傷害罪の時効は10年 – 刑事・民事の時効について弁護士が解説
全国20拠点以上!安心の全国対応
初回相談0円
記事目次
「酒に酔っていて、暴力沙汰を起こしてしまった」「ついカッとなって、人を殴ってしまった」など、暴力によって他人に怪我を負わせてしまえば、その行為は傷害罪にあたります。
「いつ事件が明るみに出て逮捕されるのだろう」「早く時効期限が過ぎないだろうか」などと不安を抱えている方もいらっしゃるでしょう。
傷害事件を起こすと、刑事責任のほかに、怪我を負ったことで相手が被った損害を保証する民事責任も追及される可能性があります。
両方の時効について知っておいた方がよいでしょう。
今回は、傷害罪の概要、傷害罪の公訴時効、傷害罪の民事責任についての時効、傷害事件を起こしてからの流れ、傷害罪を起こしてしまった場合に弁護士に依頼するメリットなどについて解説します。
傷害罪とは
傷害罪とは、刑法第204条で定められており、暴力によって相手を負傷させてしまったことに対して、責任を問われる犯罪行為です。
4つの成立要件があり、全ての要件を満たす場合に成立します。
まずは、ご自身や身近な方の行為が傷害罪にあたるのかを確認してみましょう。
1.傷害罪の4つの成立要件
傷害罪の成立要件は、以下の4つです。
- 実行行為があったか
- 結果、傷害に至ったか
- 行為と結果の間に因果関係があるか
- 故意はあったか
似た犯罪として同法第208条に規定されている「暴行罪」が挙げられます。
暴行罪は、暴力をふるった点で傷害罪と共通しますが、相手が負傷するまでに至らなかった点において異なります。
①実行行為があったか
実行行為とは、犯罪の構成要件を実現する、現実的な危険性をはらむ行為のことをいいます。
傷害罪の場合は、他人の身体に傷害を与えるような暴力行為をしたことが実行行為です。
この場合の暴力行為とは、殴る、蹴るなどの「有形的方法」に限りません。
精神面に対してダメージを与える「無形的方法」によるものも含まれます。
無形的方法による実行行為の例としては、精神衰弱症に陥らせるほど嫌がらせ電話をかけたり、隣人に慢性的な頭痛症を発症させるほどの大音量で音楽や目覚まし時計のアラーム音などを出し続けたりするような行為が挙げられます。
②実行行為の結果、傷害に至ったか
相手に傷害を負わせたという結果の有無も傷害罪の成立要件の一つです。
ここでいう「傷害」とは、打撲や切り傷といった怪我に限りません。
人間の身体の生理機能を害する症状全般を指します。
つまり、精神的ストレスによりPTSDや睡眠障害を発症させたり、意識障害を引き起こさせたりした場合のほか、めまいや中毒を起こさせた、病気に罹患させたなども含まれます。
③実行行為と結果の間に因果関係があるか
傷害罪が成立するには、加害者による暴力行為の結果、傷害が生じたという因果関係の立証が必要です。
例えば、被害者が、ナイフを持って襲ってきた加害者から走って逃げている途中で転倒し、負傷した場合、実行行為と結果の間には因果関係があるとされます。
加害者による行為がなければ、被害者は怪我を負うこともなかったからです。
一方、加害者に脅されたことが原因でうつ病になったと主張しても、直ちには認められないでしょう。
うつ病の発症は加害者による行為以外の原因による可能性もあり、因果関係が明らかとはいえないためです。
④故意はあったか
被害者に怪我を負わせようとしたという加害者の故意の有無も傷害罪の成立要件の一つです。
例えば、学食で熱いラーメンの乗った盆を運んでいた人がよそ見をしていて他人とぶつかり、ラーメンのスープが飛び散ってやけどを負わせたとしても、故意がないため傷害罪にはなりません。
一方、「他人を殴ったけれど、怪我をさせるつもりはなかった」という場合、被害者が負傷していれば傷害罪が成立します。
傷害罪における故意とは、暴行を加えようという意図さえあれば足りるとされるためです。
2.傷害罪の刑罰
傷害罪の刑罰については、刑法第204条で定められており、15年以下の懲役、または50万円以下の罰金です。
懲役刑になるか罰金刑になるかは個々のケースによりますが、実際には懲役刑となる場合が多いでしょう。
令和4年度の犯罪白書によると、傷害罪で起訴された場合、第一審での処分結果は以下のとおりでした。
懲役刑 | 2032人(約87%) うち全部執行猶予1280人(約55%)、 一部執行猶予7人(約3%) |
---|---|
罰金刑 | 294人(約13%) |
また、具体的な懲役期間と罰金額は以下のとおりです。
【懲役期間】
10年を超える | 9人 |
---|---|
7年を超え10年以下 | 18人 |
5年を超え7年以下 | 23人 |
3年を超え5年以下 | 68人 |
2年以上3年以下 | 実刑・一部執行猶予:163人、全部執行猶予:421人 |
1年以上2年未満 | 実刑・一部執行猶予:261人、全部執行猶予:652人 |
6月以上1年未満 | 実刑・一部執行猶予:183人、全部執行猶予:196人 |
6月未満 | 実刑・一部執行猶予:34人、全部執行猶予:8人 |
【罰金額】
50万円 | 22人 |
30万円以上50万円未満 | 102人 |
20万円以上30万円未満 | 135人 |
10万円以上20万円未満 | 107人 |
5万円以上10万円未満 | 11人 |
5万円未満 | 0人 |
3.傷害罪にあたる行為の具体例
傷害罪が成立する行為には、以下のようなものが挙げられます。
- 殴ったり、蹴ったりして骨折を負わせた
- 服を引っ張って転倒させ、すり傷を負わせた
- 相手の飲み物に下剤を混ぜ、下痢を起こさせた
- 無言電話をかけ続け、相手にうつ病を発症させた
傷害罪の公訴時効
1.傷害罪の公訴時効期間は10年
傷害罪を起こした場合の公訴時効は10年です。
公訴時効とは、刑事事件における時効のことであり、この期間が経過した後は、検察が起訴したとしても免訴判決が言い渡されます。
これは、事件からあまりに長い時間が経過すれば、証拠がなくなる可能性が高かったり、事件の社会的な影響力が弱まったりすると考えられるためです。
2.公訴時効の起算点は犯罪行為が終わったとき
公訴時効は、刑事訴訟法第253条で定められているとおり、犯罪行為が終わった時点から数え始めます。
傷害罪の場合は、相手に怪我を負わせた時が起算点です。
また、後遺障害など、実行行為からある程度時間が経過してから発症した場合は、その症状が現れた時点から起算されます。
3.公訴時効内であれば、いつでも告訴される可能性がある
傷害罪には、告訴期間の制限はありません。
親告罪であれば、刑事訴訟法第235条で定められる「犯人を知った日から6ヶ月」以内という制限が適用されますが、傷害罪は、親告罪ではありません。
公訴時効期間内であれば、被害者によっていつでも告訴される可能性があります。
4.公訴時効は停止することもある
公訴時効は、下記のような場合、進行が停止します。
- 公訴の提起(刑事訴訟法第254条1項)
- 共犯者に対する公訴の提起(同法第254条2項)
- 加害者が国外にいる場合(同法第255条1項)
- 加害者が逃げ隠れをし、有効に起訴状の送達や略式命令の告知ができない場合(同法第255条1項)
傷害罪の民事責任についての時効
1.傷害罪で損害賠償請求をされる可能性もある
傷害罪を起こすと、相手に負わせた怪我についての民事責任を問われる可能性もあります。民法第709条には以下のように定められています。
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
他人に傷害を負わせるということは、相手の身体の健康という法律上保護される利益を侵害する不法行為にあたり、加害者は、自分が振るった暴力によって相手が被った損害を賠償しなくてはなりません。
つまり、加害者には、被害者が負った怪我の治療費や入院費、休業損害の他、後遺障害が残った場合は逸失利益や後遺障害慰謝料などを支払う必要があるのです。
2.民事事件の時効は5年
不法行為による損害賠償請求権の消滅時効については、民法第724条で定められています。
通常、被害者が損害、または加害者を知ったときから3年ですが、人の生命または身体を害する不法行為による損害賠償の場合は、被害者が損害、または加害者を知ったときから5年とされています(同法724条2項)。
これは、通常の不法行為よりも、被害者を保護する必要性が高いためです。
傷害事件を起こしてからの流れ
傷害事件を起こしてしまったら、以下のような流れで手続きが進みます。
1.事件発覚・逮捕
傷害事件を起こして警察に逮捕される場合、現行犯逮捕と後日逮捕の2種類のパターンがあります。
現行犯逮捕とは、目撃者などが警察に通報し、駆けつけた警察官に逮捕されることです。
一方、後日逮捕とは、事件からある程度の時間が経過した後に、逮捕されることです。
被害者が警察に被害届を提出することで発覚し、警察が事件性を認めれば捜査が開始されます。
捜査の結果、犯罪を働いた可能性が十分高く、逃亡や証拠隠滅の恐れが高いと判断されれば、裁判官により逮捕状が発布され、それを携えた警察官が自宅まで逮捕に来るのです。
2.検察官送致・勾留
警察に逮捕された後は、警察署内の留置場に留め置かれながら、取り調べを受けます。
しかし、いつまでも警察にいるわけではありません。
48時間以内に、身柄を検察庁に送致されます。
そこからさらに検察による取り調べを受け、下記の勾留要件を満たす場合は、24時間以内に裁判所に対して勾留請求がされます。
- 住所不定である
- 罪証隠滅のおそれがある
- 逃亡のおそれがある
裁判所が適当と判断すれば勾留決定が発布され、そこからさらに10日間、検察に留め置かれます。
勾留期間である10日が経っても、検察が取り調べは不十分だと判断すれば、勾留期間の延長を求められ、最大20日間勾留される可能性があります。
3.起訴決定
勾留期間中に、検察は起訴するかどうかを決めます。
不起訴となれば、刑事裁判を受ける必要がなく、罪には問われません。
検察が起訴するかどうかを決定する要素としては、主に以下のようなことが挙げられます。
- 犯罪の証拠があるか
- 犯罪の証拠は十分にそろっているか
- 犯人の性格や年齢、境遇、犯罪の重さ、情状などを考慮したうえで起訴が適当か
日本において、起訴された場合は99.9%の確率で有罪判決が下ります。
また、勾留中に起訴決定があった場合には、保釈請求ができます。
裁判所が許可をすれば、保釈金を納めることで、身柄を釈放してもらえます。
4.公判手続き
起訴決定の約2ヵ月後に1回目の公判が開かれます。
裁判は以下のような流れで進みます。
- 人定質問(刑事訴訟規則第196条):被告人に氏名や生年月日、本籍、住所を確認する。
- 起訴状朗読(刑事訴訟法第291条1項):検察官が起訴状を読み上げ、審理の対象を明らかにする。
- 黙秘権等の告知(刑事訴訟規則第197条):裁判長による被告人の権利についての説明。
- 被告人・弁護人の起訴事実についての認否(刑事訴訟法第291条4項):起訴状の内容に間違っている部分はないか、間違いがある場合、どこが違っているかを被告人、弁護人が述べる。
- (否認する場合)証拠調べ・弁論手続き:起訴状の内容について否認する内容がある場合は、証拠調べや弁論手続きを通じて争う。
- 判決:裁判官から有罪、無罪の判決が下される
傷害事件を起こしたら弁護士に相談を
傷害事件を起こしてしまい、毎日不安を抱えながら過ごしているなら、思い切って弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談・依頼すれば、被害者との示談交渉をしてもらえます。
示談内容には、通常、警察へ被害届を提出しない、提出した場合は取り下げることを含めますので、逮捕を免れられるでしょう。
事件のことが警察に発覚したとしても、示談が成立していることで、逮捕や起訴はされないはずです。
傷害事件を起こしてしまったら、発覚を恐れながら過ごすのではなく、平穏な日々を取り戻すためにも、早めに弁護士に相談することが望ましいといえるでしょう。
まとめ
今回は、傷害罪の概要、傷害罪の公訴時効、傷害罪の民事責任についての時効、傷害事件を起こしてからの流れ、傷害罪を起こしてしまった場合に弁護士に依頼するメリットなどについて解説しました。
傷害事件の公訴時効は10年、民事責任については5年です。
警察への事件発覚や、責任を問われるのを恐れながら過ごすなら、非常に長く感じられることでしょう。
「いつ発覚するのか」と不安に思いながら毎日を過ごすより、弁護士に相談し、早期解決を目指すことをおすすめします。
私達、東京スタートアップ法律事務所は、刑事事件を起こしてしまったご本人やご家族の気持ちに寄り添い、ご本人の大切な未来を守るために全力でサポートさせていただきたいと考えております。
検察官や捜査機関の考え方を熟知している元検事の弁護士を中心とした刑事事件に強いプロ集団が、ご相談者様の状況やご意向を丁寧にお伺いした上で的確な弁護戦略を立て、迅速に対応致します。秘密厳守はもちろんのこと、分割払い等にも柔軟に対応しておりますので、安心してご相談いただければと思います。
「ForClient」を理念として自らも多くの顧客の信頼を得ると共に、2018年の事務所開設以降、2023年までに全国12支店へと展開中。
- 得意分野
- ベンチャー・スタートアップ法務、一般民事・刑事事件
- プロフィール
- 京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設