
弁護士登録後、都内の法律事務所に所属し、主にマレーシアやインドネシアの日系企業をサポート。その後、大手信販会社や金融機関で信販・クレジットカード・リース業務に関する法務やコンプライアンス、プロジェクトファイナンスなどの経験を積む。これらの経験を活かし、個人の法的問題に対し、専門的かつ丁寧に対応しています。
得意分野
不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件 、 遺産相続 、 交通事故
プロフィール
岡山大学法学部 卒業 明治大学法科大学院 修了 弁護士登録 都内の法律事務所に所属 大手信販会社にて社内弁護士として執務 大手金融機関にて社内弁護士として執務
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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