遺失物等横領罪とは?窃盗や横領との違い、構成要件を徹底解説

全国20拠点以上!安心の全国対応
初回相談0円
記事目次
遺失物等横領罪は、日常の些細な行動がきっかけで、誰にでも関わる可能性がある犯罪です。
落とし物や誤配達された荷物など、容易に罪に問われることになるケースも少なくありません。
本記事では、遺失物等横領罪の概要や成立要件、窃盗罪・横領罪との違い、捜査や逮捕の流れまでを詳しく解説します。
もしもの時に正しく行動できるよう、基本知識を押さえておきましょう。
遺失物等横領罪とは?
遺失物等横領罪(占有離脱物横領罪)は、道に落ちていた財布や誤って届いた郵便物など、所有者の占有を離れた他人の物を不正に自分のものとすることで成立する犯罪です。
刑法第254条に基づき、1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料が科されます。
この罪は、他人から預かった物を横領する「単純横領罪」や業務上の信頼関係を裏切る「業務上横領罪」とは異なり、委託関係がない点が特徴です。
たとえば、落とし物を警察に届けずに自分で使用した場合や、誤って多く受け取ったお釣りを返さずに使った場合などが該当します。罰則は比較的軽いものの、前科がつく可能性があるため注意が必要です。
遺失物等横領罪の構成要件
遺失物等横領罪が成立するには、
①客体が占有を離れた物であること
②客体が他人の所有物あること
③横領したと言える場合
が必要になります。
①客体が占有離脱物である
「客体が占有離脱物であること」とは、他人の占有を離れ、誰の占有にも属さない物を指します。
具体的には、道端に落ちている財布や、誤って配達された郵便物などが該当します。
これらの物を不法に取得し、不法領得の意思をもって占有することで、本罪が成立します。
他人の占有下にある物を奪う行為は窃盗罪となるため、占有の有無が重要な判断基準となります。
②客体が他人の所有物である
本罪が成立するには、客体が他人の所有物である必要があります。
これは、対象物が他人の所有に属していることを意味し、所有者が存在しない無主物や所有権が放棄された物は該当しません。
そのため、所有者が存在しない物や所有権が放棄された物を取得しても、本罪は成立しません。
このように、対象物が他人の所有物であるかどうかが、占有離脱物横領罪の成立において重要な判断基準となります。
③横領したこと
「横領」とは、不法領得の意思をもって、占有を離れた他人の物を自己の支配下に置く行為を指します。
不法領得の意思とは、他人の所有物を自己のものとして利用・処分しようとする意図を意味します。
例えば、道端に落ちていた財布を警察に届けず、自分のものとして使用する行為が該当します。
一方で、拾得物を一時的に保管し、警察に届ける意思がある場合は、不法領得の意思がないため、本罪は成立しません。
以上のように、占有離脱物横領罪の成立には、対象物の性質と行為者の意思が重要な判断基準となります。
遺失物等横領罪が成立するケース
遺失物等横領罪は、他人の所有物を拾得し、正当な手続きを経ずに自己のものとする行為に適用されます。例えば、道端に落ちていた財布や放置された自転車を警察に届けず、自分のものとして使用する場合が該当します。このような行為は、軽微な犯罪として微罪処分となることもありますが、場合によっては逮捕・勾留されることもあります。
遺失物等横領罪と横領罪・窃盗罪の違いとは?
占有離脱物横領罪(刑法254条)は、他人の占有を離れた物を不法に取得し、自己のものとする行為を処罰する規定です。
一見すると横領罪や窃盗罪と類似していますが、成立要件や対象物の性質において明確な違いがあります。
以下では、横領罪および窃盗罪との相違点について詳しく解説します。
横領罪との違い
横領罪は、自己が占有している他人の物を不法に取得する行為を処罰するもので、単純横領罪(刑法252条)と業務上横領罪(刑法253条)に分類されます。
単純横領罪は、例えば他人から預かった物を返さずに自分のものとする行為が該当し、業務上横領罪は、業務上預かっている他人の物を不法に取得する行為が該当します。
これに対し、占有離脱物横領罪は、他人の占有を離れた物、すなわち遺失物などを不法に取得する行為を処罰します。
また、法定刑も異なり、単純横領罪は5年以下の懲役、業務上横領罪は10年以下の懲役とされているのに対し、占有離脱物横領罪は1年以下の懲役または10万円以下の罰金若しくは科料とされています。
窃盗罪との違い
窃盗罪(刑法235条)は、他人の占有下にある物を、その意思に反して不法に取得する行為を処罰するものです。
例えば、他人の家に侵入して物を盗む行為や、店の商品を無断で持ち去る行為が該当します。
これに対し、占有離脱物横領罪は、他人の占有を離れた物を不法取得する行為を指します。
したがって、窃盗罪との主な違いは、対象物が他人の占有下にあるか否かになります。
そして、当然に法定刑も異なり、窃盗罪は10年以下の懲役または50万円以下の罰金とされているのに対し、占有離脱物横領罪は1年以下の懲役または10万円以下の罰金若しくは科料とされています。
遺失物等横領罪の捜査~逮捕までの流れ
どのような行為が、遺失物等横領罪に問われる可能性があるかは、上記の記事で解説してきた通りです。
では、警察がこのような行為をどのように捜査し、どのようにして逮捕に至るのか。
その流れを3つのステップで解説します。
1. 捜査の開始
最初は、被害届や拾得者に対する通報など、事件発覚のきっかけとなる情報が警察に入ることから始まります。
監視カメラの映像や現場周辺の聞き込みを通じて、物を拾った人物やその後の行動を特定していきます。
拾得物が落とし主の元に戻っていないか、また警察への届け出がされていないかも確認されます。
この時点では、あくまで「拾ったまま届けていない」という事実関係を中心に調査が進められます。
2. 取調べ
被疑者が特定されると、警察は任意での事情聴取を実施します。
ここでは、拾得物を見つけた経緯、その後の扱い、自身の認識について詳しく質問されます。
供述内容は、これまでの証拠(映像、証言、物証等)と照合され、整合性が検証されることになります。
この段階で虚偽の説明があったり、拾得物を私的に利用していた証拠が明らかになった場合、警察は法的責任を問う方向で動き始めます。
3. 逮捕及び勾留
供述や物証などから「不法領得の意思」が明確になった場合、警察は遺失物等横領罪での逮捕に踏み切ります。
逮捕の要件は、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断された場合に限られます。
逮捕された被疑者は48時間以内に検察へ送致され、さらに24時間以内に勾留の要否が判断されます。
勾留が認められれば、最大で20日間の身柄拘束が可能となり、その間にさらに詳しい取調べが行われます。
遺失物等横領罪を弁護士に相談するメリット
遺失物等横領罪は、ふとした油断で巻き込まれることもある身近な犯罪です。
もし疑いをかけられたなら、早めに弁護士に相談することで、思わぬトラブルを最小限に食い止めることができます。
メリット①:自分の行為が犯罪にあたるのかが分かる。
遺失物等横領罪は、他人の所有物を不正に自分のものとする行為に対して適用されます。
しかし、法的知識がない中で、自分の行為がそもそも犯罪に当たるのかの判断をすることが難しい場合があると思います。
弁護士に相談することで、自身の行為が法的にどのように評価されるかを正確に理解し、適切な対応を取ることが可能になります。
メリット②:「今すぐ何をすべきか」がはっきりわかる
遺失物等横領罪に問われると、突然警察から呼び出されたり、取調べを受けることになります。
何もわからないまま対応してしまうと、かえって状況を悪化させるリスクも。
弁護士に相談すれば、今の立場で何をすべきか、逆にしてはいけないことは何か、すぐに道筋が見えます。
不安や焦りの中でひとりで判断を誤らないためにも、専門家に早めに頼ることが大きな意味を持ちます。
メリット③:被害者対応を任せて、余計なトラブルを防げる
仮に被害者がいる場合、自分だけで謝罪や示談交渉をしようとすると、そもそも連絡先を教えてくれなかったり、思わぬすれ違いやトラブルに発展しかねません。
弁護士が間に入ることで、感情的にならず、冷静な話し合いができるようになります。
また、示談が成立すれば不起訴につながる可能性もあり、刑事処分を軽くできるチャンスも生まれます。
スムーズな解決には、専門家のサポートが欠かせません。
メリット④:将来に影響を残さないための最善策を考えられる
前科がついてしまうと、その後の就職や資格取得、社会生活に大きな影を落としかねません。
弁護士に依頼すれば、起訴を防ぐための働きかけから、仮に起訴されても処分を軽くするための戦略まで、ケースに応じた最善策を考えてもらえます。
大切なのは、早い段階で「自分を守るための行動」を取ることです。
未来を守るためにも、法律の専門家の力を借りるべきです。
遺失物等横領罪に関するQ&A
ここでは、遺失物等横領罪にまつわる「よくある疑問」をわかりやすく解説します。
Q1. 拾ったものをすぐに届けないと、すぐ罪になるのでしょうか?
拾い物をしたとき、すぐに届け出ることは法律で求められています。
しかし、拾ってすぐに届けなかっただけで、直ちに遺失物等横領罪が成立するわけではありません。
ポイントは「不法に自分のものにしようとする意思」があったかどうか。
たとえば、後で警察に届けようと保管していた場合などは、違法とまでは判断されにくいです。
ただし、使ってしまったり隠したりすると、処罰対象となる可能性が一気に高まるので注意が必要です。
Q2. 遺失物等横領罪で警察に呼ばれたら、逮捕されるのでしょうか?
遺失物等横領罪は比較的軽い犯罪とみなされているため、実際に逮捕されるケースは限られます。
多くは任意の事情聴取にとどまり、在宅のまま捜査が進むことがほとんどです。
ただし、拾った金額が大きかったり、他に悪質な事情(たとえば長期間にわたり使用していたなど)があれば、逮捕のリスクもゼロではありません。
呼び出しを受けた時点で、冷静に対応すること、そして必要ならすぐ弁護士に相談することが大切です。
Q3. 示談が成立すれば、必ず不起訴になりますか?
示談が成立すると、検察官が「起訴しない」という判断をする可能性は高まります。
特に初めてのトラブルであり、被害弁償や謝罪がきちんとできている場合、不起訴処分となる例が多いです。
ただし、示談が成立すれば絶対に不起訴になる、というわけではありません。
検察の最終的な判断は、事件の経緯や被害者の意向、反省の態度なども総合して行われます。
示談交渉は、弁護士のサポートを受けながら進めるのが安心です。
まとめ
遺失物等横領罪は、ちょっとした油断が思わぬトラブルに発展するリスクをはらんでいます。
しかし、正しい知識と冷静な対応があれば、最悪の事態を防ぐことも可能です。
万が一、疑いをかけられた場合でも、早めに弁護士へ相談し適切なサポートを受けることで、将来への悪影響を最小限に抑えることができます。
自分自身と大切な人生を守るためにも、備えとして知識を持っておくことが大切です。
- 得意分野
- 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件 、 遺産相続 、 交通事故
- プロフィール
- 岡山大学法学部 卒業 明治大学法科大学院 修了 弁護士登録 都内の法律事務所に所属 大手信販会社にて社内弁護士として執務 大手金融機関にて社内弁護士として執務